第八話[1] 入学式って大体桜散ってるし、淡い期待も散る
桜舞い散る今日この頃。
……桜全部散ってるわ。
俺は今日から二度目の高校生活を送る。
はっきり言って一度目の人生は失敗だった。
うん、思い出すだけで吐きそう。
『青浜高校入学式』の看板をすっ飛ばし、二人で体育館に向かった。
敷地内の奥まで進むと体育館が見えてきた。
中には緑のシート、その上に置かれたパイプ椅子。
壇上には横浜市旗と青浜高校旗が掲げられ、手前には上級生がびっしり。
俺たちは二人とも一年一組、同じクラスだ。
多分こいつが仕組んだんだろう。
クラスごとに列がわけられており、そこに来た人から座っていく。
一組のメンバーは真面目なのか、式の開始五分前についた俺たちが最後だった。
つーか新入生全体でも最後の方だった。
俺は思い知った。
この容姿がいかに素晴らしいのか。
そして容姿が優れていることがどれほど影響力を持つのかを。
体育館に入ったときのあの視線。
クラスメイトの男子の嬉しそうな表情。
席に座った時の隣の男子の緊張。
そんなものはどうでもいい。
美少女転生の醍醐味だろって?
確かに俺だっていい気分だったさ。
どうやってもてあそんでやろうかな―、なんて思いもした。
だがしかし。
いや、あの駄菓子漫画のことではなく、だがしかし。
一体どうしてこうなった。
コツコツと階段を上がり、一人の女子が壇上に立った。
「えー、どうも。今年の新入生は実に幸運です。新入生だけではない、二年生、三年生、先生方、保護者の方々、関係者各位の皆様……」
彼女の手には原稿らしきものも、小さなメモも見当たらない。
「なぜなら今年、この青浜高校に女神が入学したからです」
衝撃の発言にざわつく体育館。
「申し遅れました。新入生代表スピーチをさせていただきます……」
彼女は顔を上げ、悪意ぷんぷんの笑顔を浮かべている。
「女神・鈴木灵美です。以後お見知りおきを」