蛇足:これからのおはなし
蛇足は続くよどこまでも。
今回はクレアのお話です。
「暇、ですねぇ……」
行儀悪くカウンターに肘をついてぼやいてみる。
魔都の大通りからは外れた閑散とした裏通り。そこにひっそりと佇むコーヒー屋さん。
それが、私の働いているお店です。
店内にはカウンター席が幾つか、客席はそれだけですが、そもそもお客さんが来ないので席の少なさは問題になりません。
問題なのは、席ではなくお客さんの少なさですね。
私がここで働き出してから半年程が経ちましたが、常連と言われているオフィーリアさんともう一人の男性を含めても、多くて一日三人、少ない時は三日以上お客さんが来ない時もありましたから。
それでもお給金は普通に出てるんですよね。
まぁ、私にも勇者パーティー時代に分配されたお金が有りますので、お給金が無くても困る事は無いんですが。教会に居た頃は、自分で自由にできるお金なんて貰った事ありませんでしたけど。
しかも、住み込みで働かせて頂いているのに、家賃も食費も無料なんですよね。払うと言ったのですが、頑なに断られました。
こんな好待遇で良いんでしょうか?
お店の方はどうせ暇ですし、空いた時間で炊事掃除に洗濯と、家の事を私がやらせて頂く事にしまして、実際にはお店の仕事よりこちらの方に比重が傾いているのが正直なところですね。お店は暇ですし。
大事な事なので二回言いました。
ところで、『他はお願いするが炊事だけは絶対に止めてくれ』と必死に言われたのは何故でしょうね。
それでも何度か食事の準備をしてみたのですが、今では台所の入り口に『クレアは立ち入り禁止』と張り紙される有様です。解せません。
そして洗濯ですが……彼とフローラさんの下着、お二人の寝室のシーツが先に洗濯されていることがまま有ります。
別に恥ずかしがらなくても良いと思うのですが……。お二人共若いですし、何より夫婦ですからね。そういう事もあるでしょう。
何より、私もいずれ……。
ちなみに、『きせいじじつ(と、後で彼が言っていました)』を狙った事もあるのですが、フローラさんの壁が厚く、断念せざるを得ませんでした。
曰く、『そういう事は、ちゃんとしてからになさい』
冒険者の方はそういった事に寛容だと聞いていましたが、フローラさんはそうでも無いようです。或いは、彼の影響かも知れませんね。
『彼』
異世界からの召喚者にして、元勇者で元勇者パーティーのリーダー。そして、一時は人間の国の王女の婚約者でもあった人。
そんな彼が、今は魔都の裏町で流行らないコーヒー屋さんの店長さんをしています。色々ありましたし、その辺りの事情も伺ってはいますが、人生とはわからないものです。
『マスター』
このお店で働く事になった時に、彼から『うぇいとれす(店員さんの事をこう呼ぶそうです)をしている時は、俺の事はマスターと呼ぶように』と言い含められました。
別に『店長さん』でも変わらないと思うのですが、彼には何やら拘りがあるようでした。
なんでも、『いいかクレア。世の中には、精神的に成熟した大人の男がやってみたくなることが三つある。それが、蕎麦打ち、焼物、そして喫茶店の店長だ』だそうで。
そして、『喫茶店の店長と言えば、呼び方はマスター以外に有り得ない。これは決められている事なんだ』とも。
ちょっと何を言っているのか理解出来かねますね。そもそも、焼物はともかく『そばうち』とは何でしょうか。
その、自称『成熟した大人の男性』である彼は、所用とかで朝から店を空けており、フローラさんと私が二人きりで店番をしていると言う訳です。
……お客さん居ませんしね、文字通り二人きりです。
「フローラさん」
カウンターの内側で、『さいふぉん』という、コーヒーを淹れる為の道具を、真剣な顔で見つめるフローラさんに声をかけます。
「どうかして?」
顔を上げて私の方を見てくるフローラさん。その身に纏っているのは、マスターの指定だと言うフローラさん用の衣装です。
白いシャツに黒のベスト、そしてひざ丈のスカート。女性らしくありながら無駄なお肉のついていない体に、きっちり採寸されて作られたそれらを纏うフローラさんの姿は本当に綺麗です。
