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15 バターを使えばだいたい美味しい②


 もしもスライムの魔石がどれも同じであるのなら、どの魔石に送受信するのか問題は解決するんじゃないかな。

 だって四個とも全部同じ魔石なら、この魔石すべてに『お互いの声を届ける・声を聞く』魔法を入れればいい。

 うまく入るかはわからないけれど、ひとまず試してみる。


 ……この魔石、小さいわりに容量が大きい。魔石は割れる気配もなく、順調に入っていく。

「入ったね……」

 魔石四個分の魔法、ということもあってか、結構疲れた。けれど十分だろうというくらいに魔法は入ったし、魔石も最後まで割れなかった。

 青い魔石はそれぞれ、キラキラと輝いている。

 鑑定をしてみよう。




スライムの魔石 (スー)

音声の送受信魔法



スライムの魔石 (イー)

音声の送受信魔法



スライムの魔石 (ラー)

音声の送受信魔法



スライムの魔石 (ムー)

音声の送受信魔法




 それぞれの魔石に、ちゃんと魔法は入っているみたいだ。魔石の見分けはまったくつかないけれど、鑑定をすると名前が入っている。多分、吐き出したスライムの名前じゃないかなとは思う。

 スーちゃんの魔石を持って、少し離れる。

「ムーちゃんの魔石に繋いで」

 僕がそう言うと、テーブルの上にある三個の魔石のうち、一つだけがぴかぴかと光りだした。歩行者用信号が点滅してるみたいな光り方だ。

「あの光ってるのが、ムーちゃんの魔石かな?」

 名前入りだからと試しに言ってみたけど、まさか指定が出来るとは。あとはちゃんと会話出来るかどうかの確認だけど……。

 精霊さんがやってきて、ぴかぴか光る魔石を持ち上げた。


「はーい、こちらムーちゃんの魔石です!」

「ですですー」


『はーい、こちらムーちゃんの魔石です!』

『ですですー』


 精霊さんが喋るのとほとんど同時に、僕が持つスーちゃんの魔石の方からも精霊さんの声が聞こえた。

 繋がってる!

「こちら、壱弦です。聞こえる?精霊さん」

 魔石に向かって話す。とはいえ、同じ部屋にいるから普通に僕が喋る声も精霊さんには聞こえているけれど。


「おーるおっけーであります!」

「イヅルが二人いるみたーい」

「おもしろーい!」

「ぼくたちの声もするー」


「あはは、同じ部屋で通信してるからね」


 精霊さんは声が二重に聞こえるのが楽しいのか、とてもはしゃいでいる。


「それではー」

「ぼくたちはー」

「この面白さを精霊王様に」

「伝えてまいります!」

「ではではー」


 そう言って、精霊さんはムーちゃんの魔石を持ったまま庭へと向かっていった。

 ……すごいな。まさか作れるとは。

 これがあれば家族と連絡が取れるかも、とも思ったけど、よく考えてみればあっちの世界で繋がるのかどうか以前に、どうやってこの魔石を届けるんだ。ちょっと作るのに夢中になって失念していたけど。

「……まあ、いつか機会があるかもしれないしね」

 ひとまず、出掛ける時にはいつも持ち歩いている収納バッグに、イーちゃんとラーちゃんの魔石をしまった。スーちゃんの魔石は精霊さんから連絡が来るかもしれないから、とりあえず服のポケットに入れて持ち歩くことにした。




「スーちゃん、ありがとう」

 ぎゅむ。ぷるぷるぷる。

 最高の抱き心地である。

 ポーションをあげるようになったお陰か、触られるのを嫌がらないスーちゃんは、なんとハグまでさせてくれるようになった。それがもう本当に、最高の抱き心地すぎて。

 魔石のお礼を言いに来たのに、僕の方がめちゃくちゃに癒される始末だ。仕方ない。

 ちなみにどうやらスーちゃんたちは、ポーションは味がない方が好きらしい。

 精霊さんが以前味なしの方が良い、と言っていたけど、遠慮しているだけだったりするのかな?と思って味のあるポーションもいくつか出してみたけれど、取り込んだのは味なしのポーションで、味付きの方には見向きもしなかった。

 もしかして、だから精霊さんと仲良く共存出来ているのだろうか。と、思わなくもない。

 それから最初の一度以降、ポーションを飲んでもスーちゃんたちが魔石を吐き出すことはなかった。

「スライムの生態は本当に、謎に包まれているんだね……」

 ぎゅむ。ぷるぷるぷる。

 ……最早気持ち良すぎて眠くなってきた。




 完成したこの連絡機能のついた通信の魔石のうち、イーちゃんの魔石は後日アイネへ渡すことにした。

 ラーちゃんの魔石は、届けられるのかもあちらで使えるのかもまだわからないけれど、家族用にしようと思った。

 ムーちゃんの魔石はそのまま精霊さんが持っている。僕が使うのは、スーちゃんの魔石だ。



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