アスカと腐れ縁たち(その1)
なぜこうなった?
確かに、今日中には出会うだろうとは予測はしていた。
突発的な魔族との戦闘で、迷宮都市に到着するのが、半日近く遅れたのも影響しているだろう。
私たちが、魔族軍の殲滅を終えた約1時間後、迷宮都市へと向かう空の旅の途中、目の前に現れたのは勇者様御一行が操る空中戦艦。そう、今現在、この世に2隻しかない空飛ぶ要塞だ。
「ねえ?お兄ちゃん?」
「…なんだ?ミヤビ?」
「あれって、有名な宇宙海賊さんが乗っている船だよね?船体にある髑髏のマークが、どこかの紋章になっているだけで。」
「ああ、そうだな。エリザ、あの紋章に見覚えは?」
私は、誰があれを操艦しているのかを知ったうえで、あえてエリザに問いかける。一応艦橋には、王様も来てはいるが、此処はいないことにしておく。
「…あの紋章は、遠く離れた西の大国、クレアレド聖王国の王家の紋章に似ています。」
そんな子事はなしているうちに、件の船から通信が入ってくる。
「アスカ、向こうさんから通信が来ているよ?繋げる?」
通信士役のアカネがそう聞いてきた。
「そうだね。ちょっと待ってね。無効と通信の規格を合わせるから。…これで繋がるはず。繋げてもいいよ。」
私の許可とともに、目の前にある巨大なモニターにあちらさんの艦長らしき女性の顔が映った。
「はじめまして。こちらは、クレアレド聖王国所属、魔道船「ア〇カ〇デ〇ア号」艦長キャナルシア=アーレル=キサラギ=クレアレドと言います。そちらの所属をお願いできますか?」
「こちらは、”遊撃”空中移動要塞『ラングレイ』艦長アスカ=ラングレイ=ヨシオカです。この船は、民間所有ですので、何処の国にも属してはいませんが、私が暮らしている国に一応属している感じだと、バーランチア王国所属ということになりますね。
それはともかく、キャナルシア艦長。どのようなご用件でしょうか?」
話を聞けば、向こうさんも、魔族の軍勢を感知し迎撃に向かったはいいが、すでに私たちが殲滅してしまった後だったらしい。向こうが乗っている船は、1000年前の旧型であり、こちらは最新鋭艦である。
当然、使用されている技術も違うわけで。
現に通信1つ取ってみても、向こうの船のモニターに映る私の顔は、少しノイズが走り醜いだろう。たいしてこちらのんにたーに移っている顔は、鮮明に画像処理されている。アナログテレビとデジタルテレビの違いみたいなものだ。
船の出せる速度で言えばあまり差はないのだが、決定的な差といえば、こちらには転移魔法が備わていることだろう。私の持つスキル『空間の支配者』と連動して何処にでも転移することが出来る。王都から空の旅を楽しんでいたのは、ただの慣らし運転をするためだ。
その差が、魔族軍との邂逅を速めただけに過ぎない。
まあ、それはいいとして。
いろいろと話し合った結果、ランデブーしながら迷宮都市へと向かう流れになった。通信上で、向こうとこちらの乗員の簡単な自己紹介を行いながら、迷宮都市の騎士団訓練場に着地をした。着地というか、空宙に浮いて停止しているのだが。
「改めまして。私が館長を務めています、クレアレド聖王国名誉公爵夫人キャナルシア=アーレル=キサラギ=クレアレドと言います。今は公爵夫人ですが、私はクレアレド聖王国第3王女として生まれました。
そして、こちらが私の夫であり、公爵本人であるキョウスケ=アーレル=キサラギ=クレアレド、隣に控えますのが、第2夫人であるアヤカ=アーレル=キサラギ=クレアレドです。後の2人は、名誉伯爵であるヒデヒサ=カトアシア=マツイガワ、その夫人であるアリサ=カトアシア=マツイガワです。この5人で、勇者パーティ『勇者の戦慄』を結成しております。」
爵位を持っていることは知らなかったが、キョウスケよ。貴様は王女様を落としたのか!そして、結婚したのか!
