自立走行型魔道馬車という乗り物
【自立走行型魔道馬車】について少し語ろう。私が作り出したこの乗り物は、この世界では画期的な乗り物だ。私にとってしてみれば、元地球にあった自動車を真似て作っただけのバッタモンというイメージなんだが、この世界の人々にとっては違うようだ。
形状は、地球にある自動車そのもの。大きさも用途の応じて各種取り揃えてある。
セダン型以外の中・大型車種には、時空間魔法を駆使して車内の容積を拡大し、窓の数だけ部屋(部屋の規格は統一。室内の調度品等はオプション)があるという、ぶっちゃけていえば、家がそのまま移動しているみたいなもの。風呂・トイレ・キッチン完備。給水と排水、各部屋の照明はすべて専用の魔道具。
一応タイヤはついているが、使用するのは町中などでの低速走行の時だけで、高速走行時には、地面から10㎝ほど浮上して走行。最高時速200㎞/h。
燃料及び潤滑油などのオイルは自然界に漂っている魔力(よって給油などの問題はなし)。
最初の起動時だけ運転者の魔力を消費するが(生活魔法の着火程度の魔力)、そのあとは自然界にある魔力を取り込むため、乗員乗客の魔力は一切使用しない。また、一度始動をすると、エンジンを止めるまでオートで防護結界を作動させるため、魔物や盗賊の襲撃に遭う心配もなし。障害物に衝突した際は、防護結界の効果で障害物が破砕・消滅するため、街中での運転は特に注意が必要。
自走式なため、馬で曳くといったことがないので御者台はなく、代わりに前面に運転席があります。この車を運転するために『車両運転者』というスキルが必要になる(スキル習得には、1か月ほどの訓練が必要)。
私は、空間保管庫にそのまま格納しているが、オプション部品を取り付けることによってカード化することが可能。
とまあ、こんな感じの自動車の形をしているが、中身は全くの別物と言った物体が、現在、バルモアス城の内宮にある、近衛騎士団の鍛錬場にずらりと並んでいたりする。
その数は全部で10台。
1車種目は、普通車セダン型。
軽自動車タイプと普通車(カ◯ーラサイズ)の2種類。こちらは、一般庶民の間地の利を意識している。発売価格は、車体価格のみで100万レシア~150万レシアを予定している。
2車種目は、高級車セダン型。
あえてリムジン使用の一種類のみ。どうせこのクルマを購入するものは、貴族が王族、大商人くらいなものだろうから。発売価格は、車体価格のみで500万レシアを予定している。
3車種目は、1BOX型。
少人数(5~10人)用に作られた長距離移動用。発売価格は、車体価格のみで300万レシアを予定している。
4車種目は、マイクロバス型。
中人数(8~20人)用に作られた長距離移動用。
発売価格は、車体価格のみで1000万レシアを予定している。
なおこのタイプには、冒険者パーティ用として、部屋数を減らし、その代わりに討伐した魔物などを入れておく保管庫があるタイプもある。
5車種目は、大型観光バス型。
多人数数用に作られた長距離移動用で、形はハイデッカー型の高速バスの形をしている。主に貴族や王族が使う15~50人タイプのモノと、軍隊移動用に、100人前後が乗車できるタイプの2種類がある。
発売価格は、車体価格のみで2000万レシア~3000万レシアを予定している。
6車種目は、トラック型。
使用用途に応じて軽トラサイズから10トンサイズ,果ては全長30m級の超大型トレーラーサイズまである。荷台部分は、使用用途に応じていろいろなタイプが存在する。現在ここに並んでいるのは、超大型トレーラーサイズの1台のみだが、タイプはいろいろあると説明だけはしている。
発売価格は、車体価格のみで100万レシア~5000万レシアを予定している。
最後に戦車型。
4トン~10トントラック型を改造した、全方位射出型広範囲殲滅兵器。兵装については要相談。
現在見本としてここにあるものは、私がノリで作り上げたワンオフモノ。10トントラックサイズの大きさで、旋回範囲が360度、仰角が0~60度回転する砲台に取り付けられている主砲。撃ち出せるのは、光・闇・風・水・火・地の属性魔力弾。所謂『◯◯ボール』と呼ばれている魔法系統だ。副砲として、固定砲台が全方位に20か所取り付けられており、こちらからは、『◯◯カッター』と呼ばれている魔法系統を撃ち出すことができる。普段はウイング車のような形の防護壁に囲まれているため、見た目はただの10トントラックだ。
発売価格は、車体価格のみで50億~100億レシアを予定している。
あとは、戦車型以外には、数々のオプション部品が多数存在しており、それらを組み合わせていくと値段はそれだけ上昇するがワンオフ車みたいな感じにできるのが特徴となっている。
そんな話を、実際に自立走行型魔道馬車をずらりと並べてから、国王様たちに説明した。遠巻きにこちらの様子をうかがっていた貴族たちにも、国王様の許しを得て自立走行型魔道馬車の周りに集まっている。
さてさて、この商談会?は、成功するだろうか。