衣装の落ち着いた色合いも相まって、まさに、『仕事の出来る大人の女性』といった感じですね。王都の冒険者ギルドに寄った時に、若い女の子達が目を輝かせていたのも頷けます。
「私、これでもかつて『聖女』と呼ばれていたんですよ」
「そうね」
「それが、なんでこんな衣装を着てるんでしょうか」
そう言って自分の着ている衣装に視線を落とす。
濃紺の布で作られたワンピースの服。白いエプロンに髪はまとめて後頭部でキャップに収め、踝まで覆う長尺のスカート。襟と長袖の袖口が白い生地で意匠された……。
「メイド服ね」
「メイドさんの服です」
そう、何故か私はメイドさんの服を着ているのです。
「しかも、お客さんが来たら、お出迎えの言葉は『お帰りなさいませ御主人様』って、意味がわからないんですけど……」
「意味なんてないんじゃないかしら。あの人も言っていたでしょう? 『考えるな、感じろ』って」
「そんな言葉で納得できる訳無いじゃないですか……」
カウンターに突っ伏して溜息を漏らす。
「似合ってるし、可愛いわよ?」
フローラさんは褒めてくれるが、喜んで良いか微妙な所です。
そりゃあ、王城でみかけたメイドさん達を可愛いと思いましたよ? 彼女達が振り返った時にふわっと広がるスカートとか、華美にならない程度ですが、ちょっとしたレースの飾りとか。当時着ていた修道服には、そんなお遊びは無かったですからね。
着心地も良いですから、最近では普段着にもなっています。
それにしたって、
「私もフローラさんみたいな大人っぽい服が良かったです」
言いながら顔を上げてフローラさんを見上げます。
先程も思いましたが、やはりフローラさんは綺麗です。女性としては高めの身長、出る所は出て、引っ込むところは引っ込んだ女性らしい体つき。姿勢が良いせいか、一つ一つの所作がとても綺麗です。
そんな彼女が、微笑みながらコーヒーを淹れてくれるのです。
「なんでこのお店は流行らないんでしょうね」
改めて店内を見渡す。
建物自体はそう新しくは無いですが、コーヒー屋さんにするにあたり改装したと言う店内は、毎日ちゃんとお掃除してますから塵一つありません。建物の古さは、むしろ落ち着いた雰囲気を演出します。
そして、このフローラさんがコーヒーを淹れてくれるんです。私だって、フローラさんには及ばないかもしれませんが、美人だと思うのです。故郷にいる時は、皆『可愛い』って言ってくれましたし、聖女として王都に行ってからも、色んな人が『美しい』と褒めてくれました。
……あれ? もしかして村の皆さんの言う『可愛い』は、大人が子供に対して言う『可愛い』でしょうか? 王都の人達の言う『美人』は、『聖女』の私に気を遣ってくれたのでしょうか?
……む、胸だけならフローラさんにだって負けてませんよ? 彼だって私の胸をちらちら見てたのを知ってますし。オフィーリアさんには良く『ドジっ娘』って言われましたけど、胸のせいで足元が見えないから躓いてしまうだけなんです。決して私がドジっ娘なわけじゃありません。
話が逸れました。このお店が流行らない理由でしたね。
まぁ、わかってはいるのです。お休みの日にお出掛けした時に、街の人がこの店の事を話しているのを小耳に挟みました。
彼やフローラさん。そして常連さんが『色々』とやらかしているせいで、街の人からは危険地帯扱いされているそうです。
子供たちの中には、『度胸試し』と称してこの店を訪れようとして、大人に捕まってお説教されている子も居るとか居ないとか。
……考えたくは無いですが、もしかして私も、『危険物』のお仲間さんと思われているんじゃないでしょうか?
「はぁ……」
なんでしょう、最近溜息が増えた気がします。
『別に喫茶店で蔵建てたいわけじゃねぇしなぁ』と彼も言っていましたし、実際にお店の売り上げが無くても生活出来てますし、さっきも思いましたがお給金も出てますし……。
……ちょっと待ってください? この生活費やお給金はどこから出てるんでしょうね?
