第6話
あと1年しか私には残ってないのよ。正確にはあと1年も残ってない!そんな私に悪魔は近づいてきた。
「お前にこの魅惑の術を授けよう。使い方は簡単。相手の目を見て話すだけだ。少しでもお前に好意があればお前の思うがままだ。嫌悪感を持っている相手には効かない」
私に嫌悪感を持ってる人なんているの?これで高位貴族は私に堕ちるのよ!
「そうそう、お前の願いが叶った時、私はお前の命をもらう。悪魔が術を授けるんだ。対価は当然!」
最後の方は自分の計画の悦に入っていたので聞いていなかったのが、アリアの敗因(?)だろう。
そんなわけで、学園で義姉様の評判はダダ下がり。ただし女子の間。
「この間は婚約者がいる令息にアプローチをしていましたわ。淑女としてどうなの?」
「知らなかったではすみませんわよね?」
「声をかけられた男性の方も『婚約者がいるから』とキッパリと断ればいいものを!」
「最近のアリア様は制服を着崩しているというんでしょうか?胸元がはだけていてはしたない!でも男性はどうなんでしょうね?」
「制服のスカートの丈も短くありません?あれでは膝が見えてしまいますわ」
正直に言いますとこのような意見が多く、自分の義姉様であることが恥ずかしいです。
義姉様のアプローチが影響して婚約破棄に至ったカップルもあるようで、なんだか私が申し訳ないです。本人は全く何も罪悪感なく生活しているでしょうけど。
婚約破棄に至ったといっても、義姉様がその男性と婚約するわけではないし、ただぶち壊しただけ。
なかなか私に相応しい方はいらっしゃらないのね。
え?王太子殿下がこの学園にいらっしゃるの?もし、王妃になれたらそれこそ贅沢三昧じゃない?
私は早速王太子殿下にお会いしに騎士科の方へと行った。
途中にお会いした自称・次期騎士団長様など、通りすがりの人も魅惑の術にかけていきました。所謂、キープってやつでしょうか?
「初めまして。ランスルー子爵が長女のアリアと申します」
「ああ、君が。君のウワサはピノナノから聞いてるよ。妹君の持ちものを盗ってるとか?」
なんでそんなこと知ってるのよ!
「酷いです!おすそわけですよ」
「へぇ、おすそわけで妹君のドレスを部屋から持って行ったりするんだ?」
そこまで知ってる?ここは引いた方が良さそうね。
「今日は挨拶をしに参りました。また今度」
(俺は二度と会いたくないな)
殿下とアリア嬢との会話でアリア嬢のウワサは広がり、騎士科の男性のほとんどに『魅惑の術』の耐性がついた。
これじゃあ、騎士科の殿方にアプローチできないじゃない!残すところ文官科ね。文官でもまあ王城で昇進しまくれば宰相だし、高位貴族の殿方がいるかもしれないから期待ね。そもそも騎士科って高位貴族の次男とか嫡男じゃない方が多いのよね。嫡男は家を継ぐことができるけど、次男・三男は家を継ぐことができないから騎士を目指してるんだっけ?物事はいいように考えなきゃね!うん。
しかし、アリアの思惑とは別に騎士科に在籍していたある新聞部の生徒が号外としてアリア嬢がこれまでにしてきたことを大々的に新聞で報じたために文官科の生徒もアリア嬢を嫌悪するようになった。
さらに今まで作り上げたキープたちもこの号外を読みアリアへ‘嫌悪感’を抱いたために『魅惑の術』が解けてしまった。
残すところは淑女科だが、その名の通りほぼ女子、かつ、アリア嬢に嫌悪感を持つ女子ばかり。
全く相手にならなかった。
どうして、私ばっかり……。
アリア嬢はもう後がないなぁ。改心して真面目に勉強するとかしか生き残る手はないんじゃないかなぁ?
奨学金って将来的に返さないといけないけどね♪




