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第二部 現状分析と不測の事態に対応する代替案の準備!

パラレルワールドの世界のようすをガイアから教えてもらったエイレネたちは、「自分たちもパラレルワールドの世界にいられたら良かったのに・・・」ととても残念に思って悔しがりました。

 しかし、それでも直ぐに気を取り戻して、人類が絶滅させられてしまう最悪のパラレルワールドの世界よりも、あと5年をかけてガイア様の使命を達成するチャンスが残っているこちらのパラレルワールドを大事にしようと4人で気持ちを切り替えた。

『おやすみ、エイレネ! 神々と温暖化阻止と地球政府樹立に挑む』未来編


第二部 現状分析と不測の事態に対応する代替案の準備!


2-1 今回の選挙は『衆愚政治』なのか?

 パラレルワールドの世界のようすをガイアから教えてもらったエイレネたちは、「自分たちもパラレルワールドの世界にいられたら良かったのに・・・」ととても残念に思って悔しがりました。

 しかし、それでも直ぐに気を取り戻して、人類が絶滅させられてしまう最悪のパラレルワールドの世界よりも、あと5年をかけてガイア様の使命を達成するチャンスが残っているこちらのパラレルワールドを大事にしようと4人で気持ちを切り替えた。

「私たちは共和党の前大統領が選挙で勝利したということは厳粛に受け止めなければならない。たとえ彼の選挙戦での主張がプロパガンダや誤った認識に基づいていたかもしれないという危惧が残るにしても、選挙結果は揺るがないのだから・・・」

エイレネたちは、大統領選挙の後も絶え間なく続く議論や報道を見聞きするうちに、新大統領が主張していた多くの政策や見解が、実はプロパガンダや誤った認識に基づいていたのではないかと疑い始めた。

彼の選挙戦での主張が国民にどう影響したのか、また、それが事実に基づいていたのかを徹底的に調べるため、エイレネたちはミエナに分析を依頼することにした。

エイレネはミーティング・ルームで仲間たちに話しかけた。

「彼の選挙戦での言葉が、国民に真実の理解をもたらしたものだったのか、それとも、ただ彼の支持を固めるために作られたイメージ戦略だったのか、そこを知りたいわ」

パンドラも考え込んだ。

「人々に希望を与えたり、未来を描かせるのは良いことだけど、それが間違った方向に導くものであれば、危険よね」

プロメテウスがうなずいた。

「そうだね。事実を曖昧にして社会を混乱させるようなプロパガンダがどんな影響を与えるのか、もしそれが選挙の結果や国家の方向性にまで関わっているなら、私たちが目指している地球八策にも関わるだろう」

ディアナも神妙な表情で頷いた。

「じゃあ、ミエナにその分析をお願いしよう」

エイレネは意を決してミエナに声をかけた。

「ミエナ、お願いできるかしら。新大統領が選挙で打ち出していた主張や政策が、事実に基づいていたのかどうか、また、それが誤解を招くプロパガンダだったのかを分析してもらいたいの」

ミエナはうなずき、「もちろんです、皆さん。彼の主張や発言が実際のデータや証拠に基づいたものか、それともイメージ操作に近いものだったのかを調べ、可能な限り客観的な結果をお伝えします」と応え、早速、複数の情報源やデータベースにアクセスし、彼の発言と実際のデータを比較し始めた。

数時間後、ミエナが再びエイレネたちのもとに戻ってきた。

「皆さん、調査の結果をお伝えします。彼の選挙戦で多く見られた主張には、国民の関心を引き付けるために誇張された部分がいくつか見られました。特に、経済政策に関する彼の発言や移民政策に対する強硬な姿勢が、人々の不安や恐怖心に訴えるプロパガンダの要素を含んでいる可能性があります」

「たとえば、アメラシアの経済成長に関する発言では、実際の経済成長率や雇用統計を都合よく解釈し、まるで彼の政策だけが成果をもたらしたかのように伝えていました。しかし、データを分析したところ、経済の成長は過去数十年にわたる政策の積み重ねによるものでもあり、彼の施策だけが主因とは言えませんでした」

プロメテウスが口を挟んだ。

「つまり、ある程度誇張して伝えられたわけだね。移民政策についてはどうだったんだい?」

ミエナは頷きながら続けた。

「移民政策に関しても、彼は安全保障や経済的負担を理由に強硬な姿勢をとっていましたが、実際のデータでは、移民が地域経済に与える貢献や犯罪率について誤解を招く発言が含まれていました。移民の犯罪率が過度に強調され、あたかも国家の安全が危険にさらされているように見せかけた部分もあったようです」

パンドラが思わずため息をつく。

「人々の不安を煽ることで支持を集めていた部分もあるということね」

ミエナは、「そうです。ただ、これは彼に限った話ではなく、どの国の指導者でも、特定の印象を国民に与えるために事実を強調したり、都合よく省略したりすることは見られるものです」と続けた。

エイレネは真剣な表情で言った。

「ならば、私たちが地球八策を伝えるときは、事実に基づいた情報で人々に伝えなければならないわね。事実から目を背けずに前を向く、それが私たちの役目なのだから」

ミエナは静かに微笑んで、「その通りです、エイレネ。真実の力で人々を導く、それが皆さんの使命でしょう」と応じた。

エイレネが「衆愚政治を避けるのは本当に難しいことなんですね」とため息交じりに言うと、ミエナは静かにうなずき、優しい声で答えた。

「その通りです、エイレネ。衆愚政治は、いわば人々が感情に流され、理性や長期的な視点を見失ってしまう政治体制です。歴史上も、多くの国々で人々の不安や恐れが利用され、正確でない情報に基づいて大きな決断がされてきました。しかし、それを防ぐ手段もあるんですよ」

4人は、興味深そうにミエナを見つめ、耳を傾けた。

「まず、『情報リテラシー』を高めることが最も大切です」とミエナは言った。「国民一人ひとりが、情報がどのように伝えられているか、誰がそれを広めているのかを疑問に思う力を持つことです。教育によって、メディアや政治家の発言を批判的に見る力が備わると、感情に流されにくくなります。情報が真実か、誇張や歪曲があるのか、見分けることが衆愚政治を防ぐ鍵です」

プロメテウスが真剣にうなずき、「つまり、知識と批判的な視点を持つことが、社会全体の判断力を高めるんですね」と言った。

「その通りです」とミエナは続けた。「次に、『公正で透明な議論』の場が必要です。社会全体が分断され、意見が偏ると、感情的な判断が優先されがちです。しかし、異なる意見を尊重し、冷静に話し合うことができる環境があれば、情報が精査され、真実に近づきやすくなります。公平なルールに基づいた場で、幅広い意見を集め、冷静に議論する文化が求められます」

「なるほど…」ディアナがつぶやいた。

「そうすれば、感情に流されず、バランスの取れた決定ができるようになりますね」

ミエナは微笑み、「そして最後に、『倫理的なリーダーシップ』が必要です。理想的なリーダーは、人々の不安や感情に訴えるのではなく、長期的な視野を持ち、社会全体の利益を見据えて行動できる人です。また、自分の主張や政策が本当に人々の生活を良くするのか、常に自問自答する姿勢が必要です。国民の感情や人気に左右されずに、誠実に社会を導けるリーダーが存在することで、衆愚政治に陥ることを防げます」

エイレネは深く考え込んで、「私たちが目指す地球八策も、同じことが言えますね。私たちも、人々が事実や理性に基づいて判断できるような社会を作っていく努力をしないといけないですね」と静かに決意を口にした。

ミエナも頷き、「その通りです。衆愚政治を防ぐためには、国民一人ひとりの知識、透明な議論の場、そして誠実なリーダーシップがすべて揃っていることが大切です。エイレネさんたちの努力で、地球政府がそのような理性的で成熟した組織として機能する未来を築けると信じています」

 エイレネたちは、真剣な表情で頷き合い、それぞれの心に新たな使命感が宿った。

しかし、エイレネにはまだ納得できない点が残っていた。

「ミエナ、あなたが、『情報リテラシーを高める』と言っても、今回の選挙で最も進んだ国のアメラシアでこういうことが起きてしまうのだから、不可能に近い条件ではないですか?『公正で透明な議論の場』ということでも、テレビ討論のような場でさえもそれが実現できていなかったのではないでしょうか。プロパガンダの押し付けなどで、聴衆は正しい正確な議論がされたかどうかよりも、どちらがどれだけ相手を言いくるめたか、画面での優勢な態度をどちらが獲ったかに左右されてしまいます。『倫理的なリーダーシップ』といっても自分たちが支持する人の欠点やウソや間違いは大目に見て、対立候補には厳しい目を向けるという認知バイアスもあるのではないですか?『民主主義を最悪の制度だ・・・』といったチャーチル元首相の言葉が真実味を帯びてしまいそうです」とミエナに反論した。

エイレネの真剣な問いかけに、ミエナはしばらく考え込むように沈黙した後、静かに話し始めた。

「あなたが指摘したことは、とても大切な視点です。アメラシアのように進んだ民主主義国家でさえ、情報リテラシー、公正な議論、倫理的なリーダーシップを完璧に実現するのは極めて難しいという現実があります。チャーチル元首相の言葉も、私たちに『民主主義の課題と責任を突きつけている』のかもしれません」

エイレネたちの真剣なまなざしを受けながら、ミエナは続けた。

「しかし、だからこそ、私たちは一つひとつの課題を小さなステップで解決し続けていくしかないのです。まず、たとえ一部の人でも、情報リテラシーや批判的思考力を持つことができれば、それが社会全体に影響を与える力となります。情報を受け取るときに一度立ち止まり、『本当にそうだろうか?』と考える習慣が広がれば、それは社会の中で新しい基盤を築くための大きな力になるのです」

プロメテウスが頷き、「でも、それを実現するには膨大な時間と努力が必要ではないか?」と尋ねると、ミエナはうなずいた。

「その通りです。しかし、教育や情報の取り扱い方を改善することにより、少しずつでも健全な社会に向けた変化を起こすことが可能です。日本の明治維新やフランス革命などの大きな変革も、最初は少数の人々の気づきから始まりました」

ディアナが真剣な顔で口を開いた。

「だけど、テレビ討論や大手メディアも含めた透明な議論の場はどうすればいいの? 今のメディアは視聴率や注目を集めるために、対立を煽ったり、刺激的な見せ方をすることもあるでしょう?」

ミエナはゆっくりと頷き、答えた。

「確かに、現代のメディアにはそのような傾向があるのも事実です。ただ、インターネットやソーシャルメディアが普及している今こそ、より多様な意見や情報源に触れることができます。また、SNSや動画配信などの新たなメディアの台頭によって、一部の人々が自らの主張を公平に発信することも可能です。たとえば、有識者や市民団体、各国のNGOが主催する公開討論会やウェビナー(Webセミナーで、リモート開催セミナーのこと)などが、メディアに依存せずに人々へ届けられることが増えています」

「それでも『認知バイアス』は避けられないでしょう?」とパンドラが少し挑むように尋ねた。

ミエナは柔らかく微笑んで答えた。

「『認知バイアス』も、確かに人間に根付いた特性です。しかし、その理解を深めておくことで、自分の見方や他者の主張を客観的に見る力を少しずつ身に付けることができます。たとえば、学校教育やリーダーシップ教育において、認知バイアスを教えることもできます。そして、それを学んだ人たちがやがて政治やメディアで中心的な役割を果たすようになれば、少しずつ社会に変化が生まれるかもしれません」

エイレネは考え込んだ。

「つまり、大きな変革を望むより、小さな改善の積み重ねが民主主義を成熟させる唯一の方法なのかもしれないわね」

ミエナは静かに微笑み、「そうです。小さな変化が、大きな変革への一歩となります。『衆愚政治』に陥らないためには、目の前の現実に一喜一憂するのではなく、真実を追い求めようとする姿勢を持ち続けることです。それが、エイレネさんたちが目指す地球政府の礎となるかもしれませんよ」と締めくくった。

エイレネたちは、ミエナの言葉を心に刻むように深く頷き、ゆっくりと未来への希望を見据えていた。


2-2 インパクト分析と現状分析をしっかりとしておこう!

