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13 作ったら 呼びに行こうね 精霊王(字余り)①


 最初に訪れたのは、ミハエルさん。

 翌月に訪れたのが、カールさん。

 そして、今月。


「こんにちは」

「……お久しぶりです、イヅル殿」

 訪れたのは、アルベールさん。

 僕をこの辺境の街まで護衛してくれた、騎士さんだ。


 少し困ったように眉を下げて微笑むアルベールさんは、元は召喚したあの国の騎士団で副隊長という役割を担っていたそうで、護衛をしてくれていた時、騎士さんの中で最も多く話をした人だ。僕に足りないこの世界の知識を、とても親切に教えてくれた。

 そしてその責任感からか、最も衰弱していた人でもある。

 という話は、先に訪れたミハエルさんとカールさんに聞いた。年はアルベールさんが一番下ではあるけれど、役職は副隊長。だから元々一人で何とかしようとしていたところに、同じ部隊のミハエルさんとカールさんが合流したそうだ。

「だいぶ、元気になりましたか?」

 アルベールさんの顔色は、良さそうだ。

 家に招き入れてお茶を準備して、問い掛ける。

「はい、おかげさまで。イヅル殿のポーションに助けられました」

 アルベールさんは、金髪の美丈夫、という言葉がものすごくしっくりくるような感じの人だ。

 背がとても高く、体格は言うならばやや細マッチョ。体格に関しては少し痩せてしまった為にそうなっているけど、初対面の時はもっとムキムキしていた。年齢は四十五歳だと聞いているけど、年齢よりも若く見える。そして大人の色気がすごい。

 イケメンだし、さぞかしモテるんだろうと思ったけど、ミハエルさんとカールさん曰く、女性関係には非常に苦労してきたらしい。ストーカーされたり、薬を盛られたり、と。……イケメンは大変だな。

 ミハエルさんとカールさんは既婚なので、アルベールさんのことをちょっと心配しているそうだ。


 アルベールさん、ミハエルさん、カールさんは今、領主様に雇われて辺境の街の騎士として働いている。

 その仕事のうちの一つとして、僕のところに一ヶ月に一度ポーションを受け取りに来ることを任されたようだ。

 今月領主様邸に納品するポーションを、数と内容を書いた紙と照らし合わせて、アルベールさんが持参した収納バッグに入れる。それを領主様邸に持ち帰ってもらって、確認してもらうのだ。

 中心部にある領主様邸から僕の家までは結構距離があるから、ポーション受け取りの日には他の仕事は入らないようだ。そのあたりは領主様の気遣いを感じる。

 そういったわけで、ミハエルさんもカールさんも僕の家でゆっくりお茶を飲んで話をしていった。


「死を覚悟していたのですが、結果的にこのような厚遇を……イヅル殿と領主様には感謝の言葉もありません」

 アルベールさんは深々と頭を下げる。

 この人はずっと、こうだったな。最初からずっと心を砕いて、親切にしてくれた。

 こういうことって簡単に出来ることではないと思う。年を重ねていくごと、出世していくごと、出来なくなる人が多いように思う。少なくとも僕だったら、見ず知らずの人にここまで親切には出来ないだろうと思う。

「アルベールさん。そんなに丁寧にしなくて大丈夫ですよ。僕の方が年下ですし、辺境に住むただの平民です」

「ですが……」

「どうか、あの国でのことはもう気にしないでください」

 僕がそう話しても、アルベールさんは随分迷っているようだった。しばらく難しい顔をして考えた後、口を開く。

「では……イヅル」

「はい」

「……その、普段から敬語で話すことが多いので、丁寧でない口調は、その……あまり慣れていないのです」

 少し困ったような、慌てたような、しどろもどろな感じに思わず笑ってしまった。


 それからアルベールさんと世間話をする。

 今どんな仕事をお互いにしているのかとか、ミハエルさんとカールさんのこととか、好きな食べ物の話とか。異世界召喚されたばかりの頃は、まさか騎士さんとこんな話をまったりしながらすることになるとは思わなかったなあ。

 あと、領主様が今、アルベールさんとミハエルさんとカールさんの家族に連絡を取っているそうだ。

 領主様は顔が広いらしく、隣国にもツテがあるのだとか。しかもそのあたりは国王とか厄介な貴族に見つからないように上手くやるようだ。

 家族みんながこちらに移住するのかとか出来るのかとかはまだわからないにしても、自分たちの無事を伝えることが出来るだけでも安心するだろう。これまでは連絡さえ取れていなかったのだし。

 どうやら早くもこちらへ移住を決めた家族もいるらしい。

「アルベールさんは、ご家族はどうなんですか?」

「私の両親は既に隠居しているので、あちらで過ごすようですね。年の離れた弟妹はこちらに来たがっているらしいですが」

「そうなんですね」

「もう二度と会えないと思っていたので……とても、有り難いことです」

 そう話して、アルベールさんは穏やかに微笑んだ。



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