勇者御一行に与えられたクエスト③
世界樹の森を出て約1か月、俺たちはいよいよ目的地のあるバーランチア王国に入るところまで歩みを進めていた。今日は国境を越えたの最初の町テラストラで一泊する予定だ。国境を超える列に並び、順番待ちをしている。俺たち5人は、普段は冒険者と言う身分で行動しているので、よほどの事がない限り強権を発動させることはない。並ばなければいけない時は、素直に行列に並ぶのだ。
国境を抜けてテレストラに到着した俺たちは、早速宿屋に入った。
夕食後、俺の部屋に集まった5人は、これからの予定を話し合う。机の上には、いろいろと落書きされた地図が1枚広げられている。
「しかしよかったよ。この町を中心に、クエストの場所が3つも点在しているのだから。」
装だね。さくっと終わらせて、残り2つに向かおうね。」
俺の言葉を引き継いで、アヤカが話す。
そうなのだ。今でこそ国境の町と呼ばれてはいるが、ここテレストラは、古代に栄えた大帝国ラングレイ帝国の帝都セントセレスレシアそのものだったのだ。まあ、当時の面影は、町中や周辺に散らばる遺跡だけになってしまっているが。
この町でできるクエストは、3つ。
1つ目は、俺が受けたクエスト聖剣探し。
2つ目は、アヤカのクエスト聖杖探し。
3つ目は、キャナルの魔道船探しだ。
最初に受けた5つのクエストのうち、唯一場所が特定されていなかった魔道船探し。聞くだけならばタダだと、精霊との宴会の折、大精霊にそれとなく聞いてみたら、こんな答えが返ってきた。
《魔道船『アランカレア=スティール号』?ああ、ラングレイ帝国の空飛ぶ要塞か。それならば、帝都の東約20キロに位置にある離宮がソレだ。今はどんな風になっているのかは知らないがな。》
と、光の大精霊さんが、光の宝珠を齧りながら話してくれた。
アヤカの目的地である地方都市シャラポワーナは、帝都セントセレスレシアの南に隣接していた都市だということが判明している。
俺の目的地は、帝都セントセレスレシアそのものだから、すでに到着しているようなものだ。ただ、ここにある遺跡のうち、どれが『セントレシア大聖堂』の遺跡なのかがわからないだけだ。
遺跡がこの町の観光名所なだけあって、その数が大小合わせて50近くもある。
「とりあえず、一番大変なのがキャナルだな。場所はすでに割れているが、現状どうなっているのか見当もつかない。仮に遺跡だった場合は、そもそも動かしても大丈夫なのかという問題がある。魔道船の大きさがどれくらいなのかは知らないが、当然遺跡だった場合は、その周囲には町か村ができているだろうからな。」
「そうよね。そこが一番の問題かしら。光の大精霊様のお話だと、『空飛ぶ要塞』だという話です。『動かせ』がどこまでを指すのかは知りませんが…」
キャナルがそこまで話した言いよどんだ。
「現地に行かなければわからない問題は、今は横に置いておこう。明日からの予定だが、俺は町の中での作業だから1人でいい。ヒデヒサとアリサは、アヤカかキャナルのどちらかに一緒についていってほしい。」
俺はそう2人に頼む。するとアヤカが、
「私も2人でいいよ。私の目的地は、この町の南門から歩いて1時間ほどの場所だから。少し距離があるキャナルについていってあげて。」
「わかった。」
こうして明日の予定が決まった。
翌日の朝食の後、俺たちは前日決めた通りに3つに分かれて行動を起こした。
俺の目的地は、あっけなく見つかった。遺跡が観光名所になっている町だ。パンフレットみたいなものがあったらいいなと思い、キャナルたちを送り出す前に、門の周りを見渡すと、『観光案内所』と書かれた看板が目に着いた。とりあえずその建物に向かうと、ソレはあった。
本の形に綴じられたそれは、日本にあった観光ガイドブックそのままだった。
見本として置かれていた本をパラパラと捲ると、俺たち3人の目的地が事細かに記されているではないか。巻頭にある見開きの地図には、ここテレストラ周辺の遺跡だけではなく、バーランチア王国内に存在しているラングレイ帝国関連の遺跡の位置まででも記されていた。
観光本の情報では、俺たち5人の目的地はこう書かれていた。
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【遺跡番号1-03】旧セントレシア大聖堂跡
バーランチア王国の国教であったセントレシア教の総本山跡。当時の建造物の約7割が現存。
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【遺跡番号2-01】旧王立魔術学園跡
バーランチア王国が力を入れていた魔術を収めるための学園跡。当時は最大で1000人前後が学んでいたと推測されている。
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【遺跡番号3-01】旧ラングレイ王家離宮跡
王家が有事の際に避難したと思われている離宮の後。現在は建物等は残っておらず、その遺構のみが確認できる。
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【遺跡番号11-03】旧聖域ヒマユルス山(現エリゼレート山)
山の中腹にある朽ち果てた神殿には、大きな盾を持った1体の神像が祀られている。この盾を持った神像は、1000年前に存在した盾の勇者と言う伝承が残っている。
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【遺跡番号11-09】旧アカサノミヤ大迷宮(現カイベルト大迷宮)
カイベルト大迷宮は、カレンドラ大陸最大のダンジョンである。現在確認されている最下層は500階。まだ誰もダンジョンボスがいるフロアには到達していない。
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これを見て俺は一言こう言った。
「やっぱり一番大変そうなのは、アリサのクエストだな。ダンジョンアタックか。ちょっと大変そうだな。やはり一番最後にしてもいいか?そのほうが装備もいろいろとそろいそうだし。」
「それで構わないわよ。このクエストでいろいろと手に入れてくる装備の慣らしにもちょうどよさそうだしね。」
「話もまとまったところで…。」
そう言いながら4人を送り出そうとした時、門前にとあるものが乗り付けてきた。
ソレは、見た目観光バスそのものだった。だが、中から降りてきた人の数は、明らかに多すぎたが。
「ちょっと聞くが。」
俺は門番にそれについて聞いてみる。
「なんだ?」
「あの門の前に乗り付けてきた乗り物は何だ?」
視線でバスを指示しながら聞くと、門番はこう答えた。
「あれは王都と各領主町とを1日1往復している長距離路線バスだ。このほかに、各領主町間を結ぶバスもある。こちらは、1日に数本の運行だ。
王都行きのバスは、ここから10個くらいの町に止まりながら王都まで走っている。この町から次の町までならば2時間程度、王都までなら3日程度で到着するぞ。確か王都までの運賃は、2万レシアくらいだったと思ったが。
あれが走るようになるまでは、隣の町まで行くのに1~2日はかかっていたからな。旅人の話によると、王都ではもっとすごい事になっているらしいぞ。」
「…そうか、ありがとうな。」
なんかこの国では、真っ先に交通革命が起こっているらしい。ここまで旅してきた国では、あんなモノは走っていなかった。さらによくよく見てみると、門前広場で開かれている市場には、明らかにトラックと思われる物体が数台止まっている。
俺たちは少し唖然としてその光景を見ていた。
「バスについては、王都に行けばいろいろとわかるだろう。とりあえずは、昨日決めた予定を消化しよう。」
俺はそういうと、バスの事はとりあえず頭の片隅に追いやり、予定通りの行動をすることに決めた。
ほかのメンバーも、俺と同じことを考えていたのか、素直に従ってそれぞれの目的地へと散っていった。
さてと、まずは、旧セントレシア大聖堂跡へとまいりましょうか。
俺は、ガイド本片手に、旧セントレシア大聖堂跡へ向けて歩き出した。