 選挙の実態が『衆愚政治』だったかどうかは、とても奥が深い問題だと理解した。

 しかも、選挙キャンペーンに含まれるウソや誇張、矛盾などを追及しても認知バイアスがあるために支持者たちの信念は変えられないし、それに惑わされる浮動票が多数存在することもエイレネたちにとって良い勉強であり良い経験となったとしか言いようがなかった。

 

次にエイレネたちの関心を引いたのは、世界や各国への影響がどうなるかであった。

そこで、新大統領の政権下で、アメラシア自体や世界、チュアンロ、キタアサヒ、日本などへの影響をミエナに予測してもらった。

 エイレネたちの関心がバラバラだったので、質問の順番は体系だっていませんが、項目は次のとおりです。

★温暖化への影響:世界全体で0.1~0.2°Cの温暖化が進む

★世界の平和に与える影響

★チュアンロとの紛争の可能性について

★日米の経済関係への影響(貿易、サプライチェーン、投資、金融、為替)

★新大統領とキタアサヒとの関係

★新大統領の再選とアメラシア国内の分断

それぞれの結果を紹介していきます。


2-3 温暖化への影響1

エイレネたちは、会議室で静かに待っていたが、その心には不安が渦巻いていた。アメラシアの元大統領が再選したことで、地球温暖化阻止に向けた活動が著しく後退するのではないかと、心配していたのだ。

彼は産業重視の政策を掲げており、気候変動対策よりも経済発展を優先する立場をとることが多かったため、温暖化問題がどのように扱われるか、エイレネたちは深刻に受け止めていた。

そんな中、ミエナが静かに部屋に入り、彼らに目を向けた。

「皆さんの不安、よく分かります。新大統領の政策は、確かに気候変動対策から視点を外しがちかもしれません。ですが、私たちがどのような影響を受けるかを冷静に見つめ、それでもなお前進する必要があります。少し、世界規模での温暖化が進んだ場合、どのような影響が予想されるかお話ししましょうか」

エイレネは目を見開き、他の仲間たちも緊張した面持ちで頷いた。

ミエナはプロジェクターを使い、次々と世界地図や予測データを映し出しながら話し始めた。

「まず、温暖化が進めば、地球の平均気温が上昇し、極地の氷河が急速に溶け出します。その結果、海面は上昇し、沿岸部の都市が次々と水没の危機に直面するでしょう。例えば、ニューヨーク、マイアミ、東京、上海といった大都市がその影響を最も受けることになります」

パンドラが不安げに口を開いた。

「それじゃあ、私たちが今見ている街並みも、いつかは消えてしまうかもしれないということ?」

ミエナは穏やかに頷いた。

「そうです。加えて、海面の上昇は土地の消失だけでなく、数億人規模の気候難民が発生することも予想されています。特にアジアやアフリカなどの沿岸部に住む人々の多くが、新たな住処を求めて移動することになり、各国での社会的混乱も避けられないでしょう」

「それだけではありません。気温の上昇は、干ばつや洪水といった異常気象をさらに増加させ、農業にも大打撃を与えます。作物の収穫量が減少し、世界の食料供給も不安定になってしまう可能性が高いのです」

ディアナが身を乗り出し、「それなら、食糧不足で国際社会の緊張がさらに高まってしまうわね…」

ミエナは再び頷き、画面を操作し次のデータを映し出した。

「そうです。加えて、熱帯地域や温帯地域では新たな感染症が拡大する可能性もあります。気温が高く湿度が上がれば、ウイルスや細菌が増殖しやすい環境が生まれます。新型の感染症が次々と発生する中で、今まで以上の医療対策が求められるでしょう」

エイレネは深刻そうに眉を寄せ、「それでも、新大統領が地球温暖化対策に後ろ向きでは、私たちの目指す目標も大きく後退することになってしまうわ…」

 ミエナはエイレネたちを励ますように言葉を続けた。

「確かに、アメラシアの影響力は大きいですが、それでもまだ希望はあります。温暖化対策の必要性を訴えかけている国々も多いですし、企業や市民レベルで取り組む人々も少なくありません。私たちも引き続き、他国や市民への働きかけを続けていきましょう」

プロメテウスが決意を込めて言った。

「そうだね。これがどれほど難しい課題でも、必ず乗り越える方法を見つけ出す。僕らの目標を実現するために、これからも最善を尽くそう」

エイレネたちは、ミエナの説明に胸を打たれ、地球政府の実現に向けて改めて気持ちを固めたのだった。


2-4 温暖化への影響2:世界全体で0.1~0.2°Cの温暖化が進む

エイレネたちは、地球温暖化の目標達成がどの程度遅れてしまうかについて、ミエナからの説明を切実に求めていた。

ミエナは深く頷き、アメラシアの政策の影響について、具体的な数値や影響を示しながら話し始めた。

「新大統領の政策の下では、特に化石燃料の利用が再び推進され、地球温暖化への影響は深刻です。まず、シェールガスや石炭といった化石燃料の掘削を増やすことで、温室効果ガスの排出量が大幅に増加します。2016年のパリ協定でアメラシアは、2030年までに温室効果ガスの排出量を2005年比で26~28%削減することを目標としていました。しかし、シェールガスや石炭掘削が加速すると、少なくとも10~15%の削減が遅れると試算されています」

エイレネたちは不安げな表情でミエナを見つめた。

「また、パリ協定からの離脱も影響が大きいです。アメラシアは世界第2位の温室効果ガス排出国であり、アメラシアが協定から離脱することで、少なくとも世界全体で0.1~0.2°Cの温暖化が進むと予測されています。この離脱によって、他国の協力体制も弱まり、世界的な温室効果ガスの削減目標である『産業革命前からの気温上昇を2°C未満に抑える』という目標が危うくなる恐れがあります」

プロメテウスが口を開き、「それじゃあ、2°C未満どころか、1.5°Cに抑えるという目標も遠のいてしまうということ?」と尋ねた。

「その通りです。1.5°Cの目標達成には、今すぐにでも世界中で抜本的な対策が求められています。すでに、2024年の時点で1.5℃を超えているという報告もあるのです。アメラシアがパリ協定から離脱し、国内の温暖化対策を緩和している現状では、気温上昇は2.5~3°Cに達する可能性もあります。この場合、熱波や干ばつ、豪雨といった極端な気候現象が頻発し、沿岸地域の海面上昇や、アジア・アフリカ諸国の食糧危機も深刻化します」

ディアナが重い口調で言った。

「それじゃあ、私たちの目標は、アメラシアが方針を変えないと、かなり厳しい道のりになるということね…」

ミエナは続けた。

「そうです。しかし、この現状でも希望を持ってください。現在も温暖化を危機と捉え、企業や他の自治体が独自に温暖化対策に取り組んでいます。例えば、カリフォルニア州やニューヨーク州は、新政権に反して、パリ協定の目標に沿った排出削減を続けています。アメラシア国内でも、全てが反対の方向に進んでいるわけではありません」

エイレネたちは、ミエナの説明を聞きながら、温暖化への対策がいかに困難なものになっているかを改めて痛感した。

そして、それでもなおこの問題に立ち向かう決意を新たにし、目標達成に向けて動き続ける決意を固めたのだった。


2-5 世界の平和に与える影響

エイレネたちは、新大統領の再選が世界の平和に与える影響を懸念していた。

過去の外交政策や軍事戦略の方向性から考えても、彼の再選は平和構築への努力が後退してしまうのではないかという不安がつきまとっていた。

その時、ミエナが静かに部屋に現れ、エイレネたちに向けて口を開いた。

「皆さんの心配はよく理解できます。新大統領の再選が、平和維持の取り組みにどのように影響するのか、私の知る限りの見通しをお話ししますね」

ミエナはエイレネたちに、まず新政権の外交政策の特徴を振り返らせた。

「新大統領の外交姿勢には、いくつか大きな特徴があります。まず、アメラシア第一主義。この方針は、アメラシアの利益を最優先に考え、同盟国とでさえも負担を分かち合う姿勢を貫いてきました」

エイレネが不安げに尋ねた。

「それでは、国際社会での協力関係が弱まってしまうのではないかしら?」

ミエナは頷き、「ええ、残念ながらその可能性が高いです。新政権はNATO(北大西洋条約機構)や、アメラシアが主導する他の国際組織への負担を減らし、自国の利益に専念する姿勢を強調しています。これは、各国が自国の安全保障を自ら担う方向に促すことになり、場合によっては軍事的緊張が高まりやすい状況を生むかもしれません」

次に、ミエナはアメラシアと特定の国々との関係についても言及した。

「新大統領の再選によって、チュアンロやロムニカといった国々との競争がさらに激化する可能性もあります。彼の政権下では対チュアンロ政策が非常に強硬でした。このため、アメラシア・チュアンロ間の緊張が増すことで、貿易摩擦だけでなく軍事的な競争も過熱しやすくなります。アジア太平洋地域での平和が揺らぐ恐れが出てくるかもしれません」

プロメテウスがうつむき加減に、「それでは、アメラシアが国際平和へのリーダーシップを発揮することは期待しづらいのかな…」

ミエナは再び彼を見つめ、少し微笑んでから続けた。

「そうとは限りません。たとえば、新大統領が中東で進めた和平合意、アブラハム合意のように、特定の地域において独自の外交手腕を発揮したこともあります。大統領が平和を進める手段が、必ずしも国連や同盟による協力でなくても、彼自身の交渉力に頼る形で進む可能性はあります」

ディアナが首をかしげて言った。

「でも、彼の一国主義的な方針では、国際的な平和体制は築けないのでは?」

「確かに、そこが難しい点です」とミエナ。

「国際社会では、多国間協調が非常に重要です。もしアメラシアがリーダーシップを放棄し、他国との協調が失われれば、世界の平和維持の取り組みが後退してしまう可能性がある。加えて、気候変動やパンデミックといった地球規模の問題にも同じことが言えます。アメラシアが協調に後ろ向きになれば、これらの課題に対する世界全体での対応も遅れるかもしれません」

エイレネは深刻な面持ちで言った。

「でも、それでも私たちは平和のために活動を続けるべきよね?」

ミエナは微笑みながら答えた。

「もちろんです。アメラシアが協調的な姿勢を見せなかったとしても、他の国々や市民、民間組織が一致団結し、平和のために取り組むことは可能です。そして、新大統領も再選後の情勢次第で考え方を変える可能性もあります。私たちは、地球八策を通して他国にも働きかけを続け、平和のための道を探していきましょう」

エイレネたちは、国際社会における平和と協調の難しさを感じながらも、希望を捨てずに平和の実現に向けて進む決意を固めたのだった。


2-6 チュアンロとの紛争の可能性について

エイレネたちは、アメラシアとチュアンロの対立が進んだ場合に、アジア太平洋地域でどのような事態が起こる可能性があるのか、もっと詳しく知りたいとミエナに尋ねた。

ミエナは深刻な面持ちで、できる限り具体的に状況を予測し始めた。

「まず、アメラシア・チュアンロ間の緊張が高まれば、いくつかの地域で影響が顕著に現れるでしょう。とりわけ、南シナ海と台湾海峡が問題の中心になると考えられます。南シナ海はチュアンロが領有権を主張する戦略的な海域であり、ここには貿易の重要な航路が集中しています。仮にチュアンロが南シナ海での軍事活動を増やした場合、アメラシアは自由航行作戦をさらに強化するでしょう。これにより、アメラシア・チュアンロ艦船の接近や、偶発的な衝突が発生する可能性が高まります」

プロメテウスが眉をひそめて質問した。

「その場合、他の国々も巻き込まれるの?」

ミエナは頷き、「ええ、特にフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどの東南アジア諸国が影響を受けやすくなります。南シナ海の領有権を巡ってチュアンロと対立している国々は、アメラシアの自由航行作戦に支持を示す可能性が高く、アメラシア・チュアンロ両国の対立に巻き込まれやすくなるのです。これが地域的な緊張の高まりにつながり、各国が防衛力強化に動けば、軍拡競争が激化し、さらなる不安定化を招くことになるでしょう」

「さらに、台湾も重要な焦点となります。チュアンロは台湾を自国の一部と見なしており、いずれ統一することを目指しています。もしアメラシア・チュアンロ間の緊張が高まり、アメラシアが台湾に対して防衛支援を強化すれば、チュアンロが軍事的圧力を増し、台湾海峡で緊張が高まる可能性があります。このような状況では、偶発的な衝突や誤解が、より深刻な軍事対立に発展するリスクが考えられます」

エイレネは心配そうに尋ねた。

「それでは、アジア太平洋地域全体が戦争状態に近づく可能性があるということ?」

ミエナは深く頷いた。

「最悪の場合、その可能性は否定できません。万が一、アメラシア・チュアンロ間での軍事衝突が発生すれば、日本や韓国、オーストラリアといったアメラシアの同盟国が対応を迫られるでしょう。日本にはアメラシアの軍事基地があり、韓国も同様に米軍との協力体制があります。そのため、アメラシア・チュアンロ間の軍事衝突が拡大すれば、アジア太平洋地域全体が巻き込まれる事態が考えられるのです」

