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白脚と呼ばれた男  作者: アパーム
第1章-メイル伯爵領にて-
19/48

19-これからの予定はどうしよう?

 2人を連れて宿に戻った。リリは既に起きていて、食堂でご飯を食べていた。

 俺達を見たリリは、不思議そうな顔をしてしる。頭をコテンと傾げた姿は、父性が爆発してしまいそうなほどの破壊力だ。

 アリサは「か、かわいい!」と叫んでいたが、突然の大声にびっくりしたリリは、俺の後ろに隠れた。いや、それも可愛いから。案の定、感極まったアリサに抱きつかれていた。

 ココアは「ココアもリュー様の奴隷なの。仲間なの」と言っていたが、リリの年を聞いて「お姉さんなの? お姉さんが出来たの!」とより嬉しそうだった。

 リリに、これからのことを話す。言葉少なに頷いていた。

 さて、レベル上げは明日からにして、今日はリリの服や装備を揃えないとな。

 買い物に行く前にリリのステータスを思い出す。レベル2、固有能力:嗜好転写、スキル:闇魔法、だったな。固有能力の転写が”思考”でなくて”嗜好”なのは、『対象の一定以上の好意を云々』っていうのがキーになっていそうだ。

 因みに、ココアが見たがったので部屋で変身してもらった所、4回光ったのに3回しか変身しなかった。アリサ、ココア、リリと変身して、最後の光の後もリリだった。何でか聞きたかったけど、リリが赤い顔をして俯いてしまったので聞けなかった。

 リリに買うのは、魔法使い用の装備にした。ローブに、下に着れる軽い鎧。そして大杖に短杖。一応簡単に扱える弓。物は全て、お馴染みの武器屋さんにお願いした。

 何度と無く通っていたおかげか、店主のおやじさんは俺達を気に入ってくれたらしく、魔人族のリリに対しても普通に接してくれた。

 俺はついでに武器の制作を依頼しておいた。100センチくらいの棒の先端に、40センチほどの細い刃物をつけたもの。刃は先に若干の反りをつけてもらう。所謂薙刀だ。

 薙刀とは言っても、本来のものとは大きさがぜんぜん違う。俺は基本無手格闘だし、あまり長すぎるものを持っても手に余るだろうという理由からだ。

 店主からは「また難しい注文だなぁ」と難色を示されたが、リリの装備と合わせて金貨20枚を提示すると即決でOKを貰った。金貨の力、恐るべし。

 装備品についてはスムーズに終わったのだが、洋服に関しては難航した。

 というのも、アリサが贔屓の服屋に着いた瞬間に暴走した。

 「ぁぅ、綺麗、です」と言って、キョロキョロ見回しているリリを連れて、ファッションショーが開催された。

 遠巻きにココアと眺めていたのだが、興が乗ってきたのか、ココアも連行されていった。俺に助けを求める視線を送りながら「ち、違うの。今日はリリの服なの~」と言い残していったココアを見送った。ココア、すまん。

 結果、リリは装飾の施された黒い服と、黒いワンピースを数着買った。黒色がお気に入りらしい。笑顔がよく似合う。

 この際ツヤツヤしている癖に不満そうな顔のアリサと、疲れて俺の背中に乗っているココアは置いておこう。お疲れ様。



 宿で夕食を食べ、部屋に帰って風呂に入って寝る。勿論ベッドは別々だ。ツィツィちゃんにお願いして、ベッドを一つ運び入れさせてもらった。

 ツィツィちゃんにはジト目で睨まれてしまった。規則があるんだから仕方がない。年頃の娘と一緒の部屋だからってそんなに怒らなくてもいいのにな。そんなに節操なしに見えるかな?

 ココアとリリが譲らないので、風呂には俺が一番に入った。その後にココア、リリと続く。

 ココアは風呂から出ると、早々にベッドに入って寝入った。俺は気力を巡らせながら座っている。


「ご主人様……で、出ました」


 リリの声がしたので、ココアと一緒に寝るよう伝えるためそちらを振り向く。


「リ……ちょえ!?」


 温まったのか、若干火照った顔。ツルツルの肩。ほっそりとした腕。なだらかに曲線を描く双丘。チャーミングに窪んだおへそ。

 俺の前に現れたリリは一糸纏わぬ姿。本日二度目の全裸だった。


「ちょ、ま。……とりあえず服を着て!」


 俺の言葉に首を傾げる。いや、可愛いんだけど。とりあえずそのけしからんAカップを隠してだねぇ。


「でも、私、奴隷です。こういう事を、するって。……間違え、ましたか?」


 首を傾げたまま聞いてくる。ちょっと、誰だよそんなことを教えたの。……そうか、奴隷商館か。全くありがたくも迷惑な教えを!


