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5.隠れ里

かつて、この大陸は日の国、月の国、宵の国と3つに分かれていた。

あるとき、日嗣の王女と月の王が結婚することになった。だが、結婚式当日の朝、日の国は宵の国の奇襲にあい、滅ぼされた。王女の最期の叫びを感じた月の王はすぐさま駆けつけ、宵の軍勢を滅ぼした。

白い婚礼衣装は、真っ赤に染まったという。

こうして、日の国と宵の国は一日にして滅亡し、この大陸は月の国にまとめられた。

―アカトゥーキ大陸の伝説集より―



最後の集落に馬車を預け、女性陣も騎士たちの馬に分乗し、森の中を行くこと3日。ようやく第一の目的地である日の隠れ里についた。

カサネは騎士の手を借りて、よろよろと馬からおりた。

「アカネ先生もミオさんも、なんですたすた歩けるの~?」

見かねた騎士に支えられ、皆の後をついていくのがやっとだ。


隠れ里と聞いて、カサネは要塞のようなものを想像していたのだが、実際の里は、よくある田舎の村だった。畑があり、家畜が草を食み、村人が忙しく働いている。

「カイさん、ミオ!」

村長と思われる壮年の男性がやってきた。ミオはもちろんだが、カイとも面識があるらしいとカサネは思った。

「お久しぶりです、親父さん。」

「相変わらずげんきそうだ。…おかえり、ミオ。」

「ただいま、父さん。」

三人の挨拶をぼうっと見ていると、ミオがアカネとカサネを振り返る。。


「父さん、こちらが神殿のアカネ副神官長、そして助手のカサネさんよ。」

「おお、お手紙をいただいた方ですね。よろしくお願いします。村長のモリウです。」

「こちらこそよろしくお願いします。お話のあった方は…?」

カサネはぴょこんとお辞儀をするのが精一杯だった。


「父さん、ここで話し始めないでよ。皆さん、狭いですが家へどうぞ。」


ミオに連れられて、村人の興味津々な視線を感じながら村の中を突っ切っていく。村長の家は一番奥のようだ。

二階建ての大きな家の前で、ミオの母らしき夫人が待っていた。

「ミオ!おかえり!」

「ただいま、母さん」

「さあさあ、お入りください」

ミオの母は、いそいそと家に入ってゆく。


村長の家は個人の家としてはかなり大きい。アカネやカイだけでなく、カサネや騎士たちにも部屋が用意されていた。もともとこの家には、日の王家と従者である村長の一族が住んでいたが、日輪王であるヴァナートが月の城に居を移したので、現在は空き部屋がかなりあるのだという。

カサネは、宴の準備に忙しいミオ達に手伝いを申し出たが、親戚がいっぱい来るから大丈夫とかえされて、仕方なく応接間のアカネのところに行くことにした。


アカネは先程から村長と神殿建立について話し合ってる。その傍に腰を下ろし、テーブルから零れ落ちた資料をまとめてテーブルに戻す。しばらくすると「失礼しますよ」という声がかかり、老女が少年に付き添われて入ってきた。

「待ってましたよ、おばばさま。」

村長はおばばと呼ばれた老女に席をゆずる。アカネが興味深そうにおばばを見つめていた。

「アカネ副神官長、わが里の神事を司るおばばです。」

「はじめまして、色々とご協力いただくかと思いますが、よろしくお願いします。」

アカネが差し出した手をおばばが両手で包んだ。

「こちらこそよろしくお願いいたしますよ。副神官長様。」

「ええ、で、この子がお話のあった…?」

アカネがおばばの後ろの少年を見ると、少年は前に出てきた。あれ?どこかで見たことあるような…とカサネの頭にうかんだ謎は、おばばの次の言葉でとけた。

「私の弟子のスオウです。王やミオのいとこですよ。」


「はじめまして、スオウです。よろしくお願いします。」


輝く金髪に緑の瞳。スオウは確かにヴァナート王に良く似ていた。

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