この国の王女様を助けました。
ある日、王都バルモアスから、馬車で東に2日ほど行った場所にある町からの戻る道中での出来事。この町には、ギルドで受けたとある依頼できただけで、これといった意味は…ナイ。
いつもは特殊空間転移を使ってサクッと王都にある自宅へと戻るのだが、今日は気分がすぐれているのか、ハイキング気分でゆっくりと戻ることにした。
今日は私1人で、後のメンバーはと言うと…。
つい先日2人そろってSランクになったミヤビとマツリは、2人そろって別口の依頼を受けている。依頼内容は、王都バルモアスの港から、船で片道3日ほど離れた場所にある島までの往復の護衛依頼だ。
ナオミは、自宅の近所に新たに造った楽器工場で、ピアノ制作に励んでいたりする。ナオミが作ったピアノが、貴族連中に好評で生産が追い付いていないらしい。ピアノ制作がひと段落したら、今度はパイプオルガンを作ってみたいといっていた。
私たち4人は、こうして各々別々の活動をしている。
|閑話休題(はなしをもどしますよ~~)
海岸線に沿って作られた街道を、暖かく湿った海風を受けながら歩いていると、進行方向上で豪華な馬車を襲っている一団に遭遇した。
「また、テンプレ的な展開だね~。あの馬車に乗っているのは、いったい誰なのかね~。」
などと、のんきなことを呟きながら、私は襲われている馬車を暫く観察する。
馬車を襲っていたのは、全身黒づくめのいかにも悪者といった風貌をした男だか女だか解らない集団30人ほど。黒い布で覆面までしているから悪人決定だね。
対して、馬車側の護衛は、なんか立派な装飾が施された全身鎧を身にまとった10人ほどの騎士。
馬車を曳いていた馬はすべて殺され、馬車の車輪も4つとも破壊されて動かす事ができない状態だ。馬車には、数十本にも及ぶ矢が刺さっており、その中の数本が火矢だったらしく、そこから火がついて燃え始めている。
さすがに火のついた馬車には乗せていられないと、護衛対象の女の子が、数人の騎士に囲まれて戦線を離脱しようとしている。しかし、襲撃者側は、女の子に向けて殺傷力の高い魔法を浴びせていた。そのため、護衛に騎士が1人2人と倒されていっている。
(このままでは時間の問題だね。女の子側に助太刀を使用かな。)
何気に女の子のステータスを、『能力一覧表示改変』スキルを使って覗いてみた。
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【名前】エリザベス=カトレシア=セルア=バーランチア(愛称エリザ)
【種族】人間族
【年齢】12歳【性別】女【基礎レベル】Lv10
【メイン職業】王族【サブ職業】魔法使い
【ギルドランク】《冒険者ギルド》《職人ギルド》《商人ギルド》
【称号】▽△
バーランチア王国第1王女(王位継承権第1位)
【加護】▽△
【基礎ステータス】▽△
【所持スキル】▽△
【フレンド表示(公開するステータス)】▽△
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この国の王女様であった。それも、王位継承権第1位である。もう少しこの子の事を詳しく知りたいと思うが、そんな時間もないみたいだ。後で本人から確認しようか。
そこまで考えを纏めると私は、王女様を守る騎士に、私が持っているとある二つ名を名乗りながら声をかけた。
「殲滅幼姫ことアスカ=ラングレイ=ヨシオカ。義により助太刀致す。」
「殲滅幼姫だと!か、かたじけない!」
女の子を守る騎士に1人が、私の名乗りに答えたので、そのまま無詠唱で風の殲滅魔法を発動する。私が右手を軽く横薙ぎに振るっただけで、黒づくめの集団だけが、数人を残して小さな竜巻に煽られて地面から空中に巻き上げられた。数十にも及ぶ竜巻が1つに纏まると、白かった渦が真っ赤に染まっていく。
その光景を横目に見ながら、残った数人の行動を奪うために、手足の靱帯を風魔法で切断しておくことにする。顔を覆う覆面は、しっかりと切り刻んでおいた。一応、自殺などと言うバカげたことをしないように、襲撃者たちのスキルを弄って対策を打っておく。
「こいつら、どうします?」
自分たちが苦労していた相手を瞬殺されたため、唖然と見守るしかなかった騎士さんに私は声をかけた。
「…助太刀感謝する。こいつらは、依頼人を吐いてもらいたいところだが、ここではそれをする道具がないからな。どうすることもできん。」
「拷問を加えるんですか?何ならそれも私がしましょうか?」
「道具はあるのか?」
