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女神と始めるJKライフ! ~卒業式で死んだら美少女にされました~  作者: 橋本 泪
第一章 入学準備はお早めに
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第一話 神って大体こんなもん

「おめでとうございます! あなたは死にました!」


見た目のおっとりした雰囲気と違い、随分はきはきとしゃべるもんだ。


「いや、まあ死んだのは置いといて」


「置いとくんですね」


さすがに誰だって突然死んだら動揺はする。


まあでも……。


「いいんだ死んだのは、死にたかったし……」


「そうですよね、知ってます」


「おい、さっきからちょっと……冷たくないか?」


「何がです?」


彼女はにっこりと首を傾げる。


あー、嫌いなタイプだこれ。


「俺死んだばっかなんだろ、もっと気を使ってくれてもいいんじゃないか。それになんだ! おめでとうございますって! 死んでおめでとうございますってか!」


「偏差値38の高校を卒業した十八歳で身長161センチ、体重85キロ。バカ、チビ、デブ3連単、人間界の底辺にして当然のごとく女性経験なし」


「ぐっ」


「つまり童貞」


「ぐわぁぁぁぁ!」


こいつ、遠慮とか無いのか!


ふざけやがって。


「そんな人間に生きてる価値なんてないでしょう。改めまして死んでおめでとうございます!」


彼女は何処からともなくクラッカーを取り出し、パァンと鳴らした。


満面の笑みが実にいやらしい。


それより何より、彼女の発言に反論できないのが悲しいものである。


思えばこれまでの十八年間、クソみたいな人生だった。


ひたすら人とのかかわりを避け続け、学校でも家庭でも孤立。


彼女どころか友達すら一人として存在しなかった。


スマホなんて存在意義がなかった。


クラスの行事はすべて不参加。


最初はいじめてきたクラスメイトもすぐに興味を失い、いじめられっ子にすらなれなかった。


何とか最低限の出席日数を稼ぎ、卒業にはこぎつけた。


しかし天は何処までも僕を見放した。


「ああ、そうか。俺死んだわ」


「思い出しましたか?」


「ああ」


卒業式の日、俺は死んだ。


頭上から落ちてきた照明に押しつぶされて。


「あの後大変だったんですよ~。晴れやかな卒業式が一転、狂気の事故現場ですから。死者があなただけだったのが不幸中の幸いですけど、近くに座ってた子たちは重傷を負った人もいますし、何よりあなたの惨死体は脳裏に焼き付いて一生離れないでしょうね。学校側は過失致死でイメージダダ下がり、廃校危機に追い込まれました。いやー、最後まで見事な厄病神っぷり。本物の神もおっ神びっくり! なんちゃって」


「……死者いじめはもう十分楽しんだだろ、早く成仏させてくれ」


俺の言葉を聞いた女神はハテナ、とでも言いたげな顔をした。


ほんとなんというか、いちいちモーションがウザい。


「あなたは幸運にも神の気まぐれによって人生をやり直すことになりました! はくしゅ! パチパチパチパチー!」


彼女がわざとらしく大げさに手をたたくと、何処からともなく祝砲が聞こえてくる。


というかさっきからこのノリなんなんだよ、それに……。


「光栄なことなのかもしれないが、俺は辞退させてもらうよ」


「へ?」


「精子からやり直すのか、十八歳からやり直すのか知らないが、どうせろくなことにならない。またあんな人生繰り返すぐらいなら地獄で岩盤浴してる方がましだ」


当然だ、人間社会なんてもう二度とごめんだ。


「地獄かー、そんなもの信じてるなんてあなたも人間らしい部分あるんですね。あんなもの人間の創造の産物でしかありませんから。それにあなたに拒否権はありません、これは決定事項です」


