空中移動要塞『ラングレイ』(その2)
王都を出て約2時間。
私たちは今、この戦艦の入り口である転移の間と、艦橋のほぼ中間にある『空見の間』と名付けたリビングでまったりと寛いでいる。戦艦の操縦自体は、安定の自動操縦だ。
このシステム自体は、私の持つ特殊スキル『空間の支配』と連動しているため、艦長である私が乗艦していないと使うことができない。このシステムは、勇者にあげた魔道船(彼らは『ア〇カ〇デ〇ア号』と改名したらしい)には搭載されていないため、こちらの魔導船のほうが最新鋭となる。なので、『まどう』の漢字表記も、『魔道』から、『魔導』に変えたのだ。
まあ、そのことはどうでもいい。
今このリビングルームで寛いでいるのは、私のパーティメンバーである私・ナオミ・ミヤビ・マツリ・カズハ・ミズホ・アカネの7人と、新たに加わったエリザと侍女であるサーシャ・アケミの2人、王様と護衛として来ている近衛騎士の2人の計12人。侍女の1人、アケミさんは、実は勇者君の召喚に巻き込まれた転生者だったりする。転生先は、この国の伯爵家の二女と言う立場で、行儀見習いで王宮に侍女として働きに来ていたそうだ。
侍女2人は、エリザに向けたサプライズとして、王様たちと仕組み、エリザに与えた部屋にいてもらっていた。もちろん2人にも転移の指輪を渡してあるため、私たちが艦橋にいる時間を利用して、エリザの荷物を王城から運び込んでもらっていた。ちなみに彼女らには、私たちがいない間の、艦内の生活空間の管理も頼んである。もちろん、いざという時の操艦もお願いしてある。なので、戦闘はしないが、後方支援に徹した私たちのパーティメンバーの1人でもあるのだ。
連絡方法は、後でエリザにも与える予定のスキル、『念術Lv10』で念話をしてもらったいた。準備が整うまでは、エリザと王様に艦内を案内しているのだ。
準備が整ったとサーシャから連絡が来たので、エリザを部屋に案内してきた。
「この区画が、艦内における生活空間になります。丁度艦橋の真下の部分にあたりますね。艦内には、戦闘及び操縦区画の艦橋。その真下にある生活空間。艦内で一番多くの場所を占めている戦闘装置群。艦橋と生活空間の真下にある動力部。
大きくこの4つに分かれています。
生活空間には、それぞれの私室となる部屋と、共同区画としてリビング『空見の間』。食堂である『天空の回廊』。男女別の大浴場『天空温泉』。」
そうやって説明しながら、各部屋を案内していきます。
ちなみに大浴場『天空温泉』に張られている湯は、地上から転移で運んできている温泉水だ。源泉は、王都にある私の自宅の地下500mほどにあるため、源泉に毒物を混入しようとしても不可能だったりする。なんせ、井戸の状態で組み上げているのではなく、源泉の泉脈から直接転移させているのだから。
話を戻しましょう。
私はエリザを私室のある区画に案内します。
「この区画は私たちの私室がある区画です。それぞれの部屋の扉の横には、名前を刻んだプレートが填め込まれています。そのプレートに魔力を流せば、部屋の扉が開きます。プレートには、部屋の主人である人物と、艦内の生活空間の管理を頼んである人物しか開けれません。
そしてこの部屋が、エリザの私室となる部屋です。」
私はエリザに、部屋の開錠をお願いしました。
部屋に入るエリザ。
「お帰りなさいませ、エリザ様。」
誰もいないと思っていた部屋の中から、突然響く声。一瞬ビクッとした顔つきになったエリザでしたが、その声の主が誰なのかを知ると、途端にその人物に抱き着きに行きます。
「サーシャが何でここにいるの?」
「艦内の生活空間の管理全般をアスカ殿から頼まれたからです。今はリビングで他のメンバーの接待をしておりますが、アケミもいますよ。」