「道具というよりは、拷問専用の魔法ですね。例えば、こうゆうモノです。」
そういうと私は、地面に転がっている襲撃者全員を無造作に魔法で持ち上げると、その場に直立不動にさせた。
「これから、そちらの女の子にはお見せできないことをしますので…。出来るならば…。」
この国の王女様だとはすでに知ってはいるが、まだ名乗りあっていないことなので、ここは知らないふりをする。
「確かにそうですな。これは失礼を。エリザ様には、お見せすることもないでしょう。」
騎士の中の隊長さん?らしき人が、そう言って視線で部下に合図を送った。王女様をこの場から立ち退かせようとした時、王女様がその行動を制しこう言った。
「わたくしはかまいません。いつかは、このような場面に立ち会わなければいけない立場です。それが、早いか遅いかの違いでしかありません。慣れることが必要ならば、早いうちに慣れておいたほうがいいでしょう。」
「そちらの方は?」
私は、ワザとらしく王女様の事を聞いてみた。
「これは、助けていただいた方に対して、失礼なことをいたしました。わたくしは、この国の第1王女エリザベス=カトレシア=セルア=バーランチアといいます。
殲滅幼姫さま。改めて、助けていただきありがとうございました。」
王女様は、深く腰を折って私にこう言った。
「そんな轟々しい二つ名で呼ばなくてもいいですよ。私のことは、アスカと呼んでいただいて結構です、エリザベスさま。
しかし、本当にいいのですか?これから私がやろうとしている拷問は、たぶんエリザベス様の考えている拷問よりも数段上の拷問ですよ?」
私は改めてエリザベス王女に尋ねた。
「先ほども言いましたが、これがわたくしの定めでございます。どうぞお続けください。なぜわたくしが襲われることのなったのか、詳しく聞きたいと思っていました。」
「…解りました。そこまで言うならば、どうぞご覧ください。ただし、気分などがすぐれなくなったら、すぐにこの場から立ち退いてください。」
「わかりました。」
「では。」
そこまで確認すると私は、直立不動にしている襲撃者の1人に拷問を加えた。
生き残っている襲撃者は全部で7人。内訳は、男が5人に女が2人だ。
1人づつ違う拷問を加えていき、その間他の襲撃者たちは、仲間に加えられている拷問を目を逸らすことも瞼を閉じることもできずにひたすら見せられている。
もちろん、死ぬ1歩直前まで拷問を加えた後、治癒魔法をかけて拷問見学に加える。治癒魔法をかけることも拷問に一環とする。普通ならば、治癒する段階の痛みなどは一切ないのだが、拷問用にアレンジされた治癒魔法は、激痛を伴いながら治癒していくのだ。
これを、こちらが求める情報を得るまでひたすら続けていく。嘘など言ったところで、私の持つスキル『裁定者』がすぐに見破ってしまうため無駄だ。こうして5巡ほど繰り返し、空が黄昏時に赤く染まる頃、依頼した犯人が分かった。
襲撃者たちは、誰1人としてまともな服を着ることなく全裸で地面に倒れている。倒れているというか、私が作りだした闇魔法の拘束具をつけられて地面に転がしてあるのだが。
「やはり、あの方々たちでしたか。今回に事を仕組んだのは。しかし、どうやって王にご報告しましょうか?エリザ様がご存命だと知れば、また襲撃してきますぞ。」
「それよりも、どうやって城へ帰るかです。こいつらのせいで、馬車は使い物にならない状態にまで破壊されてしまいました。ここから王都…いや、最寄りの町まで歩きだと半日はかかります。すでに日も落ちかけています。今日はここで野宿としても、すべての物資は、馬車とともに灰になってしまいました。」
少し暗くなっている会話に、私は口をはさみました。すでに何やら、きな臭い事に巻き込まれている感じです。ここまで来たら、骨までしゃぶりつくしてしまいましょう。
「エリザベス様。王都までの足を、私が作りましょうか?」
「アスカ様は、ここまで歩きではないのですか?そんな身軽な格好で、どうやって足をおつくりになられるのですか?」
王女様が疑問を投げかけてきます。私はそれににっこりと笑顔で答えると、空間保管庫の中からとあるものを出しました。
「あのう?これは何ですか?」
「こちらの世界では見ないモノですね。これは『クルマ』という乗り物です。言い換えて言うと、『自立走行型魔道馬車』とでもいいましょうか。その名の通り、馬などに曳かれて動かすのではなく、これ自体が自立して走行します。まあ、動かすには、御者の代わりに運転手が必要ですがね。」
そう言って王女様たちの前に出した乗り物は、マイクロバスの形を模した乗り物だった。