詳しくは聞かない方が良いような気がします……。
「はいこれ」
考え事をしていた私の前に、フローラさんのコーヒーが差し出されます。隣にはミルクと砂糖のポット。
「有難う御座います」
そうお礼を言ってカップを手に取り、まずは香りを楽しみます。が、やっぱり私には香りが強すぎますね。味もそうですが、淹れたばかりのコーヒーはやはり苦手です。
ミルクと砂糖を足して、並々になったカップを零さないように気を付けて……。
「やっぱり苦いですぅ」
少し飲んではミルクと砂糖を足す。私の好みの味になるまでそれを繰り返します。
「ふぅ」
やっと私好みの味になったそれを口に含み一息。本当は、最初からこの味を楽しめると良いのですが。
そんな私を見ながら、くすくすと笑うフローラさんの口元に当てた手には、一つの指輪が光っています。
そういえば、パーティーをしている時にはしていませんでしたが、再会したフローラさんはいくつかの装飾品を身に付けるようになっていました。
一つは髪留め、もう一つは細い銀のネックレス。そして、先程の指輪。
彼の故郷の風習で、結婚指輪と言うらしいです。夫婦でお揃いの指輪を同じ指に付けるなんて素敵ですよね。
§
私にもかつて婚約者が居ました。
と言っても、正式な約束を交わしていた訳では無くて、周りから言われて、なんとなく将来はそうなるんだろうな。と、お互いに思って居た程度のものでしたが。
隣の家に住んでいたあの子は私よりも一つ年下で、年の近い子供が私達だけだったので、気が付けばいつも一緒に居る、所謂幼馴染と言う関係でした。
どこか放って置けない感じがして、小さい頃はいつも私の後ろをくっついてくるあの子のお世話をしている事が多かった気がします。
大きくなってからもそれは変わらず、一緒に居るのが当り前になって、あの子の両親や村の人から『将来はあの子のお嫁さんだね』と言われ、なんとなくそんなものなのかなぁと思って居ました。
もちろん嫌いだったわけではありません。嫌いであれば、そもそもあの子と関わろうとは思わないでしょうから。
そんなあの子との関係が変化したのは、私が十六になり、村の教会のお手伝いをするようになってからでしょうか。
教会のお手伝いをする中で、私に魔法、特に聖魔法の才能が有るとわかると、その才能を生かす為と、私は王都の教会へ派遣される事が多くなりました。
王都の教会で聖魔法について本格的に教えを受けると、私の才能は徐々に開花していき、やがて大司教様でも使う事の出来ない上級魔法を使えるようになると、私は『聖女』として祭り上げられるようになりました。
日夜『聖女』として在る為の教育を受ける為に王都の教会に留め置かれ、村に戻る事も出来ず、ただ言われるままに祭事を取り仕切る日々が続きました。
あの子には、『会えなくて寂しい』『良かったら王都の教会で働かないか』『せめて王都まで会いに来てくれないか』と手紙を出した事も有りましたが、回答はいつも『私が帰ってくるのを信じて待っている』でした。
そして、祭事を取り仕切る事、信徒の皆さんに演説を行う事、王侯貴族の方々と対話する事、そんな事に慣れて来た頃、魔族との戦争が始まり、異世界から勇者様が召喚されたのです。
その旅は、決して平坦なものではありませんでした。
いくつもの村が魔族に占領され、力なき民が苦しんでいると気を急く私に対して、彼は冒険者としての経験を積んでいるフローラさんに意見を求め、確実にその歩を進めていきます。
その事で彼と衝突する事もありましたが、いつもフローラさんの経験と彼の正論に言い負かされては、それでも納得出来ない気持ちを抱える日々が続きます。
納得できないと言えば、『戦闘で前衛が抜かれた時に、自衛の手段が無いのでは話にならない』という彼の提案によって、私にもフローラさんの地獄の特訓が課せられる事になったのですが、あれは辛かったです……。
まぁ、そのお陰でご飯は美味しく頂けましたし、気になっていたお腹のお肉も随分と……。
話が逸れました。
