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女神と始めるJKライフ! ~卒業式で死んだら美少女にされました~  作者: 橋本 泪
第二章 青浜高校には女神がいます
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第五十六話 神のご加護があらんことを

ピンポーン。


インターホンが鳴った。


配達かな、とりあえず出るか。


「はい」


そこに立っていたのは一人のおば様だった。


「あなたは今人生に満足していますか?」


「はぁ、まあ」


「完全には満足していない?」


「そりゃあ完全にということは」


「そうですよね。この世の中、つらいことの方が多いものです」


「ああ、はい」


彼女は懐から分厚い本を取り出し、張り付けたような笑顔でにっこりと微笑む。


「私『ダエヴァスへの祈り』のスノミトーヤを務めております、シャレンと申します」


すっごい外国語。


何言ってんだこの人。


どう見てもシャレンって顔じゃないだろ。


ゴリゴリの日本人だぞ。


「あなたの人生に必ず役立つ聖句がここにたくさん刻まれています。是非読んでみてください」


俺は本を手に取り、ぺらぺらとめくってみる。


なんだこれ、全く意味わかんねぇんだけど。


俺異世界転生した?


「興味があればこの後大聖堂でありがたいお言葉が」


「長々と何してるんですかオウシキ。早くドア閉めてくださいよ」


「いや、今お客さんが」


「あらあらこんにちは。お嬢さんもこれ」


彼女はレビにも謎の本を手渡す。


まあ何だろう。


もうお分かりだろうが、このおばさまは新興宗教の勧誘に来たのだろう。


そろそろドアを閉めたろうかと思っていたところだが、本物の女神が宗教に対してどのような反応をするのか気になったので、静観することにした。


「なんですかこれ」


「これはね『ダエヴァスへの祈り』の聖書で、人生に役立つお言葉がたくさん」


「あー……」


レビは彼女の話をさえぎって大きなあー。


あーってなんじゃい。


「これがあなたの信じるものなのですね」


「ええ。そしてこの聖書、教えのおかげで私の人生は大きく変わりました。


「そうですか。それは素晴らしいことです。お話は終わりですか」


急につめてぇな。


「私の幸せのプロセスをあなた方にもぜひお教えしたいのです。そしてあなた方にも『ダエヴァスへの祈り』に入信していただき」


「遠慮しておきます」


「大丈夫。皆さん最初はそう言うの。でも私たちのことを少しでも知ってもらえればすぐにでも入信したくなるでしょう。騙されたと思って大聖堂へ」


「人が何を信じようがそれは個人の自由です。しかしそれを他人に強要するのは言論統制に似た哀れな愚行でしかないのです」


哀れな愚行て。


強い言葉を使うな。


強く見えるぞ。


「ああ、可哀そうに。悪魔にとりつかれているのでしょう」


ぷー!


女神のくせに悪魔に憑かれてるってよ! ぷー!


「ぶち殺しましょうか」


完全に憑かれてるわこれ。


「そもそもあなた方の宗教は悪魔を悪いものとしているのですね」


まあ悪魔崇拝なんて宗教もあるしな。


「もちろんです。悪魔は人間を堕落と自己嫌悪に導く悪しきものです」


「一文に悪って文字使いすぎじゃないですか」


そこはいいだろうよ。


「信仰の対象は神だと」


「ええ。唯一神ユマルとユマルの正式な遣いであるユフトに絶対的な帰依を誓っています」


「誰ですかユマルって。いませんよそんな神」


身もふたもないこと言うじゃん。


「まだ神を信じることができないのですね。現代は科学技術の発展によって科学信仰が大きく勢力を伸ばしていますからそれも仕方のないことです」


こいつもこいつでメンタルつえぇな。


そろそろ帰れ。


「科学なんて神の前では偏に風の前の塵に同じですよ」


「まったくもってその通りです」


突然の共感。


かみあってるようで全くかみ合っていない。


「具体的にどのような活動を?」


「興味を持っていただけたようで幸いです。私たちはタエヴァス、いわゆる天国に向けての祈りをささげることで神への帰依を証明します。そして週に一度大聖堂での礼拝、月に一度ユフトのありがたいお話を聞かせていただくのです」


「神の言葉を愚かな人間というフィルターを通して聴くのですね。清らかな水をわざわざ泥でろ過しているようなものですよ」


お前の発言が泥水みたいな汚さだけどな。


「さらには神へのお返しとしてアネタと呼ばれる喜捨を行うのです」


「それは貧困層に配られるのですか」


「いいえ、『ダエヴァスへの祈り』の資金として皆に平等に恩恵を与えます」


上層部に吸収されると。


金とるタイプの宗教ね。


いよいよヤバいな。


「それは喜捨とは言いませんね。集金です」


言わせといてやれよ。


「残念ながら神は信仰に金銭を必要としません。なぜなら人間どもの造った紙きれなど何の価値もないからです」


「お金は人間にとって価値あるもの。それを自ら捨てることで神への信仰の強さを見せているのです」


「神が人間を自ら貧窮に追い込むわけないでしょう」


「苦しみを知ってこそ人間は真に輝くことができるのです」


「この世界で生き抜くことが最大の苦しみです。それ以上何も求めません」


聞きたくなかったよねそんなことは。


「別に神なんてろくな奴じゃないですよ、そもそもね」


とんでもない説得力だな。


生き証人だもんなレビが。


「というかユマルって誰ですか」


掘り返すな。


「ユバルのことですか」


いるんかい。


「でもあいつ雑魚ですよ」


やめたげてよ。


「ここであったのも何かの縁でしょう。あなたに本当の神の存在というものをお教えして差し上げましょう」


そう言うとレビは両の腕を大きく広げて言った。


なんじ己をせんする偽りの教えから解き放たれ、我鈴木灵美レビを崇敬することをここに許しましょう」


何それ、洗脳?


「ああ、……ああ!」


レビが謎のお言葉を唱えたその瞬間から、おばさまの様子がおかしい。


「あぁ、私はなんと、ああ、愚かな」


彼女は瞳孔をかっぴらき、だらだらとよだれを垂れ流している。


大丈夫? これ。


「おお神よ。悔い改めます。我が絶対的な帰依をあなたに」


おばさまは膝をつき、手を合わせてレビを拝む。


あー、えー。


神は偉大です。


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