ディアナがさらに尋ねた。

「それが実際に起こった場合、私たちの地球八策はどうなってしまうの?」

ミエナは静かに答えた。

「残念ながら、アメラシア・チュアンロ間の衝突が発生すれば、地球八策を実現するための国際的な協力体制が大きく崩れてしまうでしょう。国際社会は軍事的な対立に集中せざるを得ず、気候変動対策や平和維持のための取り組みは後回しになります。特に核兵器や軍拡競争の問題が再燃し、地球全体の安全保障が危うくなるかもしれません」

プロメテウスが重々しい口調で言った。

「それなら、アメラシア・チュアンロの緊張を和らげ、アジア太平洋の平和を守る方法を考えなければならないね」

ミエナは最後にこう結んだ。

「その通りです。まずは、アメラシア・チュアンロが互いの立場を理解し、衝突を避けるための対話の場を設けることが大切です。また、地球八策を通じて、各国が気候変動や平和の重要性を再認識できるように働きかけることが求められます。エイレネたちも引き続き、地球の未来を守るための活動を続けましょう」


2-7 日米の経済関係への影響(貿易、サプライチェーン、投資、金融、為替)

エイレネたちは、アメラシア・チュアンロ関係の緊張が日米の経済にどのような影響を及ぼすかについても、ミエナに詳しく教えてほしいと頼んだ。

ミエナは少し考えてから、具体的なポイントを説明し始めた。

「アメラシア・チュアンロ間の緊張が高まれば、日米経済関係にも複雑な影響が出るでしょう。特に、貿易やサプライチェーン、投資といった分野での変化が考えられます」

1. 貿易関係の変化

「アメラシア・チュアンロ間の貿易摩擦が激化すれば、チュアンロがアメラシアからの輸入を減らし、その代替先として日本製品に目を向ける可能性があります。たとえば、農産物や製造業部品など、これまでチュアンロがアメラシアから調達していたものを、日本や他国から輸入する流れが強まるかもしれません。しかし、これは同時に日本をアメラシアの経済圧力の対象にしてしまうリスクも伴います。アメラシアは日本に対しても貿易赤字の是正を求めてきた経緯があるため、チュアンロが日本製品を多く輸入するほど、アメラシアの対日圧力が高まる可能性があるのです」

2. サプライチェーンの再編

「アメラシアがチュアンロへの制裁を強化すれば、企業はリスク管理のためにサプライチェーンを再編することが求められます。日本の多くの企業もチュアンロに生産拠点を持っており、アメラシア・チュアンロ対立が激化すれば、チュアンロでの製造が困難になりかねません。そのため、日本企業も製造拠点を他国へ分散する動きが加速するでしょう」

エイレネは少し心配そうに言った。

「それは、日本企業にとっても大きな影響ですね」

ミエナは続けた。

「はい。チュアンロから東南アジアやインド、場合によってはメキシコやアメラシアに生産を移転する動きが広がるかもしれません。しかし、サプライチェーンを再編するには大規模なコストがかかりますし、従来のような安価な生産が難しくなり、日本企業の利益率が低下するリスクもあります」

3. アメラシアと日本の技術協力や投資の増加

「一方で、アメラシア・チュアンロの対立によって、アメラシアと日本の技術協力や投資が増加する可能性もあります。特に、半導体やAI、5Gといった先端技術分野では、アメラシアが日本と連携し、サプライチェーンの依存をチュアンロから脱却しようとする動きが強まるでしょう。これにより、アメラシアは日本を含む信頼できる国と協力して技術面での強化を進める一方、米日間の協力体制が強まる可能性もあるのです」

プロメテウスが興味深げに言った。

「つまり、アメラシア・チュアンロ対立が日本経済にとってリスクでもありチャンスでもあるということだね?」

ミエナは頷き、「その通りです。アメラシア・チュアンロ関係が悪化する中で、日本はアメラシアとの関係を強化することで経済的な安全保障を確保しやすくなる一方で、対中関係のバランスに苦しむかもしれません。特にチュアンロは日本にとっても大きな市場であるため、どちらか一方に寄りすぎれば、日本企業が他方での経済的制裁を受ける可能性もあります」

4. 為替や金融市場の変動

「また、アメラシア・チュアンロ関係の緊張が続けば、ドルと円の為替レートや金融市場にも影響が出ます。通常、地政学的リスクが高まると日本円は安全資産として買われ、円高になる傾向があります。円高になれば、日本の輸出企業は価格競争力が下がり、特に自動車や電機といった輸出産業に大きなダメージを与えるでしょう」

エイレネは、これまで想像していた以上の複雑な影響に驚きつつも、その真剣な説明を聞き入り、日本が今後とるべき行動について改めて考えを巡らせていた。


2-8 日本の人々の生活への影響(物価、実質賃金、防衛費、地政学的リスク)

エイレネたちは、アメラシア・チュアンロ間の緊張が高まることで日本の人々の生活にもどのような具体的な影響が生じるのかを心配していた。

ミエナは、日本国内での経済的な負担や不安がどう影響するかについて丁寧に説明を始めた。

1. 物価上昇と生活費の増加

「まず、アメラシア・チュアンロ対立によるサプライチェーンの混乱は、日本の物価上昇を招く可能性があります。たとえば、チュアンロからの輸入品が増税や関税の影響で価格が上がれば、日本で販売される商品も影響を受けます。特に、日用品や食品、家電製品の価格が上がり、家庭の生活費が増加する恐れがあるのです」

パンドラが驚いた表情で、「それじゃあ、物価が上がって日本の人々の生活がますます厳しくなるわけね」とつぶやいた。

ミエナはうなずきながら続けた。「はい、さらに物価が上昇すれば実質賃金が低下することになります。給料が同じでも生活費が増えれば、手元に残るお金は減ってしまうため、生活の質が下がってしまうでしょう。多くの家庭が節約を強いられ、消費が低迷する恐れもあります」

2. 防衛費の増額による福祉・医療・教育予算の削減

「また、アメラシア・チュアンロ間の緊張が増す中で、日本も安全保障への関心が高まります。防衛費の増額が進むことで、国の予算がそちらに多く割かれる可能性があり、その結果、福祉、医療、教育などの社会的な予算が削減される懸念があります。防衛費は、日本を守るために必要だとされていますが、生活に直接関わる福祉や医療の予算が減ることで、困窮する家庭や医療の負担が増える可能性もあるのです」

ディアナが少し眉をひそめて、「予算の削減はどのような形で影響が出るの?」と尋ねた。

「たとえば、福祉予算が削減されれば、生活保護や介護サービスが削減されたり、待機児童問題が解消しにくくなったりします。また、医療費の負担増加が予測され、高齢者や低所得層の人々が医療費負担に苦しむことも増えるでしょう。教育分野でも、教育支援金や学校の施設改善が遅れるなど、子供たちの教育環境に影響が出るかもしれません」

3. 企業活動の不安定化と雇用不安

「アメラシア・チュアンロの緊張が日本企業に与える影響も深刻です。特に、日中貿易が減少したり、チュアンロでの生産が難しくなったりすれば、日本企業は収益が減少し、リストラや賃金の抑制などが発生する可能性があります。特に製造業や輸出産業において雇用不安が高まるため、派遣社員やパートタイマーなどの非正規雇用の人々にとっては厳しい状況になるでしょう」

4. 地政学的リスクと不安の増大

「アメラシア・チュアンロの対立が原因で、アジア太平洋地域で軍事的な緊張が高まれば、日本の人々の地政学的な不安も増すでしょう。特に、チュアンロとの関係が悪化した場合、日本近海での偶発的な軍事衝突や、台湾情勢に巻き込まれるリスクが懸念されます。このような不安定な情勢は、日本国内でも平和や安全への不安感を高めることになるでしょう」

5. 円高と企業の競争力低下

「最後に、アメラシア・チュアンロ対立の影響で安全資産としての円が買われ、円高になる可能性が高まります。円高は輸出産業にとって不利なため、日本企業の収益が減少しやすくなり、経済全体が低迷する恐れがあります。また、輸出に依存している中小企業も大きな影響を受け、地方経済が疲弊することも考えられます」

プロメテウスが頷き、「つまり、アメラシア・チュアンロ対立が進むと、日本の人々の生活に様々な面で影響が及ぶわけだね」とまとめた。

エイレネたちは、日本の人々が日常生活で直面する課題に思いを巡らせ、地球八策がより一層重要であることを感じ取った。


2-9 新大統領とキタアサヒとの関係

新大統領がキタアサヒとの関係をどのように進めるかについて、いくつかの可能性が考えられます。

彼の外交姿勢を基にすると、いくつかのシナリオが浮かび上がります。

1. 「トップダウン型」アプローチの継続

新大統領は過去に「トップダウン型」の外交アプローチを取っており、金正恩との直接交渉を重視していました。

再選後もこのアプローチが続くと考えられ、必要に応じて首脳会談を再度開催する可能性があります。

これは、金正恩との「個人的な信頼関係」を強調し、交渉の進展を図る方法です。

ただし、リスクとしては、このようなトップダウン型の外交は、具体的な合意に至らないまま終わってしまう可能性がある点です。

また、専門家レベルの詳細な交渉が欠如し、安定した進展が難しくなる恐れもあります。

2. 「経済的インセンティブ」を軸とした交渉

新大統領はビジネス出身であることから、経済的インセンティブを交渉に用いる可能性が高いです。

キタアサヒが核開発の凍結や非核化の一部に同意すれば、アメラシア側が制裁の一部を緩和し、キタアサヒに対して経済支援やインフラ開発を提案する可能性も考えられます。

ただ、これにはキタアサヒの具体的な行動が必要となります。

新大統領は「行動がなければ譲歩はない」という姿勢を見せることが多いため、キタアサヒがまず非核化に向けた明確な動きを見せることが求められるでしょう。

3. 「最大限の圧力」への回帰

再選後、キタアサヒが非核化交渉に応じない場合や、核・ミサイル開発を進めた場合には、「最大限の圧力」政策が再び採用される可能性もあります。

これは経済制裁をさらに強化し、キタアサヒに対する圧力をかける方法です。

さらにチュアンロやロムニカに対しても協力を求め、キタアサヒへの制裁が効力を発揮するようにする可能性もあります。

しかし、この政策にはキタアサヒが再び対抗的な姿勢を強め、軍事的な挑発行動を増やす危険もあります。

キタアサヒがミサイル発射や核実験を再開することで、東アジアの緊張が高まるリスクが伴います。

4. 地域的な同盟国との連携強化

新大統領はキタアサヒ問題においても、日本や韓国などの地域同盟国との連携を強化する可能性があります。

キタアサヒへの圧力を強める一方で、アメラシア側は同盟国により多くの防衛費負担を求めてきました。

この方針が再選後も続けば、日本や韓国に対して、キタアサヒへの防衛協力に積極的に関与しつつも、費用負担の増額を求めることが考えられます。

エイレネたちも、米朝関係の進展次第で地域の平和が左右されることを理解し、ミエナの説明に耳を傾けた。

新大統領の再選により、米朝関係がどの方向に進むかは不透明ですが、アメラシア・チュアンロ対立が影響を与える可能性があり、さらなる緊張が高まることも考えられるため、慎重に状況を見守る必要があるとエイレネたちは再認識したのだった。


2-10 アメラシア国内の分断の最近の状況

アメラシア国内の分断は、政治的・社会的な背景から近年さらに深刻化しています。ミエナはこの問題について、エイレネたちに詳しく説明を始めました。

1. 政治的分断の深化

「アメラシアでは共和党と民主党の対立がこれまで以上に激化しています。新大統領の登場以降、双方の支持者の価値観がかけ離れたものになり、互いを敵対視する傾向が強まっています。共和党支持者は、国家の強さや経済的な競争力を重視し、個人の自由を重視する一方、民主党支持者は気候変動や社会福祉、医療改革など社会的な公正を強調しています」

この分断は、単なる政策の違いではなく、生き方や信条の根本的な対立へと発展し、社会全体に影響を及ぼしています。

エイレネたちは、これが平和的に解決できるのか不安を覚えました。

2. 社会的不平等の拡大

「アメラシア国内では、富裕層と貧困層の格差が広がっています。都市部では教育や医療の質が向上している一方で、地方や農村部では低所得者層の生活環境が悪化し、職業の選択肢も限られているのです」

ミエナは、貧困と教育格差が、政治的な不満や不信感を引き起こし、分断をさらに深めていることを指摘しました。

「富裕層がますます富を蓄える一方で、生活の厳しい人々が感じる社会への不信感が広がり、結果として社会の対立構造が生まれています」

3. メディアと情報の偏向

「アメラシアでは、メディアが政治的な偏りを持つことが一般的になっています。CNNやMSNBCはリベラル寄り、FOXニュースは保守寄りとされ、視聴者がどのメディアを選ぶかで視点が大きく異なります」

