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フォルクロア 2章 大乱闘  作者: 竹紀 譲
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1話 モーゴタウン

この物語は、フィクションであり、


人物、国、組織、等々、現実の物とは


一切関係ありません。


ので、


気軽に楽しんでください。



 魔人の生みし太陽が、ハッカケハッカケ飛び散り星。


星の名は、


フォルクロア。



タバの森を出て、冒険の旅を始めた少年、


ドリファンは、



その事で、世界が動き出した事など、


つい知らず、呑気に旅を続けていた。




その頃、


魔王軍は、イストニア王都を拠点とし、


そこから動く気配はなかった。



時折、北の森に、


小規模の重装甲トロール兵部隊が、攻撃を繰り返すが、


森の中の防衛線は、抜かれる事はなかった。



最大の理由は、北の森の枝葉の高さが、


ちょうどトロール兵の視界を奪う高さで、


出来た死角から、攻撃して、


逃げるを、繰り返し有利に戦闘を続けていた。



その中でも、活躍していたのが、


第1近衛騎士団であった。



第1近衛騎士団長ギルメーヤが本陣に戻ってくると、


真っ先に駆け寄って来たのは、


第1王子、ミュラ・キス・イースである。


「ギルメーヤ!ありがとう!


君のおかげで、魔王軍の侵攻を止める事が出来たよ!」



第1王子ミュラは、


良く言えば、善人である。


しかし、


王族としては、家臣にへり下り過ぎで、


貴族同士の交流でも、腹芸の1つも出来ない、


そのせいもあり、


民衆からの人気は、有っても、


貴族達からは、反感を持つ者も多く、


評価も低い。



王とは、


民をまとめ、貴族達もまとめなければならないのだから、


その様な評価になってしまうのである。



「ミュラ王子、その様なお言葉、この身に余るものにございます。


それに、周りの者の目もございます。」


ギルメーヤは、この王子が気に入っている。


剣技の弟子と言うのもあるが、


素直で善人、そして、騎士たる者、弱きを助け悪しきを挫く。


そう、本気で思っているのだ。



「そうか、周りの目など、私は気にしないのだが、


ギルメーヤが、そう言うのであれば、気をつけよう。」



ミュラ王子は、政治センスも無く、


謀略も使え無い、その事が、貴族達に知れ渡っている。


つまり、ザンネン王子なのである。



「何を騒いでいるのです?兄上。


こんな勝利で、いちいち大声で騒ぐなど、


少し自重していただきたい。」



第2王子アリオス・ウル・イースが現れた。


イストニア王国最高位貴族、ウル家。


初代イストニア王を輩出した貴族だが、


それ以前から王族であった。


その家柄もあり、貴族達の支持も厚く、


また、


王立学院でも、入学してから3年間、


成績首席で、学院始まって以来の天才と、


称されたのだが、


妹のスホミュラ姫、当時は、メーリン姫が入学してからは、


イストニア王国1の秀才と呼ばれ、


天才の呼称は、妹のものとなった。


しかし、


政治、経済、軍事、外交をバランスよく、


高いレベルで習得しており、


理性的で合理的な、思考の持ち主で、


貴族達からの信頼は、厚い。


ただ、


貴族的なところが、民衆からは、冷たさを感じられ、


少し人気がないのだ。



「アリオスよ、少しくらい勝利を喜んでも、


良いではないか。」



「何を呑気な事を、兄上。


この勝利は、長くは続きません。


持ち堪えて、あと、半年。」



「なぜその様な事言う、アリオス。」



「良いですか兄上、


今、我が軍が有利なのは、森の木々の枝葉が、


敵兵の視界を奪っているからです。」



「それが何だ。」



「つまり、やがて秋になれば、葉は色付き、


落ちます。


今より苦戦するのは、明らかだからです。」



「あっ」



その様子を見守るしか出来ないギルメーヤの隣りに、


白い髭を蓄えた老大将軍ドン・ワンパが現れた。



「またやっておるのか、あの若僧は、」



「ワンパ殿。」



「何もこの様な、人目の多い所で、


自分の立場を上げる策謀などしおって。」



「ワンパ殿、それ位にしては、」



「ふん、将兵の士気を落としおって、


ミュラ王子の方が戦の流れを良くするわい。」




ギルメーヤの近衛としての立場はあるが、


老将の言葉には、頷く物がある。


しかし、


真面目なギルメーヤは、態度には表さない。



「しかしなぁ、ギルメーヤ。


なぜ、魔王軍は、戦力を小出しにするのだ?


