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6/13

6:それからとこれから

少しだけ長いですが、最終話です。

 あれから1年と少しが過ぎ、結局のところ、あの王国は滅んでいた。

 

 勇者不在を知った魔族の動きは早く、押し気味だった西の戦線に予備戦力の全てを投入し、そこを食い破る。そこから先は一方的な蹂躙だったらしい。


 実のところ、まともに戦える戦力は全て最前線に送っており、国内に残っていた騎士団とやらは、爵位にあぶれた貴族の子弟に食い扶持を与える為に作られた形だけの騎士団で、まともな戦闘力なんて無かったそうだ。


 他の戦線に配置されていた戦力も、王都を守る為に後退しようとすれば追撃を受けてしまう為に身動きが取れず、結果魔族の軍は無人の野を往くが如く進軍した。


 文字通り最後の砦となった王都や王城も、扉を閉ざして(ささ)やかな籠城作戦を取ったらしいが、そもそも救援の来ない籠城に勝機などある訳も無く。また、魔族の中には空を飛べる種族も居たため、あっけなく扉は開かれてしまったそうだ。


 ちなみに、大言壮語を吐いていた間男君は、一度として戦場に現れる事は無く、王都陥落の際に掃除用具入れに隠れていたところを見つかって捕らえられたらしい。何やってんだか。王女と国を守るんじゃなかったんかい。


 途中で占拠された村や町もあったが、無抵抗な者は殺すなとの厳命が出ており、必要以上の殺戮や強奪は無かったとの事。


 その後、王族は老若男女問わずに処刑され、貴族や教会、魔術院も主だったものは処刑、それを逃れた者も奴隷落ちした。冒険者ギルドは残されたものの実権は魔族に握られている為、以前の様な強権を振るう事は出来なくなったそうだ。

 それを聞いた時、『魔族にも奴隷制度があったのか』と、変なところに驚いたのを覚えている。

 現在、元王国は魔族の国の領土の一つとなっており、元々住んでいた人間もそこを追われるような事にはなっていない。

 税は厳しいらしいが、貴族相手に手も足も出なかったそれまでと違って、犯罪の取り締まりや裁判は、今のところ公正に行われているらしい。

 まぁ、圧政ではあるが悪政ではないってところなのかな、良く知らないけど。

 ちなみに、王国は滅んだけれど俺の力は失われてはいない。結局何なんだろうね、この力は。

 

 §

 

 「今日も平和だなぁ……」

 カウンター席に腰掛け、欠伸をしながら客の居ない店内を見渡す。

 カウンターの中では、フローラが新しくブレンドした豆を焙煎していた。

 どうやら彼女は思いの外凝り性であったらしく、大量の豆を買い込んでは、日々新しい味の開発に余念が無い。俺なんぞより、よっぽど喫茶店をやっていると言えよう。

 まぁ、そうやって生み出されたコーヒーも、大半どころか8割は俺と彼女の腹の中なので、店としては大赤字も良い所なのだが。

 

 あの後、俺たち二人は身を隠しながら魔族の国を旅し、戦争のゴタゴタが落ち着いた辺りで魔都へと移り住んだ。

 魔族の国の首都に人間が住み着いたって事で、当時は奇異の目で見られたりもしたが、幸いな事に迫害を受けるとか、そういった直接的な被害は無かった。


 半年ほど前に、手遊びに魔都の片隅で喫茶店の真似事――メニューはオリジナルブレンドのみ――を始めた際に結婚し、今はこうして、閑古鳥の鳴いている店のマスターとバリスタ?をやっている。

 まぁ、勇者時代に手に入れていた魔物の素材が、魔族の国でも良い値段で売れたし、店の方は赤字でも食うには困っていない。


 また、たまに二人で冒険者紛いの事をしてもいる。

 なんでも、魔族と魔物は別物らしく、魔物が魔族の支配下に居ると言う訳でもないので、魔族にとっても魔物や魔獣は討伐対象なんだそうだ。

 代表的な所だと、ゴブリンやオーク、コボルトやオーガなんかは『魔物』に分類されて、デーモンやサキュバス、ヴァンパイアなんかは『魔族』らしい。よくわからん。

 でまぁ、魔物による魔族の被害なんかも発生するので、魔物の討伐には賞金が出るって訳だ。

 また、こっちにもダンジョンはあるので、たまに二人で潜っては荒稼ぎしてる。

 そんな感じで、()()やりながら、俺たちは平穏(?)な生活を営んでいた。

 

