アスカと腐れ縁たち(その3)
「これでもまだわかりませんか?」
私の問いかけに、キョウスケは答えていく。
「君は、…いや、君達は『転生者』なのか?」
やっと正解の半分を言い当てたキョウスケであった。
「半分正解で、半分はまだ回答中ですね。その半分は、私…、いや、”私たち”が誰なのかということです。」
そういいながら私たちは、みんなに念話で、こう話し合った。
私がキョウスケに制裁を加えている横では、順番を待ちきれなかったみんなが、他の勇者メンバーをタコ殴りにしている光景が目に入った。何故かキャナルシア様までタコ殴りにされていた。
『キョウスケが、半分正解したよ。そっちの様子は?』
『ボクはアリサさんをボコっているんだけど、手ごたえないね~。これで本当にLv270あるの?
おっ!!反撃してきた!…でもなんかしょぼい攻撃だね。それじゃあこっちも行くよ~~。えいっ!!』
その瞬間、少し離れた場所から、水の柱が立ち上った。そして、柱の上のほうには、何やら黒い物体が空高く舞い上がっている。今マツリは、アリサを虐めているみたいだ。
アリサ、死んでいなきゃいいんだが…。そうだった。この空間内では、どんなことをされても死なないんだったな。
まあ、いいか。
何故かエリザも参加している。なんでいるんだ?と不思議に思い念話で確認してみると、こんな回答があった。
『わたくしは、今日参加していないアケミの代わりですね。アケミから代わりに殴っておいてと頼まれました。なので、参加しています。
キャナルシア様については、アスカさんが遊んでいる最中に皆で殴る事に決まりました。曰く、今回の現況を作った国家の王族だからだそうです。』
確かにそうだが。
また別の場所では、火柱が何本も立ち上がっていたり、轟音とともに、巨大な雷が地を焦がしている。そして、それらをすべて飲み込むように、巨大な津波が私の元にやってきた。
私は寸でで空に転移して難を逃れるが、地面に縫い付けられたキョウスケは津波に飲み込まれて、はるか先にある岩壁に激突していった。その津波の中には、ほかの勇者様たちも錐揉みされながら貰い手いるのが見て取れた。
「あそこまでいくのは嫌ですね~~。」
いつの間にか私のそばまで来ていたみんなに、私は、そんな言葉を呟きながら、手招きするようなしぐさをする。私の動作と連動するように、キョウスケたちがいるだろう岩壁に竜巻が発生し、私の目の前の地面まで、竜巻の橋が出来上がった。もちろん、私が作り出したものだ。
竜巻を解除するとそこには、襤褸布を身にまとい、目を回した気を失っている5人が地面に横たわっていた。そこに、誰かが作った氷水が、大量に浴びせらてていく。誰だ?とどめを刺したのは?周りを見渡せば、親指を上に突き立て、黒い笑みを見せるミヤビの姿が。
こうして数時間かけて、1人1人に殴られ、蹴られ、癒され、また殴られを繰り返すことのなった勇者様御一行。毒をもらうことはあったが、幸いにも人体切断までは至らなかったようだ。
そして。
殴られすぎて顔の形が変わってしまった男2人。外見はいたって普通だが、精神をズタズタにされた女性3人。私たちの目の前の地面に、直接正座をしている。
服装は、すでに襤褸布と化しており、所々破れてしまっている。というよりも、全員下着姿だ。最後の最後に、ナオミが襤褸布に火を放ち消し炭にしてしまったのだ。絶妙な火加減で下着だけは残ったが。
鎧は、制裁を始める前に、マツリの持つ魔眼ですべで脱がせてあります。マツリに睨まれた時の5人の顔と言ったら、血の気が引きだらだらと冷や汗を滝のように流していました。鎧に手をかけようとするたびに、マツリに睨まれる5人。その後も制裁中ずっと、マツリに睨まれ続けていた5人です。
満身創痍になって横一列に並んだ勇者様御一行は、そのまま地面に頭をこすりつけていきなり土下座をしてきた。
「俺たちのせいで殺してしまい、申し訳ありませんでした!!!」
そしてなぜか、謝ってきた。そんな姿を見て、なんだか興ざめしてしまった。
「まあいいわ。暴れて気が済んだからね。
この世界に転生してきたのは、死んでいった数に比べればほんの一握りだけど、恭介たち勇者、そして私たち転生者一同が、その人たちの分まで精いっぱい、ここで生きていかなくてはいけないね。
転生してきた人の中には、奴隷となってつらい人生を送っている人も中にはいるけれど、たいていは自業自得だから気にすることはないよ。」
そういいながら私は、マツリとカズハ・ミズホ・アカネの4人を見る。マツリは騙されて奴隷になってしまったし、カズハたち3人は、黒歴史に残ることをして奴隷になってしまった。
「キ・ョ・ウ・ス・ケ。さっきの続きを答えてください。
まずは、私、いや、”俺”は誰だ?」
一人称で”俺”と言ったのは、いつ以来だろうか?ずいぶんと|九尾狐とエルフのハーフ(このすがた)に慣れてしまった。今では、尻尾一本一本独立して動かすことも伸ばすことも可能だ。失くす事も可能だが、1度それをしたらミヤビから怒られた。男の戻る事も可能だが、カズハたちと同様、今更男の戻っても…と思っている今日この頃だ。
おっと、目の前のおバカさんに集中しないといけないな。
「…まさか、本当に飛鳥、『佳岡飛鳥』なのか?」
「…その名前で呼ばれるのは何年ぶりだろう。
…そうだ。
俺が『佳岡飛鳥』だ。恭介。久しぶりだな。ずいぶんと下のほうは元気だと、綾香から聞いているぞ。
俺も奈緒美と毎晩いちゃついているからな。今は俺は”受け入れるほう”で、奈緒美が”入れるほう”だが。
…まあ、そんなことはどうでもいい。
では、1人1人誰が誰なのか、当ててみようか。」
こうして、すでに正解を言い当てている女性陣(姫様含む)を除き、キョウスケとヒデヒサに正解を言い当ててもらう。
「お前たち4人の勇者召喚で殺されあと、神様の恩情?なのかな?…まあ、なんでもいいや。
とにかく、この世界に転生してきて、新たな人生を今歩んでいる。
お前たちには、殺された恨みはあるが、今の生活も結構気に入っているからな。
私たち8人は、この世界に来た過程はどうあれ、今の生活に満足しているから。今回の制裁は、通過儀礼だと思って諦めてください。
しかし…。
今のままでは、魔王には勝つことはできないわね。
どうするの?」
ほっとした顔つきになった5人は、地面に座ったまま私たちを見ます。そして。
「今のままでは、魔王に勝てない。
アスカ。俺たちを鍛えなおしてくれ。」
私は、盛大にため息をつきました。
「…まあ、そういうならいいでしょう。私の、いや、私たちの弟子にしましょう。
下着姿では空間を解除することもできないので、何か着てください。
この足でダンジョンに潜りましょう。」
こうして私たちは、キョウスケたちを鍛えなおすべく、師弟関係を結びました。




