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白脚と呼ばれた男  作者: アパーム
第2章-アーネス子爵領にて-
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34-オーガ戦

 俺の横でへたり込んでしまった老人B。オーガを指さしながら「あわわ……」と言っている。いや、それやっていいの女の子限定だから。

 村の入口にいるオーガの集団を見る。ぱっと見だけど10体くらいか。とりあえず診断を使う。……全員60台か。

 老人Bに若者に連絡するよう言って、オーガに近寄る。俺を確認したのか、それぞれ咆哮を上げている。

 走りながら魔力弾を2つ出しておく。その場にステイさせ、単身オーガに飛びつく。

 一体が振り回してきた棍棒を弾き飛ばし、顔面を破壊。すぐに2体目の懐に入り、一本背負いを決める。地面に叩きつけず、後ろに投げ飛ばす。

 投げ飛ばした奴の後ろに控えている1体に気力で纏った上段蹴りを打ち込む。鳩尾に当たったのか、身体をくの字に曲げた所を踵落しで地面に縫い付ける。

 投げ飛ばした1体には、後ろに控えさせておいた魔力弾を動かして打ち抜いた。魔力弾に勝手に当たればいいなと思ったが、離れても思いの外動かせるみたいだ。


「グルァァァァァ!!」


 飛びかかってきた1体の腕を蹴り飛ばす。気力を纏っていなかったからか、棍棒が吹き飛ぶだけだった。仕方ないので気力を纏って腹部を打ち抜く。

 倒れた1体の後ろにもう1発の魔力弾を飛ばす。さっきの光景を見ていたからか、避けようとする。再度動かして曲げようとしたが、動かす前に一度方向性を決めてしまったので、操作が効かなくなってしまっていた。

 しかたないので風魔法の『ワルツの吐息ヴァルツァー・オーテム』を使い、風で曲げる。後ろまで飛んでいた魔力弾がUターンし、後ろから避けたオーガを撃ち抜く。


「我らオーガノ戦士を相手ニ、ここまで粘るとはナ」


 5体を仕留めた所で、後ろから声が聞こえた。濁音が混じって聞き取りづらい。

 声のした方を見ると、他のオーガとは体の色が違う、赤い体色をしたオーガが現れた。リーダーか?

 診断を使い確認してみる。『緑巨人・突然変異(オーガ・アルビノ)』となっていた。レベルは72。また変異種か。……っていうか緑だろ? 変異して赤って何なんだ。3倍早そうだな。


「ほう……。我ノ速さを感じ取ったか。人間族ニしては中々感が鋭い」


 俺を見て楽しそうにそんな事を言ってくる。いや、適当なんだけど。っていうかマジでそうなの!?


