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勇者召喚に巻き込まれて異世界転生します  作者: ai-emu
【第3章】勇者な人々の勇者な生活
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勇者な人々の修行日記

広い闘技場の中央で、刃引きされた鉄剣を手に対峙する俺と騎士団団長。

キリリとした空気の中、俺は団長に向かって剣を振りかざした。斬撃が重なり合う音が十数度続いた後、俺が持っている剣が天高く打ち上げられる。武器がなくなった俺は、それでも団長に向かって鉄拳を繰り出すが、軽くいなされ地面に仰向けに倒される。その後、団長の剣が俺の首筋に当てれ、…降参した。

「参りました。やっぱお強いですね。まだ一度も勝てない。」

「いや、キョウスケ殿もさすがは勇者と言ったところですよ。剣も碌に持てなかったヒヨッコガ、たかが半年足らずで、私と打ち合えるだけの実力がついているのですから。」

「いや、まだまだですよ。1人でやる場合、小型種のゴブリンやコボルト程度ならば無傷で勝てますが、中型種のオークやオーガになると、まだ勝率が5割を切っていますからね。大型種になると、1人では倒せません。せめてオークやオーガ程度これくらいは1人で倒せれるようにならないと、『剣の勇者』を名乗ることはできません。

あ~あ。こんなことならば、腐れ縁のダチから格闘術を、まじめに学んでおくべきだったな。」


俺たちが、異世界ラグナレシアに召喚されてから約半年。俺たちと言ったのは、俺のほかに同時にあと3人『勇者』として召喚されたからだ。俺が持つ勇者の肩書は『剣の勇者』。つまり、剣を握れば向かうところ敵なしが俺なわけだが、…現実は世知辛いものだ。

一応、剣を振り回すことができる。だけど、それだけだった。地球にいたころも、剣術はおろか剣道すらまともに嗜んでいなかった俺が、刃のついた剣をまともに振れるわけがなかった。それではいけないと、俺は、俺たちが今いるクレアレド聖王国の騎士団団長であるダニエル=マッキーントッシュさんに頭を下げて、剣術の師匠になってもらったのだ。

師弟関係になってから半年の間、俺は、ダニエルさんの指示に従ってめきめきと腕を上げた。今では、ダニエルさん以外では全戦全勝している。

ちなみにあと3人。

『盾の勇者』ことヒデヒサは、騎士団副団長のもとで盾役としての腕を磨いている。

盾役は、絶対防御のかなめである。後衛に、敵の攻撃を通してはならないため、ひたすら後衛役の人形を守るという訓練を最初の2か月間やっていた。半年後の今では、威圧1つで、騎士団の下のほうならば震え上がらせるほどの成長。威圧と挑発のコンビネーションで、ゴブリン程度ならば自由にあしらえるほどの成長している。

『魔術の勇者』ことアヤカの師匠は、この国の宮廷魔術師の方々だ。

魔術のことはあまり詳しくは知らないが、どうもこの世界の魔術は、しっかりとしたイメージさえあれば、後は必要とする魔力を与えてやれば詠唱しなくても発動するみたいだ。試しに、普段使っている練習用の剣に光属性を付与してみたらあっけなく属性剣にすることができた。

しかし、発動したのは数秒ほど。付与していた剣が、突然根元から崩れてしまった。どうも、元となった剣の素材や強度と言ったものが、付与した魔力に耐えられなかったようだ。それは、武具に対しても同じことだった。そのため、今現在では、属性剣にする行為自体封印している。耐えられる武器や武具を手に入れた後にでも、再度挑戦してみることにする。

どうも、『風雲の魔導鍛冶師』なる二つ名を持つ鍛冶師か、その弟子が打った武器や武具ならば、付与する魔力に耐えられるとのこと。この人物に関しては、その容姿が一切謎で、男か女かもわからない。一説には、千年以上生きているハイエルフの1人と言う話だ。

世界を旅する時にでもついでに探してみようと思っている。そして、俺たち専用の武器を打ってもらおうと思う。

最後の1人、『慈愛の勇者』ことアリサは、その力の性質上神殿での修行だ。半年間、神殿で治癒魔術を極めたアリサは、今では立派な聖女様として、この国の神殿のトップの座を手に入れてしまっている。


さらに半年後。

俺は、ダニエルさんとの勝負の勝率が5割に達し、ヒデヒサは完全に戦場での流れを支配するまでに成長した。アヤカの魔術の腕は、この世界で5本の指に入るまでになっており、聖女様のアリサは、どんな重篤な傷や病を負っても、瞬時に直してしまうほどの腕になった。もちろん、毒や石化と言った異常状態も瞬時に解除してしまう。

4人でならば、魔物最強のドラゴン種でさえ何とか討伐できるほどの腕になっている。

まあ、そんな話はさておき。

現在俺たち4人は、この王城で暮らし始めてから初めて入る謁見の間に呼び出されていた。

何故かって?

