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第三話 ファンタジーの娼館って、一度は行ってみたいよね

…ふぅ……

主従がカサルの街に着く頃には、すっかり日は暮れていた。今は家路を急ぐ人の数もまばらだ。


「やはり日が落ちてしまいましたね。」


「まだギルドは開いているだろ。サッサと仕事を済ませようぜ。」


「ふう…まったく…あそこで盗賊になど遭わなければ…」


ブチブチと不満を零すリディ。


「でもあの女盗賊も中々具合は良かったからな。許してやれよ。」


「そんなに良いモノをお持ちでしたか?」


「勿論リディ程じゃないさ。」


「ふふっ、それではギルドへ参りましょう。」


レオンの一言でリディは険しかった表情を緩める。逆に散々ヤっておきながらこき下ろされたのだから女盗賊は堪ったものではない。自業自得ではあるが。




ギルドで手紙を渡して報酬を受け取ると、二人は宿屋へと向かった。しかしリディが危惧していた通り部屋は何処も満室。


「弱りましたね…今夜は野宿でしょうか?」


「うーん…良し!奥の手を使うか。」


「奥の手ですか?」


「付いてくれば分かるさ。」





「ここは…娼館ですよね?」


「ああ。今夜はここに泊めて貰おう。」


レオンが案内した場所は娼館。男を癒やし楽しませる夢の花園だ。

困惑しているリディに先んじて中に入るレオン。彼の顔を見るなり店主らしき男性が破顔する。


「おお!これはこれはレオン様!お久しぶりです!」


「よう、サッド!宿屋が満室なんだ。泊めてくれ。」


「そうでしたか。いやいや、間の悪い時に来てしまった様ですね。確かサンドワームの大量発生とかで、冒険者がこちらに押し寄せて居るんですよ。」


「成る程。だから何処も満室だったのか。で、良いかい?」


「ええ、構いませんとも!レオン様ならば何日でも泊まっていって下さい!」


凄い歓迎具合だ。払いの良い上客でもこれ程の熱烈な歓迎はしないだろう。


「ご主人様、一体何をしたのですか?予想以上の歓迎ぶりなのですが。」


「うん?ああ、それは…」


レオンが言うには以前一人でここを訪れた際に、娼婦全員の病と怪我を治したという。中には性病で施しようのない重症者や乱暴な客に傷付けられた者なども居た。


それらを片っ端から治したお陰で、娼婦だけでなく店の店主にまで感謝されたのだ。


「あの時は楽しかったなぁ。お礼にタダで三日三晩女の子達と組んず解れつ…ムフフフ…」


最後の台詞で色々台無しなのだが、生憎レオン至上主義のリディは功績の方にしか目が行かない。


「成る程。病気に喘ぐ娼婦の方々に、救いの手を差し伸べられたのですね。ご立派です!」


見返りに散々遊び倒したのだが、リディは女がレオンに股を開くのは当然だと思っているので非難はしない。


例えレオンが人妻を孕ませたとしてもリディは責めないだろう。むしろ相手に「光栄な事だからありがたいと思え」くらいは言う筈だ。


「ところでお隣の女性は?」


リディの存在に気付いたサッドが尋ねる。


「申し遅れました。私はレオン様にお仕えする者でリディと申します。」


リディが優雅かつ丁寧に一礼して見せると、サッドは慌ててそれに応える。


「こ、こりゃどうもご丁寧に!」


反応が遅れたのはリディに見とれていたからだ。


「やるじゃないですかレオン様!こんなお綺麗な従者を連れておられるとは!職業柄、色んな女性を見てきましたが、これ程器量良しな女性は稀ですよ!」


「恐縮で御座います。」


「いや、付き合ってみると結構イイ性格を…何でもないっす。」


余計な事を話そうとしたレオンを、サッドから見えないよう抓って黙らせる。


「そ、それより部屋に案内してくれ。」


「はい!存分にお楽しみください。おーい!お前達!レオン様がいらしたぞ!」


「「「な、何ですって!?」」」


ドドドドドーー!!


店主が呼び掛けた直後、奥から店中の娼婦達がレオンの元へと集まる。中には他の客との最中にも関わらず飛び出した者まで居る。


「レオン様ぁ!いらっしゃいませぇ!」


「レオン様!覚えてますか!?足を治して貰ったマリアンです!」


「流行病を治して貰ったサーニャですぅ!」


「わはははっ!皆元気そうで何よりだ!」


娼婦達に揉みくちゃにされながら部屋へと消えていくレオン。凄まじい人気である。


娼婦達の熱気にあてられ、ポツンと一人取り残されたリディだったが、もちろん台詞はこうだ。


「さすがですご主人様!」




翌朝リディが起こしに行くと、レオンはまだ娼婦と繋がっていった。しかも全身キスマークだらけ。


床には精根尽き果てた娼婦が数人転がっている。


リディはレオンから娼婦を引っ剥がし強引に連れ出した。


「もう一日くらい泊まっていっても良いんじゃないかリディ?」


「ダメです。帰りも請け負った手紙が有るんですから。直ぐにベルナへ戻りましょう。」


ベルナとはレオン達が居を構える街の名前だ。輸送依頼では行きと帰りの両方で荷物を運ぶ事で、報酬を二回分受け取れる。冒険者の中では常識だ。


後ろ髪引かれるレオンの腕を引きながら、、リディはギルドへと向かった。




二日後、二人は無事ベルナへと帰還。

道中、低ランクの魔物には遭遇したものの概ね問題は無かった。


部屋に入るとレオンは真っ先にベッドへとタイブ。


仰向けに寝そべるとリディを手招きする。


「何ですかご主人様。その手は?」


「ん?もちろん報酬の催促だけど?」


「前払い致した筈ですが?」


「それは行きの分だろ?帰りの分が未納でーす!」


「そうきましたか…」


今回レオンに働いて貰う為に、リディが身体で払ったのは一回分の報酬だ。


ついでとはいえ、帰りも手紙を輸送したのでレオンが働いた回数は厳密には二回。

確かに一回分足りない。


「ですが二回目は報酬を出すとは約束していませんよ?」


「うぐ…」


リディの指摘に押し黙るレオン。彼が報酬を得る為には二回目の、帰りの仕事を決める際に約束しておく必要があった。


「ぬぐぐぐ…」


悔しがるレオンを見てリディが微笑む。


「ふふっ、報酬は渡せませんが、盗賊退治のご褒美は渡さねばなりませんね。」


「やった!」


「失礼致しますご主人様…」


何だかんだで結局主人には甘いリディ。


彼女はふわりとスカートを捲り上げ、愛しい主の上に跨がった。





こんなんどうでしょう?感想が欲しい…

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