勇者御一行に与えられたクエスト④
俺は今、旧セントレシア大聖堂跡に来ている。ここの広さは約300m四方と言ったところか。思っていたよりも結構広い。隣にある旧王城跡の方がさらに広いのだが。
この遺跡は、中央に聳える大聖堂を中心に、敷地内に居住区跡や宝物殿跡などが点在している。
ここで、俺に与えられたクエストを確認してみる。ここでどんな行動をしなければいけないのかの確認でもあるわけだが。
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【神(代行者)からのクエスト】▽△
《クエスト挑戦者》キョウスケ=アーレル=キサラギ=クレアレド
《クエスト期間》承諾の意思を示してから200日以内
《クエスト内容》カレンドラ大陸にかつて存在した大帝国『ラングレイ帝国』
帝都『セントセレスレシア』にある、『セントレシア大聖堂』の地下に封印されし聖剣『アークザイド』を目覚めさせ、聖剣に主と認めてもらう事
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とりあえずは、こうゆう場所での地下への入り口として定番の、旧大聖堂か旧宝物殿から調べよう。まずは、旧大聖堂から。
大聖堂の中に入ると、間の前には、首から上が取れてしまった何かの神像が祀られている。定番としては、神像付近に地下への階段があるはずだ。
しかし、現地と観光本の情報と照らし合わせてみても、何処にも地下へと続く階段が存在していない。やはり、クエストの文面の『封印されし』と言うのがキーワードなのだろう。こうなると、何処かに封印を解くがぎみたいなものがあるはずだ。
そう思い、もう一度、この大聖堂の見取り図、敷地も含めてしっかりを確認してみた。
今俺は、いったん大聖堂の建物から外に出て、正面玄関前にある噴水広場に来ている。広場の周りに設置されているベンチの1つに腰かけ、クエストの際に貰った地図と、観光ガイドにある地図を見比べる事から始めた。煮詰まったときは、原点に戻ってみるのもまた一興だ。
「ん~~。何か違和感があるんだよな、ここ。なんなんだろう、この違和感は?」
喉の先まで出かかっている違和感が、なかなかと取り出すことができない。普段なら、気にも留めないほどの違和感なんだが、今回だけは見過ごしてはいけない気がしている。
「建物の配置は、大聖堂を中心に大きく六芒星の形に配置されている。なんでわざわざ六芒星になっているんだ?
…魔法の属性か?
それならば、六芒星ではなく、九芒星のはずだ。
…とすれば、建物の配置は、ワザとではあるが、…今回についてはあまり関係のない事だな。
となると、なんだ?この違和感は?」
俺は、もう一度クエストの際に貰った地図と、観光ガイドにある地図を見比べる。そして、この広場をじっくりと観察する。
噴水(今は水は出ていないが)を中心に、同心円を描くように等間隔に設置されている不可思議な石柱のモニュメント。その数9個。それらを結ぶように敷かれた石畳の模様。詳目付けは、広場自体が丸いことだ。
これ、上から見ると、何かの形に似ているような…。
そうだ!召喚魔法陣だ!俺たちがこの世界に召喚されたときに見た、召喚神殿にあった召喚魔法陣とそっくりだ!
召喚魔方陣…。
召喚とは、世界と世界を繋いで転移させる方法と仮定するならば…。召喚魔法陣とは、転移魔法陣の一種だ。そう考えると、この広場自体が、転移魔法陣になるのか?
