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5 精霊の愛し子⑦


「うまい……」

 精霊王様の声だ。

 ポーションを飲みはじめてからずっと無言だったけど、お口に合わないというわけではないようだ。良かった。

「いや、壱弦のポーションはこれまでも食べていたが……」

 精霊王様にとっても、このポーションは飲むものじゃなくて食べるものなのか。確かに食感はあるけどね。

「どうした壱弦。これは……やばいぞ……」

 そして美味しすぎると人は語彙力を失うらしい。正しくは人じゃなくて精霊王様だけど。

 でもやはり料理スキルSの威力は半端ない、ということのようだ。

「料理スキルSの女の子が作ってくれたものを思い浮かべながら作ったんですよ」

「なるほど。うまい」

 そう頷きながら、精霊王様はどぼどぼと自分のコップにポーションを注ぐ。精霊さんの飲むペースもとても早い。

 結構いっぱいポーションを作ったつもりだったけど、どんどん減っていく。精霊王様と精霊さんの勢いは本気で、とどまるということを知らない。

 ……全部飲み尽くすのでは?

 まあ魔力は有り余っているし、もう一回作ればいいか。




 満腹になった精霊王様は、本当に無邪気な子供のように目を爛々と輝かせている。

 精霊さんも満足したようで良かった。

「壱弦」

「はい」

「お前には、オレを名で呼ぶことを許可する」

「はい?」

 よくわからないが、すごいことなのだろうか。

 精霊さんは、すごーいと言いながら飛び跳ねて拍手をしている。

「ノヴァ、と呼ぶといい」

「ノヴァ様」

「うむ」

 教えてもらった名前を呼ぶと、満足そうにノヴァ様は頷いた。

「あと、オレは今日からこの家に住むからよろしく」

「……はい?」

「生活費として、薬草その他を提供しよう」

 精霊王様って、人の家に住むものなんだろうか。いや本当、どういうことだろう。

 拒否権はなさそうだし、ノヴァ様のことは勿論好きだからいいかなとは思うけど。

「あの、毎日ポーションを作るわけじゃないですよ?」

「構わん。その時は壱弦の手料理を振る舞うといい」

「あんまり上手ではないですが……」

「それも構わん。オレも精霊も壱弦が作ったものだから好きなのだ。まあ、あのラタトゥイユなどは特別美味かったが。それに、お前の側は居心地が良い」

「そうなんですか?」

「ああ。我ら精霊と本質的に相性が良いのだろうな。魔力が美味いし、波長も合う」

 僕が精霊さんのことを無条件で受け入れていたのも、そういう要因があってのことなんだろうか。

 精霊さんが人間ではないとはいえ、会話をするのも側にいるのも苦ではなかった。

 ある日急に嫌われるのでは、という心配も、驚くほどしていない。


「あっでも部屋数が」

 この家は、小さい。一人で住むのに買ったものだし。

 精霊さんなら小さいし浮いていたから気にならなかったけど、ノヴァ様は子供サイズの人型。それに王様だというのに精霊さんと同じ扱いには出来ないだろう。となると、一部屋必要になる。勿論ベッドやソファーなどの家具もだ。

「ではこの作業部屋の隣に、一部屋作ろう。なに、空間を弄ればすぐだ」

 流石精霊王様。規格外だ。

 家の外に急に部屋が目に見えて増えたら驚くけど、中だけ広く出来れば気付く人はいない。安心だね。


 というわけで、同居人が一人増えた。

 ちなみにポーションは見事に飲み尽くされたので、もう一回全種類作ることとなった。



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