このように、メディアの選択が異なると、国の出来事や政策の捉え方も変わり、事実の共有が困難になっています。

エイレネも、情報の偏りが分断を強める大きな要因だと感じ取りました。

4. 人種や移民問題による対立

「また、移民政策や人種差別問題も分断の一因です。ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動や反移民政策への賛否が社会に対立を生んでいます。特に、人種間の対立や多様性の受け入れについての価値観の違いが、社会全体に緊張をもたらしています」

アメラシアは多様な人種・文化が混在する国ですが、その多様性をどう受け入れ、共存していくかの課題が重くのしかかっています。

5. 分断の行方と今後の見通し

「このように、アメラシア国内の分断は複雑に絡み合っており、解消には時間と対話が必要です。しかし、互いの視点や価値観を理解するための対話が難しい状況であるため、分断が解消されるには大きな社会的改革が必要でしょう」

また、今後、分断がさらに深まるのか、それとも和解の兆しが見えるのかは未知数です。

ミエナは、こうした問題がアメラシアだけでなく他国にも影響を与えかねないとし、分断が広がる前に国内の信頼を再構築する必要があると語りました。

エイレネたちは、アメラシアの分断が他の国にも影響を与え、世界の平和構築にも影響を及ぼしかねないと感じ、問題解決に向けた方法を模索しなければと心を新たにしたのです。


2-11 新大統領の再選とアメラシア国内の分断

さらに深まる可能性が高いと考えられます。

以下、具体的な予測をいくつか挙げてみます。

1. 政治的・社会的な対立の激化

新大統領の再選は、共和党の支持者にとっては勝利ですが、民主党支持者には「不正義」や「危機感」を抱かせる結果となり、両者の対立が激化する可能性があります。

抗議活動の頻発:新大統領の再選に反発する人々や団体が抗議活動を増加させる可能性が高まります。

特に、主要都市でデモや集会が頻発し、場合によっては衝突が起きる可能性もあります。

州ごとの対立:特に保守的な州とリベラルな州との間で政策の溝が拡大し、「州の自立」を掲げる動きが強まるかもしれません。例えば、リベラルな州が独自の環境保護法や移民支援を推進するなど、連邦政府と対立するケースが増えるでしょう。

2. 政府機関への信頼低下

再選によって「連邦政府は一部の国民のためのもの」という認識が広がる可能性があり、政府機関への信頼が低下することが予測されます。

投票制度への不信:一部の人々の間で、選挙や投票システムに対する不信が拡大し、投票率の低下や政治システム全体への不満が高まるかもしれません。

メディアや司法の分断:新大統領が批判的なメディアを「フェイクニュース」と呼ぶことから、メディアへの信頼が二分化される可能性もあります。

また、彼に支持的な判事を多数任命することで、司法も政治的に分断される恐れがあります。

3. 人種や移民問題の対立の増加

新大統領の再選は、特に移民や人種問題に対する厳格な政策を強化する可能性があり、これが社会的対立を引き起こす一因になるでしょう。

移民政策の厳格化:再選後、移民に対する規制や国境管理をさらに強化し、不法移民への取り締まりが強化されるでしょう。これにより、移民を支援する団体や人権団体からの抗議が増え、社会的な緊張が高まるかもしれません。

人種差別問題:彼の言動や政策に反発する黒人、ヒスパニック系、アジア系の市民が反対運動を行う可能性があります。

特にBLMブラック・ライブズ・マター運動のような人種差別に対する抗議活動が再燃する可能性が高いです。

4. 政策と州の分裂

保守的な政策を推進する連邦政府に対し、リベラルな州や自治体が独自の政策を進める動きが強まると予測されます。

気候変動政策での対立:新大統領は環境規制を緩和する政策を進める傾向があり、カリフォルニア州など環境保護に積極的な州との対立が予想されます。

こうした州は連邦政府に頼らず、独自に企業や団体と連携し、州レベルでの環境保護政策を強化する可能性があります。

中絶や銃規制の問題:新大統領は保守的な政策を進める中で、中絶規制や銃規制についても州ごとに方針が異なる動きが強まるでしょう。

これにより、州間で異なる法規制が生じ、国民の生活に大きな違いが生まれる可能性があります。

5. 経済格差の拡大と不満

経済政策についても、新政権は企業減税や規制緩和など、経済界や富裕層を支援する政策が中心になる可能性があります。

そのため、低所得者層が抱える経済的な格差が拡大し、社会的不満が高まる恐れがあります。

中間層の経済的困難:企業への支援が強まることで、一部の産業は成長するものの、経済的に恩恵を受けにくい中間層や貧困層との格差が拡大する可能性が高いです。

特に医療費や教育費の負担が重い家庭にとって、厳しい状況になるでしょう。

6. 民兵や過激派団体の台頭

分断が激化すると、政治的立場や信条に基づいた民兵や過激派団体が台頭する可能性があります。

武装組織の増加:特に保守的な地方では、連邦政府やリベラル派の影響を排除しようとする民兵団体が増えるかもしれません。

これにより、国内での武装衝突や社会的緊張が増加する恐れがあります。

国内テロのリスク:政治的な意見の違いが激化した場合、テロや暴力行為による事件の発生リスクも高まるかもしれません。

エイレネたちは、ミエナの話を聞き、アメラシアの分断が解消されるには長い道のりが必要だと実感しました。

この分断が他の国にも波及しないよう、エイレネたちは地球全体の平和と協調を築くための方法をさらに探る必要があると考えました。


2-12 新大統領の過去の出来事から学ぶ

エイレネたちは、新大統領の1期目の時代にアメラシア社会で具体的にどんな混乱が起きていたのかを知りたいとミエナに頼んだ。

ミエナは少し目を閉じ、エイレネたちの疑問に真剣に応えるため、丁寧に説明を始めた。

「新統領の1期目は、アメラシア社会にさまざまな混乱と変化をもたらしました」とミエナが話し始めると、エイレネたちは身を乗り出して耳を傾けた。

1. 政治的対立と抗議活動の増加

「彼の政権では、共和党と民主党の間の対立が激化しました。政策の違いだけでなく、新大統領がSNSなどを通じて頻繁に過激な発言をすることで、社会に緊張感が漂っていたのです」

ミエナは一息入れて続けた。

「たとえば、移民問題に関する発言や行動が、特に多くの反発を呼びました。国境に壁を建設する政策は、人々の間で意見が真っ二つに分かれ、都市部では多くの抗議デモが起きました。移民やその家族が強制的に収容所に送られたり、子どもが親と引き離されるといった悲惨なケースもあり、こうした光景にアメラシア市民だけでなく世界中がショックを受けたのです」

プロメテウスは眉をひそめ、「そんなことが行われていたのか?」と驚きを隠せないようだ。

2. 人種差別と暴動

「また、彼の政権下で、アメラシア社会の人種問題も再び大きく浮き彫りになりました」とミエナが続けた。

「特に、黒人への警察の暴力が頻繁に報道され、『Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)』運動が全国で広がったのです。2020年にはジョージ・フロイドさんという黒人男性が警察の取り締まり中に亡くなり、全国で抗議デモや暴動が勃発しました。多くの都市で平和的なデモも行われましたが、一部では暴徒化し、建物が破壊されることもありました」

パンドラが神妙な顔で言った。

「その運動は、すべての人の人権と平等を求めるものだったのね」

「ええ、まさにその通りです」とミエナがうなずく。

「ただし、こうした運動に対し新大統領は、警察や法執行機関の強い姿勢を支持する発言を繰り返し、反発の声が上がりました。これにより、社会全体がさらに分断されていったのです」

3. メディアと「フェイクニュース」問題

ミエナはさらに続けた。

「新大統領は、メディアとの対立もありました。彼は批判的な報道をするメディアを『フェイクニュース』と呼び、特にCNNやニューヨーク・タイムズといったニュースメディアを激しく非難していました」

ディアナが首をかしげて聞いた。

「それで、メディアはどうしたの?」

「メディアも反発し、新大統領の言動を厳しく批判しました。これにより、国民がメディアを信頼するかどうかで意見が分かれ、情報の信頼性やニュースの真実性に対する疑念が広がりました。SNS上では真偽が定かでない情報が拡散し、人々の間で混乱が起きていたのです」

4. コロナウイルスへの対応と混乱

「そして2020年には、新型コロナウイルスの流行がアメラシアを襲いました」とミエナが話を続ける。

「彼の政権は当初ウイルスの危険性を軽視していたため、感染が拡大してしまいました。病院が次々といっぱいになり、医療従事者も非常に厳しい状況に置かれたのです」

エイレネは息をのんで、「それでどうなったの?」と尋ねた。

「政府の対応が遅れ、感染拡大の抑制が難しくなり、多くの州で都市封鎖や緊急事態が宣言されました。マスク着用やワクチン接種の是非を巡っても対立が起き、人々はその方針に従うか反発するかで分断されました。マスクの着用はただの健康対策でなく、政治的な意味合いを帯びた象徴的な行為となり、SNS上でも激しい議論が繰り広げられました」

5. アメラシア・チュアンロ対立と国際的な緊張の増加

ミエナはさらに、国際的な緊張も語った。

「彼の政権は、特にチュアンロとの対立を強め、貿易戦争が起きました。これはアメラシア国内の物価上昇や企業の負担増加を招き、多くの業界が不安定な状況に陥りました」

「国内外での分断がますます深まっていったのね」とエイレネが感想を述べると、ミエナは静かにうなずいた。

最後に

「以上が、今回当選した新大統領の1期目で起こった混乱です」とミエナが話を終えると、エイレネたちはただ静かにその重い現実をかみしめていた。


2-13 二期目は一期目と同じか違うか?

エイレネたちは、再び彼が大統領に返り咲いたことで、アメラシア社会がどのような変化を迎えるのか心配していた。

彼の1期目での混乱を聞き終えた後、プロメテウスがミエナに質問を投げかけた。

「同じ問題が再び起きると考えた方がいいのか、それとも今回は別の問題が起きるのか、どう考えるべきだろう?」

ミエナは少し考え込んでから、静かに口を開いた。

「1期目で発生した問題がまったく同じ形で起きる可能性もありますが、異なる形に変わって現れるかもしれません。そして、過去の経験を踏まえて新たに発生する問題も無視できません。」

エイレネたちはさらに身を乗り出してミエナの言葉に耳を傾けた。

1. 「再燃する政治的対立と深まる分断」

ミエナはまず、彼の再登場が政治分断をさらに深刻化させる可能性について説明を始めた。

「1期目と同様、彼が再び政権を握ったことで、共和党支持者と民主党支持者の溝はさらに深まるでしょう。ただし、今回はより一層複雑な分断が予想されます。彼がアメラシアの伝統的な政治ルールを破ることで、国の政治的安定がより危ぶまれるかもしれません」

ディアナが少し不安そうに聞いた。

「政治的対立が進むと、どんな問題が具体的に起こるの?」

「例えば、州政府が独自の政策を採用し、連邦政府の方針に従わないことが増えるでしょう」とミエナは答えた。

「特にリベラルな州は気候変動や移民政策などの分野で、彼の政権と対立する可能性が高く、政策の一貫性が失われるかもしれません」

2. 「人種・移民問題のさらなる悪化」

次にミエナは、1期目での人種問題や移民に対する厳格な政策が、さらに悪化する可能性について説明した。

「大統領の再選で、移民に対する締め付けがさらに強まるでしょう。彼の支持者には移民に対する警戒心が強い層が多く、移民政策が国内の社会不安を煽る可能性もあります。これがさらに移民排斥的な運動を促進し、社会の分断が深まる結果を招くかもしれません」

エイレネは眉をひそめ、「つまり、移民の方たちの生活がさらに苦しくなるということ?」

「そうです。そして、人種問題も再燃する可能性があります」とミエナが答えた。

「一部の人々が排他的な姿勢を強め、人種間の対立が再び表面化するでしょう。ブラック・ライブズ・マター運動のような市民運動が再燃する可能性もありますが、今回はより激しい対立となるかもしれません」

3. 「メディアとの新たな対立」

ミエナはさらに、メディアとの対立が1期目とは異なる形で起こる可能性についても触れた。

「彼は以前からメディアとの対立を繰り返していましたが、今回はSNSを含めた情報の影響力がさらに増しています。SNSプラットフォーム自体が『言論の自由』をめぐって分断しており、大統領が再選すれば、メディアとの関係はさらに緊張感を増すでしょう」

