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4 思い立ったが吉日だよね④


 打算にまみれていようがなんだろうが、上等である。

 それに僕はアイネさんのことは好ましく思っているので、正直まったく問題ない。

「キューちゃん。私はね、美味しいご飯が大好きなの。心の底から美味しいご飯やおやつが食べたい。その為に料理スキルをSまで極めたわ。でも、でもね……」

 ふるふるとアイネさんが震えながら、とても真剣な声音で話している。

「毎回作るのは、めんどくさいの!」

 うん、わかるわかる。

 僕がこくこくと頷くと、アイネさんは、そうでしょうとでも言いたげに胸を張る。

 なおキューちゃんは、は?何言ってんの?顔だ。

「いやほんと何言ってんの!?お姉ちゃんがものぐさなのはいつもだけど、そういう問題じゃないよね?」

「まさにウィンウィン」

「ちが、結婚ってそういうのじゃないでしょ!あたしがからかったのがいけなかったの?ほんと落ち着いてお姉ちゃん、冷静になって!」

「私はいつでも通常運転よ」


 どうにかこうにか説得しようとするキューちゃんだけど、アイネさんはまったく動じる様子がない。

 次第に、これは説得は無理だと悟ったキューちゃんの目にはどんどん涙が出てきて。

「う……うわーん!」

 キューちゃん、大混乱の末のガチ大泣きだった。


「ほらキューちゃん。これ飲んで落ち着いて」

 僕はキューちゃんのコップにアップルパイ味のポーションを注ぐ。ぐすぐす鼻をすすりながら、キューちゃんはそれを飲みはじめた。

 随分な一気飲みをしていたので追加で注ぐと、それもまた一気に飲み干す。やけ食いか。いや、やけ飲みか。

「それなら、結婚を前提にお付き合いっていう形で実け……仲を深めていかない?イヅル」

 流石のアイネさんもこれはよくないと思ったのか、妥協案を出してきた。まあ、急に結婚は一足飛びどころの話じゃないしね。

 でも明らかに実験って言おうとしていたよね。思わず笑ってしまう。

「うん。そうしよう。結婚を前提によろしくね、アイネさん」

「アイネでいいよ」

「わかった、アイネ」

 なんだかむず痒い。

「キューちゃんもそれなら安心でしょ?」

「……うん」

 どうやら良いらしい。

 というわけで、結婚を前提にアイネさん……アイネとお付き合いすることになった。びっくりだ。

「あの、じゃあ私早速パンケーキ作るね。ベリーソースのやつ」

 あ、今すぐなんだ。よほど食べたいんだね。

 アイネさんはそわそわした様子だ。本当に、早く作りに行きたいらしい。

「イヅルは何食べたい?」

 僕の希望も聞いて作ってくれるのかな。やさしいなあ。

 それにしても料理スキルSの手料理……何をお願いしても確実に美味しいだろうから、余計に迷う。だからといって、何でもいいよ、という選択肢は除外だ。

 シンプルに美味しいもの。僕が好きなもの……。

「ラタトゥイユと、トマトケチャップのオムライスがいいな」

 ラタトゥイユはママさんの好物らしいし、僕も食べてみたい。

 それから、トマトケチャップのオムライス。デミグラスやクリームソースも美味しいけど、シンプルにトマトケチャップが僕はやっぱり一番好きだ。

「わかった」

 アイネはにっこりと笑って、お店の奥に引っ込んだ。

「店の裏から出て、すぐそこが家なのよ。お姉ちゃんがいつ料理を作りたくなってもいいように一通りの食材は家にいつもあるから、すぐ作ると思う」

 と、キューちゃんが教えてくれた。なるほど。


 アイネの料理待ちの間に、持参したポーションの買取をしてもらう。

 試飲も鑑定も済んでいるから、金額は前と同じく味付きは普通のポーションの二割増し。味のない方は普通のポーションの価格になった。

 今回は試飲の各一本分はこちら持ちで、それから醤油ラーメン味は売り物ではなく家族で飲んでほしいと渡した。

 懐がほくほくになったところで、薬草もいくつか買っておく。

 家にストックしていても、鮮度保持の魔法をかけておけば品質は悪くならないから安心だ。

 全魔法∞はものすごく役に立つ。ありがたいね。

 それから、キューちゃんと色んな話をした。

 キューちゃんは十三歳で、学校に通っているから先日はいなかったようだ。

 この世界には義務教育というものはなく、学校には行っても行かなくてもいいらしい。

 字の読み書きや魔法の基礎などを教えてくれるし、無料なので、学校に行く平民は多い。ただその頻度はまちまちで、ほとんど毎日行く子もいればあまり行かない子もいるのだとか。

 アイネは頭が良いみたいで、学校にはほとんど行かなかったそうだ。

 ちなみに貴族の学校は平民とは色々違うらしいけど、まあ僕には関係のないことだ。



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