第3話 謁見
「痛たたたたっ!ギブギブギブギブゥゥゥゥゥウ!!」
「全く、アナタって人は何度言えば懲りるのかしら。もうすぐ勇者様がいらっしゃるというのに、メイドのお尻を追いかけたりなんかして…」
「ち、違う!断じて違うぞエレノア!余はただ服に付いた糸屑を取ってやろうと…っぎぁあああああ!!!折れる!!高貴なるエスティアラ王族の腕が折れちゃうぅ!!」
「陛下、御安心を。王城には常に一流の治癒魔導師が十人体制で待機しています」
「そういう問題ではないっ!つーか早く止めてジェイド!あだだっ!右腕が逝っちゃう!」
「私の命は何時如何なる時も陛下を支え、陛下のお命をお守りする為にございます。こんなところで易々と死んではおれませぬ」
「流石余の右腕、側近の鑑!実に頼もしい!実に頼もしいが状況見て物言えボケェ!!リアルな右腕が明後日の方向へララバイしかけとるんじゃあっ!!」
「状況、といいますと、使用人にセクハラ行為を働き王妃様に腕ひしぎ十字固め(通称エレノアスペシャル改)を喰らっている王が側近に助けを求めるという実に情けないこの状況の事ですか?」
「ジェイド君きっついなぁ!二重で右腕がキツい!」
「あらあら、まだ余裕がお有りのようね。えいっ★」
「あ」
ボキンッ
「……………」
「……………」
「……なぁ、松田よ」
「…何だ」
「コイツら、ホントに助けなきゃダメ?」
「………」
…神なら嘘でも駄目と言っとけ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いぁっはっはっは、みっともない所をお見せしてしまいましたなぁ」
「いや、まったく」
入り口から縦に伸びる赤絨毯、その先にある数段高い位置の玉座から国王・オズワルドは気さくに笑う。
年の頃はオレの親父と同じくらいだろうか、整った口髭が良く似合う中々のナイスミドルだ。
それに身に纏う雰囲気、カリスマ性というヤツなのか、他の人とはどこか一線を画している気配が感じられる。正に王、といった貫禄だ。
右腕に掛かる三角巾が全てを台無しにしているが。
「致し方あるまい。奥方の技のキレは見事なものだ。あれを逃れるのは至難の業だろう」
「いや、そこじゃねぇだろ」
「ハハハ、流石は勇者様の姉君、御目が高い。実を言うと妻は昔、冒険者を生業としていた時期がありましてな、武の心得は近衛の者にも今だ引けをとらなんだ」
いや、そこ自慢することなのか?
つーか近衛の立場ねーじゃねぇか、可哀想に。
「それにしても、娘から聞き及んでおりましたが、マツダ殿の美しさには驚きましたな。我が国自慢の華々が霞んで見えますぞ。おぉそうだ、是非その美貌の秘訣を娘たちの後学の為にも聞かせて頂きたい。どうですかな、この後二人でゆっくりお茶など飲みながrぶへぇっ!!?」
うっわぁ、王妃の拳がノーモーションでリバーに…
衝撃で横にくの字に曲がった王様は、玉座の前でケツを突き出して悶絶している。
「ふむ、あれは寸勁というヤツだな。棒立ちの体勢から繰り出すとは…あのエレノアとかいう夫人、見かけによらず相当の武人と見える」
松田は顎に手を当てうぅむ、と唸る。
「いや見かけもクソもねぇよ。第一印象から肉体言語全開だよ」
「オホホホ、本当に御免なさいね。この人ったら何時まで経っても手癖が悪くて…。ぼちぼち去勢してしまおうかしら」
「え、エレノアさん?ちょっとその冗談笑えないんですけど」
「あら、手癖が悪いのは本当でしょ?」
「ごめんなさい去勢らないで下さい死んでしまいます」