「い、いいから服を着て。それと、今後は好意を寄せる人以外に、簡単に肌を見せちゃダメだよ」


「……好意? では、ご主人様なら……大丈夫です」


「あ~、分かった分かった。けど、そういうのは成人してからね」


 最後の俺の言葉を聞いて、納得したのか服を着始める。これは、ライクとラブを勘違いしているな……。まぁ14歳だし、成人までは当分あるからそれまでに覚えていくだろう。

 その後は、リリをココアと一緒に寝かせ、明日からの予定を再確認して、俺も寝ることにした。

 後日、この世界の成人が15歳だと聞いて、俺は愕然とするのだが、時既に遅し。色々考えないといけないハメになるのだった。











「皆おつかれ! 今日はここまでにしよう」


 俺は、スケルトンにトドメを刺したアリサ達にそう声掛けた。それを聞いて、魔石を回収し終わったココアとアリサが戻ってくる。

 リリが仲間に入ってから10日が経っている。その間俺達は、ロンド迷宮に篭っていた。

 ここに出てくる敵は、中級のレベル帯のものが多く、攻撃も基本単調なものしか無い。レベル上には持ってこいだ。

 最初は、俺が牽制している敵を皆に殴ってもらうという方法だったのだが、途中からアリサとココアが前で、リリが後ろという陣形に変わった。

 俺がいない場合に、敵と戦えないとなっても意味が無いので、俺はちょっと離れたところで見ていることにした。まぁ、危なくなったら手助けするんだけど。


「それにしても、ずいぶんとレベルが上ったな」


「そうね、最初の頃と考えると全然違うわ」


「ココア、強いの~!」


 迷宮に篭った結果、皆のレベルは鰻上りになっていた。アリサが25、ココアが22、リリは19となっている。

 ココアはスキルに『回避』と『気配察知』『気力操作』が、リリは『光魔法』に『料理』、『狙撃』に『解体』『土魔法』と、スキルの大盤振る舞いだった。

 固有能力だが、リリの能力はレベルが10を超えた辺りから制御出来るようになったらしい。どうやって? と聞いてみたが、「分かりません」と言われた。まぁ、何となく分かるってあるよね。

 ココアにも、念願の固有能力が付いた。『敏捷の理』という力で、敵の直近での速度が格段にアップするらしい。

 アリサについては確認していない。ほら、なんかプライバシーを覗くようで嫌じゃない?


「10日も篭ると違ってくるね」


「そうですね。……そろそろ、お風呂が恋しい、です」


 とはいえ、薙刀が折れてしまうというアクシデントがあったので、一度戻ってはいるんだが。20くらいからレベルも上がりにくくなってきたし、頃合いだろう。


「なるほどねぇ。そろそろ街に戻ろうか」


「ホント!? やっとゆっくりベッドで寝れる~!」


「わぅ。……分かったの~」


「お風呂……! 嬉しいです……」


 三者三様に喜んで……おや? ココアだけちょっと喜んでないな。


「ココアは街が嫌かい?」


 街で何かあっただろうか……。焼き鳥~とかって喜びそうなんだが。


「嫌じゃないの、嬉しいの。……でも、リュー様のご飯が食べれないの」


 耳をペタンとさせてそう呟く。ご、ご飯の事ね。

 篭っている間は、食事を全て俺が作っていた。リリは手伝ってくれているのだが、「1日1回はご主人様だけが作るの!」というココアのおねだりに負けた。準備は手伝ってもらったけどね。

 ここに来て、俺の料理の腕前は格段に上がっていた。別に特殊な調理法をしているわけでもないんだが……。なぜだろう。


「街でもたまに作ってあげるよ」


「!! 本当なの? わーいなの! 街に帰るの~」


 俺の一言で飛び上がりそうなくらい喜んで、先に出口に向かおうとする。慌ててアリサが追いかける。現金なワン娘め。

 俺とリリは顔を見合わせて苦笑し、その後に着いて行く。



 街へ戻り、ドゥーシェに向かう。迷宮で手に入れた魔石等を売ろうとも思ったが、まずは宿で一息つきたい。っていうか、おしり痛い。

 毎回のことだが、俺はクッションを持ってくるのを忘れてしまう。ココアとリリのぶんは、なぜかアリサが持ってきていた。もしかして、持ってきていた荷物のほとんどを占領していたんではないか?

 今回も、割れそうな痛みに耐えながら早馬車で戻ってきたわけだ。この世界は、尻に厳しい。覚えとこう。


「ただいま~」


 ドアを開けて声をかける。俺の声にツィツィちゃんが出てきてくれた。


「あ、リュウイチさん達。お帰りなさい!」


「ただいま~なの」


「……帰り、ました」


「ただいま。お腹すいたよ~、ツィツィちゃん」


 お出迎えの言葉に他の3人が答える。さて、俺は部屋にいらない荷物を置いてくるか。


「あ、リュウイチさん。それとアリサさんにお手紙を預かっています」


 部屋に向かう途中にツィツィちゃんに呼びかけられる。手紙? 誰からだろう。

 手紙を受け取り、印章を確認する。……うん、知らないな。ディグさんのものでもないし、伯爵のものでもない。誰だ?

 アリサの方を向くと、なんだか嫌そうな顔をしている。俺の持ってる手紙の印章とは違うようだ。誰からなんだろう。

 封を開けて、中を確認してみる。


「「げ」」


 俺とアリサの言葉が被る。俺の手紙は、アーネス子爵の娘ミリル嬢からのものだ。内容は、俺が一番欲しくない内容だった。


『アーネス領ウーデン市でお待ちしています』


 ……お偉いさんからの招待状なんて、ゴメンなのになぁ。

読んでいただき、ありがとうございます。

次回更新予定は7日です。

よろしくお願いします。

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