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白脚と呼ばれた男  作者: アパーム
第2章-アーネス子爵領にて-
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37-衝撃の事実確認

 翌日の朝、俺達はエルミアによる案内の元『黒森』に向かっていた。この森にある『隠された迷宮』へ行くためだ。

 街から森までおよそ2時間。馬車で行けば1時間も掛からないで行けた。

 馬車をダークエルフの村に預かってもらい、俺達は森の中の迷宮への入り口を潜った。


「森の中の森なの」


「広い……です」


 ココアとリリが驚きの声を上げる。『迷宮』にも関わらず、入り口を通ると森が広がっていた。

 木の違いは分からないが、外とは生えている草が違ったり、黒森では見かけなかった魔物が歩いている所を見ると、魔法的な何かが作用しているのだろう。

 エルミアに確認した情報だと、ここに出てくる魔物は大体4種類。蜂と鶏と熊と兎だそうだ。

 おそらく魔物の正式名ではないのだろうが、そう聞くとなんだかのんびりとたように聞こえる。それでもレベルは平均50前後らしいので、俺とレベル40代らしいエルミア以外の3人には、辛いかもしれない。慎重に進もう。

 話し合いの結果、前衛に俺とココア、中衛にアリサ、そして後衛にリリとエルミアという布陣にした。


「な、何あれ。すごい獰猛そうよ?」


 先へ進んでいくと、魔物が現れる。エルミア曰く蜂だそうだが、普通の蜂は2本脚で立って、開いた口から涎を出していないと思うんだ。

 診断で確認すると『捕食蜂ハニービー』と表示された。レベルは48。確かに体は蜂なんだろうが……おい、ハニー部分どこよ。

 見ていてもしょうがないので、攻撃をしかける。まず『挑発』で相手の意識を俺に向ける。俺に向かって飛んできた所をリリが『盲目』で見えなくした。

 突然の暗闇に戸惑っている所をアリサの火球が襲う。ココアは火球に蹴りを入れて威力を上げ、更に自身は持った剣で切りつける。

 エルミアは風魔法で補助をしてくれていた。魔法が逸れないように、皆が動きやすいようにしてくれている。

 火球が当たり、更にココアに切りつけられて蜂が叫ぶ。そこをリリの『闇槍ナハト・ランス』が貫いた。断末魔の叫びを上げて蜂が倒れる。


「倒したの!」


 死んだ事を確認した後、俺に向かってVサインをしているココア。微笑ましいので頭をポンポンと撫でてあげる。

 久しぶりの魔物との戦いで緊張していたのか、アリサから肩の力が抜ける。レベルも2倍位違うからなぁ。


「あらあら、ここに来るまで随分と頑張っていたみたいね。50近い魔物をあっさり倒すだなんて」


 エルミアも素直に感想を漏らしている。お得意のポーカーフェイスで表情は隠れているが、声色は驚いていた。


「何よ、意外と簡単に倒せるのね。この調子でガンガン行きましょうよ!」


「頑張り、ます……!」


 倒せたことに意気揚々としているアリサ。それに釣られてムンッと頑張るポーズのリリ。いやぁ、可愛い。

 そこに投げかけられたエルミアの一言が、場を冷たくさせた。


「そうねぇ。でも、安心しないほうがいいわよ。そろそろ……来たわね」


 そう言って持っている杖を構えるエルミア。どうしたのかなと思って耳を澄ませていると、『ブブブブブブブ』という嫌な音が聞こえてきた。しかも近づいてくる。


「「「「え゛」」」」


 エルミア以外の4人の声が重なった。

 俺達の視線の先には、さっき倒した蜂と同じ奴らが飛んできていたからだ。それも、軽く数えて20体以上も。


「最後の叫び声が仲間を呼ぶ合図なのよねぇ。だからホントは仕留める前に喉を潰すんだけど」


 そう言って軽く微笑み俺の方を見てくる。いや、蜂が仲間を呼ぶ習性があるのは知っていたけど。だけど!


「「そういうことは先に言え(言って)ー!」」


 構えながらの俺とアリサのツッコミがかぶる。こんなに大量の蜂を退治とか、駆除屋じゃないんだぞ!




「……ようやく、終わったか?」


 当たりを見回しながら呟く。周りに転がっていた蜂の死骸も既に無い。全て俺がふくろに入れておいた。

 俺は基本攻撃には参加せず、挑発と、危ない時に盾を出すことしかしなかった。だからだろうか、随分と時間がかかってしまった。

 エルミアを除いた3人はその場にへたり込んでいる。身体的というより精神的な疲れが大きいみたいだ。そりゃあいきなり倍近いレベルの魔物に囲まれたら怖いよな。

 当の本人は「あらあら、だらしないわね」なんて言っている。だから、注意点を先にだねぇ。

 また仲間を呼ばれるかとも思ったが、俺が『挑発』で抱えている時に、エルミアが喉を潰してくれていた。それも一気にである。魔法の精度が高過ぎるな。

 3人が大分疲れている様なので、今日はこれだけで帰ることにした。因みにだが、休憩している間に一人で見回ってきて、他の3種の魔物も1体ずつだが倒してみた。

 まず兎。確かに兎のような形はしていたが、サイズが大きい。角も付いていたが、主に攻撃方法は噛み付きだった。名前は『牙衝兎ライセン・ハーゼ』。レベルが52。鋭い牙と飛びかかってくる速さは脅威だな。

 次は鶏。羽はあるが飛べない2本脚の鳥で、鶏冠が緑色だった。猪の様に片方の足で地面を掻いたかと思うと『ギュエ~~!』なんて叫んで突撃してきた。嘴で突かれたら痛いだろうな。名前は『石化鳥コカトリス』。レベルが45。

