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4.2 プカンへの道


 翌朝、俺とカレンは屋敷へと向かった。これから俺達は王都プカンへ旅立つことになるだろう。


 そのため昨日のうちに、宿屋「トワイライト」のマクスウェルさん達には別れの挨拶をしておいた。前払いしていた分の日数はまだ経っていなかったので払った料金が無駄になると思ったが、マクスウェルさん達への感謝の気持ちということで払い戻しはしなかった。


―――


 屋敷に着くとギルさんがいた。


「おはようございます」


「おはようございます、ケンさん、カレンさん。準備はお済ですかな?」


「はい、いつ出発しても大丈夫です」


「では私が仕える姫様に御二方を紹介いたしますので、私に付いて来ていただいてもよろしいですか?」


「はい」


 姫様?


 ギルさん付いていくと、まさに姫様と言わんばかりのドレスを着た女性がいた。青みがかった黒髪ロングで歳は20歳ぐらいだろうか、ユイさんやツバサさんよりスタイルが良いな。


「姫様、こちら今回姫様の護衛に就く冒険者のヒイラギ・ケンとミヤモト・カレンです」


「はじめまして、私はエーシャア王国現国王フタミ・エーシャアの娘、シャルロット・エーシャアよ。ケンさん、カレンさん、今回はよろしくお願いするわね」


 姫様って、本物の姫様だったのか。


「はい、頑張らせていただきます」


「じいやがね、ヤポンに着いてから『この街の近くで非常に大きいキメラが出た』って言う噂を聞いたらしくてね、心配だから帰りの護衛は増やそうって話になったのよ。じいやがいれば何も心配なんていらないのに『姫様が危険に晒される可能性は極力減らさなければなりませんから』とか言って冒険者を雇うことにしたのよ」


「姫様、彼らも準備をしなければならないので」


「あら、そうね」


「では、失礼します」


 そう言って俺達は屋敷の正門へと戻った。


 しばらくすると出発となり、俺達は兵士の方々と同様に馬車の周りを囲んで歩いた。


 プカンへは2週間ぐらいかかるらしい。


===


 さて、出発して早くも5日目だ。


 驚くほど何もない。そりゃそうだ。一国の姫様がいるのに何かあって貰っても困る。出来るだけ安全な道を通り日が沈む前に街の宿屋に泊まる。しかも、10人以上で移動しているからキメラも出てこない。そんな感じで移動をしていれば、危険な事は何もないだろう。


 しかし、今日はそうもいかない。今日通る森の道は野生動物が多く人が襲われる事も珍しくないと言う。


―――


 森に入ってしばらく歩いているが、一向に何かが出てくる気配はなかった。


 しかし、突然俺達の進路に数匹の狼が現れる。あれは、レッドウルフか?


 俺が周りを見渡すと全部で20匹程度の狼に俺達は囲まれていた。


「カレン、魔術は使えるか?」


「はい。森に入ってからずっと精神を集中させてましたから今すぐにでも使えますよ。《敬虔なる神の使徒よ 聖なる炎でもって悪しき存在を焼き払え 神による大いなる断罪 ウィッチトライアル》」


 いつも通りに狼は磔にされ業火に包まれる。だが、いつも通りはそこまでだった。


 狼達は決して炭にはならなかった。なぜだ!?


「あれは『スカーレットウルフ』ですな。火炎や熱に対する耐性が異常に高い事が特徴の狼ですから、火属性の魔術では太刀打ちできないでしょう」


 ギルさんが馬車から降りながら説明してくれた。


 スカーレット、色の違いが微妙過ぎてわからないな。


「私は後ろ半分のスカーレットウルフを倒しますから、皆様は全員で残りを倒してください」


「わかりました。カレン、広範囲に攻撃できる魔法を使ってくれ」


「はい。《降り注ぐ鉄槍の雨――》」


「「《ニードルレイン》」」


 スカーレットウルフに向かって無数の槍が降り注いで体を貫く。「詠唱共有」を使っているので数は倍だ。それにしても「詠唱共有」は本当に便利だな。


 少し眩暈がする、使った魔法の魔力消費量が多かったんだな。


 俺らの魔法をかわした狼達は兵士の方々が倒してくれたので、一応俺達と兵士の方々に割り振られた分は倒した。


 振り返るとギルさんの方も片付いていた。戦闘力 高過ぎるだろ…。


 そんなわけで今日もやっぱり何事もなく1日が終わっていくのであった。


===


 出発から2週間後、プカンに着いた。


 スカーレットウルフに襲われた後も、時折 野生の獣に襲われたものの やはりギルさんが大半を片付けてしまうため、俺とカレンからしてみれば ほとんど何もせずにプカンに到着したみたいなものだった。ギルさんだけでも問題はなかっただろうな。この仕事ぶりで報酬を貰うのは申し訳ない気分だ。


―――


 プカンは この国の王都と言う事もあってヤポン以上に人で溢れていた。


 王都は大きな山の頂上に城が出来てから、それを追いかけるように斜面やふもとに街が出来たらしいので、大きな山が丸々1つ街になっているような感じだ。王都は危害を加えるものの侵入を防ぐために非常に高い壁で囲まれている。斜面がなだらかな東側半分が貴族区で、斜面を切り拓いて建てられた大きな屋敷がいくつもあった。今回は通らなかったが、急な斜面である西側には庶民がすんでいるらしい。ちなみにプカンのギルドは西側の山のふもとにあるそうだ。


―――


 城についてから荷下ろしの手伝いをしているとギルさんに呼ばれた。


 付いていくと、玉座の間だった。俺達の目の前にいるのはエーシャア王国 第23代国王フタミ・エーシャア その人だった。


 とりあえず、俺達は跪いた。


「冒険者のヒイラギ・ケン、参じました」


「同じくミヤモト・カレン、参じました」


「うむ、表をあげよ。まずは、この度の仕事ぶり大儀であった」


「もったいなき お言葉です」


「うむ、そして本題だが、今回諸君を呼んだのは他でもない。諸君の実力を見込んでやって貰いたい仕事があってな、隣国のエウロメ帝国に書状を届けて欲しいのだ。もちろん報酬も見合うだけ払い、ギルドにはこちらから連絡しておこう。どうかね、受けてくれるか?」


 国王からの直接の依頼を断れるわけがないだろう。


「はい、その依頼喜んで受けさせていただきます」


「うむ、それは良かった。休戦中とは言え敵国に大切な兵を送り込むわけにはいかなくてな。それに この国の冒険者や商人では信用に値しないのでな、書状を届けるものがおらず頭を悩ませておったのだ。そんな時に諸君が訪れた。諸君は私の使用人に認められるだけの実力と人間性がある、この依頼には実に適任だ」


「ありがたく存じます」


「細かい事は後日、うちの者に通達させよう。今日のところは帰って良いぞ」


「はい、失礼します」


 俺達は玉座の間から立ち去った。


 ふー、疲れたな。王に謁見する機会なんてそうそう、いや全くなかったからな。


―――


 俺達は城を出てギルドで今回の依頼の精算をした後、宿屋で休むことにした。


 今日泊まる宿屋はギルさん達が紹介してくれた宿屋なので一応信頼はできるが、トワイライトに比べると宿代は少し高い。今回の報酬が37万ブロンだったことを踏まえれば気にするほどの差ではないだろう。


 人は持っているものを失ってから その真価に気付くと言う。まさにその通りだ。ツバサさんの美味しい料理とマイちゃんの笑顔が恋しい。


 そんな事を考えている間に眠ってしまった。

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