それは数日後に、俺たちはここを旅立つからだ。半年ほど前に加入した冒険者ギルドのランクがDランクになったため、自力でも何とか生活できる体制になったとのことだ。これからは、俺たち4人は、大陸を放浪しギルドランクを上げながら実力をつけていく段階に入ったのだ。次にこのお城に入城するのは、最高ランクであるSSランクになった時と、4人で決めそう王様に伝えた。

「お父様、発言をお許しください。」

王様との話も終盤に差し掛かったころ、キャナル王女がこう話しに割り込んできた。

「なんじゃ?キャナル。」

「わたくしを、キョウスケ様のパーティに加えてください。」

「…とりあえず、理由を聞いておこうか。話はそれからだ。」

王様が、なぜなのかを問いただした。」

「僭越ながら、キョウスケ様一行は、この世界のことをまだよく理解されておりません。この国は大陸の西の端。ここから東へと巡りながら大陸を横断していく予定ですが。とりあえずはキョウスケ様。」

「何でしょうか、王女。」

「隣の国について、どのような情報をお持ちでしょうか?また、国境を超える際、どのような手続きが必要か、ご存知でしょうか?」

「隣の国ですか?」

俺は、王女の言葉に少し考え込んだ。『隣の国』と言っても、この国は5つの国と接している。北から、ソビエル帝国・ナイジェルカ王国・ミネソタ帝国・フラン王国・イタス連邦。そのうち、国境が不安定なのは、セントワーラント川を挟んだソビエル帝国とナイジェルカ王国。ミネソタ帝国・フラン王国・イタス連邦は、平和条約があるため交易が盛ん。

と、この大陸の地理や歴史を勉強している時に、キャナル王女から教えてもらっていた。が、国境を超える方法は、まだ教わっていない。

「いいえ。この国と接している五か国については、教えてもらっていますが、それ以外の国家となると、ある程度のことしか知りませんね。

それから、国境を超える方法についてはまだ知りません。ある程度の予測はついていますが、…私たちが持っている金銭で足りるかどうかは知りません。何か特別な手続きがあるんでしょうか?

こちらから質問ですが。王女様は、何か得意としている武器はありますか?たぶんと言うか、絶対ですが、私たちの旅は、危険と隣り合わせになると思います。最低限、自分の安全は、自分で何とかしていかなくてはいけません。王女様は、それが可能なほどの武力を持っていますか?」

俺はこう答え逆に、俺たちの旅に同行するならば、最低限の条件を出した。王様も、俺の意見には賛成なのか、何も口を挟んでこない。

「わたくしをキョウスケ様のパーティメンバーに加えてくだされば、国家間のそういう面倒なやり取りは、すべてわたくしに丸投げしてくださって結構です。クレアレド聖王国第3王女という肩書は、伊達ではありません。

わたくしの戦力ですが、細剣術と短剣術、投擲術がLv4、弓術がLv6まで鍛えてあります。また風・水・火・地の4属性魔法はLv4まで上げてあります。…あと、アイテムボックスを使えるようになりましたので荷物の心配もありません。

また、皆様には話していませんが、キョウスケ様がこの国にいらしてから、わたくしは冒険者ギルドに加盟いたしました。公務の傍らでコツコツと依頼をこなして、現在はキョウスケ様たちと同じDランクになっています。」

「…解ったよ。みんなもいいか?」

「姫様の頑張りに免じて…私は別にいいよ。」

「まあ、俺も構わない。」

「わたしも!」

「皆がいいならば、キャナルシア=アーレル=ミシア=クレアレドの勇者パーティとの同行を許可しよう。

それから、予てよりキャナルが申していた剣の勇者殿との婚儀を、今日この場で決定する。それに伴い、剣の勇者殿には、名誉公爵の地位を、盾の勇者殿には名誉伯爵の地位を与える。」

「ありがとうございます。お父様。キョウスケ様、これからよろしくお願いします。」

キャナル王女は、前半は国王様に、後半は俺たちに対して最敬礼をした。

「では、我より勇者パーティに対し、心なしかの餞別を送ろう。例のモノを。」

「は!」

王様に言われ、近衛騎士が俺たちの前に机を置く。横に控えていた侍女が、机の上に盆に乗ったなにかを置いていく。

「ではまずは、我が国の国民の証である『クレアレド聖王国国民カード』を渡そう。このカードがあれば、我が国に国民として、すべての国境を超えることができる。」

王様の言葉の後に、侍女が机の上から1枚のカードを俺たちに手渡した。

「ありがとうございます。失礼かとと思いますが、この場で各自の持つ空間保管庫ストレージに入れさせていただきます。」

「許可する。」

王様の許可を得て、俺たちはそのまま空間保管庫ストレージにカードを放り込む。姫様もアイテムボックスに入れているみたいだ。

「次に、旅立ちの支度金として金貨10枚を1人づつ渡そう。キャナルには、これのほかに突発的な金銭は必要になったとこを考えて、各ギルドで金銭が下せる様に、斥候が使用しているのと同じカードを渡すことにする。使用する時と場合を考えるように。」

「かしこまりました。」

こうして、王様から心ばかりの物品を貰った俺たちは、10日後に王都カトレールを旅だった。出立が10日後になったのは、俺たち5人の結婚式と、どうせ旅をするならと、ギルドで受けた護衛依頼の出発が、10日後だっただけで、深い意味はない。

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