【閑話1】キャナル王女の考察
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【神(代行者)からのクエスト】▽△
《クエスト挑戦者》勇者パーティ5人に対して
《クエスト期間》王都バルモアスに到着するまで
《クエスト内容》勇者召喚の際に巻き添えを受けて死亡した者たちのうち、ラグナレシアに転生した20人。その内王都バルモアスに住む10人と連絡を取ること
追伸
転生しているので姿かたちは変わってしまっているが、この10人は、元◯◯なので、名前さえ知っていれば簡単に見つけることができるよ
《達成報酬》???
《承諾》Y(承諾のサインは、このクエストを読んだ瞬間とする)
《クエスト発行者》技能神(代行者)
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クエストの書かれた紙の1枚を見て、私は驚愕した。
このクエストの文面から察するに、勇者を召喚すると、召喚元の世界では万単位の人の命が刈り取られると言っている。
そんな事実は初耳である。過去に勇者を召喚してきた時でも、そんなこと誰1人として記録に残してこなかった。記録がない以上、調べることはできない。今回初めて、【神(代行者)からのクエスト】という形で事実を知らされたのだ。おそらく、お父様ですら知らないことだろう。
「キャナル…。」
わたくしがそんな考えに耽っていると、隣から声が掛けられる。
「キャナル…。」
「はい!にゃんでしょうか?」
いきなりの事でわたくしとしたことが少し噛んでしまった。
「キャナル、お前、この事を知っていたか?確か、召喚されてすぐの説明では、こんなこと一言も言ったなかったよな。」
キョウスケさんは、件のクエストが書かれた紙を指さしながら、わたくしに尋ねてきます。
「いえ、わたくしもこの件については、今日初めて知りました。召喚元の世界での出来事は、何もこちらに情報が来ていませんので。たぶん、国の誰もが知らないことだと思うます。」
「当然そうだろうな。もし知っていたら、あの時しっかりと話してくれていただろうし。
しかし、どうして万単位の人間が死なないといけないんだろう?」
キョウスケさんの問いかけに、5人が黙り込んで考えます。
「思うに、魔力の問題だと思うわ。」
アヤカがこんなことを言いました。
「魔力?ですか。」
「ええ、時空間魔法の空間転移、これを使用しようとすると、飛ぶ距離と重さに比例して魔力を消費するよね。つまり、アホみたいに魔力の消費が激しんだけど。」
「確かにそんなことを、以前にアヤカが言っていたな。それが、今回に件とどう結びつくんだ?」
ヒデヒサさんが尋ねます。確かに、召喚魔法と転移魔法とでは違うような気もするんですが。
「召喚間法と転移魔法。この2つの魔法の仕組みは、実はよく似ているの。転移魔法とは、ここラグナレシアの場所と場所とを繋ぐ魔法よね。召喚魔法は、ラグナレシアと何処か違う異世界とを結ぶ魔法。つまり接続させる場所が違うだけで、やっていることは同じとみる事ができる。
言い方を合えれば、召喚魔法とは、転移魔法の一種であると定義づけできる。」
「…そう言われればそうだな。」
皆アヤカの言う事に納得します。
「召喚魔法を転移魔法と捉えた時、は続させるに一番の問題はやっぱり魔力だと思うの。『世界と世界を繋ぐ』と、言葉でいえば簡単なようにも思えるけれど…。それぞれの世界には壁みたいなもので守られていて、その壁に穴を開けなくてはいけない。
一つキャナルに質問なんだけど、召喚魔法陣を起動させる魔力ってどのくらいなの?」
「魔法陣を起動するための魔力ですか?
