7.光の神殿
日の隠れ里には、4日間滞在した。2日目、3日目とカサネはアカネの助手として、忙しかった。おばばと共に神殿の建設候補地を見に行ったり、女王に提出する書類を作成したり。カサネと同じく神官見習いになるスオウも一緒なので、最初身構えていたが、真面目な態度をくずさないので、あれは宴の後だったからだとカサネは思うことにした。
カイは騎士たちと共に力仕事に借り出されていて、ぜんぜん接点がないのがちょっと寂しいところだったが、カサネは夕食時にはカイに合えることを励みに助手の仕事に精をだすのであった。
出発のときは村人全員が見送りにきてくれた。
「ミオ、女王陛下の名代、しっかり勤めるんだぞ。カイさん、ミオを頼みます。」
「任せてください、おやじさん。」
「とうさん…。」
村長の言葉に村長夫人がこらえきれずに涙を流した。ミオも泣き出しそうになっているのを見て、カイはミオを抱き上げて馬に乗せるとひらりとその後ろにまたがる。
それを見たカサネが一瞬顔をこわばらせたのにスオウは気がつき眉を上げた。
「名残は惜しいですが、これで失礼するとしましょう。」
カイの言葉をきっかけに、一行は日の隠れ里と別れを告げたのであった。
フッセまでは逆の道程だ。森を抜け集落からは、また馬車の旅となる。フッセから東へ伸びる街道を使い、光の女神ヒルデを祭る光の神殿のあるヒルドレードへと向かう。この神殿は長い間土の下に埋もれて所在不明だったものを王と女王が8年前に復活させたものだ。王家はここの復興に力を入れていて、今回もミオが女王の名代として訪問することとなった。
街道にはいってからは、当然馬車は移動教室となる。まず、スオウの実力を見るためにアカネが質問を重ねる。次々と答えていくスオウにカサネは目をみはった。
「ふむ、よろしい。充分ですね。光の神以外のことも良く知っていますね?」
「はい。いずれ見習いになることはわかっていたので、ミオ姉から教本を送ってもらって読んでました。」
「いい心がけです。奉納舞はどうです?」
「本で読んだだけなので、実際はどうか…」
「カサネ、練習に付き合ってあげなさい。」
「はい、アカネ先生。」
「カサネはの舞はとてもきれいなのよ。ね、アカネ先生」
「そうですね、舞はほめてもいいでしょう。」
「…先生、それはめられてるんでしょうか…?」
馬車の中に、笑い声があふれた。
フッセから3日、一行はヒルドレードに到着した。馬車のまま、神殿前まで街の中を進む。作られたばかりの明るい新しい街だ。カサネだけでなくスオウもキラキラした目で見回している。
神殿では神官長以下全員でお出迎えだ。ミオは女王名代として臆することなく対応している。ミオが全員を紹介し終わると、神官長はミオ、アカネ、カイを伴い奥へと消えていった。騎士様たちはあちらへ、見習いさんはこっちねと別々に案内される。
連れて行かれた先はこじんまりした部屋だった。案内してくれた30歳くらいの凛々しい女性神官がお茶を入れてくれる。
「ようこそ、ヒルドレードへ。長旅お疲れさまでした。」
「ありがとございます。」
二人して頭を下げると、ふふふと笑われた。
「懐かしいわ~、見習い時代を思い出しちゃった。私はニイナよ。あなた達のお世話係。よろしくね。」
「よ、よろしくお願いします。カサネです。」
「スオウです。」
「緊張しないでいいわ。ねぇ、カサネちゃん。相変わらずカルラはきれい?」
「ニイナさん、お知り合いなんですか?」
「年は三つ違うけど同期よ。カサネちゃんが行くからよろしくって手紙にあったわ。」
「…カルラってあの白い魔女の?」
スオウは、思わず心の声を口に出してしまった。女性二人は、話の腰を折られて、何だというようにスオウを見る。
「魔女って言うのは、嫌な言い方よね~。」
「ね~。」
「王族じゃないけど、力があるだけよ。」
「そうそう、で、とにかくすごい美人なの。白銀の髪、水晶の瞳、非の打ち所のない美しさなのよ!」
こぶしを握り締め力説するカサネの横でニイナは頷いている。
「…美人なんだね、わかった。」
「わかったならよろしい。じゃ、神殿内の見学にいきますか。」
こうして、見習い二人は神殿見学へと出発した。
カサネはミオとカイ(主に)と食事時にもなかなか一緒になれなかったのが残念だったが、ニイナ夫婦と子供とスオウとでヒルドレードでの3日間を楽しんだのだった。