 §

 

 「あんた、こんなとこで仕事サボってて良いのか?」

 カウンターの内側、サイフォンと睨めっこしているフローラの隣で、この店の数少ない常連に問いかける。

 「サボっているとは人聞きが悪いな、私は仕事の合間の休憩をしているだけだよ」

 「そう言って半日も粘った挙句、宰相さんが近衛を引き連れて乗り込んで来たのがつい一昨日の話なんだが?」

 「そう言うな。私はこの店の数少ない常連だぞ? おまけに、この店のコーヒーの開発に多大な貢献をしていると自負している」

 「そう言われてしまうとその通りなんだがさ」


 ここ数か月の間に、こいつが仕事を抜け出した時は、大概俺の店に居るってのが宰相さんにもバレちまったからなぁ。

 度々近衛兵がこの店を取り囲むものだから、近所では些か悪目立ちしてるんだよ。俺やフローラが、国家反逆罪の容疑者じゃねーかなんて噂もあるくらいだ。


 「どうぞ」

 「頂こう」

 俺がよしなしごとを、そこはかとなく悩んでいる間に、フローラは抽出の終わったコーヒーをカップに注ぎ、奴さんの前に差し出していた。

 「ふむ……、香りは以前より深くなったな。その分酸味が強くなったか……これは好みの別れる所かもしれんな」

 ブラック派のこいつが、香りと味を確認しながら感想をフローラに伝えると、彼女は真面目な顔でノートに書き込んでいく。そうして作られたノートは既に4冊目だ。


 ちなみに、もう一人の常連であるオフィーリア(元賢者)は大量にミルクと砂糖を投入する。それもうコーヒーじゃなくてカフェ・オ・レだよねってレベルだ。


 「さて」

 空になったカップを置くと、奴さんは懐から封筒を取り出しカウンターの上に置く。

 「今日は休憩の為だけに来た訳では無くてだな」

 「()()か?」

 「ああ」

 フローラが封筒の中身に目を通し、それを俺に渡してくる。目の通し終わったそれは、封筒と一緒に火皿の上に置いて、魔法で焼却してしまう。


 「世の中筋の通らない事だらけだな」

 「そうだな。私の力の及ばないせいでもあるが、お前たちには手間をかけていると思っている」

 奴さんの声から、少しだけ覇気が無くなったような気がする。

 「まぁ、そんなに気にしなさんな。これも俺たちの収入源の一つだからな」

 隣でフローラも頷く。

 これが俺たちが『色々』やってる仕事の一つ。有体に言ってしまえば、必殺〇事人だ。


 「そう言って貰えると助かる。報酬はいつも通りに」

 そう言って席を立ち、店の扉に手をかけた時。


 「きゃっ!?」


 「おっと」

 店の扉が勢い良く開かれ、駆け込んできた人影とぶつかってしまう。

 「すまない。怪我はないか?」

 「は、はい。こちらこそすいませんでした」

 フードを目深に被っているので顔は見えないが、着ている物と声から女性と思われる人物は、差し出された手を握り返し引き起こされると頭を下げる。


 女性でこんな店に来るのはオフィーリア位だけれど、アイツは『きゃっ』なんて可愛い声出さないし、なにより服の上からでもわかる彼女には有り得ないボリュームがね……。

 「そうか、それでは失礼する」

 短いやり取りの後、奴は店を出て行った。

 それにしても、聞き覚えのある声だけれど、誰だっけな……。


 記憶を辿る俺の前で、その女性はフードを脱ぐ。


 「お久しぶりですね、()()()


