公爵家と伯爵家は手を取り合って、王族との婚姻を回避する
名門グレース公爵家のちょっとしたガーデンパーティー、集まった夫人達は来月開かれる王家のお茶会の話題に夢中だった。
王妃の娘シャルロット王女、意地悪そうな容姿そのまま我儘な性格が災いして、20歳だが婚約者が決まっていない。
側室の息子で王太子のスチュアート、婚約者だった他国の王女が侍従と駆け落ちしてしまい、こちらも18歳で婚約者のいない身となった。
困った王室関係者は何とか国内の貴族から探そうと、伯爵家以上で婚約者を持たず、問題がなく年頃が見合う令息令嬢に招待という名の招集をかけたのだ。
招待状が届いた家は鼻高々で当日用のドレスをどこの店に頼んだなど自慢している。
そんな中、ガーデンパーティの主催者である公爵夫人のエリスはそっとため息をついた。
(フィリップがぐずぐずしてるからこんな面倒なことに…。)
公爵家の嫡男フィリップは23歳にして婚約者がいない。兵役として近衛隊に入隊していた19の頃、家から離れた反動と周りの悪影響でハメを外し、色々痛い目にもあって女性を必要以上に警戒するようになった。見合いも断り続け王子宮の事務官になってからは仕事漬けで、邸にも寝に帰るだけの毎日を送っている。
(フィリップは自分で何とかするというけど、王女殿下の降嫁なんてなったら最悪だわ)
我儘を諌められる者はいないし、散財を止められなかったら公爵家の財力にも影響が出る。王家に連なる者との付き合いも金がかかる。
王室との婚姻を望むのは権力への野心を持つ家か、何も知らない愚かな家というわけだ。
エリスは王家のお茶会の話題の輪から外れている夫人に目をやった。メアリー・ガーランド伯爵夫人、他家のお茶会で出会い人柄が気に入って今回招いていた。
(彼女の令息はまだカレッジの入学前だけど、ご令嬢は3年生だと聞いた気がする)
エリスはメアリーに近づき声をかけた。
「よろしければ奥の薔薇園も案内しますわ」
「エリス様、ありがとうございます」
そしてほかの参加者に話が聞かれない場所まで移動した。
「メアリー様の娘さんにも招待状が?」
「ええ、我が家の家格からして選ばれないとは思っておりますが、万が一を考えると困っております…」
エリスは優雅に微笑んだ。
「メアリー様、わたくし穏便に招待を断る方法を考えましたの。後できいていただけます」
フィリップを待っていられない、考えつくことはやってみようとエリスは思った。