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11 バラ園のお茶会②


 こぢんまりとした我が家に帰ってくる。うん、やっぱり小さい方が落ち着く。掃除も楽だしね。

 辺りには他の家もないし、ぽつんと僕の家だけ建っているような感じだ。

「アイネ、家の庭は玄関と反対側……裏口の方にあるんだ。かなり規模が大きくて目立つから、精霊さんが隠蔽してる」

「だから家しか見えないの?」

「うん。裏口から出ると、庭に行けるよ」

「そうなんだね」

 どうやらアイネはかなり楽しみらしい。ぱっと見古びた小さい家がぽつんとあるようにしか見えないのに、普段より少し早足だ。

 庭を作った最初の頃はささやかなものだったから隠蔽はしていなかったけど、精霊さんの尽力でどんどんすごい庭になっていった。あの季節感バラバラに咲き誇る花たちを、そのままにはしておけない。他に何もない場所だからこそ、そんなものがあったら目立つ。面倒ごとは遠慮したいし、精霊さんも静かな方が好きなようだ。

 僕やノヴァ様は外からでもしっかり庭が見えるし、入れるけど、家しか見えていない状態のアイネは外からより裏口から行った方が良いだろう。

 そういったわけで、ひとまず家の中に入る。

「ただいま」


「おかえりー」

「おかえりなさーい」

「イヅルだ」

「アイネもいる」

「こんにちはー」

「おかえり!」


 帰宅するといつもどおり、精霊さんが飛んできて出迎えてくれる。相変わらず可愛い。

「今、もしかして精霊様がいるの?」

 恐らく立ち止まった僕を見て、精霊さんがいることにアイネは気付いたのだろう。

 わらわらといっぱい集まってきた精霊さんは、アイネには見えないし、声も聞こえない。

「うん。たくさんいるよ」

「そうなのね。精霊様、こんにちは。お邪魔します」

 アイネは丁寧なお辞儀をする。


「いらっしゃいませー」

「どうぞどうぞです」

「アイネもすきよー」

「いつもお菓子ありがとう」

「こんにちはなの」

「こんにちー」


 精霊さんはアイネにとても好意的だ。良かった。

 意思疎通が出来ないのは残念だけど、歓迎している様子やお菓子のお礼を精霊さんに代わって伝えると、アイネは嬉しそうに笑った。


 精霊さんに聞いたところ、ノヴァ様は庭でお昼寝をしているらしい。

 本当に寝ていたら挨拶は出来ないけど、起きているなら挨拶はしておかないと。とりあえず、まずは起きているかどうか庭に様子を見に行くことにした。

 裏口の扉を開けると、一気に花の香りがする。

「うわあ、すごいね」

 はじめて庭を見るアイネは、とても驚いている。裏口を開けると、まるで別世界みたいだからね。

「うん。いつ見てもすごいんだよね」

 毎日せっせと庭の手入れをする精霊さん。その規模はどんどん広がっていき、この家に住んでいる僕でさえ驚くことがある。

 気付いたら何かが増えているのは頻繁にあるし、それがどれも最盛期の姿でそれぞれ咲き誇ったり実ったりをしているから、圧巻だ。

 ノヴァ様も僕も喜ぶから庭の手入れには余計に気合いが入るらしく、精霊さんはいつも楽しそうに育てている。


「ノヴァ様……精霊王様は、今は桜の木の下にいるみたいだ」

 精霊さんが教えてくれたから、アイネにも伝える。

 桜の下は芝生になっていたはずだから、恐らくそこでお昼寝をしているのだろう。桜は綺麗だし、陽射しは気持ち良いし、あれは良い。

 到着すると案の定、ノヴァ様は桜の木の下で仰向けに寝転がっていた。目を閉じているから、本当に寝ているのか目を閉じているだけなのかがわからない。

 どうしようかと迷いながらも様子を伺っていると、ぱっちりと黒い瞳と目が合った。

「壱弦にアイネか」

「はい、ノヴァ様」

 どうやら起きていたようだ。

 ノヴァ様は体を起こし、服についた花びらや草をパンパンと軽く手で払う。

 ちらりとアイネを見ると、視線がしっかりノヴァ様の方へ向かっているから、今ノヴァ様は普通の人にも姿が見えるようにしてくれているようだ。

 アイネはノヴァ様の、幼くてやたら綺麗な容姿にも特に大きな反応をすることもなく、にっこりと微笑んだ。

「精霊王様、はじめまして。アイネ・クライドと申します」

「うむ、知っている。壱弦のポーション作りへの助力、そして菓子類の提供、ご苦労」

「もったいないお言葉です」

 こうしたやりとりを見ると、ノヴァ様はとても敬われる存在なんだなあと改めて感じる。



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