それぞれの属性を担当する9人の魔力と、起動者である1人の魔力の計10人分の魔力ですね。1人1人は、宮廷魔術師の中でも魔力量が多い者を選んでいます。1人当たり大体1万程度の魔量を使うと思います。」
「全部で10万か。…やっぱり少ないですね。」
「10万でも少ないんですか?」
わたくしは、アヤカの言葉に愕然とした。
「ええ、私たちが召喚されたクレアレド聖王国を例でとると解りやすいから例にしますね。王都カトレールと港湾都市トンボリまでの間を、私たち5人が空間転移をする際、どれだけの魔力がいるのか解りますか?」
「時空間魔法のレベルにもよると思いますが、この5人が王都カトレールと港湾都市トンボリを転移するなら最低でも1万はいるでしょうね。」
「そう。たったあれだけの距離を、空間転移するだけで最低でも1万いるのよ。世界と世界の間なんて、どれほどの距離があるのかしら。その距離をたったの10万で超えれるほど甘くないわ。」
アヤカが言っていることには納得できるものがあります。
「どういう原理で、召喚魔法が発動するのかはこの際置いておくとして。
私の見解でいけば、こちらで用意された10万の魔力は、ただ世界間のバイパスを作っただけで、実際に召喚するための魔力は、召喚元から引き出されていると仮定すれば、万単位の人間が死ななければいけないことの理由として納得できるわね。
そして、今回は私たちだけども、勇者が召喚される際に吸い取られる魔力?それとも生命力かしら。
まあ、なんでもいいけれど。
とにかくそういう力が少しでも体内?、魂?に残っていた個体だけが、この世界に転生という形で召喚なのかな?その辺はわからないけれど、とにかくこの世界に顕現?できるんじゃないのかな。
これが、私の推測。」
こう言って、アヤカは言葉を締めた。
「アヤカの言っていることが真実だとすれば、召喚元の世界の住民を殺さずに勇者を召喚しようとするならば、こちらでそれだけの魔力をかき集めなくてはいけないという事ですか?」
「理屈上ではそうなるわね。でも、実際問題として、それだけの魔力をこの世界だけで賄うことは困難だと思うわ。それこそ無尽量に魔力を持っていれば話は別だけどね。それとも、1都市丸ごと、いや、人口から考えると、2~3都市くらいの人口を殺す覚悟があるのなら別だけど?たった数人召喚するためだけに、数万の民を殺せる?」
無尽量の魔力を保持している人物なんて、この世界、いや、別の世界を含めてもいるのでしょうか?アヤカの言ったとおり、たったの数人のために、数万のも民を殺すのは、いくら勇者召喚のためとはいえ横暴すぎます。
わたくしは、そんな疑問が頭の中に浮かんだ。
「まあ、そういうわけだから。キョウスケもヒデヒサも、アリサもキャナルも、そして私自身も…。頭の片隅には罪悪感として残しておかなくてはいけないと思うけれど、偶然が生んだ必然な出来事なんだから、あまり気にしてはいけないことだと思うの。それに、こんなことで足を止めることは、死んでいった者たちにしてみればただの死に損だわね。
それよりは、その者たちの分も含めてしっかりと大地を踏みしめていかなければいけないと思うの。それが、私たちが唯一出来る償いではないのかな?と、私自身は愚考してみたわけだけど、どうかな?
私は、これから先、何十年生きるのかは知らないけれど、そう思って生きていくつもり。」
「納得はできないが…。俺自身が、アヤカのように答えを見つけなくてはいけないことだけは理解した。時間はかかると思うが、納得できる答えを探していくつもりだ。」
キョウスケさんが、アヤカの考えに同調するように話しをしました。まだ彼自身の答えは、見つけてはいないようですが。ヒデヒサさんも、アリサさんも、キョウスケさんと同じ様子です。わたくしもですが、時間はかかると思うますが、納得のいく答えを探さしていきたいと思います。
後日、聖剣を手に入れたキョウスケさんは、すっきりとした顔つきになっていました。何があったのかは詳しく聞いていませんが、どうも転生者の1人と偶然出会い、話をしていくうちに納得のいく答えを見つけたみたいです。
わたくしも早く答えを見つけなくてはいけませんね。ウジウジと考え続けるのは、わたくしの性格ではないので…。