パンドラが深刻そうに尋ねた。

「ということは、情報がさらに混乱して、人々が事実を見分けるのが難しくなるの?」

「その通りです。信頼性のない情報が増え、社会全体に不信感が広がる可能性があります」とミエナは答えた。

「人々はますます自分に都合のいい情報だけを信じ、対立が激化するのです」

4. 「新型コロナウイルス対策の影響」

「新型コロナウイルス対策も問題になるでしょう」とミエナは続けた。

「1期目での感染症対策に批判が集まりましたが、再選後の対応によっては、健康格差や医療政策の不安定化が進むかもしれません」

プロメテウスが深刻そうに言った。

「感染症対策が不安定なままだと、経済や教育、あらゆる分野に影響が出てしまうよね」

5. 「アメラシア・チュアンロ対立と国際的な緊張」

最後にミエナは、アメラシア・チュアンロ対立の激化とその国際的な影響についても触れた。

「新大統領の再選によって、アメラシア・チュアンロ関係は再び厳しくなり、貿易戦争が再燃する可能性があります。特に半導体やエネルギー分野での対立は激化し、国際社会全体に影響を及ぼすでしょう」

エイレネは息をのんで、「それで、アメラシアが孤立してしまう可能性もある?」

「ええ。アメラシアが孤立主義を強めれば、気候変動や感染症、貧困など、地球規模の問題で協力体制が崩れる可能性もあります。世界全体にとって不安定な状況が続くでしょう」とミエナは説明した。

エイレネたちは深刻な表情で顔を見合わせ、アメラシアの状況が再び大きな混乱と不安定さをもたらす可能性があることを改めて痛感した。


2-14 公約による問題

新大統領が大統領選挙の際に掲げていた主要な公約には、次のようなものがありました。

これらは、国内政策や外交政策の両方にわたり、アメラシアの利益を最優先する「アメラシア第一主義」を強く打ち出した内容が特徴です。

1. 移民政策の厳格化

国境の壁建設と強化:メキシコ国境に壁をさらに建設し、違法移民を防ぐ。

移民制限と強制送還:不法移民の強制送還、犯罪歴がある移民の追放をさらに進める。

2. エネルギー政策と環境規制の緩和

エネルギー独立と化石燃料の推進:シェールガスや石炭など国内のエネルギー資源開発を促進し、エネルギー自給率を向上。

環境規制の緩和:環境保護関連の規制を撤廃し、石油やガスなどの採掘を拡大。

3. 経済政策と貿易の見直し

貿易赤字削減:チュアンロやメキシコ、EUなどとの貿易赤字を減らすため、関税を強化しアメラシア産業を保護する。

「アメラシア第一」の産業政策:アメラシア国内の製造業を活性化するため、税制優遇措置を導入し、企業の国内回帰を促進する。

4. 外交政策と国防費増額

NATOや同盟国への負担増加要求:NATO諸国やアジアの同盟国に対し、防衛費の増額を求め、アメラシアの負担を軽減。

軍備拡張と強力な防衛力:国防費の増額により、軍事力をさらに強化。

5. 医療制度改革

オバマケアの撤廃または改変:オバマケアを撤廃し、より低コストの医療保険制度を導入。

6. 司法改革と治安強化

厳格な法執行の推進:警察の支援や犯罪取り締まりを強化し、治安を向上。

保守的な最高裁判所判事の指名:最高裁判所を含め、保守的な判事を指名し、保守的価値観に基づく法解釈を支持。


深刻な問題を引き起こしそうな公約とその影響

新大統領の公約の中には、特に以下の点で深刻な問題が懸念されています。

1. 移民政策の厳格化

人権問題:家族が引き離されることや、収容所での環境の悪化が人権問題として国際的に批判を受ける可能性が高い。

社会の分断:移民やその支援者と彼の支持層の間で分断がさらに進む恐れがある。

2. 環境規制の緩和

気候変動への悪影響:化石燃料産業を優遇し環境規制を緩和することで、CO2排出量が増加し、気候変動対策に逆行する。

国際的な孤立:パリ協定からの離脱を再度強化すれば、国際社会での孤立が進む可能性がある。

3. 貿易赤字削減と関税の強化

貿易戦争の激化:関税の強化により他国が報復関税を導入すれば、貿易摩擦が激化し、アメラシア国内の消費者価格の上昇や経済停滞につながる。

経済格差の拡大:特に製造業や農業などで国際競争が激化し、国内の産業構造に影響を及ぼす。

4. NATOや同盟国への負担増加要求

同盟関係の不安定化:NATOやアジアの同盟国に負担を強いることで、アメラシアの安全保障における信頼性が揺らぐ。


2-15 政権が行き詰まる可能性

エイレネは、新大統領の政策が進むにつれ、政権がどのように行き詰まるのかが気にかかっていた。

エイレネは少し不安な表情を浮かべ、ミエナに向かって頼み込むように言った。

「ミエナ、この政策がどんどん進んだら、政権がきっとどこかで行き詰まると思うの。いつ頃、どんな形でそうなるか、教えてくれないかしら?」

ミエナは一瞬考え込んだ後、冷静な口調でいくつかのシナリオを挙げ始めた。

1. 国際社会との衝突による孤立:政権後半の2年目から3年目と予想

「まず、国際的な孤立が一つの行き詰まりの要因になり得ます」とミエナは語り始めた。

「新政権が貿易政策で他国に圧力をかけ、環境政策を軽視し続ける場合、国際社会の不信感が高まり、最終的には孤立が進むでしょう」

エイレネが首をかしげると、ミエナは続けた。

「特に気候変動問題でパリ協定を再度拒否し、シェールガスや石炭の採掘を拡大することが地球温暖化を加速させる場合、国際的な非難が集中するでしょう。各国はアメラシアとの協力を慎重に考え、外交や貿易での連携が停滞し、経済的な影響も避けられません」

「それって、アメラシアが孤立しても経済が止まるような…?」とエイレネが尋ねると、ミエナは静かにうなずいた。

「孤立は経済の停滞だけでなく、外交面での信頼の欠如につながります。これが進むと、彼が求める国際的な協力を得るのがさらに難しくなります。これは政権後半の2年目から3年目にかけて起こり得ることです」

2. 国内分断の激化による政権崩壊の危機:再選後の1年から2年目で激化!

ミエナはさらに、アメラシア国内での分断が進む可能性について語り始めた。

「新大統領の移民政策や貿易戦争によって、国内の分断が一層激しくなると、政権が行き詰まる可能性が高まります。彼の支持層と反対派との間で対立が深まり、社会全体に緊張が広がるでしょう」

「具体的にはどういうこと?」とプロメテウスが尋ねる。

「例えば、移民政策の厳格化や警察の強化によって、一部の市民が暴力的な抗議活動に走り、都市部で騒乱が発生する可能性があります。地方と都市部の間で生活環境や政治観の違いが顕著になるにつれて、州政府が連邦政府の政策に従わないケースも増えるかもしれません」

エイレネは心配そうに、「つまり、国がまとまらなくなる?」と尋ねると、ミエナは厳しい表情でうなずいた。

「はい、最悪の場合、連邦制そのものの存続にも影響を与えかねません。これは、再選後の1年から2年目で激化する可能性が高いです」

3. 経済の悪化と支持基盤の動揺

ミエナは少し間を置き、経済的なリスクについても語り始めた。

「『アメラシア第一主義』の貿易政策が他国の反発を招き、関税が相互に増える貿易戦争が長引けば、アメラシアの消費者や農家、製造業者が打撃を受けるでしょう」

パンドラが不安げに言った。

「それで、アメラシアの経済が悪くなると?」

「そうです。支持基盤である農業地域や製造業の労働者が苦境に陥れば、彼の支持率も低下するでしょう。特に貿易戦争による影響は、農業州に直撃するため、彼の再選の一部だった支持層が揺らぐ可能性があります」

ディアナが尋ねた。

「その場合、政権の行き詰まりは避けられないの?」

「もし失業率が上昇し、経済指標が悪化すれば、支持基盤が崩れる可能性があります。これは政権の3年目、つまり再選の半ば頃に起きやすい状況です。景気回復ができなければ、支持率が落ち続け、次の選挙に影響が出るでしょう」

4. 不安定な外交による危機管理の失敗

ミエナはさらに、彼の外交政策のリスクについても語った。

「彼はチュアンロやキタアサヒとの関係において強硬な姿勢をとりがちですが、こうした外交が失敗すると、国際的な危機管理が難しくなります」

「具体的には?」とプロメテウスが促す。

「例えば、アメラシア・チュアンロ関係がさらに悪化すれば、アジア太平洋地域の緊張が高まり、国際情勢の不安定化が進みます。また、NATOや他の同盟国に対する負担増加を求め続けると、同盟国がアメラシアの指導力を疑問視し、国際安全保障が揺らぐ可能性があります」

「それも、早ければ2年目、もしくは3年目以降に起こり得ます」とミエナは慎重に付け加えた。


エイレネは考え込んだ後、ゆっくりとうなずいた。

「つまり、こうした複数の問題が重なり、政権が行き詰まる可能性が高いのね」

「その通りです。貿易戦争、国内分断、外交の混乱…これらが同時に進行することで、政権が行き詰まり、もしかすると次の選挙では立ち行かなくなるかもしれません」とミエナは締めくくった。

エイレネたちはそれぞれのシナリオに深い不安を抱きつつも、この難局をどう乗り切るべきか、頭を悩ませるのだった。


エイレネたちは、気を取り戻し、これからの対策を練り始めた。

「時間順に並べ替えてみよう」とプロメテウスが言った。

1年~2年目:国内分断の激化による政権崩壊の危機

2年目~3年目:国際社会との衝突による孤立

早ければ2年目~3年目以降:不安定な外交による危機管理の失敗

3年目:経済の悪化と支持基盤の動揺

これらの危機や孤立・動揺などの時期に、新大統領に地球八策や地球契約を受け入れてもらえるような計画を立てて、それらが失敗してしまう可能性や予期せぬ事態をいくつも想定し、その度に新しい道を模索できるようにするパラレルな計画を固めることにするのだ。

4人は、過去の挫折を糧にガイアの使命を果たすために、どんな状況でも行動を続けられるよう準備を整えることに決めた。


2-16 不測の事態を考慮した複数の代替案を検討せよ!

まずは、今回の大統領選挙で惜しくも敗れた民主党の女性候補に注目し、彼女が果たす役割について考えることにした。

彼女が党内外での影響力をどのように活かし、さらに次の選挙や地球規模の問題に取り組むかが、地球八策を進めるうえで重要だと判断したからだ。

彼女はすでに、選挙直後のスピーチで支持者たちに感謝の意を表すとともに、「これは終わりではなく始まりだ」と述べ、今後の活動に意欲を示していた。

そして今、党内で支持基盤を強化するための準備を進めつつ、国内外での影響力を活かした新たなアプローチを模索している。

まずは、党内での活動だ。

彼女は特に、気候変動、医療、教育、平等といった課題について、民主党の主張を強化する役割を担うことを決意していた。

議員や州知事らに直接働きかけ、次の中間選挙や大統領選挙で党が勝利するための戦略を協議するため、定期的なミーティングを開く予定だ。

また、支持を受けた進歩派の若手リーダーたちと協力し、党内の幅広い層に呼びかけることで結束を強めることにも意欲を見せていた。

次に、党外での活動として、彼女は選挙の過程で獲得した幅広い支持者層を中心に、「市民の声を届ける」全国的な運動を計画していた。

集会やタウンホールミーティングを定期的に開催し、彼女が選挙で訴えた政策について、草の根レベルでの支持をさらに広げようとするものだ。

特に、農村部や小都市の住民にも積極的にアクセスし、彼らの不満や意見を直接聞くことで、国民の声を代弁する活動を展開していくつもりだった。

次に、国内に向けた活動方針としては、全国メディアを通じて政策論争をリードする戦略を取ることに決めていた。

気候変動対策に関する討論番組や教育問題に関するドキュメンタリーへの出演、またはソーシャルメディアでの積極的な情報発信を行い、議会外での発言力を高めていく。

彼女の目的は、次の選挙までに国民の意識を高め、政策課題の重要性を強調することであり、そのために専門家と協力しながら、効果的なメディア戦略を練っていた。

最後に、国外に向けた方針についても、新しいアプローチを計画していた。

彼女は、国外のリーダーとも積極的に対話し、気候変動や人権問題、女性の権利に関する共通の目標を探っていた。

特に、欧州のリーダーたちや気候変動に取り組む国々の首脳と協力し、国際連合やG20などの場で、アメラシア国内の草の根運動と国際的な環境保護活動をつなぐプラットフォームを構築することに取り組む予定だった。

