聖女と女騎士、入浴準備する
突如、むさ苦しい山の中と男どもの中に出現した女。
しかも触れれば切れそうな鋭い美貌を湛えた美女に――私だけではなくハイゼンもぎょっとした。
「え? あ……お前、女だったのか!?」
ハイゼンが大声を上げると、とんでもない美人は私たちに涼しい流し目をよこした。
「ああ、そう言えば自己紹介がまだでしたね」
赤髪の美女はそこで思いついたように言い、頭を下げた。
「私はエルナディア騎士団の従士パウラ・ストラスと申します。今次遠征隊ではアダム皇子より、隊長として指名を受けました。コノヨ様、そして下僕様、以後お見知りおきを」
そこで女騎士はとろけるような笑みを浮かべた。
その微笑みに、私の心が感電した。
おそらく同年代か、ギリギリ歳下と見えるのに、自分よりも何倍も大人びて見える。
それは嫉妬よりも羨望を抱かせるような――輝くような美貌であった。
女としてあまりに完成された美貌を見ていると、パウラと名乗った女騎士は私に遠慮がちに言った。
「それで、コノヨ様……オンセンでの湯浴みというのはどうすればいいものでしょうか」
パウラの言葉に、私ははっとこの世に舞い戻った。
「あ、え、ごめん。聞いてなかった。もう一度いい?」
「あの……私、普通の湯浴みはしたことがあるのですが、誤った方法で聖なる泉を穢してしまうのではないかと……もしよろしければ浸かり方をご教授いただけませんか?」
なるほど、温泉の浸かり方を教えろということか。
私は頷いた。
「ああ、そんなことか。いいよ、じゃあ一緒に入ろうか。私が上手な温泉の浸かり方を教えたげる」
私が言うと、はい、とパウラが嬉しそうに笑った。
「じゃあハイゼン、悪いんだけど道の工事の方に行ってくれる? やっぱりこういうのは男の視線ナシで行きたいのよ」
私が言うと、ハイゼンが口をとがらせた。
「んなっ、何度も言ってるだろう! 俺は頭脳労働者なんだ! 誰が道路工事なんぞに行くか! そんなもんはムサ苦しい兵士に任せればいいだろうが! 俺は手伝わんぞ!」
地団駄を踏むハイゼンに、「ほほう?」と私は意味深な笑みを浮かべた。
「つまり、ここで女湯ノゾキをしたいと、こういうわけか」
「は――?」
「やぁねぇ、ポンコツならポンコツなりに、アンタはそういうことをしない男だと思ってたんだけどなぁ、見込み違いだったかしらねぇ」
私がわざと下卑たような顔を浮かべてやると、ハイゼンの顔が一瞬で真っ赤になった。
「きっ、貴様――!」
「さぁさパウラ、覗き魔が消えたところで温泉入ろっか!」
「は、はい!」
さぁ、男のお前は邪魔だからどっか行け。
私が視線を寄越すと、憤懣やるかたないというような顔でハイゼンは肩を怒らせ、のしのしと下の方に歩いていった。
ふん、頭脳労働者だなんだと見栄を張らずにさっさと工事を手伝いに行けばいいものを――私はその背中を笑いながら見送った。
と――そのときだった。
背後に視線を感じた私は背後を振り返った。
「ん?」
私が木立の中に視線を走らせた瞬間。
何かが慌ててその場を去った気がした。
草が揺れ、ざざっ、と音が立った。
「コノヨ様、どうなさいましたか?」
なんだろう、今一瞬、身体に感じた、肌のひりつくような感覚は。
今感じた違和感を語る言葉――それは私の中に存在しない気がした。
「いや――なんでもないわ」
一瞬後にはその違和感も忘れて、私はパウラと一緒に脱衣所に入った。
「面白そう!」
「続きが気になる!」
「温泉行きたい!」
「熱い湯を水で埋めるなべらぼうめ!」
そう思って頂けましたら【★★★★★】で評価お願いします。
何卒よろしくお願い致します。
【追伸】
3/7、異世界転生/転移ランキングで3位を頂きました!
これからも温泉の魅力を伝えてゆきます!
ここのサイト名が『温泉名人になろう!』に変わるまでこの作品をよろしくです!