 そこに居たのは、元勇者パーティーの1人で、故郷の村に居る筈の元聖女だった。


 「勇者様は止めてくれ。お互いもう勇者でも聖女でも無いだろ?」

 「そうでしたね」

 くすりと笑いながらカウンター席に座ると、興味深げに店内を見渡す。

 「クレア、お久しぶり。コーヒーしかないけれど良いかしら?」

 「はいっ! 頂きます」

 クレアの席の前に立ったフローラが、微笑みかけながらコーヒーの準備を始める。

 サイフォンの中でお湯が行き来するのを、目を輝かせて眺めている彼女(元聖女)は、あの頃とは随分と違って見えた。


 あの頃のクレアは、いかにも聖女然とした、年の割には落ち着いた佇まいと、どこか儚げな気配を纏った女性だった。

 一言二言の言葉を交わしただけだが、今の彼女には、年齢に見合った闊達さがあるように見える。ぱっと見、無理をして明るく振舞っているようには見えないので、何かしらの心境の変化があったのだろうか。

 そう言えば、着ている物も修道服ではなくなっている。

 旅のためにマントこそ羽織っていたものの、それを脱げば明るい色の可愛らしい衣装が姿を現していた。


 「どうぞ」

 「有難う御座います」

 フローラの煎れたコーヒーに、おっかなびっくりといった体で口を付けるクレア。少しだけ口に含んだところで顔を顰める。

 「苦いですー」

 そんな彼女の顔を見て、小さく笑いながらフローラがミルクと砂糖を差し出すと、クレアはそれらを足しながら一口啜っては顔をしかめ、また足すという行為を繰り返した。

 ようやく自分好みの味になったのか、満面の笑みを浮かべるが、それまでに投入された量を考えると、彼女はオフィーリアの上位種かも知れん。


 「で? 今日は一体どうした?」

 だだ甘であろうコーヒーを啜りながら人心地付いている彼女へ問う。

 「あー。えっとですね……」

 カップを戻すと、人差し指で頬を掻きながら、気まずそうに言い淀む。

 「実は、『聖女』を辞めたんですよ」

 「は?」

 「ですから、聖女を辞めたんです」

 ちょっと何言ってるか分からないですね。

 「辞めるも何も、勇者パーティーを解散して、教会と言う組織が崩壊した時点で聖女の肩書なんて無くなってるだろ、今更明言するような事か?」

 「えっと、そうでは無くてですね……」

 言葉を切り、深呼吸を一つ。背を伸ばし、俺の目を見ながら。


 「『聖女で在ろうとする事』を止めたんです」


 そう言って、天井を見上げながら彼女が言うには……。


§


 あの後、故郷へ戻った彼女を待っていたのは、聖女たる彼女が村へ戻った事による混乱だった。


 勇者が行方を晦まし、聖女が勇者パーティーの役目を解かれた。

 魔王討伐は果たされず、それどころか魔族の勢いは増し、いつこの村に襲い掛かってくるかもしれない。


 抵抗しなければ命は助かると彼女は説いたが、そんな彼女に村人たちは詰め寄った。

 

 この村を救え。

 この村の為に戦え。

 勇者パーティーの一員だったのだから。

 『聖女』なのだから。

 

 『この村の為に命を投げ打つのは当然だろう』

 

 老いも若きも。

 男も女も。

 優しかった隣の家の老夫婦すら。

 

 彼女に同じ意味の言葉を投げつける。

 

 『この村の為に、お前一人が死にに行け』と。

 

 彼女は悩み神に祈った。

 『祈る』事は教会で最初に、そして繰り返し教わった事だ。

 

 祈れば人は救われると。

 祈る事で神は手を差し伸べてくれると。

 

 神は何一つ答えない。

 

 そんなある日、村に一つの流言蜚語が出回った。

 

 『近隣の村が魔族に襲われたらしい。明日にも魔族がこの村を襲うだろう』

 

 村は混乱の極致となり、彼女の元に村人が押し寄せる。それどころか、混乱に乗じて彼女に乱暴をはたらこうとする者まで現れた。

 

 その先頭に居たのは、誰あろう彼女の婚約者であったという。

 

