迷子とカラスとあまやどり
なろうラジオ大賞7への投稿作品です。
ささやかな、ささやかな時間の物語です。
ほんのり温かい気持ちになっていただけたら、幸いです。
朝からどんより曇っていた空は、夕方「夕焼け小焼け」のメロディーが流れる頃に
とうとう我慢できなくなったのか、雨になった。
「何だよ、もうちょっと待ってくれてもいいのに。」
ねぐらに向かうカラスは空に文句を言った。
文句が聞こえたのか空の機嫌を損ねて雨脚が強まる。
雨の中でも飛べはする。けど、やっぱり濡れるのは嬉しくはない。
(ちぇ。ちょっと休むか。)強くなってきた雨をしのぐ場所を探す。
(屋根あるしあそこでいいか。)
畑に囲まれたバス停が目に入ってカラスはすぅっとそこに降り立った。
ぷるっと身体を揺すって水滴を飛ばす。ふぅっと一息つこうとしてギョッとする。
(げっ。人間!)見上げるとバス停のベンチに腰掛けて
空を見ながら足をぶらぶらさせている小さな女の子。
ちょっと途方に暮れてるようにも見えて、カラスは思わず声を掛けた。
「お前、迷子か?父ちゃんか母ちゃんはどうした?」
ぱっとカラスを振り返った女の子のおかっぱ髪がふわっと揺れる。
「分からん。」
「分からんって、もしかして、す」
捨て子か?と言いかけて、カラスは言葉を飲んだ。そんな言葉で傷つけたくない。
「どこ行ったらいいか、分からん。」
「それを迷子って言うんだ。」
「そ?じゃ、迷子だ。」
あっけらからんとそう言う女の子にカラスの方が慌てる。
「もう、日が暮れるぞ。暗くなるぞ。」
「うん。」
「どうすんだ?」
「ね。」
「ね、じゃねぇっ。」
カラスはギャーギャー騒ぎ立てた。
パタパタパタ、軽めの足音を立てながら女の人が走り込んできた。
「し!し!こんな小さな女の子いじめちゃダメ!」
追い立てられたカラスは飛すさって(違うし!)と一声鳴いた。
「大丈夫?」
女の人が訊くと、女の子はビックリしたように目を見開いた。
「うん。」
「パパかママは?どこ?」
女の子が頭を振る。
「そっか。んー、どうしよう。お名前は?何ちゃん?」
「…。」
女の人は困って空を見上げた。雨は止んでいた。
そんな彼女の背中を見て女の子はふっと笑う。同時にふわぁっと光ってから消えた。
驚いたカラスが羽をばたつかせる。
「おまっ、人間じゃ!?」
「うん、座敷童。」
その会話は彼女には聞こえていない。
「今日はうちに泊まっ… あれ?いない…。」
そう呟く彼女とは裏腹にカラスには彼女におぶさっている座敷童が見えていた。
「さっきは見つかっちゃったなぁ。でも、今度は上手く隠れたでしょ?
私、このお姉さんのとこ行くね。」
座敷童はカラスにVサインした。