『聖女』としての私は、彼の在り様に反発する事も有りましたが、感謝している事も有りました。旅の合間に休暇と称して、私を王都ではなく故郷の村へと送ってくれた事です。
両親や、久しぶりに会ったあの子、あの子の両親が、私が戻る度に、人とすれ違う度に、
『自分の娘は聖女様だ』
『自分の嫁は聖女様だ』
『息子の嫁は聖女様だ』
と、一様に自慢げに語る事に、些かの居心地悪さを感じはしましたが、それでも生まれ育った故郷です。その時だけでも、私は『聖女』ではなく、ただの村娘に戻れたのだと、そう思って居たのです。
久しぶりにあの子と話す時間も作れました。私達の旅の話の中でも、フローラさんとオフィーリアさんに興味深々と言った感じでした。
『惚れてる女が別の、それも自分より近くに居る男の話をしてるのを愉快に思う男は居ないからな、俺の事はあんまり話さない方が良いかもな』
そう言われてましたから、彼の事を私から語る事はあまりしませんでした。それでも話の流れから、いかに彼が凄いのかという事を話になった事も有りますが、あの子は決まって不機嫌そうな顔を見せました。
そんな風に旅を続けて行くうちに、『あの日』が訪れます。
『勇者と王家の間に諍いが起きた』
教皇様からその言葉を聞いたのは、彼が急に王都に戻ると言い出し、転移魔法を使った次の日でした。
教皇様は私に勇者を説得するように言いましたが、私とていつまでも無知な小娘のままではありません。その『説得』が、彼を教会に取り込もうとしている事も、言外に『体を張ってでも』と匂わせている事は理解出来ました。
決して愉快な話ではありませんが、その時の私はまだ『聖女』としての教えの中に居ましたから、ただ彼に勇者として旅を続けてもらいたい一心で、彼の部屋を訪ねました。
結果は、彼を説得するどころか、聖女としての価値観を根底から揺さぶられて追い返される有様でしたが。
後にわかった事ですが、彼の言う通り、フローラさんもオフィーリアさんも同じような事を言われていたとの事です。結局、彼の部屋を訪れたのは私一人でしたが。
今思い返しても、この件に関しては赤面の至りですね。
その後、考えの纏まらぬままに故郷の村へと送り届けられます。
村に戻って来た私に皆が驚いていました。彼と王家が決別し、彼が姿を消した事を説明すると、驚きは恐慌と混乱へと変わります。
村の人々、両親までもが私に『聖女なのだから、この村だけでも何とかしろ』と詰め寄ります。二人きりになると『辛かったね』『大変だったね』と私を労わる素振りを見せるあの子も、表立って私をかばってくれるような事は有りませんでした。
誰と言葉を交わす事も無くなり、私は村の教会でただ祈るようになりました。神がおわすなら、何か答えて頂ける筈だと、祈りは全てを救うのだと教会で教えられていましたから。
幾ら祈っても、答えも救いも有りませんでした。
それでも祈り続けたあの日、教会の扉が荒々しく開かれます。振り返れば、村の男達が私を見ています。そしてその先頭には、皆と同じように目を血走らせた、あの子が居ました。
その様相から、決して愉快な話をしに来た訳では無いのはわかりました。むしろ、不埒な事をしに来たのだと見て取れます。
果たして、その予想の通りに襲い来る男達。それを纏めて魔法で眠らせて私は生家へと戻り、解きもしていなかった旅の荷物を掴み、何やら喚いている両親を残し、そのまま村を出たのです。
私が村を出たその日は、そのまま私が『聖女』という過去と決別した日でもありました。
村を出てから行く宛てのない私の頭に浮かんだのは、勇者パーティーの面々でした。
彼とフローラさんは何処も分からぬ旅に出てしまいましたから、分かっているのはオフィーリアさんが住んでいる『塔』だけです。
幸いな事に、勇者パーティー時代に分配されたお金がありましたので、私は旅の回復術士として王国各地を巡りながら、塔を目指しました。
そうして辿り着いた塔でオフィーリアさんと再会し、彼とフローラさんの現状を聞くにつけ、なんだか無性に腹が立ちました。