 無論、勇者パーティーの一員として最前線を戦い抜いた彼女を、多数とはいえ只の村人がどうこう出来る筈も無く、彼女は事無きを得た。

 

 彼女は俺との会話を思い出し、無意識に目を背けていたことを悟る。

 

 ただ『祈れ』とだけ繰り返し、何もしてこなかった教会を、

 どれだけ祈っても何一つ答えない神を、

 自らの弱さに胡坐をかき、彼女にだけ犠牲を強いる村人を、

 

 祭り上げられた『聖女』と言う高座から、かく在るべしという御簾を通して見ていただけなのだと。

 

 そうして彼女は、自身に『聖女』という役目を強いる事を止めた。


§

 

 「そのまま村を飛び出しまでは良かったんですが……。その後どうしたら良いのか困ってしまって。お二人は姿を隠していましたし、取り合えず居場所の分かってるオフィーリアさんに相談に行ったんです。そしたら……」

 クレアが頬を膨らませる。


 「オフィーリアさんは転移魔法でお二人にしょっちゅう会いに行ってるって言うじゃないですか! おまけに、お二人は結婚して魔都で毎日いちゃいちゃしてるって言うじゃないですか!」

 「いや、別に毎日いちゃいちゃしてる訳では……」

 そう言った俺の腕に、フローラが腕を絡め、胸を押し付けてきた。今は布製の服を着ているので、その柔らかさが伝わってくる。

 「毎日らぶらぶ」

 そう言ってフローラはクレアに向かってドヤ顔を向ける。

 「む~~~」

 フローラに向かって、身を乗り出して頬を膨らませていたクレアだったが、やがて座り直し、ツンと顔を背ける。


 「ですから、私もここで働かせてもらおうと思って、塔から魔都まで、健気にもか弱い女の子が一人で長旅して来たんです」

 そう言って、温くなっているコーヒーを口にする。

 「長旅って、オフィーリアの転移魔法で送って貰えば良かったんじゃないのか? それに、ここで働くって……」

 「オフィーリアさんの転移魔法は一人用ですよ。後、ここで働くっていうのはあれです、『えいきゅうしゅうしょく』ってやつです!」

 「おい待て、その言葉の意味を理解して言ってるのか?」

 そもそもどこでその言葉を覚え……あ~、旅の途中の雑談の中でそんな話をしたかもしれん。彼女には婚約者が居たからな。


 「もちろん理解してますよ。あ、村を出る時に、彼にはちゃんと婚約解消を伝えました。それとも……」

 服の首周りを引っ張りながら胸元を少々覗かせる。

 「責任取ってくれないんですか? 私の裸をあんなに見ておいて」

 横目のジト目で俺を見ながらの爆弾発言。


 「いや責任って、あれはクレアが勝手に見せ――痛いからフローラは腕を抓るのを止めてくれ」

 こちらもジト目で俺の腕を抓っていたフローラだが、その手を離すとクレアへ向き直る。

 「とりあえず空いてる部屋が有るから、そこを使うと良いわ」

 「良いんですか!」

 「ええ、案内するから付いて来て」

 そう言うと、住居に繋がる扉を開き、クレアを招く。

 「お、おいフローラ……」

 「貴方は店番して居てね」

 そう言い残し、二人は扉の向こうに消えて行った。

 

 §

 

 「彼女は?」

 「荷物を置いて、今はお風呂に入ってるわ」

 「そうか……」

 なんとも言えない沈黙が店の中を支配する。

 「先に言っておくが、浮気も不倫もしてないからな」

 「分かってるわよ」

 「なら良い」

 「どうするの?」

 「どうって言われても、結婚ならもうしてるしなぁ。もちろん離婚する気も無いぞ」

 「私も無いわ」

 そのまま二人並んで、黙ってお皿を磨く。


 「良いんじゃないかしら」

 「何が?」

 「この世界では、一人の夫が複数の妻を娶る事が許されているのは知っているでしょう?」

 「まぁな」

 「それに、彼女はちゃんと婚約を解消して来てる。筋が通らないって事は無いと思うけれど?」

 「筋の話はそうかもしれないが、感情の方はそう簡単じゃないだろう。彼女は混乱しているだけかも知れない。村を飛び出して頼れるのは俺だけって状況だ。それを恋慕と勘違いしている可能性だってある」