どうにも、解らん。


ゼガホーンもダーク・フルキスも、


魔王軍の名将、戦上手の者達だ。


愚策と思える事を何故している?」



「ワンパ殿、私も気になっていますが、


彼らの目的が、


私達の考えている物と違うのかも知れませ。」



「うむ、それが何かじゃな。」



2人は、イストニア王都を占拠する魔王軍の動きを、


計りかねていた。



その頃、


最果ての村、イーストエンドにいる、


小さな勇者、


ドリファンとミンは、ちょうど出発したところである。



最果ての村で5日過ごしたこととなる。


最果ての村から、吸血鬼の国で3日、戻って来て2日である。


吸血鬼の国に続き、最果ての村でも盛大な見送りと共に、


村を出発した2人は、馬が走る様な速さで走っていた。


普段より遅い速度でである。


それは、


特に急ぐ必要もなく、


また、


長い距離を走るつもりだからだ。


途中、


2度の休憩を入れて、たどり着いた。



イストニア中央諸都市の東側の端の外側、


人口5000人程の町、


町の建物は、ほとんど木造建築物で、2階建から3階建てである。


そのため、


道幅は広く、建屋の間隔も広く取られ、


火災による延焼を防ぐ町の造りになっており、


イストニア王国警備兵消火隊も常駐する、


辺境では、


かなり大きな町、モーゴタウンである。



その町は、商人達の出入りが多く、


活気に溢れていた。


この町では、あらゆる物が手に入る、


それが非合法の物でも。



だが、


訪れた、少年、少女には、関係は無かった。



ただ、珍しい物が沢山ある面白い場所であった。



しかしながら、


町の不良達、チンピラ達からは、


2人が世間知らずの者だと、すぐに解ってしまう。



当然、


この2人から、金品を奪おうと、あるいは人買いに売ろうと、


襲われることとなるが、


簡単に返り討ちになってしまう。



「なんなんだ?奴ら?」



「さぁ?お祭りかしら?」



2人は、大怪我しない様に、かなり手加減したが、


襲った者達は、したたか負傷して逃げ帰った。



「お前ら!覚えていろよ!」


っと、捨て台詞を吐いて。



「ん〜何を覚えていれば良いんだ?」



「いいのよ!覚え無くて!負け犬の遠吠えなんか。」



「犬?今のは、人間じゃなかったのか?


犬ってあんな姿のヤツもいたんだ。」



ミンは、思いっきりコケた。



「ちょっとドリファン!なに言っているの!」



その時、後ろから呼び止められた。



「騒ぎを起こしているのは、お前達か?」



それは、この町の衛兵であったが、


先程のチンピラが、後ろから付いている事から、


賄賂を貰って動いているのかもしれない。



「見ない顔だな、旅券はあるのか?」



「わたしたちは、その旅券を発行してもらうために、


王都に向かっているのよ。」



ミンが答える。



「ふん、一応すじは通っているな。


しかし、代わりに、身分を証明出来るものがないと、


兵舎に来てもらう事になるな。」



「えっ? 身分を証明するもの?


