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藤の精(?)-回想-

 部屋に戻ってからも、私の頭の中は〝藤の精〟のことでいっぱいだった。


 だって!


 見たのは、ほんの一瞬だったけど。

 数十分経った今でも、ハッキリクッキリ思い出せるほど、特徴あったし。


 とにかく、すっごくすっごくすぅぅーーーっごく、キレイな男の人だったんだもの!



 男の人……だったと思う。

 キレイだけど、線が細いって印象ではなかったし。


 ほら。

 どんなにキレイな男の人でも、女装すると、やっぱりちょっとムリあるな……本物の女性とは違うな~って、察しちゃうことあるじゃない?


 小柄で華奢な男性なら、そこまで違和感なく、女性になりきれちゃったりするのかもしれないけど……。


 骨格、ってゆーのかな?

 体つきとか歩き方とか、ふとした動作なんかで、『あれ?』ってなっちゃったりするんだよね。


 藤の精さんも、顔だけ見れば、女の人って思っちゃってたかもしれない。


 でも、チラッと見ただけで、『男性』だって認識しちゃったってことは。

 あそこにいた人はやっぱり、男性だったんだと思う。



 ……まあ、本当に人だったのかどうか、今となっては謎だけど。

 もしもあの時、『私は藤の精です』って自己紹介されてたら、すんなり受け入れちゃってた気もするしなぁ……。



 服装は、この国の人達と、似たような感じだったけどね。

 白っぽい着物に、薄紫の袴。

 それから、羽織っぽいものを肩に掛けてたかな?


 ただ……髪色が特殊だったんだよね。


 ストレートロングの髪が、風で舞い上がるのが見えたんだけど。

 毛先がね、紫色だったの!

 そして他が白! 真っ白! 純白!


 全体的に白髪だったんなら、『雪緋さんのお仲間さん?』って、思っちゃってただろうけど。

 毛先(十五~二十センチくらいだったかな?)だけ紫なんて、この国の人にしては、かなり珍しいよね?


 だから一瞬にして、〝人ではない存在〟の可能性を、考えてみちゃったりしたんじゃないかな? うん。



 ここが、私が元いた世界だったなら。

 毛先だけ紫の白髪なんて、そこまで珍しくはなかったんだろうけど。

 単純に、『アニメかゲームキャラのコスプレかな?』なんて、思っただけだろうけど。


 蘇芳国に、あそこまで見事に髪を染める技術は、まだない気がするし。

 あんなに目立つ髪色だったら、雪緋さんみたいに、差別されちゃってるだろうし……。



 ……そうだ。

 この国では、髪と目の色が違うってだけで、『異形の化け物』だなんて言われちゃうんだ。


 雪緋さんが〝禁忌の子〟ってことは、お母様から巫女姫を引き継いだ藤華さんにしか、バレていないはずだし。

 髪と瞳の色以外に、差別されなきゃいけない理由なんて、雪緋さんにはないよね?



(もし、あるとするなら……この国の人にしては珍しく、背が高いってことくらいかな?)



 この国の人達は、まだ十数人くらいしか見掛けてないけど。

 雪緋さんくらい背の高い人は、一人もいなかったし。


 男性でも、私より十センチとか、せいぜい、十数センチほど高いって感じの人ばかりだった。

 紫黒帝も、百七十センチあるかないか……ってくらいだった気がする。



 でも、差別されてる原因が、目の色にしても、髪の色にしても、背の高さにしても。

 絶対絶対、『異形の化け物』なんてひどい呼ばれ方、されていいはずがないよ。



「……あれ? そう言えば雪緋さんは? ここに着いてから、まだ会ってないよね?……あ。お仕事してるのかな?」



 ……ん?

 雪緋さんのお仕事って、紫黒帝の護衛とか、そんな感じだったよね?

 藤華さんの……えっと、〝月禊〟って儀式の時も、護衛を任されてるって話だったし。


 でも、さっき紫黒帝と会った時、彼の姿はどこにもなかった。

 護衛っぽい人は、後ろに数人いたけど。

 その人達の中に、雪緋さんはいなかったよね?



「う~ん……? 護衛って言っても、年がら年中、護るべき対象の側にいるってわけでもないのかな? お出掛けする時とか、特別な行事とか、そういう時だけってこと? 普段は、別の仕事してるとか?」



 ――なんて。

 自分以外に誰もいない部屋で、ひとりごと言ってても始まらないか。


 紫黒帝からは、神結儀まで、ゆっくりしてていいって言われてるし……。

 御所の散策がてら、雪緋さん見つけに行っちゃおうかな?


 あ……でも、さすがに一人でウロウロしてたら、怒られちゃうよね。


 う~ん、どーしよう?

 案内人さんは、さっき『他の仕事がある』からって、戻って行っちゃったしなぁ。


 代わりの案内人さんを呼ぶって言っても、どこに行って、誰にお願いすればいいのかわからないし……。


 えぇー?

 もしかして、次に誰かがここに来るまで、部屋でじっとしてなきゃいけないの?



 そのことに思い至り、『退屈だな……』なんてため息をついた、次の瞬間。

 複数の人が近付いてくる気配を感じ、私は慌てて居住まいを正した。

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