「それニしても、ダークエルフノ村ニ人間族が居るとは思わナかったぞ。黒フども、方向変えしたか?」


 赤オーガが不思議そうに聞いてくる。視線は俺の後ろにいる老人Bに向かっている。


「まぁ、俺がいるのもちょっとした手違いだからなぁ」


「手違い!? よくわからヌが面白いことを言う人間族だな」


 俺の言葉を聞いて楽しそうに笑っている。笑うこと言ったっけかな。

 一頻り笑った後、「余興はここまでだ」と言い放ち、残っている5体のオーガに号令をかける。

 号令に何かの魔法が込められていたのか、オーガ達に魔力がみなぎっていく。


「ゴァァァァァァ!!」


 凶暴な雄叫びを上げて4体が突撃してくる。前に2対、後ろに2対。凶暴な割に前衛後衛を決めたみたいだ。付き合ってられないな。


「『拳銃マグナム・アーツ』、『散弾ショット』!」


 地面に向けて威力を抑えて球数を増やした散弾を打ち付ける。辺りに土煙が上がり、俺の姿を隠した。

 『天瞬駆』で上空に上がり、手に巨大な鎌を鬼神力で2丁作り出し、両手に構える。下で辺りを見回している4体に向けて構える。前後から一気に交差させ、首を刈り取った。

 4体が倒れるのを見届けてから、地面に降り立つ。残っていた土煙を『ワルツの吐息ヴァルツァー・オーテム』で吹き飛ばす。


「ば……ばかナ」


 目の前で起こったことが信じられないのか、細い目を見開いて驚いている。

 時間をかけてもしょうがないので、一気に方を付けるべく赤オーガへ向かって走りだす。


「と、止まれ! こいつが見え……!!」


 赤オーガが何かを言い始めたと思うと、1体残っていたオーガが何かを上に掲げてきた。確認する前に剣を2本作りだし、片方で掲げている腕を、もう片方で首を切り取った。

 よく見ると緑色で全裸の少女だったので、地面に着く前に結界で保護する。


「何だと!? 貴様、今何を……」


 叫んでいる赤オーガを無視して接近する。さっきオーガを貫いた時と同じ量の気力を纏い、顎を撃ち抜く。


「ングァグ!」


 撃ちぬかれた赤オーガが空中に浮いた。ん、気力が少なかったか。やはりさっきのより強い様だ。

 即座に浮いた足元を蹴り上げた。そして左半身に構えを取り、両手に気力を溜める。左手で内部を螺旋状にした気力の筒を作る。

 赤オーガの身体が空中で回転し、頭が下に来た所で、筒を通す様に右手を放つ。


「『拳銃マグナム・アーツ』、『小銃ライフル』!」


 右手から放たれた気力弾は、左手で作った筒を通ることで回転力が増し、さらに筒の気力をも巻き込んで赤オーガの頭に直撃した。

 ノーガードで直撃を食らった赤オーガは、錐揉みになりながら吹っ飛んでいく。ようやく止まったが、見るも無残な姿で絶命していた。

 そちらは気にも止めず、地面に倒れていた少女の元へ走る。


「大丈夫か!?」


「ん……。大丈夫……ケホッ」


 少女に声をかける。大丈夫と言っているが、今にも意識が飛びそうなぐらい憔悴している。


「大丈夫じゃないじゃないか! 何がいる、回復か?」


「ん、魔力を……、吸わせて貰えれば……」


 息も絶え絶えに、そう告げてくる。魔力!? じゃあこの状態は魔力が枯渇しかかっているのか!


「吸えるんだな? じゃあ、俺のを吸え! 早く!!」


「ダメ……。御子じゃないと、魔力の効率が悪すぎる。……貴方、干からびちゃう」


 腕を差し出しても遠慮してくる少女。このままでは埒が明かない。拒否する少女の口に腕を近づけ、大丈夫だからと背中を擦る。

 そこまでして、ようやく腕に口を付け、チュウチュウと吸い始めた。

 一吸いごとに、中級魔法1発分くらいの魔力が抜けていく感じがする。MPとかが分かればどれくらいと判断しやすいが、俺の診断では数値になって出てこないので感触でしかわからない。

 段々と、少女の顔や身体にツヤが出てくる。それと同時に少女の身体から樹の枝のようなものが生えていた。


「これは……凄いな」


 しばらくして、少女は吸うのをやめた。俺と少女の周りには、花畑が出来上がっており、少なかった木々も生えている。おそらく全てこの少女が吸った魔力で生やしたのだろう。

 さっきまで裸だった少女の大事な部分も、身体から生えた枝で隠されている。


「ありがとう。……へへへ、美味しくて吸い過ぎちゃった」


 ほっぺたをポリポリ掻きながら、そんな事を言っている。半分以上周りの木々になったんじゃないか? これ。


「ど、樹妖精ドリアード様がお元気に……。なんという魔力なのだ」


 呆れて元気になった少女を見ていると、後ろから声が聞こえた。振り返ってみると、長の部屋に居た若者達がこちらを見ている。……いつの間に来てたの?

 何でも老人Bが『念話』と呼ばれるダークエルフのみが使える術で、若者にオーガが出たことを伝えたらしい。

 そして、ここにきてようやく長が誰なのか分かった。この村の長は若者で、名前をテムテムと言うらしいが。う~ん、惜しい。

 老人たちは老師で、元々は長をやっていた兄弟なのだそうだ。テムテムさんが意見を聞く為に一緒に居たとのこと。

 俺が助けた少女は、樹妖精ドリアードという存在で、読んで字のごとく森で樹木を守る妖精だ。上位の存在である『樹精霊ドルイド』の指示の下森を護っていたそうだが、現在ドルイドは休眠に入っておりドリアードが一人で森の木々を守っていたらしい。

 そのせいで魔力が少なくなっており、弱っていた所を今回オーガに狙われたとのことだった。

 ドリアードを助けたことで、長たちから大変感謝された。その夜には祝いの宴が行われるくらい感謝されていた。

 最初入ってきた時とは大違いの笑顔で、長や他のダークエルフからの歓待を受けた。森を守ってくれてありがとうという言葉をたくさん聞いた。それにしても。うん、たゆんたゆんも良いモノだ。

 宴も終わり、最初に案内された小屋とは違う小屋に案内された。

 なんでも最初の小屋は牢屋だったらしく、中には魔力阻害の結界が張ってあったらしい。え、牢屋に居たんだ俺。

 牢屋とは違い、フカフカの布団も用意されおり、俺はその布団の中でゆっくりと眠ることにした。



 どれくらい時間が経ったのかわからないが、近くから聞こえる足音に気づいて意識を覚ました。……誰だ?


「あら、起きてたのね」

 

 そこに居たのは、今日俺と戦ったエルミアだった。しかも下着姿で。


「……何やってんの?」


「酷いわねぇ。待ってても来ないから私から来たっていうのに」


 俺の疑問にカラカラと笑いながらそう答えてくる。待ってた? 俺を? ……なんで?


「何でって……。婚約が成立したからに決まってるじゃない。初夜よ初夜」


 …………は?

読んで頂き、有難うございます。

お待ち頂いていた読者様、お待たせいたしました。

修正もある程度目安が付いて来ましたので、更新を開始します。

と、いうかこの先の話に関しては途中の修正がめんどくさくて、一回全部消して書き直したのですが(笑

修正内容や修正されていない内容にご意見などあると思いますが、楽しんでいただければ幸いです。

次回更新は17日を予定してます。

よろしくお願いします。

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