その辺を問いただすのは後でいいか。こちらも自己紹介をしなければ。
「ではこちらも改めて自己紹介をいたします。
私が、艦長のアスカ=ラングレイ=ヨシオカです。お久しぶりですね、キサラギ公爵様。」
私の言葉に、頭の上に大きな?マークを出すキョウスケ。私はそんなキョウスケをしり目に、こちらのメンバーを紹介していく。いつ、私のことに気づくかな?楽しい賭けの時間が始まりました。
「まずは、私から見て右隣から。私の夫のナオミ=ラングレイ=ヨシオカ、妹のミヤビ=ヨシオカとマツリ=ヨシオカです。」
ここまで言ってもまだ、私たちの招待に気づかないキョウスケ。キョウスケの隣にいるアヤカはどうも気づいたらしいが、私の視線での『シー』に気づき、満面の笑みを浮かべて私に追随している。
「続いて私の左隣にいるのが、エリザベス=カトレシア=セルア=バーランチア。この国の第1王女であり次代の王でもありますが、今は私のパーティの一員です。
その隣にいるのが、カズハ=トウドウ、ミズホ=クラバヤシ、アカネ=テンドウです。エリザの後ろに控えているのが、私たちパーティの後方支援を担当しているサーシャ=エデラスト=テレンドールとアケミ=ポインテール=サレアレドです。
この10人で、冒険者パーティ『狐とエルフの落し児』となります。
続いてパーティには関係ないのですが、現在この場にいる人たちの紹介です。
まず初めに、エリザの父親であり、この国の王である『バーランチア=バルモス25世』様。その隣にいるのが、此処迷宮都市の領主様であり、アケミの父親であるサレアレド伯爵様です。」
「私が、この国を預かっておる『バーランチア=バルモス25世』だ。キャナルシア公爵夫人、ここで出会ったのも何かの縁だ。今宵の伯爵家での晩餐会に招待しようと思うが、どうだろうか?サレアレド伯爵?」
「紹介にあずかりました、この町の領主を務めておりますワトス=ポインテール=サレアレドと申します。ぜひとも晩餐会にご招待したく思います。」
「ハイ、喜んでご招待にあずかります。」
「ではアスカ殿たちも、どうぞ晩餐会にはご参加ください。」
最後に伯爵から飛んでも発言が飛んできた。
「私はただの平民ですが、いいのでしょうか?」
すかさず私は、やんわりとお断りを言うが、伯爵はどこ吹く風である。
「アスカ殿をないがしろにしては、この国の恥でございますよ。これから娘が世話になるのです。どうぞ晩餐会にご参加ください。」
「わたくしとご一緒は嫌ですか?アスカさん」
私の横にいるエリザが、上目使いで懇願してくる。右隣を見れば、ナオミが私の肩に手を置き首を左右に振った。「あきらめも肝心だよ」と無言の圧力を放ってくる。
「わかりました。」
私は、無言の圧力にとうとう屈した。
「では、私の屋敷にご案内いたします。アスカ殿のパーティも、勇者殿のパーティも、今晩は私の屋敷に泊まっていってください。」
キョウスケは、ここまでの時間で、私のと言うか、私たちの正体を見破る事は出来なかった。
私やナオミ、カズハたちはともかく、ミヤビはマツリは同じ名前なのにね。何故気づかないのか、不思議で仕方がない。あなたの相棒はすでに気づいていますよ。後の2人は気づいていないようですが。
これは、制裁のランクが2つ3つ上がりましたね。
どんなことをしようかな?ただ殴る蹴るだけでは面白くないよね。
晩餐会が終わり、まったりと与えられた部屋で過ごしています。
やはり、船の中のほうが快適ですね。
キョウスケとヒデヒサは、いまだに私たちの正体を解っていません。
アリサは気づいたようですが。
晩餐会の後、お風呂で一緒になりその時に、こんな会話がありました。
「今まで気づかなかったけれど、もしかしてアスカ君?そんな姿だから、全然気づかなかったよ!
私たちのせいで地球では死んでしまったけれど、この世界に転生してこれたんだ。しかも女の子として!
本当にごめんね。」
なんとも軽い感じだ。まあ、変にかしこまられても迷惑なのだが。まあ、一応誤ってきたから許してあげよう。アヤカとアリサは、制裁については連帯責任だから受けてもらうけれどね。ついでに王女様も。
「別にいいよ。気づいてもらえたから。ちなみに、私のパーティの中では、エリザとサーシャ以外は全員が転生者だからね。誰が誰だか当ててみて?ちなみに、カズハたちの正体を充てるのはとても難しいと思いますよ。」
私は悪い笑みを浮かべてアヤカとアリサに聞いてみた。カズハ・ミズホ・アカネの3人は、満面の黒い笑みで、答えを聞く体制に入っています。アヤカとアリサは、2人で私たちの顔を確認しながら、記憶を掘り起こしています。そして、答え合わせを、アリサがしていきます。
「アスカ君は、今はアスカちゃんね。アスカちゃんはすでに解っているからいいとして、ミヤビちゃんとマツリちゃんは、ずばりそのままアスカちゃんの双子の妹たちでいいでしょ。しっかりと『ヨシオカ』って名乗っていたしね。」
「2人については正解だね。でもなんであの2人は、しっかりと苗字まで名乗っているのに解らないんだろうね?」
「それがあの2人のいいところよ。まさか目の前の女の子が、腐れ縁だとは思いもしていないんでしょうね。
じゃあ続きを行くね。アスカちゃんが地球で恋人だったナオミさんは、ただ1人の男性エルフの人でしょ。」
「よく解ったね。ナオミのこと。」
「何年一緒にいたと思っているの?面影が残っていたからね。でも面白いね、あなたたち2人。種族はいいとして、性別がまるきり逆転しているんだから。」
「あと4人については解る?」
「そうだね。ここからが難しいね。まずは、アケミさんからだね。顔の面影から記憶をたどると、私たちが通っていた学校の高等部の生徒会長をしていた反町朱美さんではないのかしら?」
「正解!」
「あとはこの3人ね。苗字からは該当する男の子3人がいるけれど、名前が違うからね。でも、苗字から推測するに、カズハさんが藤堂綾鷹君、ミズホさんが倉林穂鷹君、アカネさんが天童慶介君でいいかな?」
「大正解!3人は、私と同じTS転生組だからね。名前が女の子らしくないからという理由でたぶん変わったんだと思う。それ原、この3人は、転生したときは人間族だったんだけど、私が開発したとある薬を服用して今の種族『エルフと人間のハーフ』になった口だ。ちなみに、エリザもそうだな。後、王様の話だと、エリザに連なっている者たちのほとんどが、この薬を飲んで『エルフと人間のハーフ』になるみたいだな。
そうそう、アヤカとアリサは、もう2度と元の種族に戻る事は出来ないけれど、違う種族になってみたい?」
「それって、どんな種族にもなる事が出来るの?」
「ラグナレシアの大地で暮らしている種族ならば、なんにでもなる事が出来るよ。大穴狙いで『スライムと人間のハーフ』とかね。元の種族をベースに変化させるから、どうしてもハーフになってしまうんだな、これが。」
そんな会話が、女子風呂でくり広げられていた。
あの2人、本津に何で解らないんだろうね?私たちの正体。




