聖女、召喚師をどつき回す
魔力?
私はポカンとした表情を浮かべて青年の顔を見た。
青年は私の手を離し、よたよたと後ずさった。
「馬鹿な……召喚式は完璧だったはず! どうして魔力が……!? ばっ、馬鹿な! これはなにかの間違いだ! そんな……!」
青年は悲鳴のように言った。
その途端、不審そうに私を見たローブの中のひとりが大声を上げた。
「あ……本当だ! この女、魔力を持ってないぞ!」
魔力? 魔力ってなんだ?
私は回答を求めるように男たちを見回した。
途端に、周りにいた召喚師たちが掌を返して青年をなじり始めた。
「あーあ、お前にちょっとでも期待した俺が馬鹿だったよ」
「何が《シジルの聖女》だよ。あんなもんはやっぱ単なるお伽噺だろうが」
「おいハイゼン、どうすんだよこの年増女」
「お前が聖女召喚しようとか言い出すから付き合ってやったのに」
「ホントダメ人間だよなお前」
「お前はいつもこうだ」
「俺たちの一ヶ月返せよ」
「責任取れ」
ハイゼン、と呼ばれた青年は口々に口撃されて、よたよたと後ずさった。
◆
「アンタには悪いが、異世界の知識がある人間をほっとくわけにはいかないんだ。王の裁可があるまでここで我慢してくれ」
我慢してくれ、じゃないよ――。
私はわけもわからぬまま、あっという間に外鍵のかかる部屋に放り込まれた。
周りの召喚師にケツを蹴られながら、そこにハイゼンとかいうさっきの眼鏡の青年も放り込まれた。
真の被害者である私を一切無視しながら、ハイゼンは死にそうな顔で部屋の隅に背を預けてボヤき続けた。
私は必死になって状況を探ろうとしたのだが、部屋の片隅で膝を抱えたハイゼンは一切答えようとしない。
なんとかなだめて事情聴取しようとしても、ハイゼンは地獄のような呪詛をずっと吐き続けるだけだった。
私の我慢も限界に来た時、とうとうハイゼンは余計なことを口にした。
「ちくしょう……! 今度こそあいつらを見返してやれると思ったのに……! なんで貴様には魔力がないんだ! せめてもう少し美人だったら聖女だと言い張ることも出来たのに!」
頭の中に聞いたことのない音が響き渡り、私は人生で初めてブチ切れた。
「死ねぇ!」と叫びながら、私は持っていたハンドバッグでハイゼンの頭を思いっきりぶっ叩いた。
「おぶっ……!? んな、何をする年増女!?」
「何をする、じゃねぇよッ! このクソ眼鏡ッ!」
私は再びハンドバッグを振り下ろした。
バキッ、という音が響き、ハイゼンの眼鏡が床に吹き飛んだ。
「黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって! 殺す! 私の質問に答えないなら今この場で殺す! 死んで詫びろやゴラァ!!」
「あだっ! や、やめ……ぎゃあ! ちょ、待って! あああああ!」
「面白そう!」
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「温泉行きたい!」
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