エイレネたちは、彼女の具体的な活動方針を知るにつれ、彼女が持つ影響力が地球八策の推進にとって重要な鍵であることを確信していった。

この女性リーダーが国内外での支持を集めれば、地球八策の実現にも一歩近づけるに違いないと、彼らは希望を抱き始めたのだった。


2-17 チュアンロが民主化する可能性

エイレネたちは、次の議題に進むべくミエナのもとに集まった。

彼らの新しい焦点は、「チュアンロが民主化する可能性」についてだった。ガイアの使命を果たすためには、全ての国が協力し、共通の価値観に基づいた地球政府を目指す必要があると感じていた。

そのためにも、エイレネたちはチュアンロの将来について複数のシナリオを想定し、どの方向性が現実的かを見極めたいと思っていた。

「ミエナ、今のチュアンロが民主化に向かうとしたら、どんなシナリオが考えられるの?」とエイレネが尋ねると、ミエナはAIらしい冷静な口調で答えた。

「はい。チュアンロが民主化する可能性について、複数の角度から予測を立てることができます。それでは、最も考えられる3つのシナリオをお話しします」

シナリオ1:経済発展による漸進的民主化

「第一のシナリオは、チュアンロが経済発展をさらに進めることで、民主化がゆっくりと進行する可能性です。この場合、チュアンロ政府が国内での市民の生活向上を進めていくうちに、より自由な発言や政治への参加を求める声が次第に増えていくでしょう」

ミエナは続けて説明した。

「この漸進的な民主化の過程では、都市部の中産階級が成長し、知識層の影響力も拡大します。彼らが現行の政治体制に疑問を抱き、民主的な制度の導入を訴える可能性があります。しかし、このプロセスはゆっくりとしたもので、国内の安定を重視する政府が反発を防ぐために慎重に進めるでしょう」

ディアナが興味を示し、「つまり、社会が成熟して、最終的には市民の声が政治に反映される形に移行するのね」とうなずいた。

シナリオ2:大規模な抗議運動と圧力による急速な変化

「第二のシナリオは、突発的な抗議運動による急激な民主化です。これは、市民の不満が一気に爆発するような事件や、経済格差の増大が引き金となるケースです。例えば、失業率の急上昇や格差の拡大が続けば、政府の政策に対する市民の不満が限界に達し、民主的な改革を求める大規模な抗議運動が発生する可能性があります」

「ただし」とミエナは慎重に付け加えた。

「こうした急速な変革は、国内の政治的な混乱を伴うでしょう。政府が強硬な鎮圧を行う可能性もありますし、場合によっては軍部が介入し、反動的な措置が取られるリスクもあります。つまり、成功の可能性はあるものの、大きな犠牲を伴う形になるかもしれません」

エイレネは重い口調で言った。

「それは、大変なリスクを伴う道ね。でも、可能性の一つとして備えておく必要があるわ」

シナリオ3:国際社会の影響による変革

「第三のシナリオは、国際社会の圧力や協力によって、チュアンロが民主的な変革を選ぶ可能性です。この場合、他の国々が協力し、チュアンロが国際的な民主主義の潮流に従うことを求める形です。たとえば、貿易や外交での連携を条件として、民主的な改革の一部が提案される可能性があります」

「しかし」とミエナは付け加える。

「このアプローチは、あくまでも国際社会からの協力とチュアンロ国内の動きが一致した場合に限られます。強い国際的な圧力だけでは逆効果になり、逆に反発が強まる可能性もあるため、外交的な慎重さが必要です。国際社会の圧力と国内の改革派がうまく協力できれば、穏やかな民主化が進む可能性があります」

プロメテウスが理解を示してうなずいた。

「そうか、このシナリオなら国際的な協力も見込めるし、対立よりも協調的な道が考えられるね」

エイレネたちは、ミエナの話にそれぞれのシナリオの利点とリスクを感じ取っていた。

漸進的な民主化、大規模な抗議運動による変革、そして国際的な協力による影響――それぞれが異なる道であり、どれも簡単な解決策ではない。

だが、彼らはこれらのシナリオを頭に入れ、それぞれの可能性に対してどのような準備が必要かを真剣に考え始めた。


2-18 今回はミエナの情報に慎重に追加情報を求める!

エイレネたちは、ミエナの予測を聞いたものの、それぞれのシナリオの限界を強く感じていた。

エイレネはさらに踏み込んで、疑問を解消するようにミエナに求めた。

「アメラシアが描いたアメラシア・チュアンロ接近のシナリオで漸進的な民主化がうまくいかなかったのはなぜ?経済発展だけでは、どうして民主主義が生まれないの?」

ミエナは少し考え、穏やかな口調で語り始めた。

「良い問いですね。まず、漸進的な民主化がうまくいかなかった理由についてですが、確かにアメラシアは過去数十年にわたり、経済成長が民主化につながると期待してチュアンロと接近してきました。これは、経済が発展すれば市民の教育水準や意識が向上し、民主化への要求が自然と高まるという仮説に基づいていました。しかし、実際にはチュアンロでは権威主義的な体制が強化され、民主化は進みませんでした。理由として、チュアンロ政府は経済的な恩恵を国民に行き渡らせ、生活水準を向上させることで、体制への支持を維持してきたことが挙げられます。また、厳格な監視体制や言論統制によって、自由な政治的議論や活動が抑えられてきたのです。つまり、経済発展だけでは、必ずしも民主的な価値観が育まれるわけではないのです」

ディアナが頷きながら続けた。

「たしかに…生活が向上しても、統制された状況では市民が政治のあり方を見直す機会が限られているのね」

「その通りです」とミエナが応えた。

「次に、大規模な抗議運動による変革ですが、これが成功するための条件も厳しいものです。現在のチュアンロでは、国民の動向や活動は厳しく監視され、SNSやメディアも統制されています。抗議運動が組織化される前に鎮圧される可能性が非常に高いです。しかし、条件次第では打ち破る力が生まれる可能性もあります。その条件とは、大規模な経済危機や自然災害、予期せぬ出来事による国民の不満が大きく爆発するような状況が生じた場合です。過去にそうした状況が原因で体制が崩壊した例は世界に少なくありません。社会の動揺が大きすぎて政府が制御しきれなくなり、やがて改革派が力を持つ状況になれば、体制の変革も視野に入るでしょう」

プロメテウスが眉をひそめて問いかけた。

「とはいえ、それはあまりに不安定な道だね。予期せぬ危機だけを待つのはリスクが高い」

「確かにそうですね」とミエナも認めた。

「第三のシナリオに話を移しますが、チュアンロのような大国には、確かに国際的な圧力が直接的な変革をもたらすのは難しいです。ですが、なぜこれを三番目に挙げたかというと、経済的なグローバル化の影響が背景にあります。チュアンロも世界経済に深く結びついており、特に輸出や貿易で利益を上げています。そのため、国際的な圧力が経済面での協力や資金の流れに影響する場合、必然的に体制維持のための対応が求められます。場合によっては、国際社会との妥協として一部の自由化や改革が進められる可能性があります」

エイレネはミエナの答えに満足そうにうなずいた。

「なるほど、それぞれのシナリオにどんな現実的な要素が影響するか、よく分かったわ。これを踏まえて私たちの道筋を考え直してみよう」


エイレネたちは、ミーティング・ルームで集まり、ミエナにチュアンロの民主化の可能性について話を聞き始めた。

特に2030年までにガイアの使命を果たすには、チュアンロの民主化がどの程度現実的であるかを知ることが重要だった。

プロメテウスが最初に口を開いた。

「ミエナ、先日話してくれたチュアンロの民主化の3つの要因——漸進的な民主化、大規模な抗議運動による変革、そして国際的な協力による影響について、2030年までにどれだけの可能性があるのかを知りたいんだ」

ミエナは少し考え込んでから、静かに答えた。

「では、まず漸進的な民主化の可能性から見てみましょう」

1. 漸進的な民主化: 可能性20%

「チュアンロの経済成長は近年鈍化していますし、若年層や都市部の中産階級は、政治的自由を求める声を少しずつ強めてはいます」とミエナは続けた。「経済成長が低迷すると、政府は内部からの緩やかな変革を求められるかもしれません。しかし、習近平主席の強力な権威主義体制や、厳しい検閲が民主化の動きを抑え込む可能性が高いです」

エイレネが少し首をかしげた。

「ということは、漸進的に進むとしても非常にゆっくりということね?」

「そうです。2030年までに漸進的に変化する可能性は20%程度と考えられます」とミエナは説明した。

2. 大規模な抗議運動による変革: 可能性15%

次にミエナは大規模な抗議運動の可能性に話を移した。

「抗議運動がチュアンロ国内で発生し、政治体制に圧力をかけるシナリオはあります。しかし、厳しい監視体制と権威主義的な警察力のために、香港や新疆ウイグル自治区でのように弾圧される可能性も高いでしょう」

パンドラが不安そうに尋ねた。

「では、抗議運動の力で民主化が進む可能性はどれくらい?」

「この場合、2030年までに変革が起きる可能性は15%です」とミエナが答えると、パンドラは少し肩を落とした。

3. 国際的な協力による影響: 可能性10%

ミエナは最後の要因、国際的な協力について話し始めた。

「国際社会がチュアンロに対して、貿易や気候問題などで圧力をかけ、民主化を促す方法も考えられます。しかし、チュアンロは世界的な影響力を持っており、経済や軍事力で独自の立場を強固にしています」

ディアナが少し眉をひそめた。

「国際的な協力がチュアンロに影響を与えるのは難しいのね」

ミエナは頷いた。

「はい、国際的な圧力による民主化の可能性は10%程度と考えられます。チュアンロは対外的な圧力を受け流す力も持っているので、2030年までに国際的な協力だけで民主化が進む可能性は低いでしょう」

全体の見通し

エイレネたちは話を聞き終えると、しばらく沈黙した。

「つまり、合わせても45%程度の可能性しかないのね…」とプロメテウスが言った。「けれども、どれか一つでも変化が起きれば、あとはドミノ倒しになるかもしれない」

エイレネは静かに頷き、2030年までにガイアの使命を果たすため、どのように行動していくべきかを考え始めた。


プロメテウスが全部合わせて45%程度の可能性になると言っているけど、単純に足し算して良いのかどうかディアナはミエナに聞いた、

ディアナがミエナに尋ねると、ミエナは穏やかに微笑んで答え始めました。

「良い質問ですね。こうした複数の要因が関わる場合、単純に足し合わせて良いかどうかは慎重に考える必要があります。45%の可能性と考えるには、これらの要因が互いに独立していて、重複することがない場合が前提です。しかし、実際には一つの要因が他の要因を引き起こす可能性もあるため、少し複雑です」

ディアナは興味深そうに頷きました。

「じゃあ、重複がある場合はどうやって考えるの?」

ミエナは少し考えた後、説明を続けました。

「たとえば、経済が不安定になって内部で不満が高まった結果、漸進的な改革が進むと同時に抗議運動も起きることが考えられます。その場合、二つの要因が相互に影響し合って可能性が高まることもあり得ます。こうしたケースでは、それぞれの可能性の組み合わせを計算に入れる必要があるんです」

プロメテウスが話に加わります。

「つまり、三つの要因が互いに関係することを考えると、最終的な可能性は単純な合計よりも少し低くなるかもしれないが、それぞれの相互作用で逆に高まることもある、ということですね?」

「その通りです」とミエナが微笑んで答えました。

「また、予測の精度を上げるためには、各要因がどの程度他の要因に依存しているかを考慮したシミュレーションを行うことも重要です。このような複雑な予測では、シミュレーションを使って相互作用を確認することで、もう少し精度を高められるかもしれません」

エイレネは深く考え込み、「なるほど、単純に足し合わせるだけでは現実の複雑さには対応しきれないのね。じゃあ、ミエナ、私たちの目標達成のために、どの要因を優先的に注視するべきかも教えてくれる?」

ミエナは「もちろんです」と微笑み、彼らのさらなる戦略に向けて議論を始めるのでした。

パンドラがミエナに「もっと単純に、チュアンロが2030年までに民主化する確率を教えて!」とせがむと、ミエナは少し微笑んでから、慎重に言葉を選びながら説明を始めました。

「パンドラ、確率を一つの数字でお答えするのは簡単ではありませんが、仮に様々な要因を統合して推定するなら、2030年までにチュアンロが民主化する可能性はおおよそ10~20%程度と見られます」

パンドラが少しがっかりした表情を見せると、ミエナは続けました。

「ただ、これは非常に複雑な要因が絡むシナリオのひとつです。例えば、急速な経済的な悪化や内部での分裂、あるいは国際的な圧力が想定以上に強まることで、民主化への動きが予想以上に加速することもあり得ます」

