アラブ条約機構(ATO)の設立
1. 前史(1970年代)
• 第三次・第四次中東戦争により、アラブ諸国はイスラエルに繰り返し敗北。軍事的分裂
と石油収益の浪費が露わになった。
• 1973年石油危機では一時的に発言力を高めたものの、OPEC内の対立や西側諸国との関
係悪化で長期的効果は薄れた。
• 1979年イラン革命により、イスラム革命の波及を恐れた湾岸王政国家は安全保障体制の
必要性を痛感。
• 同年のソ連によるアフガニスタン侵攻は、共産陣営の脅威を直接的にアラブ世界に突き
つけることになった。
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2. 機構構想の誕生(1979〜1982)
• サウジアラビアはエジプト・ヨルダンと協議し、「アラブ版NATO」構想を提唱。
• 日本・亜米利加国・フランスも支持し、「大東亜協力機構」「NATO」に続く三番目の
地域安全保障機構として支援する意向を表明。
• これによりアラブ側も「西側と協調しつつ、自律的安全保障を確立する」方向に動い
た。
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3. 設立(1982年リヤド会議)
• 1982年、リヤドにて設立会議が開かれ、「アラブ条約機構(ATO)」が正式に成立。
• 参加国(創設メンバー):
• サウジアラビア
• エジプト
• ヨルダン
• クウェート
• バーレーン
• カタール
• UAE
• オマーン
• その後、モロッコ・チュニジアも加盟。
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4. 組織と目的
• 本部:リヤド
• 軍事委員会:加盟国軍の統合司令部を設置。共同演習や湾岸防衛計画を策定。
• 経済委員会:石油収益の共同基金を創設し、加盟国軍の近代化を資金援助。
• 政治目的:
• ソ連・中華による影響の排除
• イラン革命輸出の封じ込め
• イスラエルとの対峙における共通戦略の策定
• 石油供給と海上交通路の安全保障
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5. 国際関係
• ATOは国際連合に準加盟し、連合国の安全保障枠組みに組み込まれる。
• 日本・亜米利加国・フランスと「安全保障協力協定」を結び、兵器供与・教育訓練・情
報交換を実施。
• ATO加盟国は表向き「アラブの自主性」を強調しつつ、実際には西側の地域的防波堤と
して機能した。
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6. 非加盟国の反発
• イラク、シリア、リビアは「ATOは西側の傀儡」として強く反発し、不参加。
• これらの国々は中華人民共和国と接近し、反ATO的過激派の支援を強めた。
• この対立は後の湾岸戦争、国際テロ組織の台頭へと直結する。
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まとめ:
ATOは 1982年にリヤドで成立した中東版NATOであり、西側支援を受けつつアラブ世界
の防衛を担った。 しかし、非加盟国の反発が「アラブ内部の冷戦」を深める結果となっ
た。