ん〜これじゃダメかなぁ?」



彼女は、ポーチから、最果ての村で貰った称号証と、


メイソニアで貰った、プラチナのカードを見せた。



「何だ?これは?これじゃぁ兵舎に来てもらうしか無いな。」



「何々、ふむふむ、成る程成る程、


これは、証明になるよ、キミ。」



「町医者!」



このやり取りに入って来たのは、


背の高い、頭ボッサボサの白衣を着た、


白い肌の金髪、痩せ型の中年男性であった。



「こっちの、称号証は、教会の正式な物だよ。


最果ての村の小さな勇者、やるねキミ達、


それにこれ、プラチナのカード。


衛兵君、キミよかったねぇ、僕が来て。


2人に手を出してたら、


国際問題になっていたかもしれない所だよ、


このカードには、メイソニア王国国王が、後ろ盾になる。


って書かれているよ。


キミ達?何者?」



「何だって?お前らもう行っていいぞ!」



そう言い、衛兵は走り去った。



「なんか、ありがとうございます。


わたしは、ミン・シャウリン、


こっちは、ドリファン。」



「私は、フレデリック。


この町で医者をやっている者だよ。」



「ありがとう。」



「ふむ、それにしても君達強いねぇ、


最初から見ていたけど、ただ、気をつけたまえ、


この町には、犯罪者ギルドの支部がある。


あまり目立たぬ様にした方が賢明だよ。」



「犯罪者ギルドかぁ、分かったわ、気をつけることにするわ。」



彼のおかげで難を逃れた2人は、


その後、


交戦せず逃げる事にした。


ただ、


その事が、町で騒ぎになるとは、


その時、2人は思っていなかった。



チンピラ達が、2人に絡んで行くと、


振り返り、そういった者の場合、


一瞬で逃げたのだが、


あまりの速さで残像だけが残り、


その残像が目の前で消えた時、



「ぅわぁ!ゆ、幽霊だぁ!」



そう、


モーゴタウン警備記録に残る、


真昼のゴースト事件、


これの始まりであった。



そんな事とは、つい知らず、


そのたび、


同じ事を繰り返していたので、


当然、


町中は大騒ぎになっていった。



「まっ昼間から幽霊なんて出るのか?」



「出たんだよぉ!本当に!


きっと昔、殺された子供の幽霊なんだ!


きっと、、、。」



などと、


噂は、1人歩きを始めて、


更に大きく町中を駆け巡った。



2人は、


そんな事とはつい知らず、


カフェで食事を取っていた。



「いた!幽霊だ!」



そう言い、ハンター達が、2人に迫って来た。


そうすれば、また、残像を残し消えた。


震える銀貨一枚を残して。



「なぁ、幽霊ってなんだ?」



ドリファンの疑問に、ミンは、答えを持たない。



「さぁ、なんか、わたしたちの方を見て叫んでいたようだけど。」



2人は、しばらく建物の上から様子を伺い、


状況を把握した。



「なんか、わたしたちが、幽霊って事になったみたいね。」



「下に降りて、謝ろう!」


「ダメよ!ドリファン!


そんな事したら、余計に、ややこしくなるわ。」



「、、、。」



「この際だから、今までの事は、幽霊って事にしましょう。」



「、、、。」



ドリファンは、不服そうだったが、


他に代案も無かったので、渋々それに倣った。



人通りの少ない所の建物の上まで移動して、


そこで、


仰向けに寝て、空を見ながら、2人は、時を待つ事にした。



「もっと町を見たかったな。」



「しょうがないじゃない。余計な騒ぎはごめんだし。」



「どこも、こんな感じなのか?」



「そんなわけ無いわよ。ここは、あまり治安が良くないだけよ。」



「治安ね。」



他愛もない話しをしているうちに、


やがて、


日は沈んだ。



「おおおぉ、真っ赤な夕日が大地に沈むの初めて見た。」



「そうね、ドリファンは、森とか、山とかに沈むのしか、


見た事ないもんねぇ。」



「うるさい!」



そんな2人の上空を飛ぶ一条の炎が、東の方に向かっていった。



そして、


この町にも、


白いローブに身を包んだ、長身の騎士が、


2人の従者を連れて現れた。



白いローブの騎士は、町の東側に現れ、


町の東側の小さな診療所に入って行った。



「すいません。今日の診察は終わりました。」



「失礼、シスター、今日は、診察じゃないのだ。


フレデリック先生は、居らしゃるかな?」



「んっ?珍しいなぁ、君か、


シスター・アンジェラ、もう上がって良いよ。」



「分かりました先生、教会に戻ります。」



「ありがとうねぇ、また、よろしくお願いするよ。」



シスターは、皆に頭を下げて、教会に帰って行った。



「お前たちは、外で待っていろ。」



「はっ!」



2人は外で、診療所の入口の前に立ち、


近づく者達が無い様に、周囲を威圧し、


任務を遂行した。



やがて、


白いローブの騎士は、


診療所を出て、2人の従者と共に、


町の教会に入って行った。



1話 完




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