ダメだこのスケベおやじ、完全に王妃様の尻に敷かれとる。
「やれやれ、陛下の守備範囲の広さには困ったものです」
「何を言うかジェイド!幼いならば育む楽しみ有り、熟れているなら包まれる安らぎ有り!守備範囲などという縛りは、器の小さい男の考えぞ!!あ、ごめんなさい許してください左腕は勘弁して」
「陛下、人は其れを変態と呼ぶのです」
部下の前で王様ボロクソじゃねーか…
視線を横に向ければ立ち並ぶ兵士たちの表情が見える。ある者は苦笑し、ある者はやれやれと首を振り、またある者は笑いを堪えて肩を震わせながら俯いている。
謁見の間には、とても国が滅ぶ危機に瀕している時のものとは思えないほど和やかな空気が流れていた。
・・・・・・
「あ痛ててて…お前たち、客人の前なのだからもう少し手加減してくれ…。あぁすまん、話が前に進んどらんな。えー、何処まで話しとったかな?」
「まだ自己紹介しただけっす、王様」
「おお、そうだった。…さて、先ずは勇者サカガミ殿とマツダ殿には謝罪をせねばならぬな。此方の都合でそなた達の人生を大きく狂わせてしまった。…誠にすまない」
オズワルドと王妃は悲痛な表情で玉座から頭を下げる。
「あ〜いや、その辺は気にせんで下さい。大体の事情は聞いてますし、王様が国を思っての判断だったんですから、しょうがないでしょ」
オレ的にはこの人らに召喚されたというより、松田のアホに連れてこられたって感じだし、この国にはそんなに憤りは無いんだよねぇ。
「し、しかし…」
「こいつの言う通りだ、お二人が気にする事はない。勇者として、廃人ギリギリまでとことんコキ使ってくれて構わん」
「構うわアホォ!つかテメェが気にしろ!!あー、兎も角オレもコイツも別に怒っても恨んでもないっすよ。頭上げてください」
「お二人は寛大でいらっしゃる……だが、このような不条理は決して許されるものではない。いずれ、何らかの形でお詫びをさせてくだされ」
俯くオズワルドは固く拳を握り締め、決意の篭った瞳でオレ達を見つめた。
「はぁ…じゃ、貸し一つってことで」
律義なこって……
いや、オレが気にしなさ過ぎなんかねぇ?
そりゃ生まれ育った世界に未練がない訳じゃねぇけど、それならそれで帰れるように手を尽くすまでだし……成るようにしかならんだろ?
そんなオレに松田曰く…
「普人ならば怒鳴り散らすなりパニックを起こすなりするもんだがな…。恐らく魂に刻み込まれた幾多の苦難がお前をそうさせとるんだろうな」
どんだけ苦労してきたんだよ前世のオレ……
このあとオズワルド王から改めて実状を聞いたオレ達は、此方での生活を保証する事を条件に、勇者となる事を引き受けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
~自室~
オレは部屋に入ると速攻で靴を脱ぎ棄て、キングサイズのベッドへ飛び込んだ。
「あ〜…疲れた」
あの後、思いの外あっさりと謁見は終了した。今日の所はとりあえず顔見せだけ、ということらしい。
「しっかし勇者ねぇ……生活の為に仕方なく引き受けたとはいえ、実感沸かねぇなぁ」
そもそもオレみたいな凡人に一体何が出来るんだろうか。松田の言ってた『神様チート』とやらもよく分からんし……何にしても先ずはそっからだよなぁ…
「何だ平次、そのダラケっぷりは」
仰向けで思案するオレの視界に突然、部屋へ戻る途中で別れた筈の松田が覗き込んできた。
「っ!松田、何時の間に……」
「シャキッとしろ」
「それでも選ばれし勇者か」
「そんなことよりおうどん食べたい」
……………。
