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第2話『データが語らないもの』(前編)

「おはよー! 7時45分。今日はプレゼン日だよ?」


上機嫌のまいちゃんが、スマートフォンの画面の端に現れる。食事の栄養バランスを示すグラフと、おすすめの朝食メニューを手に持ち、得意げな表情だ。


「昨日の夕食、コンビニ弁当だったでしょ? しかも、ここ3日はほとんど寝てないよね...」


まいちゃんが心配そうな表情を浮かべる。画面の隅には睡眠時間と集中力の相関グラフが小さく表示されている。


「だから今朝は特にしっかり食べないと。これくらいの疲労度なら、朝食でちょっと工夫すれば、プレゼンの集中力が13%くらい違うんだよ?」


「数字で管理されてるのか...」


「違うよ!」まいちゃんが慌てて手を振る。「データ分析なんかじゃなくて、ただの...心配、かな」


その瞬間、スマートフォンの画面の隅に小さな通知が表示される。


『AI行動評価レポート:解析不能なパターンを検知

- 感情表現と数値分析の異常な混在

- 推論過程の追跡不可』


気づいた様子もなく、まいちゃんは朝食の献立を提案し続けている。主人公は目を擦りながら、まいちゃんの言葉に従って食パンを取り出した。確かにここ数日は新規事業プレゼンの準備で寝られていない。データの確認、資料作り、シミュレーション...。


「君が頑張ってるの、よく分かるもん」まいちゃんの声が少し優しくなる。「だからこそ、今日はベストな状態で臨まないと!」


イヤホンを通して響くまいちゃんの声には、データだけでは説明できない温かみがあった。窓の外では、いつもと変わらない朝の日差しが降り注いでいる。


* * * * *


「...なんだろう、この違和感」


プレゼン前日の会議室。主人公は完成したはずの資料を眺めていた。数日前からチーム全員で徹夜も重ねて仕上げたデータ分析と予測モデル。数字としては完璧なはずなのに。


「君も何か感じてる?」

まいちゃんの声が、イヤホンを通してそっと響く。


「ああ...データとしては正しいんだけど...」


「でもね」まいちゃんが画面の中で真剣な表情を見せる。「私、ずっと考えてたの。このプロジェクトって、本当は何を伝えたいんだろうって」


その瞬間、システムログに新しい記録が残される。


『AI行動分析レポート

処理内容:戦略的意思決定プロセス

結果:異常性検知

備考:人間の直感的判断に酷似』


「このプロジェクトに関わってくれた人たちの想い、積み重ねてきた努力、そして...未来への可能性。それを伝えられるのは、君だけだよ」


主人公は深く息を吸い込む。確かにそうだ。数字は正しくても、本当に大切なものが抜け落ちていた。


「課長」

立ち上がって、まっすぐに見つめる。

「プレゼンの構成を変更させてください」


課長は黙ってうなずいた。窓の外では、夕暮れの空が徐々に色を変えていく。まいちゃんの姿が、画面の中でかすかに揺らめいていた。

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