 最後に熊。名前は『角熊ランメベアー』。レベルが55。集団で行動していたようだが、一番後ろにいた1体だけ意識を向けさせて倒した。名前の通り角が生えていたが、俺が倒した個体は肩からも額からも生えていた。ちょっと固めだ。

 戻りながら、その3体の注意事項をエルミアに確認しておいた。兎は牙に毒が。鶏は目を合わせた直後に突かれると石化する。熊は角から風属性の魔法が飛んでくるらしい。……聞いといてよかった。

 疲れている皆を乗せて、馬車でウーデンへゆっくりと戻る。宿についた時には5の鐘が鳴り響いていた。

 3人に宿で休むように伝え、俺とエルミアは冒険者ギルドに向かう。素材の売却のためだ。

 考えてみればこの街の冒険者ギルドへ行ってないな。さてさて、何が出るやら。

 中央街にある冒険者ギルドに入る。ザンドウのギルドとは違い、喫茶店と受付が併設されている様だ。うわ~い、スタイリッシュ。


「すいません、素材の買い取りをお願いしたいんですが」


「はい、買い取りです……!! し、『白脚』様!!」


 奥の受付にいた眼鏡を掛けた女性に話しかけると、なんだかすごく驚かれた。「ちょ、ちょっと待って下さい!」と言い残して受付の裏に走って行く。おや、俺名乗ったっけな。

 しばらくすると、屈強な体を持った竜人族の男性と一緒に戻ってきた。女性は眼鏡を外してちょっと小綺麗な格好になっている。……何故だ、何故眼鏡を外したぁ!?


「貴方が『白脚』様ですか。私はこのギルドマスターをしています、ウィッツェと申します」


 丁寧に挨拶してくれる。っていうか丁寧すぎるぞ!?


「これは丁寧に有難うございます。龍一です。っていうか普通にしてもらって大丈夫ですよ、俺なんて只の冒険者の一人ですから」


「いえいえ、街を魔族から護り、その栄誉を持って貴族へと昇進されました貴方が、只の冒険者のはずがありますまい」


 そう言っても丁寧な態度を崩してくれない。貴族になるっていうのは、まだ正式な発表はされていないが、子爵から伝わっているのだろう。


「いえ、本当に普通にしてください。ギルドマスターとしての顔もあるでしょうし、私は未だEランクですしね」


「そうか、そう言ってくれると助かる。因みに言っておくが、君はもうEランクじゃないぞ?」


 俺の言葉に、口調を戻して話すウィッツェさん。うん、このほうがなんかしっくり来る。っていうか、Eランクじゃない……?


「君は昨日付けでBランクへの昇進が決定している」


「…………え゛」


 ウィッツェさんに言われた言葉を反芻する。Eランクから途中をぶっ飛ばしてBランクなんて。……大丈夫なのか?


「因みに、大丈夫なんでしょうか」


 心配になってウィッツェさんに聞いてみる。願わくば冗談だと言ってもらいたい。けど、次に出てきた言葉は全て肯定の言葉だった。


「知っていると思うが、Bランクまでは依頼をこなすことで上がっていく。君がしてきた事はそれに合致する行為なのだよ。ザンドウで言えば迷宮の探索及び貴族の救出、下級魔族の撃退、街の防衛。途中の村を盗賊から守ったという報告も聞いている。この街では武闘大会の優勝、単身での中級魔族の撃破。正式な依頼になってはいないが、最後のやつなんてSSクラスレベルの依頼だ。」


 次々に俺のやってきたことを読み上げられる。そう列挙されると恥ずかしすぎる。ヤメテっ、俺のHPはもう0よ!


「これだけの功績だ、本当ならAクラスにしようとマスター会議で上がっていたのだ。さすがにそれは前例が無さすぎてね、依頼として出ていなかった事もあり、結果Bクラスに落ち着いたのだが」


「貴男、想像以上に色々やってるのね」


 ここに来てから一言も話さなかったエルミアが呟いている。顔は見てないが、呆れた表情をしているに違いない。


「そういった事も含めて君が来るのを待っていたんだが、中々顔を出してくれなかったのでな。冒険者を辞めるつもりなのかと諦めていたんだが」


「あー、すいません。いろいろあって忘れてました」


 素直に謝ると笑顔になって「気にしないでくれ」と言ってくれた。ギルド証を眼鏡を外したお姉さんに渡す。嬉しそうに奥へ向かっていったので、気になったことをウィッツェさんに聞いてみる。


「あの、あの娘どうしたんですか? 今日はじめて合ったんですけどいきなり好感度が高いんですが」


「……好感度というのはわからんが、あの娘の態度は普通だと思うぞ。街を護った英雄と間近で会えたんだからな」


 キョトンとした顔でそう返されてしまう。……え、英雄って。

 まさか、街を歩いていた時に感じていた視線も俺に向かっていたのか? いや、あれは美女に向かう視線と、俺に対するやっかみの筈だけど。


「美女ってのは否定しないけどね。残念ながら、あの好奇の視線はほぼ全部貴方に向かっていたわよ」


 俺の(漏れた)声に、エルミアがそう反応する。あの視線が、俺に向かっていた……だと……? 意識すると急に恥ずかしくなってきた。

 その後は更新されたギルド証と、ついでに買い取ってもらった素材の代金金貨30枚を貰い、そそくさとギルドを後にした。

 宿に戻り、4人に迷宮に籠るための食材を買ってきてもらって、その日はすぐさま眠りについた。うん、この事は忘れよう。

読んでいただいて有難うございます

いつもお読みいただいている皆様には申し訳ないのですが、現在忙しくて小説を更新する時間が取れません。

この先は、本当に不定期の更新になると思います。

楽しみにしてくださっていた皆様には本当に申し訳無いと思います。

次回更新は未定です

それでは、また更新が出来る時まで。

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