残念ながらオフィーリアさんの転送魔法は一人用との事でしたので、そこからまた、今度は魔都を目指す旅が始まったのです。
§
「帰ったぞ~」
昔を思い出して感慨にふけっていた私の耳に、お店の扉が開かれた鐘の音と、能天気な声が聞こえてきます。
「おかえりなさい」
フローラさんの声に出迎えられた店長が得意気な顔でカウンターの中に入ります。
「っと、丁度飲み終わった所かな。まぁいいや、フローラ、クレアにコーヒーを一杯淹れてやってくれないか」
私の前に置かれた空のカップを見てから、彼がフローラさんに声をかけます。
「どうしたんですか、急に」
首を傾げる私の前に、得意気な顔をした彼が手に持っていた紙包みを置きます。
「開けてみてくれ」
「はぁ……」
気のない返事をしながら包みを開いてみると、
「これは?」
色違いの同じ柄が意匠された二つの……取っ手の無いカップでしょうか、大きさは両手で包んで少し余る位でしょうか。
「カフェオレボウルって言うんだ」
「かふぇおれぼうる?」
聞き覚えの無い言葉に首を傾げます。
「クレアやオフィーリアみたいに、コーヒーにミルクを大量に入れると、コーヒーではなくカフェ・オ・レと呼ばれる飲み物になるのさ。そのカフェ・オ・レを飲む為の器だな」
「そうなんですか」
私からカフェオレボウルを一つ受け取ると、軽く水洗いしながら彼が言葉を続けます。
「いつも飲み難そうにしてるし、最初からコーヒーを少なめにすれば良いんだが、それだと豆が勿体ない気がしてな。だったら最初からそれ用の器を用意すれば良いと思ったのさ」
「それで、態々買って来てくださったと?」
「いや、丁度良い大きさのが見当たらなかったから、作って来た」
「はい?」
この人は今何と言いましたか?
「北の職人街に焼物の工房が有ってな、そこのおっさんに頼み込んで作らせて貰ってたんだ」
「はぁ……」
最近ちょくちょく出かけているのはこの為でしたか。
「どうぞ」
フローラさんがカフェオレボウルにコーヒーを注いでくれると、彼が温められたミルクを差し出してきます。
「ふわぁ……」
いつものコーヒーカップより大きいそれは、ミルクと砂糖を沢山入れても零れる事はありません。
優しくなった香りを楽しみ、甘くほろ苦い味に自然と頬が緩みます。
「ちゃんとした器で飲めば、また美味いもんだろ?」
得意気な顔で語る彼。
全くこの人は……。
―― 自身を抑え込む程に道義を通そうとしたかと思えばどこまでも自由で ――
―― 過ぎる程に気を利かせると思えば
「まぁ、美味いからと言って、毎回それだけ砂糖入れてたら太るけどな」
壊滅的に配慮が足りない ――
「フローラさん、今度から魔物や魔獣の討伐は私も御一緒します!」
「わかったわ」
フローラさんが柔らかく笑う。
さて、
私の気持ちが本物なのか、或いは彼の評する通りの『吊り橋効果』と言う物なのか。
本物だとして、それが叶う日が来るのか来ないのか。
それがはっきりするまで、もう少し時間がかかりそうですね。
出来れば、私が行き遅れになるまえにはっきりして欲しいものですが……。
彼の作ってくれたそれに唇を当てながら、私はそんな事を考えるのです。
後日、『コーヒー屋の裏庭で、鈍器を振り回す巨乳メイドを見た』とか『魔都近くの森で、魔獣を撲殺する巨乳メイドを見た』などという話が魔都に広まり、それを聞いてベッドの上を転げまわる事になるのですが、それはまた別のお話。
このお話を読んで頂いた方にお願いです。
・唐揚げに勝手にレモンをかけるのは御遠慮ください。
・女子力気取って、勝手にサラダを取り分けるのは止めて下さい。
野菜嫌いなんです。
・気遣いを気取って、取り分ける時にお箸をひっくり返すのは止めて下さい。
今食べ物を掴んでいる部分は、さっきまで貴女が素手で握っていた部分です。
※本当に気遣いが出来る人は、取り分け用のお箸を貰います。
まぁ、コ〇ナのせいで飲み会なんて出来ないんですけどね。