【閑話3】キャナル王女のクエスト(その2)
翌日、私たち5人は、離宮あとにほど近い荒野のど真ん中に来ていた。周りには、私たち以外誰もいない場所だ。テレストラにとっていた宿屋は、どうなるかはわからないので、すでに生産してあります。うまくいけば、魔道船という新たな拠点ができるので。
「じゃあ、いきます。」
「ああ、いつでもいいぞ。」
キョウスケさんの合図で、私は、昨夜新しく取得したスキル『魔導書作成Lv1』を発動させる。
このスキル、昨夜実験してみたところ、実に便利なスキルだった。私が考えた魔法陣を、1冊の本の状態で記憶してくれるのだ。とりあえずはまだ、”魔道船を呼び寄せる”転移魔法陣と、勢いに任せて作ってしまったモノだけしかないが、この魔法陣を弄っていけば、遠く離れたクレアレド聖王国の王都に直接つなげる魔法陣を作り出すことだってできる。
もともと遺跡に描かれていた魔法陣は、”魔道船のもとへと行く”転移魔法陣だったのを少し弄って、”魔道船を呼び寄せる”転移魔法陣に書き換えたのだ。ついでに魔道船を、異空間に格納するための魔法陣も作っておいた。これで、いつでもどこでも魔道船を呼び出したり格納したりできるのだ。
さらにこのスキルのすごいところは、魔力コストがあまりかからないことだ。先日のアヤカの話ではないが、ここテレストラ周辺からクレアレド聖王国まで転移しようとすれば、今の私たちの魔力ではコストを支払うことができない。
しかし、このスキルで描いた魔法陣を使用すれば、どんな理屈かは知らないが、支払うコストが1割程度まで減少するのだ。レベル1でこれなのだから、レベル10まで上げると、ほとんどコストを支払わなくてもいいのではないだろうか。現に、何処にあるのかもわからない魔道船へと向かうこの転移魔法陣でさえ、ほとんど魔力を使用しない。
私は、魔導書に書かれた魔法陣に魔力を与えて起動させる。
魔法陣が魔力を吸って一際輝くと、大空に大きな魔法陣が出現する。その魔法陣から、見たこともない形の船が現れた。それを見たキョウスケさんが一言。
「ア〇カ〇デ〇ア号?」
と呟いた。
「ア〇カ〇デ〇ア号って、何ですか?あの不思議な形をした船の名前ですか?」
私は、すかさずキョウスケさんに尋ねます。
「ア〇カ〇デ〇ア号っていうのはな、日本で昔放映されていたアニメに出てくる宇宙船の名前で有名な宇宙海賊の母船だった船だ。この船が、あまりにもそれに似ているのでな。…つい呟いてしまったんだ。
しかし、…。
何処から見ても、ア〇カ〇デ〇ア号そっくりなフォルムだな。中もそっくりなら、完全にネタに走っているな。…これ。」
そんな話をしながら、私たちは船の中に入っていきます。と言うか、くだらない話をしていたら、船から光の柱が私たちを包み込むように伸びてきて、地面に設置した瞬間に船の中に転移していました。
転移してきた場所は、艦橋と呼ばれる船を操縦する、少し薄暗い部屋です。この辺の知識は、キョウスケさんたちの会話の中から理解していきます。
何処かに明かりがあるはずだと、キョウスケさんたちは部屋の中を探し回り…。
「これだ。キャナル。ここにお前の魔力を少し流せ。」
言われた通りに、右手の形に彫られている板状のものに、私は右手を置いて魔力を流します。
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《本船の管理者移譲通知》
管理者権限を先ほど受け取った魔力パターンの保持者に移譲します。
しばらくお待ちください。
・・・・
管理者権限の異常を完了しました。
本船はこれより、受け取った魔力パターンの保持者を新たな管理者としてすべての施設・性能の使用を許可いたします。
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こんなメッセージが、目の前にある黒い板に流れました。それと同時に、艦橋内のすべての板に光が灯り、さらに照明がついて部屋の中が明るくなります。
「変なところで近未来的だな。この世界は…。」
「本当よね。」
キョウスケさんとアヤカが、艦橋を見渡しながら何やら話しています。私からしてみれば、何に使用するのかさっぱり解らないもので埋めつつされている艦橋です。
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現在の本船名『アランカレア=スティール号』を、別の名前に変更しますか?