俺は、そこまで考えを纏めると、広場を徹底的に調べた。見つけ出すものは、この転移魔法陣を起動させるための場所だ。必ず、広場の何処かにあるはずだ。
9個のモニュメントは、確実に魔法の属性を表しているのだから、まずはあれをどうにかして起動させないといけない。しかし、いろいろと弄るには、ここの管理者と掛け合わないといけないだろう。とりあえずは、管理者の許可を得てこよう。
俺は、管理棟へと向かった。
許可は、あっさりと許可が出た。
話を聞くに、あの広場が何かの魔方陣だと言う事は、昔から知られていたことだった。ただし何の魔法陣かもわからず、また、起動方法さえわかっていなかったらしい。俺は、自身が召喚されたときに感じたことを踏まえながら、俺自身の見解を語っていく。話す過程で、俺の出自も少しばかり明かした。
俺が召喚勇者だと言う事。
こちらに渡ってくる時に、どうも万単位の人を殺してしまったこと。
その中の一部が、この世界に転生してきていること。
召喚された宮殿にあった魔法陣と、ここの遺跡の広場の魔法陣の模様が似ていること。
召喚された魔法陣にも、ここと同じように9か所に石柱があったこと。ただ宮殿の石柱と違うところは、石柱の上に各魔法属性の球体がない事。
これらの似通った状況から、ここの広場の魔法陣は何処かへと続く、転移魔法陣ではないかという見解。その際、召喚魔方陣も言い方を変えれば、この世界と何処か違い異世界とを繋ぐ転移魔法陣の一種であると言う見解。
これらを丁寧に話したら、あっさりと許可が下りたというわけだ。
ここでされに驚いたのが、俺と話していたこの人物。実は、この遺跡の管理長であり、さらに名前をサトシ=ミツバヤシという。なんとなく鑑定眼を使ってみたら、次のような結果が出た。
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【名前】サトシ=ミツバヤシ
【種族】犬人族
【年齢】22歳【性別】男【基礎レベル】Lv22
【メイン職業】遺跡管理人【サブ職業】村人
【ギルドランク】《冒険者ギルド》《職人ギルド》《商人ギルド》B
【称号】▽△
異世界転生者
【加護】▽△
世界神の加護・創造神の加護・転生神の加護
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ある可能性に気づき、俺はサトシ=ミツバヤシさんに尋ねた。
「年齢は少し違うが、あなたは俺と同じクラスだった三林聡志君ではないのですか?」
「えっ!キョウスケ=アーレル=キサラギ=クレアレド…。名前は長ったらしくなっているが、お前、如月恭介か?そういえば、同じ面構えだな。引き締まった体つきになっていたもんだから、今まで気が付かなかったぞ!」
そう言って俺とサトシさんは、がっつりを握手を交わした。1発くらいは殴られる覚悟があったが、結果はやけに友好的に接してくる。
「あっ!そうだった。アスカちゃんから伝言があったんだ。」
「アスカちゃんって誰?」
「アスカちゃんは…。ああ、これは口止めされているんだった。俺は、アスカちゃんからNPC的な役割を与えられているからな。
…まあ、誰でもいいだろう。知りたかったら王都に行け。
アスカちゃんからの伝言だが、次の5つだ。
1つ目。私と会ったら、まず初めに殴らせろ。
2つ目。あなたの嫁が行っているクエストは、上ではなく下にある。ここと同様下へと行くための魔法陣を見つけろ。
3つ目。2つ目のことを伝えるために、君のパーティ全員にスキル『念話Lv2』を与えよう。ただし与えるのは、君が聖剣を手に入れてからだ。
4つ目。目の前の人物の正体を見破った君には、新たに1つ隠しクエストが発行されるはずだ。頑張ってクリアーしたまえ。いつ発行するかは、楽しみにしていろ。
5つ目。王都の10人に会いに来るクエストだが、隠しクエストの件があるので、先にダンジョンに行ってきたほうがいいらしい。
だそうだ。」
いろいろと突っ込みを入れたい話だが。とりあえずは目の前の事に集中しよう。俺はそう決めると、再び広場へと戻っていた。今回は、管理している人が数人立ち会っている。
さて、まずは石柱の上に魔法属性の球体を設置しないといけない。確か、召喚魔法陣には、属性の色のついた水晶だったが、あいにくここにはそれがない。代わりと言っては何だが、世界樹の森で回収してきた宝珠を使おうと思う。幸いにも大精霊たちが、それぞれの宝珠を球体に加工したものを5個程度作ってくれていたので、それを使ってみる。