「何でいきなり四人に増えとんじゃワレェェェェェェ!!!?」
「「「フッフッフ……これぞ神の御技!」」」
「影分身の術!!」
「四○の拳!!」
「フォー・オブ・アカ○ンド!!」
「ざるうどんウマー」
「バラッバラじゃねーか!!あと最後の奴ベットの上でうどん喰うな!汁飛んだら怒られるだろ!!」
「おい松田B、C!ちゃんと本物に合わせろ!」
「何を言う!全て本物に決まっとろうが!!なぁ松田C!」
「松田D、私にもうどん分けてくれ」
「えー…」
「何がしてぇんだテメェらァァァ!!!」
「まぁ落ち着け」
「KOOLになれ」
「オーロラエクス○ューション」
「カレーうどんウマー」
「いいからベッドから降りろォォォォォォオ!!!」
「あ」
びちゃっ
・・・・・・・・・
たまたま通りがかった給事のおねえさんにオレは土下座して、シーツを交換してもらった。あの引きつった顔は暫く忘れられそうにない。
「やれやれ、落ち着きのない奴だ」
「部屋ん中で突然分裂するほどはっちゃけてねーよ!つーか何しに来たんだよ!!」
何時の間にやら一人に戻った松田はソファで胡座をかいて茶を啜っている。
「そう邪険にするな。折角良いものを持ってきてやったというのに」
「良いもの?」
「あぁ、コレだ!」
松田はそう言って指を鳴らした。すると絨毯に子供一人分くらいの小さな魔方陣が発現し、何かが光の中から現れた。
何故か微妙にボヤけたその姿は、二頭身の体に丸い頭とソコに聳える一本のチョンマゲ、背中には身の丈ほどの刀を背負った侍を模したような何か……
「これぞ神の技術!敵対意識感知ロボ・殺気だ!!」
「アウトォオーーーーーー!!!!!」
完全にアレだった。
「名前から何まで諸々全部丸パクリじゃねーかァ!!!純度百パーセントのアウトだよ!!」
「ハハハ、何をバカな」
「我輩ハ侍ナリ」
「ナリとか言っちゃってんじゃねぇか!完全に揚げ芋中毒ロボだよ!どーすんだよコレ!もう言い訳できねーよ!!!」
「まぁ見た目は少々アレだが戦闘能力は抜群だぞ。必殺の武器は刀から染み出る猛毒だ。これに斬られたものは三日三晩糞尿を垂れ流しながら悶え苦しみ、やがて死に至る」
「こえーよ!!国民的人気キャラになんつーもん装備させてんだよ!!奇天○斎様も怒りでシャイニングウィザードぶちかますレベルだよ!つーか何でモザイクかかってんの!?いらねーよ!これ小説だよね!!明らかに配慮するとこ間違ってるよ!!」
「何、この小説がアニメ化した際の事を考慮したまでだ」
「ねーよ!!!ありえねーよ!!ユニーク200人越えただけで作者どんだけ調子こいてんだよ!!3週間放置してたらダラダラ伸びちゃっただけだろうが!」
「まぁ、作者の事はゴミ箱に置いといて。コイツは簡単に言えば設定した人物に対して放つ殺気、敵対心を感知して所有者に報せるとか報せないとか、なんか凄いっぽい機械なのだ」
「持ってきた本人よく理解してねェし!?」
「そんなこんなで役に立つ代物だ。有り難く貰え」
「確かに見えないとこの敵が判るってのは有り難いが……この容姿はどうにかならんのかい」
「案ずるな、これは只の迎撃機能付き充電器。本体はこっちのブレスレットだ」
松田は無い谷間からシャラリと一組の金属製の腕輪を取り出した。
「初めからそれ出せやァ!つーか充電器でかァッ!?」
「これはこれで良い護衛になるんだぞ?コロッケやらんと動かんが」
「使えねぇ……」
平次は神造アイテム・殺気を手に入れた!!
このあと何かダラダラ長くなりそうなので、中途半端ですけどココで締めます。