じじいから、叶わぬ孫へ、ラブレター
わしは特に孤独ではなかった。
嫁と結ばれた、子を設けることができた。
孫なんぞ夢でしかなかった。
その孫を見ることなく、わしの人生は終わろうとしている。
その点は実に悔しく思う。
だから、遇う事がかなわない孫に、1通手紙でも送ろうと思う。
題名は……そうだな、「じいちゃんからお前への手紙」
にでもしておこうか。逢う事の叶わない、性別もわからない
お前への、じいちゃんとして生きる事の出来なかった、
精一杯のラブレター。
「じいちゃんはな、嘘つきなんだ」
うむ、何か違う。嘘つきは自負しているがいきなりはダメだろう。
もっと捻るべきだ、「すまんな我が孫よ」…違うな。
輪をかけてダメだろう、ひねりを覚えんか?わし。
しかしばあさんにも内緒で書くしなあ、いい案は中々浮かばないものだ。
まあ出だしはいいとしてだ、中身を考えなければ。
このじじいのなりそこないは何を想って何を託すのか?
婆さんにすべてを託すのも悪くはない、しかしなあ、
わしが寂しいんだよなあ、見ることのできない孫に、それこそ迷惑だろうが。
孫に迷惑だろうが、だが迷惑だろうが、やはりわしはじじいでありたい。
じじいになるのは絶望的だが、書き残すくらいはいいだろう?
うーむ…やっぱり最初の出だしで行こうか…
頭悪いわしだ、どうせろくでもない事しか書かないだろう。
だからこそだ、じいちゃんって嘘つきなんだってさ、って話のきっかけに
でもなればいいだろう。もし嫁と何かで衝突して不機嫌になったとき、
娘と喧嘩してここへ帰ってきた時に、帰ってきたは違うな、孫にとってここは
単にじいちゃんとばあちゃんの家でしかない。
そこまでおこがましい事は考えるべきではないだろう。
ならば、わしの生きざまを書いてやろう。どれだけ嘘をつくと
痛い目に遭うか。どれだけつらい思いを抱えても、嘘をつき通さなければ
ならないのか、地獄か?と思うくらいの壮絶な…だと孫がかわいそうか。
出来る限り穏やかに…文章に残すというのは本当に難しいなあ…
もう適当に書いて終わらせよう、見られぬ孫よ、適当なじじいですまんな。
嘘をつき通すのは限界なんだ、わしは病院で最期を迎えるだろうし、
バレたら恥ずかしいしな。こっそり書いて仏壇にでも隠しておくとするか。