こうして、感動?野再会を果たしたエリザ。私とサーシャは、ドッキリ?が成功したため、内心ほくそ笑んでいます。
そのままリビングに3人で向かい、皆と合流してこれからの予定を話し合います。話し合ったのは次の事柄。
1つ、迷宮都市での本拠地の設営。
これについては、この戦艦を本拠地とすることですでに決定しているが、問題は何処に停泊させておくか。
これについては、町の上空300mくらいの空中に停泊させておく事に決まった。もちろんステルス機能を全開にして隠すことになっている。
1つ、町への入場の方法。
船はどこにあっても私たちのパーティメンバーであれば一瞬で転移してこれるので、問題はないのだが、町に入るのに、いちいち町の外から入るのは面倒くさい。
と言うことで、町の中に、仮の本拠地を借りるなり作るなりすることにした。騎士団駐屯地の部屋を借りてもよかったのだが、町の中心部の千葉から遠い場所にあるので、この案は却下した。
借りるか買うかはわからないが、その建物ないし部屋は、町に入った時にでも決めよう。
1つ、ダンジョンをどこまで攻略するのか。
今は何階層あるのかは知らないが、最下層にいるボスを絞めてくるのか。私たちの戦力ならば、…たぶん可能だろう。
1つ、エリザの公務がある場合の対応。
これについては、その時になってみないと何とも言えないが、公務優先ということで決まった。明日については、王様もいるので、絶対迷宮都市を管理している貴族からの接待があるとのことだ。そのあとのことは、時間が許す限りは対応するようにと、王様からエリザに命令ではないがお願いしていた。
最後の1つ、勇者様御一行に対する対応。
現在勇者様御一行は、エリゼレート山を下山して、迷宮都市へと向かってきている。予定では、私たちが到着する日の夕方ごろに到着する感じだ。
つまり町の中で合致会うのだ。
あちらのパーティの中には確か、クレアレド聖王国の王女様がいたはずなので、迷宮都市にこの国の王様がいることが解ったら、何かしらのアクションを起こしてくるだろう。これについて王様に相談したら、「謁見の話が来たら、素直に応じよう」と言っていたので、あとは王様に丸投げしてしまった。私が同席するかどうかはその時次第だが、エリザは強制参加と言う話だ。
翌日、私たちの乗る空中移動要塞『ラングレイ』は、予定よりも半日ほど遅れて迷宮都市カイベルトにある騎士団訓練場に到着した。
遅れた理由は、今朝早く魔王の軍勢が、空から襲撃してきたのを、戦艦に搭載してある早期警戒システムに引っかかったため、武装の確認がてら殲滅してきたのだ。
自分で作っておいてなんだが、圧倒的な火力で大勝利を収めてしまった。
魔王の軍勢は、空飛ぶ蜥蜴を中心とした魔物が約500匹ほど。こちらの戦力は空中移動要塞『ラングレイ』1隻のみ。
バーランチア王国北にあるヤークリア山脈の数百m上空で勃発した空中戦は、空中移動要塞『ラングレイ』に積まれた主砲の無慈悲な絨毯爆撃の前に、魔王軍はなすすべなく殲滅された。戦闘時間約30分。地面への影響も考えて、木っ端微塵どころか血の1滴地面に落とすことなくこの世から消滅させてあげた。
この一方的な蹂躙を、間近で観戦していた王様が放った一言がこれだ。
「アスカ殿が、我々の味方で本当によかった。」
それに対して私は、
「そちらから敵対してこない限りは、私はこの国の味方であり続けますよ。」
と笑顔で答えてあげた。
大魔王?
何ですか、それ?おいしいの?
大魔王を討伐するのは、勇者様御一行のお仕事です。転生者の生活の安寧のためにも、お仕事頑張ってください。
私は手伝いませんよ?そんな面倒くさい事。
あまりにも不甲斐なければ、強制レベリングことくらいはするかもしれませんが。




