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7 やさしさに包まれたなら③


「驚いているようだね。まあ、私にはじめて会う人は大体そうなんだよ」

 そうでしょうね。と声には出さずにつっこんでおく。まさか口には出せない。

「私は身体強化の魔法に長けていてね。こんな骨と皮のような細腕だが、魔物を薙ぎ倒すくらいはわけないんだ。それに、強いイメージを持たせていた方が近隣諸国も攻め込んで来ないからね」

「そうなんですね」

 確かにこの見た目だけで言えば、僕でも勝てそうなくらいだ。強風で飛ばされないか、切実に心配になりそうなほど。

 それにしても領主様って、本当に忙しい方なんだなあ。忙しくても、やっぱりご飯は食べたいところだ。

「君のことは報告を受けている。勿論、君がどこからどうして来たのかもだ。今のところ特に問題はないようだね。不便はないかい?」

 どこからどうして、とわざわざ言うということは、恐らく事情はすべて把握しているのだろう。

 ただメイドさんを下げて二人きりになるわけにはいかないのだろうし、簡単に知られていい話でもないから、濁したのかな。

「はい。この街はとても過ごしやすいので、このまま穏やかに暮らしていければと思います」

「そうか、それは良かった。君のことは国王陛下にも伝えてある。辺境の街から外に出るには色々と手続きや報告が前もって必要だが、ここにいる分にはこれまでどおり、穏やかに過ごしてくれていい」

「ありがとうございます」

 ほっと息を吐く。

 今のところ辺境の街から他の街に行く用事も気持ちもないし、これまでのように暮らしていけるのならそれでいい。

 もしどこかへ行きたくなったとしても、前もって話さえしておけばいいのなら、かなり自由なものだ。

「あとは、……うん。これも私に一任された案件ではあるのだが……」

 領主様は少し、困ったように笑った。

「少し、ついてきてくれるかい?」

「……?はい」


 領主様の後に続いて、お屋敷の中を歩く。

 広いお屋敷の端まで行くと、騎士の格好をした人が立っていた。その後ろに重厚感のある扉がある。

「ここは地下牢に続く扉だ」

「地下牢、ですか」

「そうだ。中にも騎士がいるし、鉄格子も頑丈だ。魔法もかけてある。中に入るけど、大丈夫かい?」

「そうなんですね……はい」

「気分が悪ければ、その時に戻ればいい。危険はないよ」

 扉の前にいた騎士さんのうちの一人が、重い扉を開く。

 メイドさんはここまでのようで、中には僕と領主様の二人だけが入った。扉が閉まる音がやけに響いて、重く感じる。

 結局領主様と二人になってしまったけど、大丈夫なんだろうか?唯一の出口であろう扉の向こうには騎士さんがいるし、そもそも領主様自体がとても強いから、良いのだと判断したのかな。

 言ってはなんだけど僕の体力は心の底から貧弱だし、見た目も弱そうだしね。魔法をばんばん使っている姿も外で、人の目があるところでは見せていないから。


 かつ、かつ、とやけに靴音が響く。

 階段を降りきると、見えてきたのは鉄格子だ。二人、騎士さんがいる。

 どこかひんやりと空気が冷たいのは、地下だからだろうか。

「変わりはないか?」

 領主様が騎士さんに声を掛ける。

「はい。ですが、例の方々はあまり食事もとっておりません。どうにか、ポーションなどは摂取させておりますが……」

 騎士さんは二人とも、心配そうな表情だ。

 領主様もその報告を聞くなり、少し表情が歪む。

「そうか……。イヅルくん、こちらへ」

「はい」


 もしかして、この地下牢に今いるという人は、僕の知り合いなのだろうか。

 でなければ、こんなところに連れては来ないだろう。

「彼らは、君に合わせる顔がないと言っていた」

 ぽつりと領主様が呟く。やっぱり、そうなのか。

「自分たちはとてもひどいことをしたのだから、と言っていた。けれど君の身をとても案じている様子だった。だから君をここへ連れてきたんだ。連れてきたのは私の判断だが、会いたくなかったり、嫌な時はすぐに言ってくれ」

「わかりました」

 案内された牢に、恐る恐る近付く。


 そこにいたのは、僕をこの辺境の街近くまで護衛してくれた、騎士さんたちだった。



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