第三十三話 ポーカーのルールがわからない
「ポーカーしましょう」
「ポーカー?」
レビの気まぐれはいつものことだがいきなりポーカー?
「俺よくルール知らないよ?」
「大丈夫です。私が把握しているので」
そう言って彼女は五枚ずつカードを配る。
ビッドとかコールとかはしなそうだし、役くらいなら俺も知ってる。
ハンドはどうかな?
ダイヤの2、4、ハートの4、クローバーの4、スペードの9。
現段階でスリーカード、フルハウスやフォーカードも狙える。
「ドローは何回まで?」
「二回までにしましょう」
最初だし、ここは貪欲にいこう。
俺は4以外の二枚を場に戻し、新しいカードを受け取る。
「じゃあ私も二枚」
何?
レビも結構そろってるのか?
俺の引いたカードはハートの8とスペードのキング。
どうすっかな。
迷った末に俺はキングを残し、8を交換。
引いたカードはダイヤのエース。
かっこいいけど今はいらん。
でもスリーカードは悪くない。
「勝負しましょう」
「最後の交換はいいのか?」
「ええ、いい感じです。お金賭ければよかったですね」
「生活費もろもろレビに出してもらっているわけですけども」
「そうでした。臓器でも賭ければよかったですね」
いや怖いよ。
なんで自宅で闇カジノ?
しかし自信があるのか。
これは負けたかもしれん。
「じゃ、せーので開けましょうか」
「おけい」
なんか最近レビが普通にかわいい気がしてならない。
俺も毒されたな。
「せーの」
「スリーカード」
「清一色です」
「待て」
少なくとも普通ではなかったわ。
「は? チンイツ?」
「あ、チンイーソーのことです」
通称がわからないわけじゃねーわ。
「それ麻雀だろ」
「でも全部揃ってますよ、萬子」
「マンズじゃない、これはダイヤというんだ」
「どっちにしろ全部揃ってます」
「それはフラッシュだ」
「じゃあどっちが勝ったんですか」
「レビだな」
レビかい。
一人ツッコミしちゃったよ。
「やったー!」
かわいいし。
「二回戦は何か賭けます?」
「臓器は嫌だぞ?」
「私が勝ったら明日お弁当作ってください」
「弁当?」
「はい。食べてみたいんですよ、手作りのお弁当」
「自分で作るのはだめなの?」
「せっかくなので作ってもらいたいんです」
「わかった」
あぶねー。
レビの頼みならいつでも作ってやるよ。
とか言いそうになったぁ。
ただしイケメンに限るってやつ。
……。
今美女だからやってもよかったのか?
「じゃあ配りますね」
先ほど同様カードを配るレビ。
今回もジャックが三枚手元に来た。
なかなか引きが強い。
「俺が勝ったら何してくれるんだ?」
「お任せしますよ。何してほしいんですか」
こういう時ってさ。
本当にそれをお願いしたいわけじゃなくてもエロいことが頭に浮かぶよね。
「じゃあ俺も弁当で」
「適当言ってません?」
おうおうそんな疑いの目で見るなよ。
泣くぞ?
「その代わりあれだぞ、女神の力みたいなの使わないで手作りしてくれよ」
「そういうことか。わかりました!」
にっこりと笑った彼女の笑顔からは出会った頃の毒素は……。
「人間基準に合わせろってことですね!」
まあナチュ畜はしょうがないよね。
女神さまだしね。
「あ、もしかしてお弁当作ってっていうお願いにラブコメ要素感じてました? すみません、童貞には刺激が強かったですね」
そうだよね、こういう奴だよね。
むしろこれでこそレビまであるよね。
お兄さん安心しちゃったよ。
「二枚交換で」
「はい」
「レビは替えないの?」
「ええ」
マジで?
相当自信あるっぽいな。
フルハウス以上か?
ここは絶対に引き当てなければ。
「おっ!」
「いいの引けました?」
「まあね」
やべ、声出ちゃったよ。
このルールじゃ降りれないから関係ないけど。
この時点で俺の手元には三枚の11と一枚のジョーカー。
フォーカード。
最強クラスの役だ。
これを負かせるのはロイヤルストレートフラッシュ、ストレートフラッシュ、ファイブカードのみ。
しかも手元にはジョーカー。
ファイブカードは実質ない。
最後のドローで有効なカードは引けなかったが十分だ。
この勝負勝つる!
「せーの」
「フォーカード」
「国士無双」
ないよ。
国士ないよ。
役満ないよ。
てかダイヤの2、ハートの8、スペードの9、クローバーのキング、ジョーカーってワンペアじゃねーか。
ジョーカー二枚入れんなや。
「私の勝ちですね」
「負けです」
「え?」
「え?」
「役満ですよ?」
「ワンペアだよ」
なんでずっと麻雀やってんのこいつ。
つーかその手配で国士は無理があるだろ。
「しょうがないですね。今回は負けにしといてあげます」
「楽しみにしてるぞ、弁当」
「……一緒に作りましょうよ」
「はい?」
「一緒に作りましょうよ、お弁当。私も食べたいですもん。交換しましょう」
「……まあいいけど」
こうして俺たちのポーカー対決は幕を閉じた。
……。
なにこれラブコメ?




