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宣戦布告

「涼さん、気分が悪いのですか?」

「な、何で!?」


 タマは身長が高く、一人ではサイズの良い服を見つけられないと一緒に来た。昨日貸した服は、羨ましいと思うぐらい手足が長く、裾だけ短かった。だから昨日の時点ではいや、駅前の待ち合わせに遅れるまでは気にもしなかったタマに意識してしまう。

 先程から周りを見ると、女達の視線が痛い。彼氏連れでさえ、目の保養と聞こえるぐらい大胆にタマを見ては涼を見て、見下す様な顔に目。


 そんな状況にも関わらず、タマは平然とニコニコしていた。女達の嫉妬の呪いで何かあるのではないか、本気で思う涼である。なのにタマは涼の気持ちさえ気付かず、いきなり買い物前にマックが食べたいと言い店に入ったまでは良かった。

 ちょっとぐらいの視線なら気にしないと思った涼、だが甘かった。ポテトをあーんしてきたり、ハンバーガーのソースが口についたのを舐めたり好き放題。店先だから怒る事も押さえている涼に、笑顔で頬杖するだけで止めないタマ。


「タマいい加減にして」

「何がです?」

「わかってるでしょ!?こんな公衆の面前でせ、セクハラよ」


 ガヤガヤ騒がしい店先でも皆、聞き耳立てている為小声で話す。しかし、タマは苦しい言い訳をして聞く耳持たない。


「飼い主様にご奉仕するのが、ペットであるタマの役目ですよ」

「一時、家に住むだけでしょ?飼い主とかペットとかそんな関係じゃないわ」

「でも、タマといえば猫。拾ってくれた涼さんは飼い主」

「私を変態扱いしないでくれる!?人間をペット扱いなんてしたら、別の意味で危ない」


 くすくす笑い出すタマに、涼は何が可笑しいのかと怒る。 笑いながら謝るタマは、そろそろ店を出ようと涼の手首を掴んだ。


 ***


「ちょっと、こんな高そうな店で買わないよ」

「見るだけならタダでしょ?」


 タマに押され店に入ると、男物の服専門店なのか男性従業員しかいなかった。従業員全員にお辞儀をされた後、奥から四十代ぐらいの店長が現れた。


「これは、黒・・」

「服を少々」


 店長が何か言おうとしたところ、タマが遮る。

 はっと何かを察したのか、店長は黙って服を数着持って来させるよう指示をする。

(タマが誰か知ってるのかな・・・まさかね?でも、買わないのに気まずいじゃん)


「涼さん、あちらでお茶を出してくれるようですよ」

「そうなの?あ、でもお金取られないかな」

「ふふ、御心配などせず。代金を取るほど悪徳な店ではありません」

「す、すみません」


 タマに話してる所を店長が聞いていて、涼は恥ずかしくなった。店長に案内されるまま、個室の部屋に通され椅子に座るが落ち着かない。


「あのタマ・・・じゃなくて、連れの者は何処に?」

「お連れ様はお手洗いに行かれました」


 独りぼっちで、ちょっとだけ不安になる。

 だけど店長の淹れてくれたお茶で、少しだけ落ち着きを取り戻す。


「ハーブティーにしてみました。カモミールは気分を落ち着かせます」

「ありがとうございます」


 飲んで直ぐ効能があるわけがないが、気の持ちようだ。本当なら上品に飲むのが好ましいだが、一口飲めば男らしく一気に飲み干した。


「おかわりは、いかがですか?」

「いえ、そろそろ帰ろうかと思います。ハーブティー美味しかったです」

「そう急がなくとも、もう少しゆっくり」


 店長の誘いを断り、部屋から出ようとすれば勝手にドアが開く。


「あ、涼さんお待たせしました。帰りましょうか」

「遅いよ」

「すみませんトイレの後、服を選び会計に遅くなりました」

「まさか買ったの!?タマ、そんなお金・・・」


 案外安かったとタマは涼に説明する。本当だろうか?

 こっそり、他の商品の値段をみようとしたが値札がなかった。本当に安かったとして、お金は何処から出て来たのだろうかと疑問に思う。友人さえいない、正直怪しさプンプンのタマにそんな甲斐性があるわけがない。


「まさか売しゅっ、うぅ・・・」

「流石にそんな言葉口に出さないで下さい」


 口を塞ぎ何も言えない様にすると、涼の疑う様なタマを汚いと思う様な目があった。


「違いますからね!ちゃんとした清いお金です」


 何を言いだすかわからないので、涼の口を塞いだまま早々に店を出る。しかし、涼とタマの歩幅は違うのが当然であって、タマの歩くペースに口を塞がれた状態で歩けば足がもつれる。

 予想通り涼は足がもつれ、倒れそうになるところをタマが腰を支えた。


「おっと、すみません」

「もう、いつまで口塞ぐつもりだったの!少し苦しかったじゃない」

「すみません。ん・・・涼さんカモミール飲みましたか?」


 何でわかったのかと驚けば、口を塞いでいた時にタマの手に匂いが移ったようだ。


「凄い嗅覚ね。猫じゃなくて犬みたいって、何!?」

「いえ、良い匂いなのでおすそ分けをして欲しいなと」

「意味がわからない!なんで口に近付くのよ」

「だって、一番匂いがするのって口からなので」


 ばっと口を両手で押さえ、匂いを嗅がれない様にする。

(変な匂いだったら困るじゃない)


 口臭がくさいと思われたら嫌なので、嗅がれないようするが男の力に敵わなかった。タマに両手を奪われ、顔が近付けられる。くんくんと、犬みたいに嗅がれ行き交う人達に見られ恥ずかしい。


「カモミールは落ち着きますね」

「タマ、早く離して匂いなんて嗅がないでよ犬じゃないんだから」

「嫌です。それに、私は涼さんの猫ですよ毛繕いだと思って下さい」

「何が毛繕いよ・・・ひゃ」


 涼の口元をペロっと舐め、更に数回舐める。いつの間にか両手は自由になって、タマの手は涼の両頬に添えていた。頭がぼーっとしながら、事の成り行きを他人事の様にみてる涼にタマは苦笑した。


「今日はここまでにします」

「ここまでって・・・又あるの?」

「はい。いつするかは、お楽しみで覚悟して下さい」

次回で最終話にする予定です。


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