6.2 vsストロング将軍
俺達がそれぞれに別れると、早速ジンは目にも留まらぬ速さで兵士達を麻痺させていった。
「ほう、私の相手はお前か。てっきり暗殺を防いだ者が私の相手をすると思ったのだがな。先程の様子を見るに お前がリーダーなのだろう?」
「ああ、そうだが」
「お前のようなバカがリーダーだと命令に従う者は苦労する。私ならば より良い命令を出せるがな」
「わかる奴にはわかるってだけの話さ。御託は良いから早く戦おうぜ、それとも怖気付いたのか?」
「お前の人生最期の会話だ。少しでも長くしてやろうと考えた私の思いにすら気付かんとは、やはりバカだ。良いぞ、来るなら来い。三流冒険者の剣の腕など たかが知れているのだからな」
俺は剣を抜いて将軍に斬りかかった。
帝国の力の頂点というだけあって俺の剣はかすりもしなかった。そもそも俺が弱いだけだが。
「どうした冒険者!そのような口ほどにも無い実力では相手にならんぞ!」
「そうかい。《ウインドナイフ》」
俺が不意を突いて放った魔法は見事に鎧の関節部に当たり、将軍の右腕の手首を斬り裂いた。これが当たるって事はギルさんよりは弱いな。
「ぐっ、魔法剣士とはな。油断したぞ。しかし、この程度かすり傷に過ぎん!」
「いや、致命傷だろう。右手の腱が切れているんだからな。もう両手で剣を持てないぜ。それどころか利き腕で剣を持つことすらできないな」
「お前程度の雑魚、片腕で充分だ。それと私の利き腕は左だ」
俺と将軍が剣を合わせると必ず俺が押し負けた。両腕の俺よりも片腕の将軍の方が力が強いってどんな理屈だよ。
「弱い、貧弱過ぎるぞ、冒険者!そんな剣では1000回振っても当たらんぞ!」
「さっきから冒険者、冒険者って俺には柊健っていう名前があるんだ。呼ぶならちゃんと呼べよ」
「私は愚かなバカの名を覚えることができなくてな。悪いがお前の名など瞬きする間に忘れてしまうよ」
「そうかい、《ガスト》!」
俺は熊の頭を潰すだけの力を持っている空気の塊を放つが、身体に直撃した将軍は少し後ろに下がるくらいでほとんどダメージは与えられていないようだった。
「剣も魔法も弱いな。先程の魔法で腕を斬られたことが恥ずかしいくらいだ。どれ、そろそろ遊びは終わりだ。潔く、そして無様に死ね」
将軍は大きな剣を尋常ならざる速度で振り抜いた。しかし、その剣は虚空を切り裂いた。
「何、一瞬で消えただと!?」
俺は「ミラージュ」で自身の位置を誤認させておいたのだ。
「《フレイムブレス》」
俺が手から放った炎は、将軍の身を包んだ。
「不意を突いたところで無駄だ。この程度の火力では鎧を融解させることなどできん!熱っ!」
「魔法は道具だ。1つしか使い方がないと思ったら大間違いだぜ。まあ、脳が筋肉で出来ている奴には難しいか」
俺がそう言った瞬間、プツンという何かが切れたような音が聞こえた気がした。
「お前、今、私をバカにしたな…。許さん」
俺の身体は将軍の剣によって後方に吹き飛び、壁に叩きつけられた。
「ぐはっ」
身体の至るところで骨が折れて、激痛が走る。
将軍がゆっくりと近付いてくる。
「他愛のない。一度攻撃が直撃した程度で虫の息ではないか」
「ああ、我ながら情けないぜ。最後に俺の質問に答えてくれないか?」
「うむ、お前の最期の頼みだ、聞いてやろう」
「なぜ戦争を起こそうとしているんだ?」
「そんな事が知りたいのか、まあいい。エーシャア王国には最強と称されている女騎士がいてな、その女と戦場で戦い、そして殺したいのだ。そうすれば、私は大陸で最強の者になれる。男たるもの最強を目指すべきだろう?」
「くだらないな」
「最期まで口の減らない奴だ。じゃあ死ね」
そう言って剣を振りかざした将軍は、その剣を振り下ろすことなく地面に倒れた。
「やあやあ、ケン。遅くなってごめんね。オレも頑張って急いでいたんだけど、兵士が多くてね。全員麻痺させるのにちょっと手間取ったよ」
「いや、ちょうど良かった。おい、将軍。麻痺しちゃいるが、聞こえているだろ?悪いが俺は最初から1人で倒そうとも倒せるとも考えていなくてな、真面目に戦ってなんていなかったんだよ。俺の役割は時間稼ぎと あんたの注目を俺に向けることだったのさ。さて、こっちは片付いたし、カレンの加勢をするか」
「うんうん。でも、カレンちゃんのところに行く前に、ケンの怪我をどうにかしないと」
「あ、それは問題ない。《大河が如き時の流れよ 暫しの遡行を与えよ 大いなる神の猶予 タイムバックワード》」
「わお、すごい魔法だね。かすり傷1つなく治ったね」
「ああ、俺のとっておきの魔術だ」
「それじゃあ、カレンちゃんのところに行こうか」
俺とジンがカレンの方に目を向けると、そこには燃え盛る宰相がいた。




