第二話 盗賊成敗!
短かったかもー。
早朝、太陽が顔を見せる前兆として空が白み出す頃、カサルへと向かったレオンとその従者はベッドの上に居た。
二人は一糸纏わぬ姿で抱き合い、互いの温もりを感じながら微睡んでいる。
但し、まだカサルには着いていない。今居るのは森のど真ん中。夜営中だ。
そんな状況で何故ベッドが有るのか。
更に普通、旅先では魔物や盗賊の襲撃を警戒せねばならないが、周囲には強固な結界が張られ敵の侵入と発見を防いでいる。
どちらも有り得ないような現象だが、それを可能にするのがレオンなのだ。
世の冒険者達が、いや…そうでなくとも涎を垂らして欲しがるような能力である。
「ご主人様…」
「おはようリディ。」
微笑みながらリディの黒髪を撫でるレオン。リディはそれを嬉しく思いながらも心を鬼にして主人を窘める。
「ご主人様、幾らお仕置きとはいえ…やり過ぎです。腰が立ちません。仕事に影響を及ぼさぬようお願いした筈です。」
「わ、悪かった…」
ジト目で睨むリディにレオンは顔を強ばらせた。
急いで回復させる。
「ふぅ…そろそろ夜が明けてしまいます。身体を清めましょう。」
「はい。」
そそくさとお湯の入った桶を取り出すレオン。どちらが従者か分からない。
ベッドから下りたリディがタオルを用意する。彼女の全身にはレオンが放ったであろう残滓がこびり付いていた。
お湯で濡らしたタオルで先にレオンの身体を丁寧に拭い、次に自分の身体を清める。ちゃんと主を尊重する辺りはメイドの鏡だ。
洗っている間にムクムクと元気になっていく場所をペシリと叩いてはいたが…。
支度を整え旅を再開してから数時間後、レオンが異変を察知する。
「リディ…」
「敵ですか?」
「ああ。多分な。」
「魔物でしょうか?」
「いや、人間だ。囲まれてるな。」
レオンは足元に転がる石を拾い上げ、茂みに向かって投擲する。
「いてぇ!何しゃがる!」
反応は直ぐに返ってきた。森の茂みに潜んでいた男が額から血を流しながら現れた。
続けて他にも身を隠していた者達が続々とレオン達の前へと飛び出す。
「中々勘が鋭いじゃないか。ええ?」
手に持った短刀を弄びながら進み出たのは女だった。
「珍しいですね女性の頭目とは。」
「ふん。おい、お前!女と金を置いて行きな。そうすりゃ命だけは助けてやるよ。」
リディとは取り合わず主であるレオンを恫喝する女盗賊。
「え?リディも?レズなのか?」
「馬っ鹿野郎!あたしゃノーマルだよ!女は売るのさ。見たところ器量も良いようだし高く売れそうだからね。」
「だってさリディ?」
「激しくお断りさせて頂きます。私は身も心もご主人様のモノですので。」
「いけしゃぁしゃぁと…もういい!お前らやっちまえ!女の方は生け捕りにしな!捕まえた奴には最初に使わせてやるよ!」
使うというのは性処理としてという意味だ。当然リディとしてはまっぴらご免である。それに自分の敬愛する主人が許す筈がない。
レオンは腰から下げた長剣を抜き放ち、襲い掛かる盗賊を次々に斬り捨てていく。
中にはリディを人質に取ろうとする者も居たが、恐ろしい速度でレオンが迫る。敵はリディに触れる事さえ出来ずに首をハネられた。
その身のこなしは明らかにギルドランクDの冒険者のものではない。
二人を囲んでいた盗賊達は一分と掛からずに全滅した。
残された女盗賊はパクパクと口を開閉させ唖然としていた。
「ば、化け物…」
慌てて踵を返す女盗賊だったが、すぐさまレオンによって捕縛されてしまう。
「ご苦労様ですご主人様。」
「はぁ…疲れた。」
そうは言うものの、微塵も呼吸は乱れず、汗一つかいていない。
「面倒臭いんだから襲って来ないで欲しいもんだ。」
「強盗を行うような輩には、ご主人様の素晴らしさを理解出来ないのでしょう。仕方有りません。」
如何にもレオン至上主義のリディらしい感想だ。
「あ、あたしをどうするつもりだい!」
女盗賊が地べたに転がったままわめき散らす。レオンは屈み込んで彼女と視線を合わせるとニンマリと笑う。
「そういえばリディを売り飛ばすとか言ってたよな?」
「うぐっ…」
「他にも部下に使わせるとか。」
「…うう…」
「売られたやつの痛みを教える為に、奴隷商に引き取って貰うか。出来るだけ質の悪いヤバいとこで。あそこは性癖の異常な客ばっかり抱えてるからな。四肢の欠損くらいは覚悟しておけよ?」
「ヒイッ!」
レオンの邪悪な笑みを直視しし、血の気が引いていく女盗賊。彼女はこれから訪れるであろう絶望的な未来に慄いた。
「なーんてね!」
「ご主人様、趣味が悪いですよ。」
「ち、違うのかい?」
「ここから街に届けるのも面倒だし、お前には俺からお仕置きする事にする!」
「お、お仕置き…?」
「良いかリディ?」
「お早くお願いします。夕刻には街に着きたいですから。」
「よおし!」
従者の了解を得たレオンが女盗賊へと覆い被さる。
「ま、待ちな!まさかお仕置きって…!あっ!アッーーー!」
一時間後、下半身丸出しで全身を痙攣させている女盗賊の姿があった。
「ふぅ…スッキリ!」
隣では一仕事終えたレオンが愚息を仕舞っている。
「ご主人様、参りましょう。急がないと宿が取れなくなってしまいます。」
「はいはい。しかしやり過ぎたかな?」
足元で気を失っている女盗賊に視線をやる。顔は涙と鼻水と涎でグチャグチャ。同じく下も色んな汁でグチャグチャだ。
「問題有りません。捕まれば縛り首なところを、ご主人様のお情けまで頂いたのですから。盗賊には過ぎた処置です。」
「それもそうだな!」
レオンは女盗賊を縛っていた縄を斬っておいた。
「宜しいのですか?」
「当分動けないだろうし、縛られたままじゃ魔物に喰われるかもしれないからな。」
「お優しいですね。さすがはご主人様です。この方も末代まで感謝する事でしょう。」
「はっはっは!あんまりおだてるなよ。」
盗賊の成敗を終えた主従は街を目指す。
女盗賊への罰といえばコレだよねん。