勇者パーティのほのぼの旅日記②
どこまでも続く草原。右を見れば、広大な海原が何処までも続く街道を、俺たち5人は、馬車に揺られながら進んでいる。
現在俺たちが旅している街道は、『大陸南部大回廊』と呼ばれており、カレンドラ大陸南部を横断して、クレアレド聖王国王都カトレールからバーランチア王国王都バルモアスを経て、さらに東の大国ジャポニシア神王国神都タカマノハラまでを結ぶ、異世界版シルクロードだ。大陸の中でも重要な街道なため、しっかりと整備がされており、はるか先まで石畳が続いている。
俺たちが購入した馬車は、2頭立ての幌馬車だ。大きさは大体1BOXくらいの大きさである。
馬車には、大きく分けて3種類が存在している。
1つ目は、平馬車と呼ばれているもので、所謂屋根のない馬車だ。大きさはまちまちアレド、一番安い馬車である。2つ目は、俺たちが購入した幌馬車だ。基本は、平馬車に雨風が凌げるように枠を組んで幌を被せた造りだ。値段はピンキリだが、俺たちが購入したものは、幌馬車の中でも最も高いグレードの馬車だ。魔道具との組み合わせで、多少の凹凸ならば衝撃を吸収する優れものである。高い買い物だったが、快適な旅空間には代えられなかった。
3つ目は、箱馬車で、こちらは、王族や貴族、大商人専用のような馬車だ。キャナルがいるのでこれでもよかったのだが、予約注文のため納車に2か月ほどかかるとのことで諦めた。あまり目立ちたくないとの思いもある。
馬車の話はここまでにしておいて。
トンボりを出てから2日。5つほどの町や村を超えて、景色が草原と海原から、鬱蒼と茂った森へと変わり始めていた。キャナル曰く、現在地は、フラン王国にある貴族領のうちの1つを超えたあたりだそうだ。あと4つほど貴族領を超えれば、フラン王国の王都パリティリアに到着するとのこと。
森に入って約1時間。俺たちの馬車を止めるように倒された大木。そして、周りを囲むように30人ほどの薄汚れた格好をした人族集団、ぶっちゃけて言えば盗賊団がいる。俺たちと盗賊団とは、10mほどの距離が離れているが、悪臭が漂ってきており少し不愉快になっている。
「お前ら。女と身包み全部置いて行け!やローは、殺すだけにとどめといてやるからよ!」
ゲラゲラ汚い笑いを振りまきながら、盗賊たちが俺たちを挑発する。
リアル盗賊って、初めての遭遇だけども、いろいろとやばいね。
「…ところで、キャナルにアヤカ、ヒデヒサにアリサ。」
「何?キョウスケ。」
「何でしょうか?キョウスケ様。」
「何だ?」
「何かしら?キョウスケ。」
「俺たちでこいつら。殺せると思うか?魔物は大丈夫だったが、人間となると、…殺せないかもしれない。でも一種の洗礼みたいなものだから、やるしかないんだが。」
「…そうね。やるしかないんだろうね。」
俺の問いかけじみた呟きに、最初に答えたのはアヤカだった。
「…やらなければやられるだけので。キョウスケ様とヒデヒサ様はまだ男なので、殺されるだけで済みますが、女の私たちは、強姦された後に殺されるので、そんな事にはなりたくないですね。」
キャナルは、これから起こるだろう嫌なことを口にしながら、そうならないように覚悟を決める。
「それは嫌だね。」
アリサは、キャナルの意見に同意して覚悟を決めた。
「やっぱりそうなるか…。嫁たちがそうなるのは嫌だな。」
ヒデヒサも覚悟を決めた。
「俺たちの洗礼のために、ここで皆殺しにするぞ!」
もともと覚悟を決めている俺は、剣を抜いて皆に発破をかけるように宣言する。
「氷結拘束!」
まず初めにアヤカが、盗賊の足元の水分を凍らせて地面に固定した。
それからは、ただの虐殺だった。頭目と思われし1人を除いて、その場で胴体から首を切り落とす。切り落とした首は、代表して俺の空間保管庫に放り込んでおく。次の町のギルドで換金するためだ。
