幕間~まどろむもの~
とろりとした深い闇の中ソレは微かに身じろぎした。
コエがする。あの時もそうだった。産まれたばかりのソレを強く惹き付けたコエ。
―――どうして………どうしてっ!!………っどうしてっっ!!!………何故………?
悲しみと、怒りと、戸惑いと、不安と………。ごちゃ混ぜになったココロ。
―――何故なのウルク………。私の幸せを祈ると言ってくれたじゃない!!!
ナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼ………ドウシテ?
混乱の中聞こえるコエはとても澄んでいて綺麗だった。強烈な光を放つその魂。
その声が内包する思いはソレの知らないものだったから、とても美味しそうに思えて手をのばした。
悲鳴と怒号と怨嗟のコエ。名前を知らないその感情の多くをソレは貪りながら喰べた。
産まれたばかりのソレはとてもお腹を満たされて眠ったのだ。
なのに何故だろう。
あの、入れ物に入った小さな生き物たちは今もここにいる。闇と同化した哀れな生き物は己が何者であったのかも忘れ甘美なる苦しみのコエをあげながらソレの腹を満たす。
なのに、ソレはとても飢えていた。どうしてだろう。自分は満足していたはずだったのに。
気がつけば、一番ソレを惹き付けたコエの生き物がいない。
まどろみの中、それはコエの主を求めて手を伸ばした―――。