8 冒険に行こう①
明日、アイネのパパさんとママさんと一緒に、魔石と薬草採取に行くことになった。
これまでは街の中にこもっていたから、魔物に遭遇したことはなかった。それとついに対面することになる。
戦闘は出来るだけ避けたい。けれど、なんといっても魔石が欲しい。
魔石に魔法を注ぐ実験をしたいからだ。でも買うとなると、魔石はそこそこ良いお値段がする。比較的量が出回っていて安価な魔石であっても、練習にいくつも使ったり失敗が重なればかなり高くつく。それならば、腐らせている弓スキルAをそろそろ活用してみたい。
という話をアイネとしていたところ、一人では心配だからとパパさんママさんがついてきてくれることになったのだ。とても有り難い。
二人は日頃から薬草を採取に行ったり、時には魔物を狩ったりしている。つまりは慣れている。
魔物がどの程度のものかもわからないし、弓スキルがどれほど使えるのかもわからない以上、安心材料は多ければ多い方が良い。命あっての物種というやつだ。あと怪我をしたら痛いしね。
強かったり厄介な魔物は領主様の指示のもと討伐したり、それから辺境の騎士さんたちが見回りをしたり、色々と対処してくれているそうだ。
だから街の周辺に魔物はあまり出てこないし、出てきたとしても大した強さの魔物ではない。今回行く場所もそこまで遠くはないから大丈夫だと思うけど、油断大敵。これ大事。なにせ初陣だからね。
魔石の入手方法は買う以外には二つ。魔物を倒すか、発掘するかだ。
とはいえ魔石が出る鉱山は貴重で、既に誰かの所有物だったり、あるいは国が管理していたりする。まだ発見されていない鉱山を探す、というのも現実的ではない。というか無理だと思う。
そうなると、やはり魔物を倒すしかない。
魔物を倒すと、個体によって大小様々な魔石を落とすらしい。
その原理ははっきりはわかっていないようだ。ただ魔力がこもった石だから、魔物の心臓に魔力が集まって固まったものという説と、魔物の魔力が結晶化したものという説があるそうだ。
鉱山でも発掘出来るものだし、僕としては是非とも後者の説を推したい。
だって魔物の心臓を手に持って歩いたりするの、ちょっと怖いし。
魔物と戦うにあたって使うのは弓スキルだ。
僕は魔法も使えるけど、基本的にあまり一般的ではない無詠唱だし、いざという時にやりすぎてしまっても困る。どこで誰が見ているかもわからないし、僕はまったり平和に安全に生活したいのだ。
弓スキルが何故あって、しかもAという優秀な数値なのかは謎だ。
僕は中学生の頃に三年間弓道部だったくらいの経験しかない。高校では部活に入らなかったから。中学生の頃は真面目に練習はしていたけれど、上手いかどうかといえば微妙なところだった。
唯一、『会』という動作に対しては、先生にとても褒められたのを覚えている。的に当てたいという欲が少ないらしい。
ともかく、弓スキルAは正直とても助かる。弓なら魔物に近付かなくても攻撃が出来る。
昨日のうちに武器屋さんに行って試しに弓を引いてみたら、軽い弓も重い弓も遜色なく引けた。だから遠くから狙う為の大きく重い弓道で使うような弓と、素早く射るようにアーチェリーで使うような小さい弓の両方を購入した。
そして残りの、明日の為に準備しておきたいもの。
効能の良いポーションだ。
体力回復、魔力回復は既にあるからいい。
そうではない、例えば身体能力を強化したり、体力を徐々に回復したり、そういう便利なものが欲しいところだ。
味は度外視!……ではやっぱり味気ないので、そこはどうにか吟味するとして。
使う薬草によって、作れそうな味を考えるスタンスでいけば何とかなると思う。
ただ、そういった特殊な効果をつけたいポーションは、恐らく単品では作れない。いくつかの薬草を掛け合わせて、良い感じに効能が合わさるようにしなければいけない。
「ううーん……」
しかしまあ、そう簡単にうまくいくわけがない。
午前中いっぱいぐつぐつと色々な薬草を掛け合わせて煮詰めたけど、普通の体力ポーションと魔力ポーションがただただ量産されていく。
そんなに簡単に薬草の配合が出来たら、優秀な錬金術師に誰でもなれてしまうよね。うん……。スキルのせいか失敗作こそ生まれないけど、望むものは出来ないな。
「愛し子さまー」
「気分テンテンしよ」
……気分転換かな?
「うん。ありがとう、精霊さん」
「おいでませ!」
「おいでませませ〜」
「どうぞどうぞ」
まあ悩んでいても仕方ないしね。気分を変えれば浮かぶアイデアもあるかもしれないし、そんなに焦らなくてもいいかなあという気持ちになってくる。
ポーション作りは一旦やめて、精霊さんの後に続いて裏口から庭へと出る。