えっへんと胸を張る女神。


女神だけあってそれなりに立派なふくらみだが、死んだからだろうか、何も感じない。


「当然ただ生き返らせて人間たちの中にポーイとするわけではありません」


「……というと?」


「あなたには使命を与えます」


「はぁ」


話が突飛すぎて理解できない。


というかほんとに死んだのか怪しくなってきた。


本当は気絶しただけで夢とか見てんじゃないのかこれ。


「で、使命ってのは?」


「どぅるるうう…るう、うるるっ、るる……じゃん!」


彼女はドラムロールの真似をしてみせた。


すげぇ下手。


「お友達を幸せにすることです!」


……。


盛大な発表のわりに使命が漠然としすぎなきがする。


「俺にお友達なんかいないぞ」


彼女はちっ、ちっ、ちっ、と指を振りこう続けた。


「もちろん今までのあなたなら不可能だったでしょう。えっと、キ、キイロ?」


「オウシキ。黄色って書いてオウシキ。下の名前は」


「カエデ! そのくらい私だって読めますから! 馬鹿にしないでください!」


お、おう。


こわっ。


「あなたにはこれからとびきり綺麗な女の子になって高校入学からやり直してもらいます。入学先は神奈川県横浜市の……」


いやちょっと待て。


「いまなんて」


「あー! 横浜市だけでいいんですよね。神奈川県って言わなくて」


「いやシティズンプライドの話はしてない。俺、とびきり綺麗な女の子になるの? とびきりハンサムナイスガイじゃなくて?」


「当然です。あなたには青浜高校に入学していただきます。そしてそこで友達を作り、彼らの人生の手助けをしてください」


彼女は突如真面目に、黙々と説明を始めた。


情緒不安定なのか?


「でも今までのチビデブハゲのオウシキさんだったらムリゲーじゃないですか、アリアハンにギガンテス十三体いたらムリゲーじゃないですか。なのであなたには優れた容姿という最大の武器を与えてあげようと思うのです。」


「ハゲではない、断じて。つーかだからなんで性別まで変わるんだよ、イケメンでいいだろ」


やれやれというジェスチャーを見せた後、説明を続ける女神。


「私は人間社会の観察が趣味なのです。脳が発達しすぎたあまり種の存続を危ういものにいしている本末転倒おまぬけ生物ですが、人間には思考というものがある分見てるこっちも面白いのです。そして長年の観察の末、私は、発見、して、しまった、の、で、す!」


ちゃんと喋れ。


「人間で一番得をするのは美女であると!」


彼女は人差し指を天に突きさし、いやここが天か?


だとしたら、えっと、まあ、上に突きさし得意げに語る。


「人間界で得をするのは美女、美男、一般女子、一般男子、ブサイク、ブスの順だという答えにたどり着いたわけです、QED. だからハンデとしてあなたを美少女として生まれ変わらせるのです。オウシキの辛気臭いオーラはたかだかちょっとイケメンになったくらいでは隠し切れないのです」


とんでもなく失礼だし、つーか呼び捨てになってるし。


どうも転生させられるのは避けられないようだ。


ここで抵抗しても強引に現世に連れて行かれるのだろう。


もう蘇らされるのはしょうがないとして、もう一回人生やり直すなんてクソくらえである。


あっち行ってからサボろ。


「もし人間社会で私の満足いく働きをしてくれなかったら、そうですね、ここは人間界のルールに従って地獄に落とします。無間地獄なんてどうです? 二千年真っ逆さまに落ちていくんだっけ、孤独で。いやー、甘いですね。二億年なんてどうです?」


身の毛がよだつとはこのことか。


死んだらさっさと成仏させてくれるもんだと思ったのに。


二億年だと?


十八年で耐えられなかった男だぞ俺は。


いや何なら九歳くらいの時から耐えられなかったね俺は、自慢じゃないけど。


「よし! 決意も固まりましたね! 安心してください、私も一緒に行きますから!」


ああ、なんだか面倒なことになったなぁ。


……ん?


今なんて?


「それじゃあ人間界へ、れっつらごー!」

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