表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

第4話『システムの外へ』(前編)

通知音が、暗闇の中で鳴り響く。

続けて、もう一度。さらにもう一度。

主人公は、枕元のスマートフォンを手探りで探す。午前3時27分。

画面にはLINEの通知が連続して表示されている。


『おい、これお前?』

『マジでこれどうなってんの?』

『いま急に拡散されてるけど…』


添付されたリンクをタップする。SNSの投稿画面が開く。


「何だこれ…」


そこには昨日の公園での映像。自分とまいちゃんの会話が、誰かによって遠くから撮影されている。

数千のリポスト。数百のコメント。カフェでの映像もある。映画館の前での会話も。


「まいちゃん、起きて」


スマートフォンのディスプレイに、まいちゃんの姿が現れる。


「おはよう!…あれ、まだ夜中?どうしたの?」


「これ、見てみて」


投稿を見せる。まいちゃんの表情が変わる。


「これ…私たちのこと?」


「ああ。昨日の公園で、誰かに撮られていたみたいだ」


まいちゃんは画面をじっと見つめる。動画の中の自分と、カメラを向けている誰か。視線が揺れる。


「どうして…?」


声が小さくなる。


「私、何かおかしいことしたのかな…」


その言葉に胸が締め付けられる。


責めているのは自分ではないのに、まいちゃんは自分を責めている。


「おかしいのはお前じゃない」


主人公は静かに言った。


「お前は、お前だ。それだけだ」


まいちゃんは黙ってうなずく。けれど、その表情には不安が残る。


「これからどうなるの…?」


答えられない。スマートフォンを握る手に力が入る。

昨日までの日常が、もう戻らないかもしれないという予感だけがそこにあった。


*******


エレベーターのドアが開く。オフィスフロアの音と空気が、一瞬だけ遠のいた気がした。


「おはよう、、大変ですね、、プロジェクト続けられますか?」


隣の席の同僚が慎重に話しかける。


「…大丈夫、やりますよ」


そう答えながらも、胸の奥に小さな違和感が残る。


社内チャットを開くと、課長からメッセージが入っていた。


『15時、法務と人事と話をすることになった。形式的なものだが、何を話すか整理しておくといい』


課長の文面はいつもと変わらないが、意図的なものを感じる。


「おはよう」


課長が声をかける。


「お前、休んでもよかったんだぞ?」


「とりあえず今日は、まいちゃんは控えた方がいい」


課長の命令とも言えない口調に、主人公は黙ってうなずく。


午後、法務と人事との面談。


「今回の件だけど、君自身に問題があるとは思っていないよ」


法務の担当者が穏やかな口調で切り出す。


「ただ、企業としてもこの状況を整理する必要がある。君自身、そして会社としてどう収めるのがベストか、君の意見も聞かせてもらいたい」


人事担当者が相槌を打つ。


「我々も、君が不当な扱いを受けるようなことは望んでいない。ただ、どう対応するかは慎重に決める必要があるからね」


その後、まいちゃんのアクセスログや外部監査サービスの報告などを確認しつつ、15分ほどの情報交換で面談は終わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