召喚魔法陣を思い出しながら、宝珠をそれぞれの位置にセットしていく。そして、魔法陣を起動する。起動するための言葉は、噴水に刻まれていた。古代ラングレイ語で。俺はそれを読み上げた。
魔法陣が一際明るくから焼いた瞬間、俺と立ちあっていた数人は、何処か別の空間に飛ばされていた。
目の前に広がっているのは、10m四方ほどの真四角な空間で、床・壁・天井ともキチンを成形された真四角な白い石で造られている。そして、地面には透明な刀身を持つ一振りの両手剣が、刀身のほとんどを地面の中に深々と突き刺さっている。地面から覗く透明な刀身が、なんだか幻想的な雰囲気を醸し出していた。地面から出ている柄の部分が、両手で持つサイズだったので、両手剣と思われるだけだが。
これを抜くことが、今回のクエストらしい。
同行していた人たちは、この空間に来てからいろいろと作業をしている。中には、部屋の中央に突き刺さっている剣に近づき、剣を何とか地面から抜こうとしているようだ。しかし、抜くどころか、1ミリも動かすことができないでいる。
俺はそんな剣に近づき、右手で柄を握った。
柄を握った右手から、剣に流れ込んでいく何か。いや、これは俺の魔力を剣が吸い出しているんだろう。
10秒ほど剣に魔力を吸われると、刀身が虹色に輝き始めた。俺は、恐る恐る柄を握る右手に力を入れ、剣を引き抜いた。
するりと抜ける虹色に輝く透明な刀身。刀身の長さは1mほど、剣自体の長さは1.3m程だろうか。
「おお~~~!」
その場にいた者たち全員が、虹色に光る剣を見て感嘆の声を上げた。光はすぐに収まり、透明で透き通る刀身が俺たちの前にある。
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【クエスト完了通知】
セントレシア大聖堂の地下に封印されし聖剣『アークザイド』を目覚めさせ、聖剣に主と認めてもらう事に成功しました
聖剣『アークザイド』を手に入れる事に成功しました
特別報酬であるスキル『念話Lv2』を、パーティメンバー全員に付与しました
聖剣『アークザイド』が刺さっていた場所に、剣のレプリカを構築して出現させますか?(Y/N)
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俺の頭の中に、こんなメッセージが流れた。最後の質問に、俺はもちろんYESを選択する。すると、剣が突き刺さっていた場所に、俺の右手に持つ剣そっくりのモノが出現した。
さて、抜き身の剣をどうやって持ち運ぼうか。俺は、一度やってみたかったことをこの場で実践してみる。まず、空間保管庫の出入口を剣を持っていない左手の手のひらに出す。いろいろと実験をしてきた結果、この空間保管庫はアイテムボックスとは違い、いろいろと自由度が利くスキルであることがわかっている。
俺はその出入口を、左手の手のひらに出したのだ。そしてそのまま、右手に持つ剣先を左手に出した空間保管庫へと格納した。剣は問題なく空間保管庫の中へと消えていく。
剣を格納した俺は一度空間保管庫の出入口を閉じると、今度は足元の空間に出入り口を出し剣と取り出す。すると、足元に開いた黒い空間から剣が柄を上にして出てきた。
実験は成功である。俺は再び、剣を空間保管庫に格納して、その光景をぽかんと見つめている皆に向き直った。
「あのう、なぜキョウスケ引き抜いた剣が、再び地面にあるのですか?」
同行者として一緒に来ていたサトシが代表して質問をする。
「ああ、地面の剣は、レプリカだよ。この部屋もまた遺跡として開放する予定なんだろ?ならば、部屋の主?である聖剣があったほうがいいだろう?本物は俺が貰ってしまったから、代わりにレプリカをもとの位置に突き刺しておいた。レプリカといえども、俺以外は誰も抜くことはできないがな。」
試しにここにいた人全員が剣を引き抜こうと試みたが、誰1人引き抜くことができなかった。
さて、帰り方だが、俺たちがこの部屋に出現した場所には、当然のように?魔法陣が光り輝いていた。
俺たちはそこへ向かった。
広場に出ると、遠くの大地に太陽が沈むところだった。
さてと、聖剣も手に入れたことだし、早速だが新たに手に入れたスキル『念話』で、ほかのみんなとの連絡を取ろうかな。
俺は早速スキルを使った。
そうそう、サトシ君には、ここの魔法陣を起動させるためのキーワードは教えておいた。そうしないと、レプリカのあるあの部屋にはいけないからね。




