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5 精霊の愛し子⑤


 異世界人という全言語翻訳は全員共通としても、固有スキルは精霊さんの匙加減だったとは。

 ステータスは本人の現状が加味された上、固有スキルによる補正がかかるようだ。だから元々料理が得意だった人はそのまま料理スキルがあったり、運動部で体力のある人はステータスの体力も高かったり。

 何だか思っていた以上に、この世界における精霊さんの存在ってすごいものの気がする。


「……お前の時は特に、精霊たちが騒いでな」

「そうなんですか?」

「ああ。お前の心……魂とでも言えばいいか。それの色はひどく精霊好みだ。お前の痛みや諦めに、それでも穏やかで綺麗なままだった色に、精霊は懐いたようだ。大勢の精霊に頼まれたのだ。とにかく、お前を幸せにしたいのだと」

「精霊さん……」

 僕には何も返すものがないのに、どうして精霊さんたちはいつも僕を愛し子と呼んで、純粋な好意を惜しみなく向けてくれるのか、ずっと謎だった。

 そうか。精霊さんは最初からずっと僕に気付いて、慈しんでくれていたのか。


「精霊さん、ありがとう。僕は毎日すごく楽しいし、幸せだよ」

 今ここにいる精霊さんは、大勢いる中のほんの一部だけだろう。それでも、感謝の気持ちはきちんと言葉にして、今伝えたかった。

 精霊さんは嬉しそうにきゃあきゃあ飛んだり、照れたようにもじもじしたり、反応は個体によって様々だ。

「……オレだってお前のこと、嫌いじゃないぞ。好きなんだからな」

 ぽつりと発せられた声は、精霊王様だ。思わず笑ってしまう。

「はい。精霊王様、ありがとうございます」


 ステータスの説明文がまるでなかった『精霊の愛し子』、これがあったから無条件に精霊さんに好かれているのかと思っていた。

 けれどどうやら、精霊さんが僕を好きになってくれたから、愛し子になったらしい。

 そのことが、とても嬉しい。


「イヅル〜」

「すごく好きなのよ!」

「だから加護もあげたのー」

「ぼくたちが守ってあげる!」


「……とまあそんな感じに、とにかく精霊たちはやたらとお前のことが大好きだ」

 ぴょんぴょん飛び回る精霊さんに、精霊王様は仕方なさげに笑う。その笑い方はどこか大人びて見えて、やっぱり見た目そのままの年齢ではないのかな。どこか子供じみた行動をしていても、知識や言葉はしっかりしているし、精霊の中の王様なんだし。

 この際疑問に思ったことは聞いておこう。

「あの、ステータスだと精霊の愛し子って説明文がないんですけど……精霊の加護も似た感じですけど、何が違うんですか?」

「簡単に言うと、精霊の愛し子はオレが授ける。精霊の加護は精霊が授けるやつだ」

「そうなんですね」

 確かに、精霊の加護の方には説明文……と言えるかは微妙なところだけど、精霊さんからのメッセージのようなものが書いてあった。

「オレがこいつは精霊の愛し子だって認定すれば、まあ要は精霊が見えたり、触ったり出来るようになる。たまに例外はいるが、普通は見える存在じゃないからな。あとはお前のやたら優秀なステータス自体が、愛し子の恩恵だ」

 なるほど。外で全然精霊さんを見掛けないのはそういうことかな。僕が一人で喋っているように見られたら変な人だと街の人に思われるだろうから、気遣ってくれたのだろう。

 それにこの高すぎる魔力とか、∞表記とか、それ自体が愛し子の恩恵なら、確かにという感じだ。

「加護はまあ、精霊たちがお前のことを好きになりすぎて……ぶっちゃけ、お前のことを傷付けた奴には報復する気満々ってことだ」

「……はい?」


「なぐる!」

「ぶつりで」

「頭にお花咲かせてやる」

「十円ハゲつくってやる」

「みずむしにしてやろうな」


 精霊さん!?

 めちゃくちゃ好戦的だった!

 ぶんぶん腕を振り回して意気込んでいらっしゃる。精霊さんって、基本的に無害とかいう話じゃなかった?

「ま、運も∞だし大丈夫だろ」

「……そうですね」

 今のところ最初以外悪い人に巡り合うことがないのは、運∞のおかげだろう。

 ありがたいことに、穏やかでやさしい日々を過ごしている。



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