 吊り橋効果亜種って奴だ。

 「そうかも知れないし、そうじゃ無いかも知れない」

 お皿を磨く音だけが響く。こういう時は、店に客が入ってなくて良かったと思うな。


 「別に今決めろと言う訳でもないし、今日明日で追い出すつもりもないのでしょう?」

 「まぁ、それはそうだが」

 「時間をかけても良いんじゃないかしら。彼女だって、混乱しているなら落ち着く時間が必要でしょう?」

 「そう……だな」


 「お互いにちゃんと考えて、そのうえで彼女が永久就職を望むなら、それに応えてあげれば良いんじゃないかしら」

 「フローラは良いのか? その……俺が複数の女性と結婚するのは」

 「あら、複数の妻を娶るのは、夫の甲斐性の証明でもあるのよ? 甲斐性の有る夫は妻としても自慢だわ。貴方は妻が増えたからと言って依怙贔屓や蔑ろにする様な器の小さい男ではないでしょう?」

 「当たり前だ」

 「それに……」

 磨いていた皿を置くと、左手を胸に当てる。


 「どんなに貴方に奥さんが増えても、正妻は私だもの」


 「どんなに増えてもって、そもそも増やす気が無いんだけどなぁ……。それに」

 肩を抱き寄せて軽くキスをする。

 「別に筋を通すだけの為に結婚した訳じゃないからな」

 「それも分かってるわよ」

 「ならいい」

 彼女は目を閉じて俺に寄り添い、俺の肩に頭を預けて来る。


 「あ~~! そうやって毎日いちゃいちゃしてるんですね!」

 長旅の埃を落としたクレアが、店で使っている黒いエプロンを着けて姿を現す。


 「夫婦なのだからこれくらい当たり前」

 「む~~~~」

 フローラのドヤ顔再び。そしてクレアの膨れ面も再び。


 「あ~、とりあえずクレア、ここに居る間は働いてもらうからな」

 「良いんですか!?」

 膨れ面から一転、満面の笑みを浮かべるクレア。

 「ああ、とりあえず仕事の事はフローラに教わってくれ」

 俺の言葉に、クレアはフローラに向かってぺこり、と頭を下げる。

 「はい! 有難う御座います。フローラさんも、宜しくお願いします」

 「ええ」

 

 仕事の説明を始めるフローラと、隣でそれを聞くクレア。

 二人を置いて店の外に出る。

 「まだ半日程度だってのに、随分と密度の濃い日だな」

 

 クレアが訪ねて来て、いきなりの永久就職宣言されて、そして同居する事になった事った。

 フローラがあんなに喋るのも、表情がころころ変わるのも珍しい。

 

 「人は筋のみで生きるに非ずってか」

 

 この世界で通すべき筋もある今となっては、元の世界に帰ろうとは思わない。

 ただ、この世界に居る理由は筋だけの話では無い訳で。


 これからも、通すべき筋と同じだけの何かを抱え、或いは天秤にかけながら、彼女達の居るこの世界で生きて行くのだろう。

 

 空を見上げれば日はまだ高く、今日が終わるにはまだ時間がある。

 昨日までより少し騒がしい今日からが始まり、やがてそれが当たり前になる日が来るのだろうか。


 すっかり見慣れた街並みを眺めながら、そんな事を考えていた。

私はコーヒーが飲めません。

体調次第ですが、匂いだけで吐けます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 聖女さん良かった。話の展開も好き
[一言] 久々に読み直して >「人は筋のみで生きるに非ずってか」 を読んだ瞬間浮かんだのが 草枕の冒頭 智に働けば角が立つ 情に棹させば流される 意地を通せば窮屈だ とかくに、人の世は住みにくい …
[良い点]  ところどころ登場する小さなおふざけ。  そのお陰で堅苦しくならずに読めるところ。 [一言]  面白かったです。
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