結果は、街乗り用として高級セダン型が、長距離移動用としてマイクロバスがそれぞれ1台ずつ、ここに集まっていたすべての貴族に売れた。生産を単純化するため、リムジンについては、色は黒塗りで統一。サイドにそれぞれの家のエンブレムを入れることで同意してもらっている。内装については、こちらで制作する場合は、標準仕様以外はすべてオプション扱いとし、貴族側で製作する場合は、それぞれの実情に応じて相談に乗った。マイクロバスについては、ここに展示してあるものそのままの仕様(オプション品含む)で統一することにより、生産効率を上げることで価格を少し割り引いた。
王家が購入したのは、リムジンが1台。マイクロバスが国王と王妃、エリザベス様の専用車として1台ずつ。大型バスが、王族移動用として1台、騎士団と軍隊移動用として50台。武器や軍馬などの移動用として、荷台の形状が違う10トン車タイプが20台と、全長30m級の超大型トレーラーを10台購入してくれた。戦車については、今回は見送ったみたいだ。値段がいきなり3桁ほど上がるからね。
納車については、王家を最優先とし、あとは、爵位順とさせてもらった。王家が発注した自立走行型魔道馬車だけで、すべて納車するのに半年ほどかかる計算だ。まあ、まとめて部品を作って組み立てていくから、実際は、作る車種に応じて納期が変わってくるのだが。
そのことを国王様に話して協議した結果、街乗り用のリムジンについては最後に回すことになった。あとは、その時の都合に応じて、こちらが勝手に納期を決めることになった。まあ、いろいろなスキルを駆使してなるべく早く納車をするようにはするがね。
なんともまあ、適当な納期だが、この決定には、貴族たちも従うしかなかった。仮に、私に製作を強要した場合は、暴力という名の説得をした後に、注文を取り消すと契約書に書かれているためだ。購入金の支払いは納車時でいいのだが、支払いを渋った場合は、その場で契約破棄とみなし二度と自立走行型魔道馬車を購入することができなくなる契約だ。
家に帰った私は、早速自立走行型魔道馬車を量産するための施設を、自宅の工房の隣に建てた。外面の大きさでいえば小さな倉庫なのだが、中に入れば時空間魔法で作った広大な空間に、職人の王者や錬金術など、私の持つ技術を余すことなく使用して作り上げた、すべての生産ラインが1つに纏まった巨大な工場が出現していた。スキルを駆使しても、工場が完成するのに2か月ほどかかってしまった。
この工場のすごいところは、すべての作業がフルオートで行われているところだ。私が行う作業は、図面を引くだけである。3DCADのようなもので、図面というか3Dでモデリングすれば、あとは勝手に向上がそのデータに沿ったものを作ってくれる。今回は自動車工場だけを作ったが、将来的には工業製品はすべてこちらに移し、大規模生産をしようと思っている。まあ、モノだけあっても使える人やソフト面が整っていなければただのゴミなので、当分先に話になるだろうが。
今回は1からモデリングを行うため、雛形のモデリングを制作するのにずいぶんと時間をとられてしまった。しかし、これさえ作ってしまえば、あとは雛形にオプション品を付け加えていくだけの簡単な作業になる。そのオプション品さえ、ある程度は雛形にすることができるので、時間が経つほどモデリングのスピードは上がっていくだろう。
雛形となるモデリングデータを制作するのに約5日、そこから要望に応じてカスタムするのに、1台当たり約1日かかる。その後、生産ラインに乗せて、完成車が出来上がるのに10~20日ほどかかる。材料が足りなければ、さらに時間がかかるのだが、私の空間保管庫の中に無駄に死蔵されている鉱石や魔物の素材などが有効的に使用された。体のいい在庫処分ともいえる。
こうして、半月ほどで、最初の1台目が納車された。
最初の1台目は、練習用のクルマだ。今は1台だけだが、練習者は、10台前後作ろうと思っている。これは、生産ラインの確認を兼ねての事だ。
この半月間に、王様に頼んで、王都の郊外に練習用のコースを作ってもらっている。
そもそも運転する人間を養成しないとただの鉄の箱なのだから。スキルを付与してやっても構わないのだが、時間もたっぷりとあることだし、ここは、修練でスキルを覚えていってもらいたいと思っている。教官はもちろん、王都までマイクロバスを運転してきたあの騎士さんたちだ。
将来的には一般市民も開放する予定なので、私が一々スキルを付与していると面倒くさいという理由もある。
10本用意した生産ラインがフルで活躍し、さらに半月後一気に10台のクルマが納車された。最初に納車されたのは、王城が発注した100人乗りの大型バスだ。まずは、騎士団・軍隊の移動の足を作ったわけだ。10台あれば1000人の軽歩兵を運ぶことが可能だ。騎兵や重歩兵については、馬や武具・武器等を運ぶためのトラックを作らなければいけないので、とりあえず後回しになっている。早速バスに乗り込んで、国境付近の砦まで運ばれていった。これで長々と行軍する必要がなくなるため、迅速に兵士の交代が可能になったのだ。
次は、10本の生産ラインを、1本ずつ違う製品に振り分けて生産する。大型バスに1本、マイクロバスに1本という感じにだ。これで、次からは、各車種1台づつ納車できる態勢を整えた。
生産ラインを分けてから1月後、生産スピードの上がり、現在は5日に1台のペースで生産することができる。そうした中で、王家が使用する大型バス・マイクロバス・リムジンが王城に納車された。