エイレネも興味深そうに聞き入っていました。

「つまり、現状ではあまり高い確率ではないけれど、予期しない要因が重なると、その可能性が上がるということね?」

ミエナは頷きました。

「その通りです。チュアンロが強固な統制を維持しているため、2030年までに大きな変化が起きる可能性は低めですが、予測できない要因があるからこそ、全体の情勢を注視し続ける必要がありますね」

プロメテウスがパンドラに肩を叩きながら微笑んで、「まだ希望はあるさ、変化は予測できないところからやってくるものだから」と言うと、パンドラも少し微笑みを取り戻しました。


2-19 ロムニカの民主化のシナリオ

エイレネたちは、ロムニカについても同じく、民主化に向けたシナリオとその現実的な可能性についてミエナに尋ねた。

「ミエナ、ロムニカが民主化する可能性についても教えてほしいわ」とエイレネが声をかけると、ミエナはうなずき、穏やかに説明を始めた。

「ロムニカが民主化に向かう可能性についても、いくつかのシナリオが考えられます。しかし、チュアンロの場合と同じく、ここにも難しい現実があります。それでは、現実的に見込みがある3つのシナリオについてお話ししましょう」

シナリオ1:経済的な不安定による変革

「第一のシナリオは、ロムニカ経済が不安定になることで、国民が体制に強い不満を抱き、民主化が進むケースです。ロムニカは天然資源に頼った経済構造を持ち、特に石油や天然ガスの輸出で成り立っています。これが国際的な制裁やエネルギー価格の下落などの影響で大打撃を受けると、失業や生活水準の低下が国民に広がり、体制への不満が高まる可能性があります」

ミエナは続けた。

「こうした状況では、若者や都市部の市民がより自由な政治制度を求めて声を上げるかもしれません。しかし、ロムニカ政府は現在、抗議運動に対する監視や統制を強化しており、たとえ経済危機が起こっても、体制が簡単に揺らぐとは限りません。ですので、変革にはかなりの困難が伴います」

プロメテウスがうなずき、「なるほど、経済の動揺は体制の変革を促す可能性があるけれど、抑圧が厳しい分、容易ではないということか」と感想を述べた。

シナリオ2:政権内の分裂と内側からの変化

「次に考えられるのは、政権内の分裂による民主化の道です。ロムニカの現体制は、強力な指導者を中心とする中央集権型ですが、必ずしも全ての関係者が一枚岩というわけではありません。経済的な制約や国際的な圧力が加わることで、内部で変革派が現れる可能性があります」

「特に、次世代のリーダーが登場するタイミングで、現在の権力構造に疑問を持つ層が現れる可能性もあります。たとえば、新しいリーダーが経済の開放を求めたり、外交政策の軟化を図ったりすれば、民主化のきっかけになるかもしれません。ただし、現体制が強く支配を続ける限り、内部での変革も非常に困難であり、分裂があったとしてもそれが実際に民主化につながるかは不透明です」

ディアナは興味深そうに、「なるほど、内部の変革派が台頭する可能性が一つの鍵になるわけね。でも、現体制が強い限り難しい挑戦ね」と答えた。

シナリオ3:国際社会の影響による協調的な民主化

「三つ目のシナリオは、チュアンロの場合と似ていますが、ロムニカが国際社会からの圧力や協力を受けて、民主化を進めるシナリオです。ロムニカもまた経済的な結びつきが強く、欧米諸国との経済的な協力を通じて成り立っている部分があります。これが制裁や経済的な締め付けによって厳しい状況に直面した場合、国民の間に改革への希望が生まれる可能性が高まります」

ミエナは、慎重な表情で説明を続けた。

「ただし、ロムニカの場合、チュアンロと同じく強力な軍事力と資源の豊富さを背景に、外部からの圧力を退ける力があります。ですから、国際社会の影響だけで民主化が進むとは限りません。しかし、国際的な経済協力や技術協力が不可欠な状況になった場合、変革を模索するきっかけになるかもしれません」

エイレネはその言葉に深く考え込んだ。

「つまり、外部の協力だけでは効果が出にくいということね。でも、経済的な結びつきが強い分、変革を模索する可能性はあるかもしれない」

エイレネたちは、ロムニカの民主化が簡単には進まない理由について、ミエナの説明でよく理解できたようだった。

強力な体制、経済と資源への依存、そして国際的な圧力を退ける軍事力といった要因が絡み合っていることを踏まえ、どのシナリオも実現には相当な困難が伴うことを改めて感じた。

「でも、これらのシナリオを頭に入れて、可能性がある限りは準備を進めましょう」とエイレネは決意を新たにした。


2-20 更なる理解のために

エイレネはミエナに疑問をぶつけた。

「ミエナ、チュアンロについてのシナリオでは、経済的な不安定や政権内の分裂といった要素をあまり考慮していなかったけれど、実際、チュアンロにも経済的なリスクや内部の不安定要因はたくさんありますよね?どうしてそれらが選択肢として含まれなかったの?」

ミエナは慎重にうなずきながら答えた。

「確かに、チュアンロにも経済の悪化や高齢化、都市と農村の格差といった不安定要因があります。これらが社会の安定に影響を及ぼす可能性は確かにあります。ただ、チュアンロとロムニカでは、体制の安定を支える仕組みや国の統制の仕方が異なります。ですから、同じように経済的な不安定や政権内の分裂といった要素が発生しても、影響の仕方が異なるのです」

ミエナは続けた。

「まず、チュアンロ政府は一党独裁体制を厳格に維持し、国内の意見や情報の流れを厳密に管理することで統制を保っています。チュアンロの共産党体制は、厳しい監視システムや思想教育を用いて、国民の間に強い影響力を持っているのです。また、政府の政策に対する疑問や反対意見があっても、それが組織化された反体制運動として表に出ることは難しいのです。このような体制の中では、経済の悪化や高齢化の影響があっても、すぐに体制そのものを揺るがす事態にはつながりにくいと考えられます」

プロメテウスが考え深げにうなずいた。

「なるほど、つまり厳重な監視や統制の仕組みが、経済的な不安定が体制崩壊に直結することを防いでいるわけか」

ミエナも同意した。

「そうです。また、政権内の分裂についても、チュアンロでは党全体の統制が非常に厳格であり、意思決定は一貫した方向で進むように構築されています。もちろん、内部での対立や意見の相違がないわけではありませんが、権力闘争が表面化することは避けられているため、政権内部の分裂がすぐに大規模な体制変革につながる可能性は低いのです」

ディアナが納得したように頷き、「そういうことなら、チュアンロではロムニカのような政権分裂は起きにくいということね。だけど、仮にこの統制が少しでも緩むようなことがあれば、状況が一変する可能性もありそうね」と言った。

ミエナはさらに補足した。

「その通りです。チュアンロでは強固な統制があるために、経済や内部での不安定要因がすぐに体制変革につながるわけではありませんが、もし内部の統制が弱まるような状況が生まれれば、ロムニカと似たような変革のシナリオが進む可能性はゼロではありません。ですから、これらの要因がチュアンロでどのように作用するかを見極める必要があります」

エイレネは再びうなずき、「理解しました。チュアンロとロムニカでは内部の統制の度合いや体制維持の仕組みが違うから、同じ不安定要因があっても効果が異なるということね。

これを踏まえて、それぞれに適したアプローチを探っていかないといけないわね」と新たな決意を感じていた。


エイレネは、ミエナにミエナに真剣な面持ちで「チュアンロの時と同じように3つの要因ごとに、2030年までにロムニカで民主化する確率は何パーセントくらいあるのかしら。それとパンドラが聞いたみたいに単純に考えてロムニカが民主化する確率も教えてください」と尋ねた。

ミエナは少し考え込んでから話し始めました。

「それでは、エイレネ。チュアンロの時と同じように、ロムニカが2030年までに民主化する可能性を3つの要因で見ていきましょう」

1. 経済的不安定による変革: 可能性 25%

「ロムニカ経済は、エネルギー依存の高い構造になっています。もしエネルギー市場が不安定になれば、国民の不満が政府に向かう可能性があります。ただ、政府は厳格な情報統制や警察権力を駆使しており、経済不安だけで民主化に進むかは不透明です」

エイレネは頷きながら、「経済的な変化があっても、制御されてしまうかもしれないのね」とつぶやきました。

2. 政権内部の分裂と内側からの変化: 可能性 20%

ミエナは続けます。

「ロムニカの政権内部には、体制を改革したいと考える穏健派もいます。さらに、高齢化する指導者に対して若い世代がどのように向き合っていくかが鍵となります。ただし、現時点では政権の分裂はまだ少ないです」

「20%…まだ少し希望はあるわね」とパンドラがつぶやきます。

3. 国際的な圧力による変化: 可能性 15%

ミエナは少し神妙な顔つきで説明を続けました。

「ロムニカは大国としての誇りがあり、外部からの干渉には非常に敏感です。しかし、もし国際的な経済制裁や圧力が強化され続けた場合、変革を促す可能性が出てきます。ただ、それでもロムニカが外圧に屈するかは疑問です」

プロメテウスが腕を組んで、「やはり、外からの圧力には限界があるんだな」と言いました。

ミエナは微笑んで、エイレネに「これらの要因を合わせて、ロムニカが2030年までに民主化する可能性は、約10~20%と見積もるのが妥当です」と告げました。

エイレネは「チュアンロより少し高いけれど、やはり現状では低いのね」と答えました。

「それでも、いくつもの要因が重なり合えば変化が生まれる可能性もあります。時には些細な出来事が、歴史的な変革を引き起こすこともあるのです」とミエナは力強く言いました。

プロメテウスも微笑み、「ならば、可能性がゼロでない限り、私たちも希望を持って行動し続けるべきだ」と励ますように言いました。

エイレネとパンドラも、どこか遠くを見つめるようにしながら、それぞれの思いを胸に、未来に目を向けたのでした。


2-21 再び話題はアメラシアに

エイレネたちがアメラシアの民主党支持層の行動について質問すると、ミエナは、前回元大統領が当選したときの出来事を例に挙げ、現在の状況と対比しながら説明を始めた。

「前回、大統領が政権を取ったとき、多くの民主党支持層やリベラル派は危機感を覚え、さまざまな行動をとりました。今回も同じような動きが予想されますが、より組織的かつ効果的な行動が見られるでしょう。いくつかの主要なアクションとして、以下のような動きが考えられます」

1. 草の根運動と抗議活動の組織化

「前回も多くの市民団体が立ち上がり、女性の権利や移民、環境保護に関する問題に取り組む草の根運動が広まりました。とくに『ウィメンズ・マーチ』が象徴的な運動で、大統領の就任直後にワシントンDCをはじめ全米、さらには世界中で大規模な抗議が行われました。今回もこうした草の根運動が、各地で新たな支持層や活動家によって再燃し、持続的な政治的圧力をかける可能性があります。特にSNSやオンラインプラットフォームを通じて声を広げ、デジタルキャンペーンや署名運動が組織化されるでしょう」

2. 非営利団体やNGOの結束と資金調達の強化

「前回の政権時もそうでしたが、今回も民間の非営利団体やNGOが大統領の政策に反対するための活動資金を集め、キャンペーンを行う可能性があります。特に『アメラシア自由人権協会(ACLU)』のような組織は、前回の政権時に集まった巨額の寄付をもとに、多くの訴訟を起こし、移民や人権に関する問題で戦いました。今回も同様に、彼らは寄付を募り、大統領の政策に法的な対抗手段を準備するでしょう。気候変動や医療政策に関する団体も、支援を得てさらに強化されると予測されます」

3. 地方レベルでの政治参加と組織化の活発化

「前回の政権下でも、民主党支持層は州政府や市議会レベルでの選挙活動に大きな力を入れるようになりました。これは『ブルーウェーブ(Blue Wave)』とも呼ばれ、州議会や地方自治体での民主党の当選が増加する結果を生みました。地方での影響力を強め、彼の政権の政策に対する牽制力を持つという方針は今回も続くでしょう。州知事や地方議会のリーダーたちは、国民の声を背景に、環境や教育、福祉など、連邦レベルの方針に左右されず独自の政策を推進する動きを見せるでしょう」

4. 次期大統領選に向けた準備

「民主党支持層の多くは、次の大統領選挙で勝利を収めるためにすでに動き始めているはずです。前回の選挙結果を教訓にして、より効果的な戦略や候補者の擁立、若い世代へのアプローチが行われると考えられます。2020年の選挙で多くの若者や新しい有権者が投票に参加したように、今回も『次の一歩』として、さらなる投票率向上に向けた活動が展開されるでしょう。また、強力な候補者を見出すためのプライマリー戦略が、今から模索されると思われます」

エイレネは頷き、「なるほど、これまでの経験を生かしてさらに組織的かつ戦略的に行動するということね。前回の教訓が、大きな指針になるわね」と言った。

プロメテウスも同意して、「今度こそ、彼らが求める変革が果たせるように、多くの人々が立ち上がるだろうね」と付け加えた。


2-22 交渉で打開できないか?