(Y/N)
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「キョウスケさん。この船の名前、変更できるみたいなんですが、どうしましょうか?」
すると、4人が揃ってこう答えました。
「「「「もちろん変更だ。名前は『ア〇カ〇デ〇ア号』で!!」」」」
「はいはい、わかりました。」
私はあきれながらも、船の名前を『アランカレア=スティール号』から『ア〇カ〇デ〇ア号』に変更します。
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本船名『アランカレア=スティール号』から『ア〇カ〇デ〇ア号』に変更しました。
本船を起動させるには、燃料となる魔力が足りません。早急に魔力の補充をお願いします。
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「ついでに、船の操作を俺達でも出来るようにしておいてくれ。」
「?…わかりました。」
私は、操作の権利を、ここにいるメンバーにも拡大します。なぜか、頭の中に、船を操作していく方法がわかります。初めから知っているかのように。
「まずは動力室に行かないとな。」
「動力室とは、どんな部屋ですか?」
聞きなれない単語に、私はキョウスケさんに質問します。
「この世界の船は、そう言えば帆船だったな。このタイプの船は、動力が風ではなくて、内燃機関を使っていることのほうが多いんだ。まあ、魔法がある世界だから、単純に内燃機関ではないのだろうが。…どちらにしても何処かにエンジンと燃料保管庫があるはずだ。」
船からのメッセージを見つめながら、キョウスケさんは何かを探しています。
「おっ!これこれ。」
そう言いながら、パネルを操作してとある見取り図をモニター上に映し出しました。この部屋にある板状のなにかは、この船の管理者になった瞬間に名称がすべて頭の中に入ってきました。
動力室に到着した私たち。目の前には、中心部分に巨大な魔力炉があり、その周りには見慣れた魔法陣があります。もちろん同心円状には9個の台座が。その上には、透明な水晶が置かれています。
「あの台座の上の水晶に、魔力を注げばいいのか?」
「…たぶん。」
「じゃあ、ここまで魔法陣関係でお世話になったアレを使うか。」
そう言いながらキョウスケさんは、世界樹の森で討伐したガーディアンツリーの実である宝珠を9個取り出しました。一番大きな宝珠です。それを水晶に近づけると、一瞬のうちに水晶に取り込まれ、各属性色に輝きだします。
その後、再び艦橋に戻った私たちは、船を起動させました。
「船長、発進の準備ができました!発進の号令をお願いします。」
演劇モードになったキョウスケさんから、そんな言葉が届けられます。周りを見れば、各々適当な席に座り、私の号令を待っています。
わたくしですか?
私はなぜか、一番高い場所にある席、キョウスケさん曰く『船長席』に座らされています。なぜかと問えば、「この船の持ち主はキャナルなんだから、当然船長はキャナルが務めるべきだ」という答えが返ってきました。皆さんノリノリの感じなので、私もそれに従います。そうすると、まるで何処かに台本でもあるかのごとく、言わなければいけないセリフが頭の中に浮かんできました。私は、それをそのまま皆に告げていきます。
「最終確認!」
「システム、オールグリーン。いつでも発進可能です。」
操舵担当らしきキョウスケさんかが、そんなことを告げてきました。
「敵影なし。探索オールグリーン。」
どうもアヤカが探索担当らしいです。
「火器制御・周辺環境同調化システムともオールグリーン。」
攻撃担当はヒデヒサさんの仕事らしいです。
「船内環境・魔道エンジンオールグリーン。外部からの侵入者なし。」
アリサが、船内のことを伝えてきました。
そして最後に私は、こう宣言します。
「魔道船『ア〇カ〇デ〇ア号』、エリゼレート山へ向けて発進!!」
「了解!!『ア〇カ〇デ〇ア号』、エリゼレート山へ向けて発進します。」
私の号令とともに、船がゆっくりと発信していきます。
こんなコントみたいなことをノリノリでしていたら、私たち5人に、演劇スキルが生えていました。それもレベル6で。
そして、約3時間後、慣らし運転もかねてゆっくりと進んだ結果、その日のうちに目的地であるエリゼレート山の麓に到着しました。
今晩は好ま案船内で泊まり、明日の朝早く山の中腹にある朽ち果てた神殿に向かうことになります。