いくら盗賊とはいえ、人を殺すのはやっぱり気分がすぐれないな。だが、この通過儀礼は乗り越えないと、この世界で暮らしていくことはできない。
「お前たちのアジトに案内してもらおうか。貴様に拒否権はないぞ。」
真っ青になっている頭目に、剣と突き立ててアジトに案内させる。アジトには、これまで奪ってきたであろう金銀財宝が、山のように積まれていた。俺は、その場で頭目を殺すと、頭目の首とそれらを空間保管庫に放り込む。
戻ってみれば、全員憔悴しきっており、魂が何処かに旅立ってしまっていた。
(俺も同じ顔してるんだろうな。)
そんな事を思いながら、アヤカとキャナルの間に座る。虚ろな目で間に座った俺を見ると、2人は、俺の肩に頭を預けてきた。
その日は、殺戮現場から3時間ほど馬車で走り、森を突っ切ったところにある町で宿をとった。
翌日、気持ちを無理やりにでも切り替えてギルドに行くと、盗賊の首はいい値段で売れた。全員首だけとなっていたが、ギルドの職員は、そのまま首を町の郊外にある晒台に固定していった。どうもこの盗賊団は、この森を中心に暴れていた賞金首だったらしい。盗賊団全員に、大なり小なり賞金が懸けられており、総額1000万レシアにもなった。
町の人たちには、とても感謝された。町の人たちの笑顔を見ているうちに、鬱憤した気持ちが晴れていくのが感じ取れた。
盗賊団がため込んでいた金銀財宝は、すべて討伐した俺たちの総取りとなった。
これだけでも一財産ある。
元の持ち主が現れたら返却する予定であるが、どうせ皆殺しにされてこの世にはすでにいないだろう。
その後の旅は何事もなく進み、フラン王国の王都パリティリアには、盗賊を惨殺してから10日後に到着した。その間にもサナ盗賊団や魔物の群れを惨殺していき、…気づけば武器や防具はボロボロだった。しっかりと手入れしていたのにもかかわらずだ。
「新しい武器を手に入れようと思う。」
宿の部屋につくなり、俺はこう宣言した。
「武器?」
アヤカが、不思議そうな顔で訪ねてくる。
「ああ、今までの戦闘で、アヤカはともかく、俺やヒデヒサが使っている武器はボロボロだからな。ついでにここで、武器や防具のグレードを上げたいと思っている。
ついでに全員のギルドランクも上げてしまおう。ここにはギルドのダンジョンもあるから、サクッと上げれると思う。」
こうして、ギルドランクアップのため、しばらく王都パリティリアにとどまることにした俺たち。現在Dランクの俺たちが、この町を出たのは約2か月後。ギルドランクもBランクに上がった時だった。
その間、当然と言えば当然だが、キャナルの身分がしっかりとばれてしまい、王城に招待されてしまった。そして、俺たちのことも。『城内に部屋を用意する』と国王に言われたが、『身分を隠して、冒険者として町にとどまる』と、しっかりとお断りをした。
王都パリティリアと出て約半年。いくつかの国を通過して、俺たちは最初の目的地のある国ライマール王国に足を踏み入れた。ここまでの旅で、俺たちのギルドランクも、Sランクになり、あと1つで最高ランクに上がることとなる。
王都バルモアスまでは、国境から馬車でも約3か月かかるらしい。なんせ、ここカレンドラ大陸において、クレアレド聖王国の北にあるソビエル帝国に次いで、広大な国土を有する国なのだから。
そして、今までの旅で調べた限り、王都バルモアスに、俺たちが探している『風雲の魔導鍛冶師』と呼ばれる人物が生活しているのだ。1,000年以上生きている化け物だとか、いろいろな噂が絶えない人物だが、…俺の直感では、知り合いのような気がしてならない。それも、かなり親しい関係の。
まあ、会えばわかるだろう。
『風雲の魔導鍛冶師』という二つ名しか分からなかったため、探し出すのに骨が折れそうだが。