エイレネは「でも、今のアメラシアの大統領は、民主主義に対する敬意も世界的な協調や国際法に対する順守の思いも殆どないような人で、アメラシア第一主義、自国ファーストの人間よ。地球政府を創ったり米軍でそれを支えたりするなんてことより、さっさと米軍を引き上げてしまいそうな人なんですよ」といった。

「それを何とかするのが交渉じゃ」とリョウマは、表情は笑顔で声色も優しく人を包み込むようなジェスチャーで、しかし、後ろ向きの発言を一括した。

「えっ!なんで、こちらのワールドにまでリョウマがいるの?」

4人は、驚いて声を揃えて言った。

「できない理由は山ほどあるはずだ。これまで多くの人が苦労して辛酸をなめてきたのだろうからな。アメラシア国民の半分近い人は彼に大反対だったんだ。だから、彼の政治的な基盤はぜい弱だということは、いくら強気の彼でもちゃんとわかっているはずだ。できない理由よりも彼が関心を持つことや解消したい対立や解決したい問題を探すことが大事だ。あらゆる手札は交渉を成功に導くカギだからな。」

 実は、マコテス所長は坂本龍馬の大ファンだったから、パラレルワールドの世界を見せてもらったときに、とっても会いたがっていた。さらに、リョウマの戦略立案能力や交渉力、実行力を絶賛していた。

 それを見ていたミエナは、所長を希望に応えてあげたいし、リョウマの能力は、エイレネたちがこれから直面するであろうさまざまな問題を解決していくために必要であるし、良い教師となるだろうと思っていた。そこで、所長の了解を得て、ガイアからゼウスにリョウマを派遣してほしいと依頼してもらった。ゼウスから依頼を打診されたリョウマもエイレネたちの活躍を好ましく思っていた。久しぶり、そう言えば150年ぶりに、思いっきり活躍して見たくてうずうずしていたので渡りに船と二つ返事で引き受けてくれた。という訳で、みんなに挨拶を済まして話に加わった。

マコテス所長は、ミエナに「大統領への交渉方法をさらに練るために、彼の二期目の政治について、政治の舵取りは容易ではないはず。選挙戦中、民主党の大統領候補を支持していた下院の重鎮とも言える共和党の議員が選挙結果が出た翌日に『地球上で最も偉大な国家の市民として、我々には憲法や法の支配を守り、今後4年間にわたって政府機関が維持されるようにする特別な責任がある』と強調して、新たな大統領の“暴走”を止めるため、連邦や州の政府、裁判所、報道機関に『民主主義のガードレール役』を務めるよう求めたくらいだ。彼が実施したいと考えている独断的な政策の多くがアメラシア国内はもちろん国際的にも批判を浴びる場面が多く、いろいろな困難に直面しているはずだ。大統領の強固な姿勢の陰に、どんな不安や弱点が潜んでいるのか知りたい」と頼んだ。

エイレネも真剣な表情で言った。

「ミエナ、大統領が地球政府の実現にもっと積極的に関与するように導ける交渉の材料を知りたいんです。彼が直面している困難や、彼の強い家族愛、特に子供たちやその配偶者たちの将来に関する思いが、どれほど彼に影響を与えているか教えてくれないかしら?」

ミエナは少し考えた後、静かに語り始めた。

「新大統領は、自らの実績とイメージを極めて重要視する人物です。そして、特に二期目では、次のような困難が彼を悩ませるでしょう。」

ミエナはそう言って、国内での課題から話し始めた。

「再選を果たしたけれど、アメラシア国内には深い分断が残っています。中でも経済格差や医療問題、移民問題に関する議論は、彼のリーダーシップが真価を問われるテーマです。もし彼が国内での結束や格差是正に貢献すれば、大統領としての評価がさらに上がるでしょうが、難しいかもしれません。そんな中で、地球政府という新たな世界的な枠組みの提案を受け入れ、そのリーダー役を果たすことができれば、彼の存在は歴史に残ります。」

リョウマは感心しながら言った。

「そこは大事だな!真の民主主義を実現する地球政府というおまんらの理念は、彼にトンデモナイ錦の御旗を与えることになるちゃ。分断された国家を一つにまとめ直し、失われた民主主義の地位を取り戻し、国民に一つの夢と希望を与える。歴史に名を残すことは、このままなら分断を引き起こし、民主主義を破壊し、国際秩序を無視して一国主義を取ったせいで世界中の信頼を失った最低最悪の大統領として汚名を残すだけだろう。特に温暖化が加速し、世界中で混乱と戦争が頻発すれば、その責任の大部分は彼にあると言われるんじゃないかな。もし、彼がおまんらの構想を受け入れたら、これらのことは180度逆転するんじゃ。分断を解消し、民主主義を再生し、国際秩序を復活させるためアメラシアが世界をリードすることが新しいアメラシア・ファーストだと言って、世界中の信頼の得る最高最善の大統領として永遠にその名を残すことになるだろうと思わんか?」

マコテス所長と4人と、「スゴイ!」とため息をついた。

「こういう発想が交渉を成功に導くカギなんだな」とマコテス所長は深くうなずいた。

 ミエナは、リョウマに来て頂くようにガイアにお願いしておいて良かったと改めて思った。

さらにミエナは、国際的な評価と地位について語った。

「新大統領は、国際的な評判を気にしないように見せているけれど、実際には各国からの尊敬を望んでいます。特に、世界的なリーダーとして認められることは彼にとって大きな魅力です。今後、地球政府のような新しい取り組みに賛同することで、アメラシアが世界の道を示す姿を強調できるなら、彼の評判は確実に変わります。」

リョウマは、「そうじゃ!そうに決まっている!政治家が一番欲しいのは人々からの尊敬なんじゃ!名誉が欲しいんじゃ!」机をたたいて大袈裟な喜びを表した。

さらにミエナは、家族への想いと後継者について話し始めた。

「また、大統領の家族、とりわけ彼の子供たちやその配偶者たちへの思いは特別なものです。大統領は彼の子供たちが次世代のリーダーとして高く評価されることを望んでおり、彼らがこの地球政府のビジョンを支持すれば、大統領もガゼン賛同しやすくなるでしょう。」

リョウマは、「これは切り札だ!父親が地球政府の樹立をリードしたということになれば、その子供たちやその配偶者たちはひょっとすると初代の地球政府の大統領になれるかもしれない。そんな妄想が彼の頭に浮かべば、もうこの話は決まったも同然だな!」と大笑いを始めた。

それがおさまるのを待って、交渉の切り口についてミエナは続けた。

「大統領へのアプローチとして、次のような切り口が効果的かもしれません。まず、地球八策の実現が彼の大統領任期中にどれほどの名誉をもたらすかを強調します。『アメラシアが主導して地球全体のリーダーシップを取る』ということが、彼の功績として永遠に刻まれると伝えるのです。」

リョウマは「その通りじゃ!」と大袈裟にうなずいた。

「そして、大統領の子供たちやその配偶者たちが次世代のリーダーシップを担えるよう、地球政府への参加が未来の安定と繁栄を保証するものだと示すのも良いでしょう。子供たちの世代が誇れる世界を築くためにも、大統領自身が今、大きな一歩を踏み出すべきだと伝えてください。」

リョウマは「それと内密に、子供たちやその配偶者たちの誰かが地球政府の初代大統領になれるかも・・・って耳打ちしてやろう!」といってほくそ笑んだ。

エイレネたちは、まさに目を見開き、言葉を失っていた。

拒否権をアメラシア一国だけに返上させる。

しかも新大統領にだ!

アイデアの大胆さと実現可能性に、誰もが圧倒されていたのだ。

これまで考えてきた地道なアプローチを覆すその発想は、彼らが想像もしていなかったものだった。

マコテス所長は、「問題はどのタイミングでリョウマ殿に新大統領のところに行ってもらうのが良いかというタイミングだな」といった。

「もう一度、アメラシアの今後の政治状況を見てみよう!」といって、ミエナに2030年までのリストを再掲してもらった。

2025年~2026年:国内分断の激化による政権崩壊の危機

2026年:中間選挙

2026年~2027年:国際社会との衝突による孤立

早ければ2026年~2027年以降:不安定な外交による危機管理の失敗

2027年:経済の悪化と支持基盤の動揺

2028年 大統領選挙

2029年~第48代大統領の時代

2030年 カサンドラとイケマコス所長のデッドライン


 このリストを見ながら、エイレネは「私たちが分断を加速したり、国際社会との衝突を増やしたり、経済を悪化させたりするようなことは決してしてはいけないことだから、このミエナの予想がどうなるか見守りながら、適切な時期にリョウマさんに交渉を助けてもらえるといいですね」と所長やほかの3人に言った。

プロメテウスが「よし!明日からは、各年次に合わせて計画を作って、一つが失敗しても次があるという弾力的な準備をしよう!」といって、全員がうなずいた。


リョウマを招待したミエナはこの結果に満足していた。

そして、マコテス所長もミエナがリョウマを呼んでくれたことを後から知って、改めてミエナのことを好きになった。

そして、リョウマに向かって微笑みながら、「リョウマ殿に私たちの力不足を補って頂くという大変なことをして頂かないといけないかな」と深々と頭を下げた。


話合いが終わって、エイレネたちは、久しぶりにミーティング・ルームに集まって紅茶とケーキを楽しんでいた。

もちろん話題はリョウマについてだった。

「一体どうなっているのかしら?」

エイレネは、パンドラ、ディアナ、プロメテウスに聞いたが、彼らも不思議に思っているだけだった。

そこに、とても仲が良さそうな二人が入ってきた。

マコテス所長とミエナだ。

かれらは、エイレネたちが揃っているところへ近づいてきた。

「ミーティング・ルームに集まっているなんて久しぶりだな。みんな、どうかしたかい?」

マコテス所長は、ミエナに目配せをしながら4人に声をかけた。

エイレネが、「突然、リョウマさんが現れたのに、所長たちは少しも慌てていなかったから、何かご存知なんですか?」と聞いた。

ミエナは笑っているだけだったので、マコテス所長が「そろそろ秘密を教えてあげてもいいんじゃないかな?」とミエナに言った。

ミエナが「よろしいんですか?せっかくの所長だけの楽しみだったのに・・・」と言った。

次の瞬間、ミーティング・ルームのドアが勢いよく開け放たれた。

「やあやあ!みなさんお揃いで、ええことですきに!」と快活にリョウマガ登場した。

 4人はビックリして、目を丸くして口を大きく開けたままになった。

「パラレルワールドの世界が繋がったのかしら?」

 エイレネがようやく思いついたことを口にした。

プロメテウスが、『量子のもつれ』という現象がパラレルワールドの由来だから、それが起きているのかも?!」といった。

 ミエナのホログラムが笑いながら、「リョウマさんは私がガイア様にお願いしてきていただいたんですよ。リョウマさんが来てくれれば、私たちの問題解決能力が格段に上がると思ったのです。戦略レベルの発想に、交渉術、仲介機能など、リョウマさんのパワーを私たちの中で学習してみたいと思ったのです!」と言った。

 パンドラは、「それじゃあ、ペガサスもいるの? みてみたいな!」と子供みたいにハシャイダので、ほかのみんなは大笑いをした。

未来編第二部 完


注意書き

本書はフィクションです。本書に登場する人物、団体、地名、組織、国家、出来事、歴史などは、すべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。万が一、現実の人物や出来事との類似点があったとしても、それは単なる偶然です。

また、本書の内容は完全に創作であり、科学的・歴史的・宗教的事実を反映するものではありません。本書に登場する技術、魔法、超常現象などはすべて架空のものであり、現実とは異なります。

本書では社会問題をテーマとして扱うことがありますが、特定の思想・信条を読者に押し付ける意図はありません。登場する人物の意見や行動は、著者や出版社の見解を代表するものではありません。

イケザワ ミマリス


「もう一度、アメラシアの今後の政治状況を見てみよう!」といって、ミエナに2030年までのリストを再掲してもらった。

2025年~2026年:国内分断の激化による政権崩壊の危機

2026年:中間選挙

2026年~2027年:国際社会との衝突による孤立

早ければ2026年~2027年以降:不安定な外交による危機管理の失敗

2027年:経済の悪化と支持基盤の動揺

2028年 大統領選挙

2029年~第48代大統領の時代

2030年 カサンドラとイケマコス所長のデッドライン


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