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11 バラ園のお茶会①


 じ、とキューちゃんに強い視線を向けられる。さながら確たる証拠を得た警察のようだ。

「なーんか二人とも、デートの後から雰囲気が甘いんだけど」

 先日の出来事、遅くなった理由である知り合いに会ったことやその関係で領主様邸に行ったことなどは、勿論アイネの家に着いてすぐにご両親とキューちゃんには説明したけど、あの馬車の中でのことについてはあれからお互い触れていない。

 話すのは恥ずかしいし、蒸し返すのも恥ずかしい。

「そ、んなことは、ないよ」

「ふつう、そう、ふつう」

 僕とアイネはそう応えるも、確実に挙動不審だ。先日のことを思い出すと、ぼっと顔が赤くなるし、とても悶える。

 だって突然泣いた上に力いっぱい抱き締めて無言とか、あの夜の自分が恥ずかしすぎて居た堪れない。

 元々アイネのことは好ましく思っていたけど、何というかこう、上限突破したような感じで。

 アイネも顔を赤くしているけど、その理由はわからない。僕の恥ずかしさが移っているのかな。

「今時子供だってもっと進んだ恋愛してるわよ……」

 そしてこのキューちゃんの呆れ声である。

 家族以外とほとんど関わりのなかった僕の、恋愛スキルの底辺具合を舐めないでいただきたい。

「そんなんで最初、よく結婚しようとか言ったね」

「ははは……」

 あの時はもうテンションが上がっていたというか、ノリというか、勿論言ったからには責任は取るつもりではいたけど、……必要とされることが嬉しかったのだ。この異世界で、居場所を見つけたような気がして。

 でも好きだという感情を強く自覚した今となっては、あんなにあっさりとは言えないと思う。

「あ、あたし今日学校休みだから。店番やるし、二人で出掛けてきたら?」

「ええっと、今日はポーションを作ろうかなあと」

「私は読書をしようかと」

「それどっちも今日じゃなくていいでしょ!」

 キューちゃんに怒られた。そして僕とアイネはあっさりお店を追い出されたのだった。


 ポカポカ。外はとても良い天気だ。

 ちらりとアイネを見る。

 今日もいつもどおり、分厚い眼鏡に三つ編みだ。髪飾りは左右とも、紫色のキキョウ。色が揃っている。

「追い出されちゃったね」

 アイネが溜め息混じりに呟く。しかし、その手にはちゃっかり本が一冊。どうやら追い出される前にしっかり持ってきたらしい。

 それを見て、思わず笑ってしまう。

「ねえ、アイネ。それなら家に来て読書する?」

「いいの?」

「うん。綺麗な庭もあるよ」

「行く!」

 最近わかったことだけど、アイネは花がとても好きらしい。

 キキョウの髪飾りも毎日使ってくれているようだし、この間のマルシェでも花のクッキーや花を模した細工品にテンションが上がっていた。

 だから精霊さんが手塩に掛けて育てて整えている家の庭は、間違いなくアイネは喜ぶだろう。




 アイネが家に来るのははじめてだ。

 いつもは僕がアイネのいるお店に行くし、どこかへ出掛けるにしても中心部と僕の家の間にアイネのお店も家もあるから、わざわざ用事もないのに僕の家までは来ない。中心部の方が買い物するにもいいし。

 家の中の掃除はこまめにしているから大丈夫だとは思うけど、同居しているノヴァ様が若干不安だなあ。

 僕の家に精霊王様がいることも、精霊さんがよく訪れることも、アイネには話している。けれど実際に会ったことはない。精霊さんは遠目からアイネのことは一方的に見ることはあっただろうけど。

 精霊さんは普通の人の目には見えないらしいから、会えない、という方が正しいのかもしれない。だから家に来たとしても、精霊さんが側を飛んだとしても、僕には見えてもアイネには見えない。

 自分の意思で人にも姿を見せることが出来るノヴァ様なら、きっと会うことは叶うだろうけど。

 精霊さんも花が好きだし、アイネの作るお菓子も好きだ。もしも会って話すことが出来るのなら気が合いそうなものだけど、こればかりは仕方がないことだろうな。



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